下山事件完全版: 最後の証言 (祥伝社文庫 し 8-3)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (602ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396333669

感想・レビュー・書評

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  • 日本の黒い霧を読み進めているが、上巻ではこれと、ゾルゲ事件が興味深い。
    GHQは本当にロクなことをしていないということが、よくわかる黒い霧上下巻となりそうだ。
    これがらみで、何冊書物を買うことになるのだろうか。

  •  究明に至らず未解決のまま真相が闇に葬られた国鉄三大事件と呼ばれる事件があった。

     無人列車が暴走して線路脇の商店街に突っ込み死傷者をだした三鷹事件、
     夜間にレールが外され通過中の列車が脱線転覆し乗務員三人が死亡した松川事件、
     失踪した初代国鉄総裁下川定則が翌朝に轢死体となって発見された下川事件である。

     ある日、著者が親族との宴会の席で酔った大叔母が、兄は下川事件に関わってかもしれないと口走った。
     下川事件のことを全く知らない著者は、事件について調べていく。
     
     三越百貨店に運転手を待たせて入店した下山総裁は行方不明となり、翌朝常磐線の北千住綾瀬間で轢死体として発見された。
     自殺説、他殺説入り乱れて捜査が進むも、下山総裁は自殺したとされ一方的に操作は打ち切られた。

     調べるほどに他殺を裏付ける数々の状況証拠の先に、アジア産業があった。
     そこはGHQ、政治家、右翼など戦後日本のキーマンたちが秘密裏に集まるライカビル四階に、その会社は存在した。

     GHQとCIAの対立、国鉄利権、反共政策、全ての線の交点に下山総裁は立っていた。
     真実は明かされることはなく、これも数ある解の一つに過ぎない。
     しかし、真実に迫る実体感がある。戦後日本の国の成り立ちの裏が垣間見える。

  • 全く違う立場からの検証で、資料が信じられる

  • 「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、この本を読んでまさにそう思った。どんな推理小説よりも謎めいていて、また圧倒的に面白い。乱歩も横溝もこんな面白い作品は書けないだろう。むろん、ノンフィクションとはいえ著者の主観も入っているから、すべてが「事実」だとは思わない。著者の親族にインタヴュウしているので、そういった点も差し引いて考える必要はあるであろう。ただ、それでもやはり絶対的に面白く、また「途轍もない」作品であることには変わりはない。昔から未解決事件について関心はあったが、これほど深い闇が広がっているとは思いもよらなかった。キイ・パーソンを挙げてみても、一般に名前を知られているだけでも佐藤榮作や岸信介といった首相経験者や、笹川良一や児玉誉士夫といった大物がつぎつぎに浮上してきて、しかも相互になんらかの形でかかわりを持っている。よく知られた日本共産党やGHQといった陰謀説に加え、南満洲鐵道までかかわってきて、もうとにかく圧倒される。あまりにもスケールが大きいのだ。こういう戦いに挑んでゆく著者の姿勢もすばらしいが、それをひとつの物語として整理してゆくことがどれだけ大変なことであろう。自殺説、他殺説、陰謀説、替え玉説、言及されるそれぞれの内容じたいにも興味は持ったが、あえて結論は濁して書いてあり、また、矢板玄氏に対してすべてを訊けたわけでもなさそうだ。そういった部分での消化不良感はあるが、しかしそれも気にならないくなるぐらいのクオリティがあるので、とにかく読ませる作品になっている。読み終えたあとも、事件のことを調べずにはいられなくなる。わたしもまた「下山病患者」なのかもしれない。

  • 身内のルポ
    ちょっと合わなくて最後まで読み切れませんでした(>_<)

