新釈 走れメロス 他四篇 (祥伝社文庫 も 10-1)

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 8967
レビュー : 974
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396335335

感想・レビュー・書評

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  • 近代文学5編をモチーフに、舞台を現代の京都に置き換えて、阿呆だけど憎めないダメ男子大生たちの姿を、面白おかしく、そして、しんみりと愛おしむ風情や感傷を交えて描いた、森見登美彦さんによる連作短編集。

    ベースとなった近代文学は以下のとおり。

    山月記(中島敦、1942)
    藪の中(芥川龍之介、1922)
    走れメロス(太宰治、1940)
    桜の森の満開の下(坂口安吾、1947)
    百物語(森鴎外、1911)

    森見アレンジ版は、どれも面白かったですが、特に、偏屈な大学生のどうにも斜め上に捻れた珍奇な友情をノリノリで描いた「走れメロス」には、文字通り、抱腹絶倒してしまいました。
    これぞ森見さんの真骨頂といった感じの作品です。

    また、桜の怪しい美しさと、謎めいた女に惑わされながら、人生に侘しさと戸惑いを感じる小説家の男を描いた「桜の森の満開の下」は、感傷と怪しい魅力が溶け合って風情があり、こちらは「メロス」とは好対照の良さがありました。オリジナルのグロテスク要素が綺麗に排除されている点が、グロが苦手な私にはこれまたありがたく。

    そして、どの作品も、ちゃっかり「森見ワールド」化してしまっているのに、作者も作風も全く異なるそれぞれの原作が持つ構成や文体、主題といった骨組みは踏襲され、守られている点に、森見さんの技巧を感じます。

    「山月記」では、中島敦らしい漢文調の角ばった文体で、挫折し、結果的に世間から隔絶されてしまう男の姿を、原作の悲壮な感じにユーモアをプラスして描いています。

    「藪の中」では、同じサークルに所属する男女の三角関係という設定に変更しながらも、登場人物たちの矛盾する独白を並び立てて真相は明らかにならない、まさに「藪の中」な話に仕上がっています。

    「百物語」では、鴎外らしい硬質な雰囲気の中でオリジナルと同じ主題の「傍観者論」を巧みに展開しながらも、オリジナルにはない怪談的要素を盛り込んで、タイトルに偽りない作品へとバージョンアップさせています。

    本当に、森見さんの頭の良さと、構成力、表現力にはいつも感心してしまいます。
    原作を読んでいる方も、読んでいない方も、双方が楽しめる作品となっています。

  • 名作を見事に森見ワールドにアレンジした一冊。
    森見スパイスで新しく味付けし彩りアレンジされたような有名な名作たち。
    どの作品もなぜか先ず最初の一文から笑ってしまう。
    そして京都を舞台に繰り広げられるストーリーはやっぱり阿呆な世界なんだけれど、しんみりテイストも忘れずに余韻を残してくれる、そんなさじ加減も絶妙だった。
    「桜の森の満開の下」が予想以上にしんみりとざわざわ感を味わえて満足。
    坂口安吾の作品を再読したくなるほどの読後感。

    • けいたんさん
      こんばんは(^-^)/

      この作品の森見さんなら読めそうだなぁ。
      走れメロスとかどんな感じだろう?
      「藪の中」持ってるけどまだ読ん...
      こんばんは(^-^)/

      この作品の森見さんなら読めそうだなぁ。
      走れメロスとかどんな感じだろう?
      「藪の中」持ってるけどまだ読んでいない。
      どの作品も元を知っておいた方がいいよね?
      2019/03/28
    • くるたんさん
      けいたん♪コメありがとう(≧ω≦)

      走れメロスは完全パロディだったかなぁ。
      ライトな阿呆の世界って感じ♪
      夜は短し…は正直ダメだった私には...
      けいたん♪コメありがとう(≧ω≦)

      走れメロスは完全パロディだったかなぁ。
      ライトな阿呆の世界って感じ♪
      夜は短し…は正直ダメだった私には、これぐらいならギリギリいけたかな(笑)。

      元ネタ知らなくてもオッケーだよん♪
      逆に元ネタを読みたくなる人も多いみたい(* ॑꒳ ॑*)
      2019/03/29
  • 山月記 中島敦
    藪の中 芥川龍之介
    走れメロス 太宰治
    桜の森の満開の下 坂口安吾
    百物語 森鴎外

