私の長い読書生活で、これほどうんざりする読書があっただろうか。
上巻とは違い暴力シーンがなくなったけど、延々と続く性行為と、一人がたりの哲学問答。
ああ、うんざり。
イクオが歌舞伎町で出会った人たちは、一癖も二癖もある背景を背負った人たちなのに、男はみんな人生哲学を語り、女はみんなイクオの手管にメロメロ。
だから、どれだけ登場人物が変わっても同じことの繰り返し。
イクオが人として成長するなんてことはない。
だって、イクオの心の中にはイクオしかいない。
誰もイクオの心に爪痕を残してはいないから、結局キャラクターの使い捨てだよね。
肝心のイクオの哲学とは、人は見た目が10割ってこと。
人とは思えない醜い容姿の則江に対する嫌悪はともかく、憐憫って、イクオ何様だ?
ひとつも取り柄がないと言い切っているけれど、少なくとも則江は文芸雑誌の副編集長ではあるのだ。
でも、そんなもの、男の前では何者でもないと切り捨てる。
連れて歩いてはずかしくない容姿で、金払いがよくて、男のワガママを聞いてくれる女がいい女だと。
要は、男に都合のいい女でなければ存在価値がないってこと。
容姿が悪いというだけで、そこまで人格を否定され、尊厳を踏みにじられなければならないのか。
今時、こんな小説がまかり通ることに驚愕。(ってほど驚いていないけど、嫌悪感はぬぐえない)
上下巻合わせて1100ページ以上。
で、イクオが小説を書き始めるのは1000ページを超えてから。
しかも、残り100ページのメインはイクオではなく則江だ。
物語の最後は、広げ過ぎた風呂敷をたたむことができなくて、しょうがなしに登場人物を皆殺しにする作家志望のあるあるってやつですか?
いや、皆殺しはしてないけれども。
でも、則江の心は確かに死んだよね。