  • 戦後の動乱冷めやらぬ時期、「松川事件」「三鷹事件」と共に国鉄の3大事件と呼ばれる謎多き事件。いつかは読みたいと思い続けていた「下山事件」のノンフィクション。

    昭和24年7月、GHQの占領下にあった日本で、国鉄総裁だった下山定則が轢死体で発見された「下山事件」。自殺説、GHQ、CIAの陰謀説、大量馘首に端を発した労働組合による殺人、ソ連による暗殺説など様々な説が取りざたされながら、今も真相は闇の中に沈み、関係者もほとんどが鬼籍に入っている。
    筆者は、事件にかかわったかもしれない男の孫として、貴重な親族の証言を得ながら、これまでのジャーナリストとは違った切り口で事件を検証していく。

    一人の男が殺されたというだけに留まらない、重く、深く、暗い事情が目の前に示されるとき、自分の暮らす国のこれほどの闇を知ることへの躊躇に何度か挫折しかかった。
    好奇心だけでは言い表せない何かに突き動かされ最後まで読んでみたけれど、やはり真相はいまだ霧の中。ん~はっきりしない。当時、関わった数々の人物が、不審死を遂げた事実を思うと、すべてを明らかにするのは筆者とて危険なのかしら?

    国を動かしているのは誰だろう?という素朴な疑問が消えない。同じ思いをグリコ森永事件のノンフィクションを読んだ時にも感じたのを思い出した。
    警察の捜査はもちろん、政治家をも操る右翼やフィクサーと呼ばれる存在。GHQによる占領が終わると、経済によるある意味軍隊なき占領があり、では現在は?

    関東軍、満鉄、国鉄に群がる利権、国鉄民営化構想・・・下山という一人の男の死を突き詰めていくと、戦前にまで行き着くという闇の深さに愕然とする。
    そして、それは今に至るも大きくは変わっていないのかもしれない。国を動かしている力を本当には知らないんだな~と思い、知らない方が幸せなのかもしれないとしみじみ感じた読後でした。

  • 関係者の血縁者による、ルポタージュ。
    自分が犯人の身内ではないかというところから始まるのがとてもキャッチーです。

    未解決事件のノンフィクションだから当たり前ですが
    、膨大な資料により、仮説立てをしても当然のことながら犯人を明示しません。

    ちょっと残念。。

  • 事件関係者が親族にいるというだけで、この手の本を書くのには反則気味ですね。(^^;
    何があったか程度に事件を知っている身にしては、隠されていた真相が明らかになってゆくくだりも、「そんなことがあったんだぁ」ぐらいの感想で、内容の貴重さを感じられなかったのが残念です。(^^;
    ちょっと、もったいぶったような部分とか、インタビュー時の状況を示した部分など、主題からちょっとだけずれている文章が、事実を系統立って把握するのを妨げている気がするのが、残念です。
    まぁ、なんてぇか、「下山事件」(森達也)も持っている身としては、こっちを先に読んでおいて良かったなぁと思った事です。
    インタビュアなんて、結構自分に都合がよいようにフィルタをかけて話を聞くもんだからね。(^^;

  • 「下山事件に自分の祖父が関与していたかもしれない」

    事件には特に興味も知識もなかった筆者が、「大好きだった祖父のルーツ」を辿りつつ事件の真相に迫るドキュメンタリー。
    面白い、興味深い、が、長い……。

  • 「下山事件」やっと読了しました。

    本当にノンフィクションなのか!?小説をはるかに凌駕するシナリオでした。日本とGHQの表裏の重鎮が頻繁に出入りする「亜細亜産業」の存在に、市役所に名前を尋ねただけで市長直々が対応する「矢板玄」の存在、ぐっと読み入りました。

    さて、実行犯は「亜細亜産業」の一部人間+αであることが本書でほぼ明らかにされるも主犯は誰なのか?本書では「X某」と書かれておりよくわからない。明確な説明は
    ・亜細亜産業に頻繁に出入りをしていた
    ・G2(ウィロビー、キャノン)とも密接に交流していた
    ・下山総裁を「裏切者」と呼び、憎んでいた
    ・小千谷発電所やその他の公共工事の中止で莫大な損失を被った(東芝が落札すれば、その利益を得ることができた筈であった)
    ・松川事件の関与も疑われた

