息子がドイツの徴兵制から学んだこと(祥伝社新書)

  • 祥伝社 (2013年12月2日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396113520

息子がドイツの徴兵制から学んだこと(祥伝社新書)の感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災と東電原発の大事故への対応で活躍する自衛隊を見て、サバイバル技術というものをずいぶんと考えさせられた。
    電気ガス水道の整わない環境では、米を炊くことさえままならないひ弱な自分。。

    子供は、韓国やスイスといった出身の徴兵経験のある学生と出会うとやはりその話題になると言う。
    みな一様に、サバイバル技術ーーー何もない場所でも生き延びる力を養う訓練であり、ちょっとハードなキャンプで役に立ったと思う、という返事。
    ピクニックにいった川岸でそのへんのものを集めてちゃちゃっと BBQ をしながら聞く話は説得力があったという。

    そんなこともあって、本書に興味を持った。
    著者はドイツ人男性と結婚してドイツに住まう日本人女性。
    18歳のひとり息子さんの9ヶ月の懲役体験のメモであるが、第一部はドイツの 教育環境やお子さんの教育歴、徴兵制をめぐる環境について一市民の視点で調べたあれこれが書かれており、理解の助けになる。

    第2部がお子さんの兵役訓練についてのメモ。
    かなりアッパーな家庭であり、甘やかして育てたというが知恵があり穏やかかつ冷静な性格の息子さんだ。
    人間的な土台がしっかりしていたからこそ、9ヶ月を全うし大きく成長されたのだろう。

    もっとも興味深いのは 抗命権をそれをささえる文化的社会的基盤についての記述。

    ドイツは地理的条件ゆえに他国との紛争が絶えず、ゆえに国を守る=生活基盤を守るという実感が強いようだ。
    兵士とは制服を着た一般市民であり、たとえ上官の命令であっても、人道的に間違っていると思えば抗弁し、後日裁判に訴えることができる。

    つまりは18歳の子でも独立した一市民としての判断力があるという前提に立っており、また裁判を簡易に起こせる仕組みも整っているらしい。

    翻って日本はどうか?
    日本の教育はいまだに「自己主張を堂々とできる」18歳を育てるにいたらない。
    理由は簡単。
    教員の数が少なくて教室で子供の発言する時間など確保できないからだ。
    それでも専業主婦が当たり前だった時代は、まだ、母親が教室の補助的役割を果たしていたが、今は違う。
    子供が自分の頭で考え発言し、他人の反応をじっくり聴き遂げそれをもとにまた考え言葉を練る、という教育は大学のサークルあたりであるかどうか、といった程度。

    高校を卒業するまで「型にはめる教育」をされてきた子がいきなり間違ってると思ったことにはきちんと抗弁しろ、と言われてもトンチンカンな反応をするだけだ。
    力の前には屈服させられてしまうであろう。

    それゆえ、今の日本で兵役義務を導入しても、また歪んだ軍国主義が広まるリスクが大きく、サバイバル術生活力の育成というメリットなど話にならないくらい危険でしかない。

    ただ、親として、いや一市民として「私はひ弱だ」という自覚は持たなければならない。
    何もできないのだから。
    それを補うにはどうしたらいいか?ということは考えたい。

  • 戦後、日本が情けないほど本当にダメになってしまったのは、文化芸術系の学生が特攻隊で飛び、亡くなってしまったから。

    トルコの国防軍は政府より力があり、国民は徴兵制を神聖視する誇りと伝統がある。若者が成人する為の通過儀礼となり、秩序、規律、清潔、仲間意識を学び、訓練を終えない事には女性も親も結婚相手と認めない風潮がある。若者も兵役に服すのは幸せで満足できる事であると考えている。兵役期間は15ヶ月。最初の三ヶ月は帰宅できないが、家族は訪問できる。

    ドイツ人は小さい頃から自分はこう思う、こう考える、こう感じるという自己判断と表現を訓練され、自己の確立を要求される。

    ドイツ国防軍の訓練を受けられる徴兵検査で、最低基準を満たす健康な体力と精神力を持ち合わせる事が必要になるが、合格率は50%。実際に兵役に行くのは30-40%。

    1983年、「良心的兵役拒否法及び非軍役務法の新秩序の為の法律」が成立し、良心の審査は中止、A4数枚に拒否理由を連ねれば兵役が拒否できるようになった。当初の承認率は85%以上。非軍事役務である民間役務期間は基礎兵役期間より30%延びる。

