出世花 (祥伝社文庫) (祥伝社文庫 た 28-1)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396334352

感想・レビュー・書評

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  • 後輩から一度借りて読んでたのに買っちゃった。けど、まあうん。描写がほわっとしてていいなあ。

  • 久しぶりに読む時代小説である。
    新聞に載っていた紹介文に惹かれて読んでみた。

    『解説に書かれた粗筋より

    江戸の下落合で、路傍の毒草に当たった矢萩源九郎と娘のお艶は、青泉寺に運び込まれた。女敵討ちの旅の果てのことだった。源九郎は命を落としてしまったが、さいわいにも助かったお艶は、名をお縁とあらため、青泉寺で成長する。その寺は、死者の弔いを専門とする墓寺であった。真摯に死者を弔う住職らの中で暮らすお縁は、やがて自分も湯灌場を手伝うようになり生縁という名を授かる。』


    名を変えることで、道を拓いて生きてきた生縁を、
    「出世花」と例えたのが、表題作である。
    時代小説とはいっても、題材がちょっと異質ではあった。
    でも一生懸命に生きている生縁に心打たれる。
    時代に関係なく、
    一生懸命に真面目に生きることの大切さを、教えられた。

    「出世花」「落合螢」「偽り時雨」「見送り坂暮色」という連作であるが、
    どれも読み応えのある作品ばかりだった。

  • 著者の『みをつくし料理帖』がおもしろかったので、こちらも読みました。
    江戸時代に、両親と死に別れ、つらい体験をしながらも、周りに支えられて明るく生きていく少女を主人公とした設定は変わりませんが、みをつくしでは料理人、こちらでは三昧聖と、ヒロインの職業はかなり違っています。
    女性として寺で湯灌を行う、三昧聖のお縁。
    三昧聖とは、今でいうおくりびとのような仕事です。

    妻敵(めがたき)討ちという、初めて知る物騒な言葉に驚きました。
    プライドに命をかけなくてはならない、江戸時代の武士の矜持が物悲しく描かれます。
    その時代、旅の途中で生き倒れになった者は、たとえ人の手で埋められたとしても、よっぽど深く掘らない限り、野犬に掘り起こされて食べられてしまっていたとのこと。
    ぞっとします。
    そのような恐怖におびえながら、旅先で父の客死を迎え、その遺体を丁寧に弔ってくれた寺の人々に、子供ながらに深い感謝を抱くお縁。
    身寄りがないため、寺に身を寄せ、いつしか三昧聖として働くようになります。

    今も昔も、遺体に携わる職業は、屍洗いなどと言われて色眼鏡で見られ、侮蔑されがちですが、心ない人々にさげすまれても、故人を労わりながら、あの世への旅立ちに向け、丁寧に仕事をする三昧聖。
    いつしか評判を呼び、ぜひともと名指しで頼まれるようになります。

    料理人は食の、三昧聖では死への手伝いをするという意味合いでは、全く異なる職業のようでありながら、どちらも人の人生に深く関係しているという点で、共通していると思いました。
    人の生に関わる分だけ、人との交流やドラマも生まれます。
    そして、大小さまざまな事件も起こります。

    『偽り時雨』で同心が頭を抱える、連続変死事件の毒の原料を探し当てたのは、お手柄。
    樒(しきみ)の実は猛毒で死に至ることを知りました。
    結局、『落合蛍』で江戸を騒がせた髪切り魔の犯人は、何者だったんでしょうね?
    なんだかうやむやのままに話が終わってしまったようでしたが。
    ホタルの美しさと人の叶わぬ恋心が重ねられた、悲しくはかない話でした。

    当初は、はじめの『出世花』だけの単体作品だったとのことですが、その後の話に上手に続き、後日談も3話、掲載されています。
    出世とは、仏教用語で言うと、俗世間で言う意味とは違って、世を捨てて仏道に入ることを意味するとのこと。
    確かに、漢字を見ればそちらの方がもともとの意味のように思えます。
    てっきりサクセスストーリーものかと思っていましたが、出世魚などとは全く違うニュアンスを含めたタイトルだとわかりました。

    当時の時代考証もしっかりされており、すぐに物語世界にひたれます。
    流れていくようにていねいに綴られた文章。
    女性らしい筆の滑らかさ、細やかさが感じ取れます。
    正念僧侶の魂の清らかさと哀しみが胸に残りました。

    著者は、情感豊かに、市井の人々の「袖摺り合うも多生の縁」を描くのがとても上手。
    苦境にくじけないヒロインのひたむきさがいじらしく、まぶしくて、つい肩入れしてしまうし、読了後は自分も頑張ろうと、気持ちも上がります。
    著者のほかの作品も読んでみようと思いました。

  • 人生の折り返し地点を、
    もう過ぎてしまいましたが、
    もう一度スタート地点に戻って、
    生き直そうと思いました。

  • しみじみと心に響いてくる本でした。

  • みをつくし料理帖の既刊を読みつくしたので、こちらにも手を出しました。
    以前、漫画原作者としても手がけた「葬儀もの」の江戸時代版。
    高田先生の書く登場人物は、つらい事があっても真っ直ぐで素晴らしいです。
    【出世花】は展開がある程度予測はできたものの、題のつけ方がとにかく巧い。
    【見送り坂暮色】は涙々。口には出せない親子の絆が、とてもあたたかいです。
    【落合蛍】と【偽り時雨】は捕り物帳仕立てになっていて、この作品もシリーズになればいいな、という気持ちを煽られました。
    正念様とお縁の行く先を見てみたいです。

  • 「おくりびと」の江戸時代少女版とでも言おうか。

    女性ならではの心遣いで死者と遺族を安らかな気持ちにしようと努める姿に胸を打たれる。おすすめ。

  • 「みをつくし料理帖」シリーズの原点って感じのお話ですね。もちろん話の内容は全く違いますが、主役の女性から受ける印象がそっくりです。
    安心して読めるお話しだと思います。

  • 『八朔の雪』ではまった高田さんの作品、時代小説に興味なくても
    読みやすくあっという間に惹き込まれる。
    短編で構成されているので読みやすい。江戸時代の『おくりびと』
    魅力ある登場人物がたくさん。
    ぜひこちらもシリーズでもっと読んでみたいです!

  • 江戸時代の「おくりびと」。高田郁さんの作品で「みをつくしシリーズ」以外で初めて読んだ本ですが、この本もみをつくしに負けず劣らず素晴らしい作品でした。もちろん最後の方は号泣。心から優しい気持ちになれました。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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