- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396328665
感想・レビュー・書評
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千人同心や甲府城の攻防が克明に・・・。</p>
<p>ヒーロー『土方歳三』が大活躍。</p>
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幕末物は物凄い久しぶり。
歴史好きとは言え、幕末や戦国は入門編みたいな感じだから、20歳前後にかなり読んだきりのご無沙汰だった。
幕末では新撰組が一番好きなので、新撰組ものは結構読んだ。その中でも土方歳三が特別好きで、今回も本屋で見かけてタイトルにまず惹かれ、内容を見て、私の知らない甲府城攻略の話しと知ってすぐに購入。
話しは戊辰戦争の最中、甲府城を死守すべく、新撰組が甲陽鎮部隊として中心になって甲府を目指すも、いち早く官軍に奪取され、勝沼周辺で官軍と戦う事になる柏尾の戦いがクライマックスとなっている。
新撰組や土方歳三の有名な京都での活躍からではなく、敗色濃い鳥羽伏見の戦いから物語は始まっている。
作者は甲府出身で、郷土史を調べているうちに、新撰組の最後の戦いが地元で行われた事を知り、近年の甲府城の天守閣問題と復元などの出来事をきっかけに書き下ろした。
新撰組の京都での行動は、有名過ぎると言うか皆が知りすぎているし、幕末物には必ず登場する場面だし、色んな作家に散々書かれている部分でもあるので、甲州での戦いに至るまでの過程の上での鳥羽伏見からの始まりは、実にその後の出来事や行動を理解するのに功を奏していると思った。
この甲府城の成り立ちが語られる場面は実に興味深かった。
そして、甲府城の存在の重要性。
ここら辺は歴史好きにはたまらないと思う。
新撰組がどうしてこの甲府城攻略の戦いに参加するようになったのかが実によくわかったし、また土方歳三の生き方、人生観、戦い様等、やっぱり歳三どんや〜、って改めて敬慕してしまった。
話し自体は、新撰組が衰退していく時期の話しだし、古い戦法の新撰組を始めとする幕軍と近代兵器を装備した官軍との攻防は何ともはや辛いものがあったけれど、幕軍が敗退したのは武器が古かった事だけではなく、しかもどの戦でも新撰組自体は
よく攻めていたし、場合によっては勝っていてもおかしくないくらいだった。
でも、あらゆる面で時が官軍に味方したとしか言い様が無い感じがした。
後半は甲府へ向かう道すがらの様子が描かれているのだが、近藤勇は悲しいくらいに呑気だった。急いで迎えば官軍よりも先に甲府城に入城できた筈なのに、行く道は甲州街道で、その沿道は新撰組発祥の地でもあるせいか、故郷に錦を飾るような意識にとらわれて進軍がかなり遅れた。この辺の件りを読んでる読者はイライラするだろう。
終わり近くで、この戦いで散っていった最後の入隊者である池田七之助の死に様の場面では、泣けてしまった。
大きな感動と言うよりも、じわじわと感情の波が立ち上がりながら、最後には何とも言えない感慨と感動をそれとなく残して立ち去って行くような、そんな
感じの作品かな。幕末の新たな側面を見せてくれた良作と言える。