    懐かしのあの名作が、阿呆学生のしょっぱい青春記と姿を変える。

    「人間の文明というものは、突き詰めればただ言葉と数学のみに拠っている。数学を選ばぬ以上、言葉を究める人間が最もエライに決まっていると彼は言った。それゆえに俺はエライに決まっていると。」
    そして大文字山へ姿を消した斉藤秀太郎。
    なんでこんなに読後の余韻が切ないんだろう。
    「走れメロス」なんて、芽野と芹名の友情がなんだか美しく思えてくる。恐るべし。
    「約束を守るも守らないも問題ではないのだ。信頼するもしないも問題ではないのだ。迷惑をかけてもいいだろう。裏切ってもかまわん。助け合いたければそれもいい。何であってもいいのだ。そんなことはどうでもいいのだ。ただ同じものを目指していればそれでいい。なぜならば、だからこそ、我々は唯一無二の友なのだ!」
    桃色だけど。

    女性にふりまわされ、勉強をしたりしなかったり、そんな彼らの偏執ぶりが描かれる。
    メロスのような狂騒ぶりは大好きだけど。
    藪や桜のようにしっとりと語られる話もいい。
    「百物語」を読んで、すべては一つの物語だったのかと最初から読み直したくなった。

  • 森見登美彦初体験は『新釈 走れメロス 他四篇』。

    高校現代文で最も好きな教材である中島敦の『山月記』をカヴァーしてるっぽい、という一点のみで単行本を衝動買い。その手腕の巧みさに感激し、人に貸しまくっていたらそのまま戻ってこなくなった。で、文庫で買い直した。そんな経緯も含めて思い入れの強い作品です。

    「過去の名作を現代に置き換える」。そんな目論見の標的となったのは、『山月記』『藪の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』の5作品。どれもこれも、森見ワールドに生息する腐れ大学生の物語にメタモルフォーゼしております。登場人物がそれぞれリンクしているので、長編の趣も(ああ、連作か)。

    逆説的な『走れメロス』に爆笑しましたが、漢文訓読体を再現しつつ茶化し倒した『山月記』が一押し。原文をそのまま引用するタイミングとかがまた憎いのですよね。それでいて主人公の悲嘆も決して外さないっていう。

    名作の力について述べた「文庫のためのあとがき」も素敵。

  • 文豪たちの、有名過ぎて最早説明するまでもない名作たちを
    森見色に塗りたくった一冊。

    特に『走れメロス』はもう森見ワールドの真骨頂。
    お馴染みの詭弁論部、図書館警察、自転車にこやか整理軍…が
    太宰治巻き込んで京都走りまくります!

    だけど宵山万華鏡派も、もちろん夜は短し派も、
    どっちも満足出来るかなりお買い得な作品集です。

    私のいちおしは『薮の中』。
    心、締め付けられます。

    いつか絶対しようと決めている「京都森見巡り」!
    スタート地点はやっぱり“鴨川デルタ”かな。

  • あの名作の日本文学たちをモチーフに、森見登美彦が新たな物語を紡ぎ出す。
    表題になっている『走れメロス』はいつもの阿呆大学生のノリで突っ走る抱腹絶倒の物語。
    その他の四編は著者の和ホラーの方の才能も混じり合い、うすら怖い感じのお話になっている。

    個人的に特にお気に入りなのは『山月記』と『桜の森の満開の下』。特に山月記は……原作もそうだが、若者を終えかかっている者にとっては胸が痛くてしょうがない。この二作品には著者の小説家としての懊悩が見え隠れするような気がする。
    原作が名作すぎるので大まかな話の流れが面白いのは言うまでもない。が、よく名作を台無しにせず新しい物語を生み出したものだ。ちゃんと名作も自分の土俵に持ち込んで新たなものを創作する。なかなかできることではない。
    ……まあ、『走れメロス』は……太宰ファンはキレるかもしれない。私は大好きだけれども。