    本書を何度を読み返すもよくわからず、ネットで調べてもよくわからずであった。
    ネットでは”S”、”T”、”M”当たりの名前が挙がっていた。

    悩み悩むもこう考えてみた。
    亜細亜産業に出入りする吉田茂やG2とつながりのある主要人物(達)が間接的に執行を促し、「亜細亜産業」の一部人間+αがそれを実行した。「誰か」が直接的に命令したのではなかった可能性もある。本書を読む限りだとそれらに一番密接してそうなのは”S”ではないだろうか。
    (う~ん、完全な直感でわからない、すみませんっ。)

  • 戦後史上最大の謎といわれる「下山事件」。その実行犯は自分の祖父なのではないか? という疑問から始まる、とてもスリリングなレポでした。吉田茂、白洲次郎、伊藤律などなど、聞いたことのある人物の名前が次々と絡んできて面白かった。
    自殺か他殺かも意見が別れるなか、最後の証人・柳井乃武夫が、「"自殺説"というのはまったく考えられない。線路上の轢死体を我々はマグロと言うんですがね。運転士には本当に迷惑な話なんです。それを運転士の親方の、運転屋で一生暮らしてきた下山総裁が自ら飛び込んでマグロになるなんて、絶対にあり得ないんです。当時の国鉄内部の空気としてはそうでしたね」と証言したというのは、泣ける。


  • 戦後史最大の謎、下山事件を扱ったノンフィクション。
    著者の祖父が、戦中は陸軍、戦後はGHQの特務機関員であったと。
    また、下山事件に大きく関わる亜細亜産業にいたという。
    下山本の類はそんなに読んだことがなかったけど、これは実に読み応えのある一冊でした。
    昭和史の事件を知ると実に、色々なものが見えて来るな。
    満州から帰ってきて国鉄で働いていた、自分の爺さんを思い出す。

  • 戦後の未解決事件としてあまりに有名だが、こうして詳しく内容を知ると、ますます興味深い。著者の祖父が本事件に深く関わったかも知れないことから進められる取材は、身内や核心に近い人物から情報を引き出すのに有利だったようだ。矢板玄氏への取材は緊張感と安心感があった。桜田会、M資金、松川事件・三鷹事件など戦後の暗闇が目前に姿を現した。下川総裁を殺すことで誰が得をするのか? という視点で読み進めたが、誰が損をするのかということで説明できそうだ。いずれにしても真実を知り得る人々は鬼籍に入り、解明の手段はもうない……

  • どんな事件なのかも知らずに読み始めてしまい、
    第一次世界大戦やら第二次世界大戦、ポツダム宣言、GHQM資金といろいろと勉強しながら読んだ。難しかった…
    誰が、何のために殺したのか?は はっきりはしなかったけど、大勢の欲が一部の正義とぶつかってしまった事件なのかなぁ~と…
    なんだか、昭和ってすごい時代ったった気がします。
    こんなに勉強したのは久しぶりで楽しかった。

  • 下山事件そのものについては、遠くで聞いたことがあるかなぁ?程度のことだった。
    たまたま本屋さんで目に入り興味を持って買ってみた。

    まぁ・・・驚くことばかり、関わってくる人達もすごいし、色々が闇すぎて。

    なんだか下山総裁がお気の毒としか言えない。

    あんなことができちゃったことが恐ろしい。

  • 読み始めたのがちょうど7月5日だったので、おおっと思う。
    私は知らなかったが、「昭和史最大の謎」と呼ばれる下山事件

    事件のあらましや、著者の調査が真相に迫る。 他の小説などで読んだM資金、GHQ、戦後の胡散臭さは感じる。
    事件当時、熱く真実を求める者が居たことは伝わるがあまり事件に関心のない一般の人にとっては、内容の冗長や細かすぎるところが読み辛い。長いし。
    この時代の雰囲気を知るには良い題材かもしれない。

