- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396207083
作品紹介・あらすじ
その島は風車と風鈴に溢れ、余所者には誰も本当のことを話さなかった-作家葛木志保が自宅の鍵を預け失踪した。パートナーの式部剛は、過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り、「夜叉島」という名前に行き着いた。だが、島は明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」だった…。そして、嵐の夜、神社の樹に逆さ磔にされた全裸女性死体が発見されていた…。島民の白い眼と非協力の下、浮上する因習に満ちた孤島連続殺人の真相とは?実力派が満を持して放つ初の本格推理。
感想・レビュー・書評
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『屍鬼』なんかで有名な小野不由美女史の作品。
氏の作品の中ではかなりミステリテイストが濃いものと思われます(他の作品を読んだことがないのですが)。
とは言いつつもしっかり歴史的な背景みたいなところを書き込んでくるのが作者の趣味。タイトルの意味も割と序盤で判ります。
メイントリック的な部分はよくできていましたが、なんとも説明下手な印象。
解決の盛り上がるところで「ん?」と読み直さなくてはならないのはちょっと残念。無論わたくしの読解力不足という可能性もありますが。
他に難癖をつけるなら、動機の部分が少し弱いかな、と感じました。まぁ、これも好み次第でしょう。
全体的に、雰囲気が淡々としているのが物足りなかった。
怪しい島で事件(これ以上ここでは書けないのがもどかしいが)が起きるのだから、もっとおどろおどろしくしてもよかったかな、と。
とは言いつつも、割と楽しめました。4にするか迷いつつの3。
付記。
麻耶の『鴉』にとても似ています。でも別物です。
例えて言うなら、綾辻の『殺人方程式』と法月の『誰彼』くらい違います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
民俗ネタは大好きなので、こういうギミックは嬉しいです。黒祠の島で信じられている表向きの信仰の姿、信仰の正体、そして村人たちが無意識のうちに培っている価値観――パズルのピースのようにかっちりとはまっていて、本当に見事だと思う。ある意味、この本のミステリー部分は殺人事件とその犯人ではなく、民俗信仰のこのスタイルそのものではないかと。犯人をバラす瞬間より、信仰の形が少しずつつまびらかになっていく様にカタルシスを感じましたし、萌えました。小さい頃から自然と信じてきて、不自然なことのはずなのに当然のように受け入れてしまっているってよいですのう。罰を受けているから犯人だ、という逆説がすんなり受け入れられている状況が説得力豊かで、よかったです。
ただ、殺人事件のからくりとその犯人の方は、思い入れがちょっと弱い感じ。犯人との対決軸でないからか、なんでそんなことをしたのか、どんな気持ちでそんなことをしたのか、犯人の内情をもっと掘り下げてくれてもよかったなぁと思います。そして、ラストシーンの美しさに一瞬忘れかけたのですが、罪と罰の帳尻はあれで合ったといえるのだろうか。っていうか浅緋さん放置ですか? お医者さんが一番釈然としないだろうなあ。
読者視点から見れば、殺人に対する対価を殺人者は払いきっていない気がします。殺人事件の謎解きミステリという視点では、不完全燃焼さがありました。
あと、TRPG的視点から見た場合。
出だしの島民がみんな情報を出してくれないところとか、宿屋のさりげない妨害ぶりとか、前日と態度を次々と変えていく病院やフェリーの人や――シチュエーションからするとゲーム的に結構そそるのですが、同じ事をしたら、きっとセッションがだれるだろうなぁ……。式部さんは見事に突破口を見つけて、次へ次へと情報収集を続けていましたが、あそこまで八方塞がりの状況は、マスターとしてやってみたいシチュエーションでありながら、実際やったら取り返しがつかなくなるだろう事が容易に連想できるシチュではありました。
ただ、情報収集をしていたら、しょっぱなから死体を見つけるというシーンの転換は面白いと思う。何かに使えないかなー。 -
昔読んで、犯人だけ覚えているけどその他は一つも覚えてないという最悪の覚え方してた本。
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探偵事務所の調査員・式部剛の仕事仲間である葛木志保が失踪した。彼女の消息を追って式部が辿り着いたのは、風車と風鈴に彩られた奇妙な島だった。
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小野不由美を読みました。
実力派が満を持して放つ初の本格推理!
この一行を考慮。
島、鬼、蔵の窓から簪、これは孤島の鬼です。
推理小説のセオリーでいうところチェック
犯人が冒頭から全然でてきてなかった様な。
出てきたときは、鬼探偵に吊るされリンチにあっています。不完全探偵物語。
なんか違うと思いませんか?
本格推理小説にあらずどーん。
次いってみよう。
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小説
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いつも調査を依頼する作家の葛木志保が失踪した。残された手がかりからようやく夜叉島と言われる島を探しだした。しかしその島はかたくなに島外者を拒むところだった。そして独自の信仰、独自の神社を持っていた。それが黒祠の島。そこで何が起きたのか、式部は島の秘密を捜し求める。
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土着の宗教を信じている、独特な雰囲気の島。宗教に関する解説がどっさり。
「私が裁定者」という人が出てきて、一気に解決ってのは、趣は違うが水戸黄門のようだった。 -
罰が下ったのだから罪があったのだろう、っていう考え方は面白いなぁと思った。完全に原因と結果が逆なんだけどそれがまかり通るのが因習というものか?結果式部さんは因習に負けた感じか。
しかしこの作品は推理モノでは無いかもしれない。ホラー臭強すぎ怖い怖い。 -
2014.02.16
人間関係はかなり複雑で関係を整理するのが大変ですが、これだけ長い小説をイッキに読ませる文章力はさすが。
私は推理小説好きのくせに関係図や建物の俯瞰図などが無いとなかなかトリックやロジックを理解できないタイプなので推理はできずにただ流れを読むだけなのですが、小野さん独特の背筋がゾワリとする文章でもかなり楽しませてもらいました。そして最後は頭が更にこんがらがりましたw
この閉鎖的な島の感じといい、異常なしきたりといい『屍鬼』にも通じるものがあるなと感じました。
小野さんの小説は重く読み応えがあってしっかりとまとまっていて隙がなく、大好きです。 -
式部と一緒にあーでもないこーでもないと考えながら読みました。じわじわ怖さが身につたってくる感じがします。
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その島は風車と風鈴に溢れ、余所者には誰も本当のことを話さなかった――作家葛木志保が自宅の鍵を預け失踪した。パートナーの式部剛は、過去を切り捨てたような彼女の履歴を辿り、「夜叉島」という名前に行き着いた。だが、しは明治以来の国家神道から外れた「黒祠の島」だった…。そして、嵐の夜、神社の樹に逆さ磔にされた全裸女性死体が発見されていた…。島民の白い眼と非協力の下、浮上する因習に満ちた孤島連続殺人の真相とは?
実力派が満を持して放つ初の本格推理! -
ホラーだと思ったらミステリだったと思ったらやっぱりホラーだった。小野先生はやっぱりホラー好きなんだなあと感じた作品。
殺人事件の謎解きよりも民俗学的な云々やら五行思想の云々とか中国古代の想像上の獣が云々が面白かった。 -
最後のナゾ解きが何となく駆け足感があったような。浅緋さんがまさかの式部さんを差し置いて真実を全て把握していて万能すぎて吃驚です。この後、島はどうなるのかな。