紅塵 (ノン・ノベル)

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 43
レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396205591

感想・レビュー・書評

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  • 南宋の時代である。この時代の流れは少しわかりにくい。宋の高宗(こうそう)皇帝の時代であり、紹興二十五年(一一五五年)、宋では第10代の天子の頃になる。中国には、大きくは宋と金が争っている時代で、水滸伝の時代と言えばわかりやすい。主人公は抗金の名将、宗の韓世忠の子供である韓子温だ。韓世忠は、中国では岳飛と並ぶ英雄であり、三国志に登場する関羽と同列に並ぶような将軍となる。

    韓世忠や子温の時代は、中華帝国とその周辺はすざまじいほどに鳴動していた。宋・漢族・趙匡胤が建国、金・女真族・完顔阿骨打が建国、遼・契丹族・耶律阿保機が建国、西夏・タングート族・李元昊が建国と、これらの諸民族が、東アジアの大地に治乱と興亡を繰り返していた。なお、女真族は後世に清という王朝を建てる。契丹族はモンゴル系、ツングート族はチベット系である。

    金王朝を暗殺により略奪した完顔亮は、宋に攻め入る。それを亮の弟・完顔雍(よう)は潔しとせず、遂に亮に反旗を掲げ、亮の手から政権を奪う。後の金の世宗皇帝である。雍は逸話の少ない人であった。公人としての義務をなによりも優先させる人であった。したがって、私人としての面白みにかけたのだろう。致し方ないことではあるが。残虐で利己的の天才であった完顔亮の恐怖政治と、堅実で苦労性で自省癖のある雍の面白みの無い政治とを比較した場合、民にとって望む政治はどちらかというと、おしてしるべしであろう。子温は、そんな混乱の中、様々な人間の死にまみえる。生きるということは、自分以外の人間が死んでいくのを見送ることである。本書の題名である”紅塵(こうじん)”とは、乾いた地表から幾億・幾兆の細かい塵が宙天高く舞い上がって、それが落日の光を乱反射させる。ために太陽は人血を塗り固めたかのように深紅の円盤となって沈んでいく。このことを言い、視界がことごとく紅く染まって、天と地との境界が分かつものは黄金色の小波となって揺動する地平線のみとなる。本書を紅塵と名うったのは、この時代が、そんな騒がしい世の中であったということであろう。

    宋と金は争いが絶えなかったが、韓子温と完顔雍の時代で和約が成立し、平和共存状態となり、鉄木真の子孫達に滅ぼされるまで、金は71年、宋は114年の命脈を保つのである。

    本書では時代の流れが追いにくく、ちょっと残念。この時代の分かりにくさが増してしまった・・・

  • 再読。その間に岳飛伝を読んだこともあり、背景事情を踏まえた上で読み直せたのは良かった。しかしこれだけ影の薄い主人公設定も珍しい。

  • 【343】

    岳飛伝の外伝っぽい。岳飛の死後の話し。

  • 十二世紀半ばの中国。宋は、大陸北方に女真族が興した金に敗れ、広大な領土を失い屈辱的な平和条約を強いられた。だが、政変によって金の国王となった完顔亮に、不穏な動きがあることが判明。宋皇帝高宗は、勇武知略の若き文官子温に、金に再侵略の意図があるか探れ、との命を下した。子温は女将軍と異名をとる母梁紅玉と共に金に潜入した…。60万の金軍を迎え撃つ子温と宋の忠臣英傑たち。長江を舞台に繰り広げられる宿命の戦いを、雄壮華麗に描く歴史スペクタクルの傑作。

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著者プロフィール

田中 芳樹(たなか よしき)
1952年、熊本県本渡市(現・天草市)生まれ。学習院大学文学部・国文学科卒業、同大学大学院博士課程(国文学)修了。1978年に李家豊(りのいえ ゆたか)名義で雑誌『幻影城』に応募し、『緑の草原に…』で第三回幻影城新人賞(小説部門)を受賞、作家デビュー。
1982年、田中芳樹名義で、『銀河英雄伝説』シリーズを発表。アニメ化、コミック化、ゲーム化された大人気作品となる。ほか、2017年に完結した『アルスラーン戦記』もアニメ・ゲーム・コミックなど様々なジャンルミックスがなされており、非常に人気が高い。ほか、『創竜伝』などの人気シリーズがある。

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