  • 結局、名前は明らかにされたかったが、読み通せば彼の事だとわかる。勿論、作者なりの結論として。

    しかし、占領時の日本の立場やその中で暗躍した人々、政治家、第三国人、いろいろ歴史の教科書では決して語られることのない暗部が語られており、とても興味深い。


    こんど、武相荘の見学でもしてこようかな。

  • 事実は小説より奇なり

  • ノンフィクション名著

  • 取材力は認めるが話があっちに行ったりこっちに行ったり.もう少しまとめてから文章にしてほしい.

  • 著者は森達也氏著の「下山事件(シモヤマケース)」のなかで"彼"として登場している人物。
    彼の祖父をはじめとする近い親類が戦後まもなくあった会社の"亜細亜産業"に関わっており、そこで下山事件に繋がって行く。

    読み始めは「シモヤマケース」の焼き直しかとも思いましたが、途中からは独自の文章となり楽しめました。

    まあ、このような本の特徴として自説に都合の悪い事実にはほとんど触れないし、多少強引な論理も見受けられる。
    また、自分の親族に関しての記述が多いせいか、文章に多少は鼻につくところが散見される。

    戦後すぐの歴史を眺めながら、著者の推理を楽しみました。

  • 下山事件の真相に迫るドキュメント。ここまで明るみにしてよいのか、というくらい生々しい証言に彩られた闇の世界。非常に面白かった。真相がはっきり示されるわけではないが、私にはこれで十分。今の日本の有り様もこのような陰謀、事件の上に成り立っていることを思うと、複雑な思いになる。

  • すでに4回ほど読んだ。どんなフィクションより面白いミステリー。

  • 非常に面白く、優れたミステリーを読むかのように一気に読めた。

    一読しても著者が分かったという真犯人が分からない。恥ずかしながら目星すら立たないのだ。

    そこで再読する前にググッてみた。

    <BLOCKQUOTE>
    恐らくこの本の最大の主張である箇所が、前記05年単行本と今回の増補版とで、下記のように正反対になっているのだ。

    05年刊本では「ここに一つの図式が浮かび上がる。日本政府は、外資から国鉄を守るため、下山総裁を抹殺したのではなかったか」。
    今度の増補版では「ここに一つの図式が浮かび上がる。日本政府は、外資の導入を加速させるため、下山総裁を抹殺したのではなかったか」
    <I>AMAZONよりまともな読者もいるよ (東京都)さんの書評</I>
    </BLOCKQUOTE>

    それが事実だとすると、著者に対する信用度は一気に低減する。
    何しろそういう記述は文庫本には一切なかったのだ(現時点でハードカバー版は未確認)。

    著者の発言を元に同じテーマを上梓した森達也へのけん制も引っかかる物があった。

    逆説的に情報を一元から入手して判断する危険さ、多元的に情報に接する重要性を教えられた。

    とはいえひとつの事件の見方としては非常に読み応えがある。

    事件の中核に関わる人間が身内であるということのアドバンテージとそれに対する苦悩などドキュメンタリーではなくひとつの家族の物語としても読めるし、上記のような同業者への牽制も文筆業で喰っていくということがどういうことなのかというのが垣間見れて、ドラマとしても面白い。

  • 下山事件

    ■読みながらのメモ
    彼イコール自分となった経緯は?

    児玉誉士夫、三浦義一、笹川良一、このあたりについてはあとでウィキを見よう。

    第三章 総帥・矢板玄
    最大のヤマ場か。でも一対一のインタビューであり、ここで語られていることが本当に真実かどうかは分からない。もっともそれを言ったらこの本を読むこと自体がどうなのか、という話になってしまうが。でも、その後に書かれているビュイックとナッシュの車種特定に関する部分で、森達也が自著でねつ造をしている、という記述を見ると、ルポルタージュだからといってすべてが真実かどうかはわからないことになる。

    458ページ、下山総裁がただ殺害されるだけでなく拷問を受けた理由が分からなかったが、三菱による国鉄民営化に関する情報収集に対するものという推理はなるほどと思わせる。矢板玄は、「なぜ下山が殺されたか、国鉄の大量解雇は結果論だ、もっと視野を広げてみろ」と言っていた。ただし、「あの頃の世界情勢はどうだったのか。その中で日本はどのような立場に立たされていたのか」とも言っており、国鉄民営化が、世界情勢とどう関わりあるのか?

