臓器の時間――進み方が寿命を決める(祥伝社新書) (祥伝社新書 348)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396113483

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  • 腸と腎臓は老化が進みやすい。
    P16は細胞分裂を抑えるたんぱく質。腸と腎臓はP16の出現が早い。
    外気に触れる臓器はがんになりやすい。脳腫瘍はまれな病気。
    原核生物には、死がないが、進歩もない。真核生物になって、死と引き換えに進歩できるようになった。

    腸と腎臓は、ミトコンドリアが衰えるために老化が早い。臓器の老化はミトコンドリアが決めている。
    腎臓は酸素不足、腸は食べすぎがストレスになる。

    メタボリックドミノ=臓器連関で様々な臓器に障害が生じる。腸の時間が早くなり、血管に障害が生まれると、
    腎臓の酸素が少なくなる=慢性腎臓病。腎臓が悪くなると心臓が悪くなる。心腎連関。腎臓が悪くなると、腸も悪くなる。

    便秘の時、大黄甘草湯はよく効く。排尿障害は牛車腎気丸や八味地黄丸。不眠は加味逍遥散。

    後天的に遺伝子の作用を変えるのが、エピジェネティクス。老化を進める悪い習慣が蓄積しやすい。
    新生児の体重は、母親に似るようにできている。
    心地よいと思える出来事を蓄積することで
    エピジェネティクスによって臓器の老化を遅くできる。

    女性は不快な思いの処理を大脳皮質で行う。男は偏桃体で短期記憶として扱う。なるべく忘れてしまおうとする。

    65歳を過ぎたら、過去のいい思い出に浸ることで臓器を長生きさせる。
    テレビよりラジオ。聞くことで思考を鍛えられる。テレビは画像で伝えられるため、思考しなくなる。

    努力すれば改善する数値=血圧、中性脂肪、血糖、HDLコレストロール。
    LDLコレストロールが高い場合は、薬を飲むべき。
    腎臓の疲れは、尿中アルブミンでわかる。30㎎以上は微量アルブミン尿、300㎎以上は顕性アルブミン尿。
    臓器不全の場合は、直前に臓器が頑張る時期がある。心不全の前には、心肥大が起こる。

  • 臓器にはそれぞれ寿命があり(それぞれが砂時計を持ち)、その時間が尽きてくると病気になる。老いやすい臓器の1番は腸、2番は腎臓、3番が脳と骨格筋。臓器の寿命を延ばすためには、脳が心地よいと思える出来事やいい思い出を積み重ねることで、「美」を感じると「臓器の時間」はゆるやかに進むそうです。伊藤裕 著「臓器の時間 進み方が寿命を決める」、2013.12発行です。

  • 心臓はどんな動物でも一生で20億回の心拍を打つ。心拍数の速いものほど寿命は短い。ネズミの心拍数は1分間に300回程度、人間は50-80回。脈が遅い人の方が長生きの傾向にある。

    心臓は体の各臓器に酸素を供給する為、1分間に5Lの血液を送り出している。心臓自体は全体の5%しか血液を使わない。血液の消費量第1位は腸で全体の30%。第2位は腎臓で20%、第3位が脳と骨格筋で15%。腸と腎臓が老いやすい臓器。

    腎臓では、糸球体というフィルターで汚れた血液が濾過される。このプロセスにはエネルギーはいらない。結果、1日100Lの原尿が作られるが、人間の1日の尿量は1-2Lなので残りの99%は再び吸収されて再利用される。この再吸収に多量のエネルギーを要する。

    大腸は無酸素の世界であり、酸素があると生きていけない嫌気性菌の楽園を作り出している。

    臓器を動かすエネルギー源であるATPは、細胞の中のミトコンドリアで作られている。ミトコンドリアは、栄養素である糖分や脂肪を原料にして、酸素を使い、効率よくATPを作る。だが、ミトコンドリアは原発のようなもの。酸素は大量のATPを作る為に必要だが、使いこなせないと活性酸素と呼ばれる危険な物質に変わり、細胞内に放出される。この活性酸素はタンパク質や脂肪を変性させたり遺伝情報を保管している核酸を傷つける。これが老化。

    生命は38億年前に誕生した。この原核生物は細胞内に核を持たず、どんどん分裂していく為、「死」が存在しなかったが、単純に増えるだけの世界であり、「進歩」がなかった。

    生物がミトコンドリアを獲得するのが21億年前。ここで生物は核を持った真核生物になる。我々の祖先であるこの古細菌とミトコンドリアの祖先アルファプロテオバクテリアは別々のもの。

    生物はミトコンドリアを持つ事で初めて大きなエネルギーを得る事ができ、急速に複雑化、進化した。こうして「死」も生まれた。

    生物がミトコンドリアを獲得するようになった理由は、当時の地球上には酸素が発生するようになり、大半の生物にとってそれは有害物質であった。だが、ミトコンドリアの祖先の細菌だけは、ブドウ糖や脂肪などの材料を与えると酸素を使い、ATPを多く作り出せた。そこで、古細菌がプロテオバクテリアを受け入れる事にした。

