- Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396325794
作品紹介・あらすじ
都内のマンションでOL殺される。死者の胃から現われたメッセージ。小さな鍵が秘めた謎とは!?探偵法月綸太郎が出馬した矢先、容疑者は京都で死体となって発見、そして鍵の正体が明らかになるにつれ、名探偵を翻弄する迷宮の扉が開いた…。
感想・レビュー・書評
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ボタンの掛け違えをゆったりとしたペースで読ませてくれる作品。一の悲劇よりもツッコミ所も少なくなり、すんなりと読み進められた。
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実に興味深い設定だった。作者自身が探偵役となって物語の主人公を演じるシリーズの根底を揺るがすようなお話だった。
清原奈津美は正しく法月綸太郎である。
彼は自分の存在意義を一度は否定し、虚構の中で踊る道化師までに貶めし、だがそこから見事復活してみせた。
しかしそれでもなお、彼は本格探偵小説の明日を見出してはいないだろう。
そう、この中で何度も作者が云っている「物語は終わらない」ように、このジレンマもまた終わらないのだ。 -
法月綸太郎シリーズ7作目。
各章の冒頭に荒井由実(現松任谷由実)の「卒業写真」の歌詞の一部が掲載されている。
物語にどんな関わりがあるのか、この歌にどんな意味があるのか。
読み終わってから初めてその理由がわかってくる。
物語は「君」と高校時代の同級生・葛見百合子が偶然に京都で再会したことから始まる。
高校時代にあまり目立たなかった存在の彼女を、「君」は迷いなく「葛見さん」と呼ぶ。
実は彼女は葛見百合子ではなく、その友人の清原奈津美なのだけれどなかなか「君」の誤解を解くことができない。
奈津美は揺れ動く心情を、ずっと日記に書き続けていた。
この日記こそが、事件を解く鍵となるのだけれど、その解明までに捜査は二転三転していく。
勘違いというには悲しすぎる結末だった。
そして、最後に明かされた真実もまた、辛く悲しいものだった。
「君」にとっても、百合子や奈津美にとっても、ほんの少し本当のことを話す努力をしていたら事件は起きていなかったように思う。
「君」が最後の最後までこだわったことは、それほどまでに重要なことだったのか。
すべては「君」の中にある身勝手なこだわりが引き起こしたことではなかったのか。
虚構のうえに積み上げられた感情だったとしても、現実を受け入れる勇気さえ持てば違った結末になっただろうに。
推理の過程で、事件の様相は二転三転していく。
そのたびに「えっそうだったの?」と驚き、著者の思惑通りに翻弄される。
そこが心地よくもあり、悔しくもあった。 -
顔を焼かれた女性の遺体と容疑者とその周囲の人間関係をめぐる謎を追う展開は冗長に感じた。情報がめまぐるしく更新されるクライマックスの盛り上がりと、反復される構図で尖らせたやるせなさが良かったです。
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短編で読んでしまっていたので特に驚きはなかった。ただあらすじを知っていても最後までさくさく読めた、こちらを先に読みたかった。もったいない。
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読みにくい。段落って大事だね。私には合わない作品だった。
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「きみ」という二人称で語りかける部分がところどころに挿入されている二の悲劇ですが、その挿入部分がものすごく読みにくくて参りました。実際ラストまで行ってしまうとそれも伏線だったり大事な部分だったりするわけでしたが読みにくかったのでついつい斜めに読んでしまったのが残念です。ストーリーは切ないラブストーリーに絡んだものですが、綸太郎は推理を披露しては覆され、を繰り返していていつもの調子で、長編にしてはあっさりとした印象を受けました。決して悪いわけではないのですが、読み応えは前の長編の方があった気がします。