    1999年、良心的兵役拒否者は兵役従事者を10%上回った。現在では同世代の30%が兵役に従事している。特に、連邦政府がNATOの国際治安支援隊に3,200人の兵士をアフガニスタンやアフリカに派兵してからは急激に兵役拒否者が増加している。

    2002年、義務兵役期間が13ヶ月から9ヶ月に短縮された。

    民間役務の引受先は、カトリック系カリタスDCV、プロテスタント系ディアコニーDW、ドイツ赤十字DRK、労働者福祉団体AWO、パリテート福祉団体DPWV、ユダヤ中央福祉会ZWSTの6NPO。この中で、ホームレス援助、精神障害者・痴呆症患者援助、身体障害者、拒食症問題、母子寮、女性シェルター、独り住い介護食事サービス、幼稚園、若者の活動、孤児院、借金問題、離婚アドバイスなど、地域住民の生活問題と密接なコンタクトを取り、積極的な活動をしている。その他、ドイツ病院協会、ドイツユースホステル協会、環境問題団体、消防活動、自助グループ、外国のNGO、NPOがある。

    民間役務につく若者の70%が社会福祉関係の仕事となる。

    世界では100カ国以上が徴兵制を採用しているが、良心的兵役拒否ができるのは30カ国だけ。

    ドイツ連邦軍では基本的人権である抗命権(国や上官の命令といえども、人道に反する事、限度を超えて間違っているという事に反対する権利。)が認められているが、日本の自衛隊は認められていない。

    日本は抗命権がないから自殺が多かったり、考える力が欠けているとも言える。

    ドイツ人は背中、首、頭の線が一直線に伸びて姿勢が良く、相手の目をしっかりと見て心を開き、礼儀正しく相手の名前を呼んで挨拶をきちんとする。

    ドイツ人はナチスの経験を経て、痛烈に自由と責任、自己管理の大切さを敗戦後の総括の中で自覚した。

    ドイツ人は徹底的に考動する。

    ドイツ人女性はほぼ全員職業教育を受け、なんらかの資格を持ち、社会の中で自立して生きる経済力を持っている。一人で立つ事ができないと、つる草のように相手に絡んで生きていく事になり、詰まるところ上下関係が生まれ、やがては愛や幸福にも限界が生じ、現実の壁に突き当たる。

    ミュンヘンの夏は日本とは異なり、空気はとても乾燥しているが、1日で40度の温度差があるほど暑い寒いが繰り返される。相手を簡単に信用しないメンタリティはこういった自然環境の影響を受けている。

    兵役により人は少年から大人になる。軍隊は自己発見の場である。

    国防軍はドイツ最大の仕事先であり、400種類の職業がある。

    人差し指で「お前が悪い」と人を指さす時、3本の指は自分を指している。

    兵役に行く前の息子はひ弱で太り気味だったが、兵役を終えてからは筋トレも続けて余分な脂肪は全てとれ、健康そのもの。テレビもニュースしか見なくなり、態度、姿勢、話し方、話の内容、考え方もすべて生まれ変わったように壮健で堅実な青年になった。息子自身、「兵役なしでは僕は弱くて男になれなかった」と語っている。


    兵役任務は若者の人間力を強化する基礎訓練となり、この体験をしたかしなかったのかの差は実に大きい。そしてそれが個人の生涯、会社の運命、国の運命に大きく直接関係する。

  • ドイツには選択制の徴兵制度がある。もし徴兵を拒否するなら、同じ期間を福祉系ボランティアなどに携わるのだ。徴兵の厳しい訓練は人生の学びにおいてとても有効なようだ。あまりに条件の違う国同士を比較することはできないが、家庭も学校も、まして企業ですら「人材の教育」などできない日本。どうしたものか?

  • ドイツ人と結婚してミュンヘン在の日本人女性の息子が、徴兵制で軍に行き、基礎訓練を経て兵役を務め上げた裏話。基礎訓練は、山岳部隊で、その内容が細かく出てくる。外国の徴兵での軍の生活がこんなに細かく語られた例はほとんどないといっていいので、貴重な記録。ただし、著者、普段がドイツ語で、プロの作家ではないので、日本語は読みにくいことかなりのもの。プライベートの手紙を読んでるような印象がした。

  • ドイツでは兵役経験者は、「あれで男になった。大人になった。」と意義を見いだしている人が多いらしい。
    内容とは全く無関係だが、著者の日本語は外国語の中で生活しているとこうなるのか、妙な不自然さがある。どこがどういふうに不自然なのか、ドイツ語の影響なのか、分析してみたい、と思った。

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