    古細菌の子孫は嫌気性細菌として、今では無酸素の大腸の中で我々と共生している。

    腎臓と腸の疲れはミトコンドリアの疲れ。臓器の寿命はミトコンドリアが決めている。

    46億年前に地球が誕生してから生物が生まれるまでに要した時間は8億年だが、単細胞生物から多細胞生物が生み出されるのに14-16億年もかかっている。それほど複雑なプロセスであった。

    植物は太陽エネルギーを取り込んで自ら無機物から有機物を作り出す独立栄養生物。動物は他の者を殺して食べる従属栄養生物。

    細胞が集まって臓器が生み出されるには、集合体として形ができていないといけない。その為にはやみくもに細胞が増えるだけではダメで、ある細胞群は削り取られなければならない。この全体の為に個が犠牲になる事を、多細胞真核生物では細胞のアポトーシス(予定死)という。この細胞の死刑執行人こそがミトコンドリア。ミトコンドリアが疲れると、死ぬべき細胞が死ねなくなる。すると新陳代謝が障害され、臓器の機能が衰える。

    ストレスは、臓器がその場で考えて「いつもと違う」と判断すると、その情報を脳に伝える。脳は、この現場の意見を聞き、異常事態と判断して初めて緊張し、各臓器にストレス反応の命令を出す。

    メタボはストレスに対する臓器の過剰反応の病気。

    腎臓が悪くなると、仲間である心臓も悪くなる。(心腎連関)

    腎臓が悪くなると、酸素を運ぶ赤血球を作らせるエリスロポエチンが作られなくなるので貧血になる。

    五臓
    肝、、、自律神経の調節、肝臓の解毒、視覚、筋と運動機能
    心、、、神経症状、心臓の働き、血液循環、味覚
    脾、、、消化器官、手足の循環症状、口脣症状、水分代謝
    肺、、、呼吸、鼻、皮膚、水分代謝の一部
    腎、、、泌尿、生殖、聴覚、骨、関節、老化

    五臓は互いに関係しあい、アクセルをかける関係(相生)とブレーキをかける関係(相克)になっている。
    相生、、、肝→心→脾→肺→腎→肝
    相克、、、肝→脾→腎→心→肺→肝

    臓器は臓器自身が考えた事を記憶している。心臓移植された女性は偶然知り合った心臓提供者の夫と親しい関係になり、自分の嗜好が心臓提供者に似てきている事が分かったと話している。

    心臓移植の際、切断した血管はつなぎ直すが、神経は放置される。心臓移植患者が心筋梗塞の痛みを感じないのは、心臓を支配する神経が切断されているので、心臓の痛みが脳に伝わらない為。だが、移植された心臓は、自分の記憶を伝える為に、神経を手繰り寄せ、二年かけて切断された神経を再生させた。

    ミツバチは女王バチと働きバチから成り立つ階級社会を作っているが、全てメスで遺伝子は同じ。幼虫の時に働きバチが分泌したローヤルゼリーを与えられ、それを食べた幼虫だけが女王バチに成長する。ローヤルゼリーの中には、ハチの体を女王バチにするエピジェネティックスの変化を起こす物質が入っている事が明らかにされている。たとえ遺伝子は同じでも、エピジェネティックスによる変化で、女王バチは他のハチの1.5倍の大きさになり、寿命は20倍になる。このローヤルゼリーは、種類の違うハチの幼虫に食べさせても女王バチに成長する。

    エピジェネティックスの変化は、植物では世代を超えられる。

    爬虫類は、生きていく為に必須の呼吸と循環を司る脳幹が発達し、哺乳類になると、脳幹の上の情動を司る大脳辺縁系が発達した。ここで初めて感情を持った生き物になった。

    脳の進化は、まず脳幹ができてまともに生存する事ができるようになり、次に大脳辺縁系ができて生きる意欲が生まれ、最後に大脳皮質ができて欲望をコントロールする人格を持つようになった。

    大脳辺縁系の主役は報酬系と呼ばれる神経回路。「記憶」はこの領域で生み出される。つまり、記憶に残るには気持ちいいという感情が必要。

    五感を通じて脳に伝えられた感覚情報は最大4秒程度しか保持できない。この膨大な情報の中で意味がある情報であると選択された情報だけが短期記憶として大脳皮質の前方にある大脳前頭野で記憶されるが、その保持は20秒程度。

    短期記憶で保持できる量は5-9個程度。短期記憶の情報を長期間脳に格納しておくかどうかの判断をするのが大脳辺縁系にある海馬。海馬に送られた情報は1ヶ月程度保持され、審査を通過した情報のみが再び大脳皮質に送られ、長期記憶として保存される。

