京都カフェ散歩―喫茶都市をめぐる (祥伝社黄金文庫 か 17-1)

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 33
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396314965

感想・レビュー・書評

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  • 京都にあるカフェや喫茶店をむさぼり読める本。

    自分としては、六曜社が雰囲気的にも味的にも好きでした。
    普通にカフェに行っては知りえないエピソードが分かって面白い。

  • 京都に美味しい珈琲とケーキでお茶しに行きたい欲がむくむく湧く。
    良い珈琲の香りが本の間から漂ってくるように思えた。
    ステキなカフェで飲食すると満たされた感が強いのは、雰囲気もごちそうだからだろうな、と思える一冊。

  • 話が面白くて、写真が綺麗。
    だいたい京都自体が綺麗なので絵になる。

    京都という憧れになる街を
    カフェという敷居が割と低いくつろぎの場を
    テーマに色々書いていて読んでいて面白い。

  •  「すいませぇん。いっぱいなんですぅ」

     いつのことだっただろう。六曜社地下店を初めて訪れたときだ。河原町三条の交差点から文字通り地下へ降りる階段を降り切ると、もうそこは“店”だった。マスターと思しき人からそう断られた。
     なぜだろう、
     「なんだ、満席かよ」
     とは思わずに、
     「そうか、じゃあひと廻りした後でまた来てみるか」
     自然にそう思った。
     カウンターの向こう側にすっくと立ったその人の姿と物腰は、足を踏み入れた瞬間にもう私を虜にしていた。
     小一時間後に席を得た。柔らかな京ことば、いつもなら無遠慮なはずがなぜだかここでは密やかな東京弁、パソコンを打つ白人、本を読む学生。もちろん一杯のコーヒー。この店に充満するすべてが好ましい。そしてその人は、終始同じ様子で立ち続け、ネルのドリッパーに丁寧にお湯を注ぎ続けていた。これが私の、京都カフェ原体験である。その人が伝説の奥野修マスターだとはそのときは全く知らなかった。

     東京の本屋を歩いていて、いつものように「おや」と思った。手にとるとまさにその日に発行されたばかりの本だった。件の六曜社地下店も進々堂もイノダ本店も当然のごとく紹介されている。たかがガイドブックだが一応買っておくかぐらいの、見くびった気分で購入したのだが、一読してその不遜な気分は叩きのめされた。

     Web情報全盛の今日、ガイドブックの類も薄く軽い。旅に関するものでも店に関するものでも、「検索」可能な情報は羅列されているけれども、歴史や文化についてまで詳しく書かれたものは姿を消している。ましてや街や店を構成する人の人なりや人生にまで踏み込んだ記述には近頃お目にかかることがない。
     本書では、まずオーナーやマスターの人となりと人生を通じてお店の歴史が語られる。創業者が戦地ラバウルでコーヒー栽培に携わったのがきっかけで始まった小川珈琲。フランソワ喫茶室は有形文化財となった建物が観光客に人気の店だが、本書では先代が反戦派の知識人を支援したかどで治安維持法違反に問われ投獄された経緯から語られている。また、紹介されている名店の多くのオーナーが、熟練の珈琲作り職人であるばかりでなく、ミュージシャンなどの文化人である例が多いこともまた、この街とこの街のカフェ文化の彩りであることが本書を読めばよくわかる。

     この本の魅力はふたつあると思う。
     ひとつは、じっくり話し込んだインタビューに基づいているとこと。もうひとつは、著者自身の撮影による写真である。そのどちらにもインド育ちのカフェ評論家である著者の姿勢が読み取れる。
     1枚残らずが素晴らしい写真である。特徴は陰があること。撮影技術的に言えば、大口径レンズとスローシャッターを用いストロボを使っていない。限られたポイントにのみ焦点が当たり、そのポイント以外はだんだんとぼやけて美しい背景となって映るのもこの手法の特徴だ。
     光を当て得るもの描き得るものには限りがあること、それ以外のところに無限の深みとしての陰があるのだという、対象に向かう傲慢ではない真摯な姿勢が表れた手法である。
     無遠慮なストロボの閃光は静かで落ち着いた空気を突き破るものでもある。相手との丁寧な会話やその場の雰囲気を尊重する著者が、最初から意図的にその撮影手法を用いたのか、あるいは結果的にそういう空気を重んじる手法に行き着いたのかには興味があるところだ。暗がりの多い古都京都のカフェを写すのに、相応しい写し方になっている。いずれにせよ、カフェは文化であり、文化の担い手は人であり、その目の前の人の人生こそが歴史なのだと訴えるような、著者の丁寧で真摯な書き方と写し方には感銘さえ覚える。

     初めて六曜社地下店に行った時のことを思い出した。
     交わした言葉は二言三言に過ぎなかった。マスターはカウンターに立ち続け、ただ珈琲を出し続けていた。それなのに私を魅了し、いまでも惹きつけて止まない魅力は何だったのか、読後の今はわかる気がする。

     喫茶店業にかぎった話でなく、いかなる“業”も、営む者が凛とした矜持を持って立ち続けるならばもはや文化と言っていい。奥野マスターの立ち姿を思い起こしてそう思う。

     喫茶都市京都のカフェ文化を形成する無数の物語。
     珠玉の文と写真でそれを紹介したガイドブックです。
     名著だと思います。

  • いくつか行ってみようかなーと思った。ただ、家に近いところがあんまないけど…

  • 読み物として良い。
    お店の歴史、店主さんの人となりとゆーか。
    オオヤさんと奥野さんの対談が嬉し。

  • 去年京都に行った際思わず買っちゃった本
    たーくさん出てるどんなカフェ本より素敵に書いてあります
    京都にはカラフルな本は似合わない
    この本のような地味な色合いのひっそりな本が似合う

    これ見て
    「月と六ペンス」行きました

    っとこの本は我がサークルの先輩、
    りえさんが携わってるとか!素敵だな!

  • この本に出ているところ、周りながら読んでます

  • 喫茶店の似合う街、京都。

  • 京都市内のカフェや喫茶店を紹介した一冊です。
    けれど、ただ場所やメニューを紹介しているだけではありません。
    (寧ろメニューの紹介は少ない。)
    コーヒーの入れ方や道具、お店の歴史、京都におけるカフェ・喫茶店界の歴史にまで言及しています。けれど、決して難しい内容ではありません。さらっと読めてしまいます。
    私も早速紹介されている喫茶店に行って来ました。凄く心地よい空間で、のんびりと美味しいコーヒーを楽しむことが出来ました。
    京都にいらっしゃってぽっかりと自由時間が出来たときになど、ちょっと行ってみようかな、其処のお店で時間をつかってもいいなと思えるようなお店ばかりです。スタバやドトールも手軽でいいかもしれませんが、京都でしか行けないお店を覗くのもいいかもしれませんよ。

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著者プロフィール

ライター、喫茶写真家。全国2000軒以上のカフェや喫茶店を訪れてきた経験をもとに、
多様なメディアでその魅力を発信し続けている。
著書に『東京 古民家カフェ日和』『京都 古民家カフェ日和』(ともに世界文化社)、
『喫茶人かく語りき』(実業之日本社)、『名古屋カフェ散歩』(祥伝社)他多数。

「2022年 『金沢 古民家カフェ日和』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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