完訳 紫禁城の黄昏(下) (祥伝社黄金文庫)

制作 : 渡部 昇一  渡部 昇一  中山 理 
  • 祥伝社
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レビュー : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396314699

感想・レビュー・書評

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  • 岩波書店が省略した第16章は、参考となる箇所が多い。下巻の印象的な記述を記す。
    「一般大衆の意見は、当時のシナの多くの地域で人々が共和国に幻滅しきっていたことは間違いない。共和国はよいことを山ほど約束しておきながら、貧困以外は、ほとんど何ももたらさなかったからだ」
    「増税したことと官吏が腐敗したことにより、国民は満州朝廷の復帰を望むようになっている。満州朝廷も悪かったけれども、共和国はその十倍も悪いと人々は思っている。満州王朝を恋しがる声は人里離れた辺鄙なところで聞こえるだけでなく、他の地方でも満州朝廷を未だに望んでいるのである」
    「満州は清室の古い故郷であった。その後は、独自の言語と風習を持つ独立民族としての満州族が徐々に姿を消しつつあったにもかかわらず、満州地方には、漢人、蒙古人、満州人、そして数多くの混血民族など、王朝に忠誠を尽くす人々がすこぶる大勢いた。だからこそ満州は、革命で積極的な役割を全く演じなかったのである」
    「満州は事実上、蒙古は理論上、シナの共和国の一部となり、1919年には、共和国制度がそのまま満州まで拡張され、行政機構を支配するようになっていたのである」
    「遅かれ早かれ、日本が満州の地で二度も戦争をして獲得した莫大な権益を、シナの侵略から守るために、積極的な行動に出ざるを得なくなる日が必ず訪れると確信する者は大勢いた。日本と中華民国が抗争すれば、自分たちが待ち望む好機が訪れるだろうと君主制主義者は考えていた」
    「シナは満州人を異民族、すなわち「夷族」であると宣言し、その根拠にもとづいて、満州人を王座から追放した」
    「張作霖は君主制を復古しようと企んでいるが、その意図は翌年の秋に奉天で若い皇帝を帝位に就かせ、同時に日本の保護下で満州を独立国として宣言することだ。...もし張作霖がライバルの呉佩孚(ごはいふ)の勢力との争いで敗れるようなことがあれば、張の「国家の政治活動で果たす役割は終わることになるだろうし、そうなれば唯一の逃げ道は、日本の保護下で満州を独立させることしかないのである。...シナで共和主義を試してみたものの、蓋を開けてみれば能なしだとわかったということだ。シナの国土の屋台骨である商人階級や中流上層階級は、内輪争いにうんざりしている。どのような形にせよ、十八省に平和を保障する政府なら、人々は諸手を挙げて支持すると信じて疑わない」
    「復辟運動の重大な障害となる人物は、段祺瑞将軍と南西地方の一部の指導者だけであり、現大総統の徐世昌(じょせいしょう)と前大総統の馮国璋(ひょうこくしょう)でさえ、今の国家の不安定な政治体制や外部からの脅威を考慮に入れ、強い反対や不満もなく君主制復古を受け入れる傾向にある。... すなわちシナは「中華民国」ではなく、「中華帝国」という名称で世界に知られることになろう。シナ政府の形態は大英帝国をモデルとし、名目上の国王か皇帝の下で「立憲君主制」となるだろう」
    「粛親王と前総督の升允(しょういん)が掲げた政策の目的は、シナで満州王朝を復古することである。しかし、もしこれができなければ、満州の君主制主義者たちは「満州人のための満州を」と叫びながら、まず手始めに奉天で、衰退に向かっている満州王国を再建することに望みを託すだろう」
    「ここで興味深いのは、共和国の首都の街角で皇室が仰々しく威厳を誇示しても、大総統や政府がまったく憤慨しないということだった(北京の大衆もしかり)」
    「前皇帝の宣統帝が行った行為が、現地の新聞や一般国民に歓迎されている。宣統帝は、今日の非常に数少ない進歩的な満州皇族の一人として、歓呼で迎えられているのだ。もし宣統帝が、30年か40年前にお生まれになっていたら、おそらく中華民国は誕生していなかっただろう」
    「それよりも深刻なのは、シナの新聞やその他のいたるところで、次のような容疑で日本が執拗なまでに告発されていることである。すなわち日本公使館が皇帝を受け入れたのは、日本の「帝国主義」の狡猾な策略の結果であり、彼らは皇帝がやがて高度な政治の駆け引きのゲームで有力な人質となりうることを見越していたからだ、と。日本公使は、私本人が知らせるまで、皇帝が公使館区域に到着することを何も知らなかったのである。また私本人が熱心に懇願したからこそ、公使は皇帝を日本公使館内で手厚く保護することに同意したのである。したがって、日本の「帝国主義」は「龍の飛翔」とは何の関係もなかったのである」
    「日本の租借地である満州の関東州に皇帝がいては、日本政府が「ひどく困惑する」ことになるという旨を、私を通して、間接的に皇帝に伝えた程である」
    「皇帝は、いつかシナが正気に戻り、万事がうまく運ぶだろうという希望を抱きつづけていたのである」
    「シナ人は、日本人が皇帝を誘拐し、その意思に反して連れ去ったように見せかけようと躍起になっていた。その誘拐説はヨーロッパ人の間でも広く流布していて、それを信じる者も大勢いた。だが、それは真っ赤な嘘である。また最近、皇帝と皇后が南京の蒋介石と北京の張学良に電報を打ち、「当然彼らに忠誠心があると仮定して、避難所を要求した」という旨の途方もない所見が発表されたが、これも同じく嘘である。さらに皇帝が「満州の国王になるくらいなら、自害すると皇后と約束をしていた」という主張も同じである。...皇帝は本人の自由意志で天津を去り満州へ向かったのであり、その旅の忠実な道づれは鄭孝胥(現在の国務総理)と息子の鄭垂だけであった」

  • 下巻は帝師に就任した1919年以降の出来事や帝師につくことで初めて目にする皇帝の宮殿や皇帝のお人柄、そして1924年のクーデターによる紫禁城からの追放とその後までが書かれている。
    本書は渡部昇一氏が日本と清または中華民国との外交関係について第三者の立場で客観的に記録され第一級の史料と指摘してたことから手にしたもの。当然、それら主題ではないため多くの文面が割かれているわけではないが、当たり前のようにロシアの脅威が前提として記されており、当時の認識をうかがい知ることができるものだ。岩波書店版では該当箇所が削除されているという点も何か示唆するものあるようだ。

  • 「紫禁城の黄昏(下)」R.F.ジョンストン/中山理 訳
    第一級の近代中国史料。
    完訳・文庫版。

    読了。(4)

  • 2009/2/4購入

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