    恐怖を伴った記憶は通常の記憶とは異なり、大脳辺縁系の別の領域である扁桃体に格納される。

    海馬で長期記憶に残すか決めるのが報酬系。気持ちいいと感じられる経験が記憶となりやすい。脳にとっての報酬は脳が「美しい」と感じる事。

    「欲しい」「それなしではいられない」「美しさ」を感じる脳領域は重なっている。

    美しさを感じる事ができる人は美味しさにも敏感で太らずにすみ、健康になれる。

    男性は物を見たとき、左右どちらかの脳のある一部が活動して、見えた物の中で一点に注意を集中する傾向がある。女性の場合、左右両方の脳が共に活動して、いろいろな要素を考慮でき、広い視野を持つ事ができる。

    男性は数学的推論作業、人物と背景を区別するテスト、物体のイメージを頭の中で回転させる事、目標に命中させる事に長けている。女性は言語作業、社会的な判断、共感、協力のテストや組み合わせを作るテストが得意。「美しさ」はバランス感覚の中で感じられる。

    女性は不快な思いの処理を大脳皮質で行い、言語化して長期記憶として処理するが、男性は扁桃体で短期記憶として扱うのですぐに忘れる。

    バランス感覚の中で「美しさ」を求め、強い記憶力を養い、しっかり生きる姿勢が女性の長生きにつながっている。

    女性は仲間を大切にしてうまくやっていく事に長けている。女性ホルモンには他人の顔色を伺う力を生み出す作用がある。

    顔色をうかがう能力と美しさを感じ取れる能力は極めて近い。

    睡眠時間が5時間未満だと高血圧になりやすい。

    大腸癌は進行が遅く、胃がんは速いので毎年の検査が望まれる。

    見る、聞く、話す力の全てを奪われたヘレンケラーが求めたたった一つの力は「聞く力」であった。コミュニケーションで一番大切な能力は人の話をよく聞く事。

    臓器の寿命を延ばす方法は、自分にとって美しいと思えるものを探し求める事。気持ちいいと思える事に心を動かす自然な姿勢を持つ、つまり童心に返る事。

    「老いる」とはエピジェネティックス変化による記憶が蓄積されていく事とも言える。

    若い時に身につけるべき正しい「姿勢」
    年老いてからでもできる正しい「呼吸」

    ヒスイの硬度は6.5で、ダイヤモンドの10より低いが、どんなに硬いものにぶつかっても欠ける事はない。なぜならヒスイの靭性は8でダイヤモンドの7.5をも上回っているから。ヒスイの内部は針状の小さな結晶が複雑に絡み合っており、全ての鉱物の中で最も割れにくい。ヒスイの強い靭性が強く生きる上で大切。

  • 臓器の役割の違い・寿命などについて記述した一冊。

    これまで知ることのない様々な臓器の役割について知ることができた。

  • 糖尿病専門医による。臓器をいたわれという話。臓器は感覚はないが、それぞれに寿命があるのでそれを意識して、よく噛む、運動する、負担をかけない、休みを作るなど体に対しての当たり前のことを意識した対応を取ると体全体の寿命も延びる。という話をエピジェネティクスまで交えて語る。

  • イマイチ。 タイトルと内容が不一致。
    記憶する臓器のエピソードは面白かったが、「ブラック・ジャック」(手塚治虫)の話を思い出し、それを大林宣彦が映画化しのを思い出し、大林作品の「House」を思い出し、…以下略

  • 臓器にはそれぞれ寿命があり、その時間が尽きてくると病気になる、すなわち、「臓器の時間」の進み方で寿命は決まるので、それを進めないためにはどうすべきかについて、臓器の思考、臓器連関、時空医療といったカテゴリーで解説していく。
    が同時に、医学の枠を超えた著者の幅広い知識と思考の深さに裏打ちされて、臓器に関する論考も更に納得させていくところがすごい。
    医学理論だけでなく、臓器の寿命を延ばすための具体的処方箋、臓器寿命の具体的診断も記されている。

  • わかりやすいように書いてあるようで、わかりにくい本です。医学博士の方が書いてみえますので、専門用語が多いく素人にはピンときません。タイトルから想像する内容とも違いました。個人的には、第二章の”臓器は考える”もしくは”臓器は記憶する”あたりがタイトルだったら、しっくりくるように思いました。若くて健康で長生きしたい人は、読んでみるといいかも?臓器の時間は胎児の時から始まっているようなので、半世紀を生きてしまった私としては、取り返しがつかないことのほうが多かったです。

  • 素人にはエビデンスに基づく裏付けがあるのかないのかは分からないが、専門家なら検証可能そうな表現が何と無く信用できそう。

    本のタイトルと内容が無関係ではないが、タイトルが期待させる内容とも少し違う気がする。

    節制しなきゃなぁ、というモチベーションを高めてくれる本

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著者プロフィール

慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授、医学博士。1957年、京都市生まれ。京都大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。ハーバード大学およびスタンフォード大学医学部博士研究員、京都大学大学院医学研究科助教授などを経て現職。国際高血圧学会副理事長、日本肥満学会理事も務める。専門は内分泌学、高血圧、糖尿病、抗加齢医学。世界ではじめて「メタボリックドミノ」を提唱した。高峰譲吉賞、井村臨床研究賞など受賞多数。著書に『臓器の時間』『「超・長寿」の秘密』など。

「2022年 『いい肥満、悪い肥満』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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