    どこまでが真実なのか? 本書でもそれまでに書かれた書籍の内容についてたびたび疑問を呈している。裏返せば、ここに書かれていることも、筆者によるねつ造が含まれている可能性もあるということか。


    ■読了
    非常にたくさんの登場人物と非常にたくさんの証言を積み重ねていき、実行犯は誰なのかと言うところから話が大きく、開始でそもそも首謀者は誰だったのかと。GHQではなくCIAそしてCIAの傀儡だった日本政府間自民党吉田茂内閣、戦後、占領下の日本を取り巻く状況の中で下山事件だけではなくその前後に起きた大きな事件をも合わせてアメリカ側の様々な思惑も絡んだ中での事件と位置づけられている。

    ところが、大叔父である飯島の証言によると首謀者はエックス某と言う人物であると言う。東北本線の入札に関連し大損、その怨みが原因だと。それだと、前述の大きな枠組みから、一個人の怨みに急にスケールダウンしてしまうように思える。矢板玄の言っていた当時の世界情勢云々が、あれ?となってしまう。

    またさまざまな証言と推論をもとに積み重ねてきたものが、飯島ひとりの証言が真実であるようなまとめになってしまうのもなんだかしっくりこない。

    最後で柳井氏に話す時にも、エックス某という人物、という言い方をしているが、柳井氏は驚きとともに知っていた人物であるとの反応。運輸省鉄道総局時代からその利権に深く食い込み、とあるからには鉄道関係者なのか?
    実行犯グループが亜細亜産業とキャノン機関なら、それを動かすことのできる権力を持った人間でなければいけない。佐藤栄作?それなら「という人物」という言い方はしないか。

    話をものすごく多岐にわたって広げた結果、最後の最後で真相がぼやかされてしまうのは浦沢直樹の漫画にも近いような感じでちょっと消化不良。すごーく面白いんだが、最後にポン!と膝を叩けないというか。
    もしこれがプレゼンだとしたら、ん?で、けっきょく結論は?と言いたくなるかも(笑)。最後にこれまで述べてきたことのまとめと結論がないので。


    結局、実行犯は誰なのか、首謀者は誰なのか、それが知りたくて読むのではないのかと思うのだが、筆者はそれを明らかにはしていない。アマゾンのレビューを読むとそのことに対して異議を唱えてる人があまりいないのがちょっとびっくり。みんな納得してるんだろうか。

    推論がやや強引?と感じた箇所けっこうあった。

    白洲次郎についてよくは知らないが、一般的な偉人というイメージに反して、ダーティーな部分を随所に匂わせているのが新鮮だった。


    身内が関与したであろう事件と言うところが通常のルポルタージュと違ってショッキングでもありリアリティーを感じさせるところもある。
    丹念な取材と資料での確認などは、なるほどこうしてひとつずつ進めていくのかと感心。その分こちらもノートを取りながらでないと全体が把握できないほどの情報量で、細かいところまではよく把握しきれなかった。


    森達也が出てきたところで思ったが、100パーセント客観的なドキュメンタリーはありえないんだな、と。映像なら編集が入った段階で取捨選択があるし、文章でも書く、書かないの意図が反映されるだろう。だからドキュメンタリーといえども100パーセント鵜呑みにしてはいけない。そこには必ず作者の意図が反映されているはず。