  • 中島敦の山月記、芥川龍之介の藪の中、太宰治の走れメロス、坂口安吾の桜の森の満開の下、森鴎外の百物語、という五つの短篇を、京都の大学生を主人公にいま風に書いたらどうなるか、という実験的作品。オリジナルの趣旨と言葉運びのリズムを活かしながらも、完全に森見独自の作品に落とし込まれていて、原作を知らずに読んでも十分面白い。しかも五つの作品がオムニバス形式でつながっていて、主人公の大学生たちを多面的に見られ、広がりと深みがある。実験的に書いたのかもしれないが、完全に成功している。個人的には、坂口安吾の桜の森の満開の下のオリジナルを読んだことがないので、これだけはパロディ的な部分が読み取れず残念。探して読んでみるとしよう。

  • 「新釈 走れメロス 他四篇」
    日本一愉快な青春小説。こんな友情もあったのか。


    大枠の世界観は守りつつも、舞台やら登場人物やらが、森見登美彦氏によって多大にパロディ化されています。新釈という表現がぴったりな作品です。名作が此処まで姿を変えるとは。


    森見味が加わった過去の名作は、


    ◇太宰治「走れメロス」
    ◇中島敦「山月記」
    ◇芥川龍之介「藪の中」
    ◇坂口安吾「桜の森の満開の下」
    ◇森鴎外「百物語」
    順不同

    の5編です。何となく堅そうな作家ばかりなので、新釈版の自分の小説を読んだら怒ってしまうんじゃないんですかね。怒る彼らを森見さんが宥める、いやいや、どれだけ敬意がこもっているいるのかを熱弁する姿を想像してしまう。


    一番面白かったのは、「走れメロス」。一番印象深いのは「山月記」です。「走れメロス」は、馬鹿馬鹿しさが凄まじいことこの上ないです。自分を如何に正当なのか、自己弁護且つその様を自画自賛するこ奴は、ちょっとぶっ飛んでいるけど潔い。特に「自分が戻ってこないことを知った上で人質を受け入れた親友の気持ちに応える為には、自分は戻るべきではないのだ!」を胸を張る姿は、なるほど!と思っちゃう。こじつけだけど一理あるぞとw


    一方、「山月記」は、メロスと違い、重い仕上げになっています。人の内省の揺れが、びりびりと伝わって怖さを感じさせます。「自分には才能がある。他人とは違うのだ」と本気で信じて生きてきた人間が、壁にぶつかり、そこで真に向き合うべき心から目を避けてしまって天狗へと昇華する。最後に、一冊ぽとりと落ちる書き溜めた小説が、とても哀しい。


    名作とは、とっつき憎いと感じる人が多いと思います。そんな人にはまず森見版から入ってみませんか?とお勧めしたいですね。

  •  流石森見作品。夜は短しや四畳半神話体系の話を織り交ぜつつ、過去名作をトリビュートされた短編集。「カバー」ではなく「トリビュート」だと思う。走れメロスはもう最高に作品だった。太宰の走れメロスを真っ向から否定するような友情。裏切ることが裏切らないこと、というなんともひねくれた大学生達。こういう作品こそ映像化したら面白いだろうに。
     それと、桜の森の満開の下は素晴らしかった。とても透明でうまく言葉にできないけれど、成功していく中での葛藤や、なにより彼女との愛について。久しぶりに心が清らかになる作品だった。

  • くだらなく、そして快活!これこそ森見登美彦!
    京都に住んでいるので走れメロスの逃走経路がありありと目に浮かんでその疾走感が気持ちよい。
    「読み」を問われる藪の中は、小説の醍醐味らしく文章から風景や感情の想像を駆き巡らせられる作品で、好きだった。最後の監督の言葉、それほど僕は彼女に惚れている、が良かった。

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著者プロフィール

森見登美彦(もりみ とみひこ)
1979年奈良県生まれの作家で、京都を舞台にした作品が多い。京都大学農学部卒、同大学院農学研究科修士課程修了。2003年、『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。2006年に『夜は短し歩けよ乙女』で本屋大賞2位、山本周五郎賞などを受賞し注目を集める。2010年『ペンギン・ハイウェイ』で2010年日本SF大賞、2014年『聖なる怠け者の冒険』で第2回京都本大賞、2017年『夜行』で第7回広島本大賞をそれぞれ受賞。2010年に『四畳半神話大系』がTVアニメ化、2018年8月に『ペンギン・ハイウェイ』が劇場アニメ化された。2018年11月に『熱帯』を刊行し、第160回直木賞、2019年本屋大賞にノミネートし、第六回高校生直木賞受賞。

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