    日本とアメリカの関係などいろいろな勢力の様々な思惑が絡み合った結果としての事件。そうなると誘拐や殺害の具体的な手法等はそれほど重要ではなく、もっと大きな政治的枠組みの中での捉え方が興味深く感じてくる。
    ただそれは一方でいわゆる陰謀論的なストーリーに絡め取られる危険性もあって、読んでいる途中で、ちょっと違和感を感じたこともあった。
    ただし、下山事件をきっかけとして日本、アメリカ、満州、その他様々な当時の情勢やそれに関連してうごめく様々な人物、事件のことを知ることができたのはとても面白かった。もう少し他の本も読んでこの時代のことを掘ってみたい。

  • ちきりんさんのブログを通して本書を知った。

    3章までの面白さは素晴らしい。

    下山事件という謎の多い事件(自殺?)について、
    著者の親族の話を中心にして説明されていく。

    後半は、同じような事実が繰り返されているような感があり、
    登場人物も訳がわからなくってしまい、結局消化不良だった。

    下山事件は真相が明らかになっていないとは言うけれど、
    結局、世の中の事件すべて、犯人(とされる人物)が捕まっていようといまいと、
    さらに言えば、事件であろうとなかろうと、「真相」などというものは、当事者以外には明らかにはならないものだ、と感じてしまった。

    [more]
    (目次)
    第1章 血族
    第2章 証言
    第3章 総帥・矢板玄
    第4章 検証
    第5章 下山総裁はなぜ殺されたのか
    終章 慟哭

  • 「文庫X」も凄いけど「下山事件」も凄い。というカバーの煽り文句に惹かれて購入しました。
    お恥ずかしながら下山事件を知らなかったので、事件の凄絶さにまず驚き、日本の闇…と言っていいのか、そういうものにぐいぐい引き込まれました。ただ、あまりに登場人物や組織が多いので、読むのが難しかったです。多分、半分も理解できていない。時間ある時に、メモしながら再読したいと思います。

  • 先に「暗殺者たちの夏」を読んだが、そのきっかけとなっている本書を読んでみた。
    森氏の本で「彼」の伝聞でぼやけていたところが明確になった。
    また森氏の記述における誤りを訂正している。
    昭和史に明るくないので最後のほうは難しかったが、身内が関わっているかもしれないが真相を知りたいという心を感じる一冊だった。

  • 祖父が下山事件に関わっていたかもしれない,というところから調査が始まるドキュメンタリィ。
    新刊の予備知識として読んでみたが,かなりの読み応え。
    ただし結局真相は・・・。
    これを新刊で,フィクションとしてどうアレンジしているかは興味深いところ。

    ちなみに私の父は,グリコ・森永事件の犯人に似ているということで何回も職質を受けたらしいが,私はこれを本にする予定は今のところない。

  • 佐藤栄作、旧731部隊、キャノン、旅館の女将、伊藤律、アジア産業、、怪しいとされた人や怪しい人など予備知識なくともも読める。著者は全貌がだいたいわかったと言い切る。真実がみんなのものとなる日が来ることを。

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著者プロフィール

1957年、東京都出身。日本大学芸術学部写真学科中退。フリーのカメラマンから作家に転身し、現在はフィクションとノンフィクションの両分野で広く活躍する。パリ〜ダカールラリーにプライベートで2回出場し、1990年にはドライバーとして完走。1991年『KAPPA』で小説家デビュー。2006年、『下山事件 最後の証言』で第59回「日本推理作家協会賞・評論その他の部門」と第24回日本冒険小説協会大賞(実録賞)をダブル受賞。2007年、『TENGU』で第9回大藪春彦賞を受賞し、ベストセラー作家となった。他の著書に『DANCER』『GEQ』『デッドエンド』『WOLF』『下山事件 暗殺者たちの夏』『クズリ』『野守虫』『五十六 ISOROKU異聞・真珠湾攻撃』『ミッドナイト』『幕末紀』など、多数ある。

「2021年 『ジミー・ハワードのジッポー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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