警官倶楽部 (祥伝社文庫 お 19-1)

著者 :
  • 祥伝社
3.26
  • (6)
  • (18)
  • (30)
  • (9)
  • (2)
本棚登録 : 143
感想 : 29
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396335601

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  警察マニア。制服はもちろんのこと、警察手帳、手錠、警棒、拳銃などの必携装備品に憧れ、模造品を手に入れて悦に入る。けれど、そんな人はまだ初心者だ。
     捜査や射撃、果ては鑑識や盗聴に至る警察スキルまで身につけてしまった人たちがいる。
     そんなマニアが高じてオタク化した人たちで作る警察愛好家サークルが「警官倶楽部」だ。
             ◇
     2人の制服警官が寂れた商店街を自転車で通っていた。右手にブルーのタイル貼りの奇妙な3階建ての建物が見える。怪しげな教義を掲げる新興宗教「ギヤマンの鐘」の施設だ。

     それを右目で捉えつつ商店街を抜けた2人が自転車を停めたのは、廃墟のようなボロアパートの敷地。その片隅で、誰もいないのを確認してからメガネやつけ髭で変装していると1人の携帯に着信があった。

     ターゲットが来たことを知らされた2人は自転車を押して進み、道の真ん中に立ったのだった。(第1話「強奪」) 全24話。

         * * * * *

     大倉崇裕さんらしく設定がシャレていておもしろい。

     敵は新興宗教団体「ギヤマンの鐘」。
     宗教は本来、人々の平安を守り幸福へと導くための献身的役割を担う組織のはず。献金と偽って財産を毟り取り幹部の栄華のみしか考えないのなら、それはもはや詐欺組織でしょう。謂わば宗教団体の粗悪模造品です。

     対する森田信治率いる警官倶楽部。その名のとおり、警察の模造品です。( ただしかなり優秀ではあります。)

     ということで、フェイク組織同士の激突がメインストーリーなのですが、そこに絡んでくるのが闇金組織シスコシステムズと取り立てを請け負う便利屋の大葉久太郎、さらには謎の誘拐組織とその黒幕。

     筋を追うだけで忙しいほど、息もつかせぬ展開の娯楽サスペンスでした。( ターミネーターのような大葉がいい味を出してます。)

     また、警察マニアの生態が興味深く描かれていたのもよかった。

     特におもしろかったのは、鑑識マニアの落合が登場した場面です。
     落合の行う入念な現場検証と残留物採取のほか、死体とウジの相関などの知識を披露する落合に赤堀涼子が重なって見えてしまいました。

     その他、盗聴マニア、尾行マニア、射撃マニアなど、そこまでやるのかーと感心するほどのオタクたちも登場。とにかくおもしろくて、笑いながら読み終えました。

     鉄道マニアほどではなくても、警察や自衛隊のマニアも決して少なくないと聞きます。( 実際に自衛隊マニアの方にお会いしたこともあります。)
     その楽しみの一端を、本作で垣間見ることができました。
     あーおもしろかった。

  • 警察小説(冗談でつけた)って言っても、実際の警官は1人も出てこない。警察オタクたちが、現金調達や誘拐への対処、カルト教団たちとの対決などで、自分たちの特技を生かして、何とか切り抜けようとする話。オタクの細かい実態にはそんなに踏み込むことなく適度に触れ、気楽に読める小説になっている。最後にどんでん返しのようなものがあるが、ああそういう要素もあったのねと言う感じ。

  • 警察官は1人もいないが、それぞれが尾行や盗聴、鑑識、データ収集、写真撮影、などなど一流の腕を持つマニアたち。

    『警官倶楽部』を自称する彼らの活躍するストーリー。

    現金強奪や誘拐、そしてカルト教団との闘い。
    十重二十重の闘いの末に待ち受ける結末とは?

    メンバーそれぞれの特技が随所に活かされ、アクションあり、推理あり、さもありなんと思わせるストーリー運びはさすがですね。
    二転三転するハラハラドキドキの展開です。

  • 警官マニア達が繰り広げるアクションシーンエンターテインメント作品。
    ひと口に警官マニアといっても専門領域は細分化されており、カルト教団や取り立て屋と対決する時にそれぞれの得意技を駆使するところが面白い。
    「無法地帯」で主役級だった大葉氏が脇役で登場しますが、相変わらずの強さと変な真っ直ぐさで魅力は健在でした。
    マニアシリーズの続編が出ますように。

  • 警察官マニアvs.カルト宗教。登場する警察官マニアたちがとにかく熱い。その中に、伝説のマニア・大葉久太郎が絡んでくるので、ジェットコースターの如く物語は展開する。
    登場人物の多さが難点だが、各々の知識に感心するのであまり気にならない。大倉さんには、この路線を続けてほしい。

  • いやぁもう、すごくおもしろかった‼︎結構分厚い本でしたが、あっという間に読了。次はどうなんのどうなんの⁈とスイスイ進みます!次の展開が気になって仕方がない(笑)警察マニアと一口に言ってもいろんなジャンルがあるんだねぇと感心したり、手際の良さに感動したり。このあらすじもスピード感があって素晴らしい!黒幕はもしかして…と早い段階でわかりましたがf^_^;ドラマとかにならないかなぁ。森田役は池松壮亮さん、関谷役は柄本佑さんで脳内再生されました☆



  • 警官もの。ではない。
    二人の制服警官が悪徳宗教団体の裏金運搬車を襲撃。
    が、本物の警官ではなく、本職顔負けの技を持つ警察愛好サークルであった。つまり、警察マニア。
    宗教団体から金を強奪するも、別組織に奪われ、仲間の息子を誘拐される。更にそこから、敵方の誘拐犯組織と共謀。するも、さらに今度は新たな借金取立屋が絡み、更にさらに新宿の犬が...
    どことなく伊坂幸太郎の『ギャングシリーズ』に近いかな?とは言え、一つのテーマで、綺麗にまとまっている。
    初めて読む著者だが、「趣味」「好き」に全てを投げ打つ人間を描いてきたそうで、ぜひ、そちらも読んでみたいものだ。

  • これ、続編読みたいですねー。その後の対決が気になる。

  • 警察関係マニア達が警察関係者になりきったつもりで事件を追うお話。

    読み終えてみて全体的に話がまとまってない印象を受ける。
    細かく伏線らしいものは落としているようなのですが、ボヤ~としている雰囲気。

  • 91:ついったで知って予約したもの。警官マニアという趣味が高じて各技能のエキスパートとなった登場人物たちが、それぞれの得意分野を活かして仲間のために協力する、という筋は王道エンタメで痛快でした。登場人物が多くて、「広く浅く」になってしまったのが少し残念。

全29件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

大倉崇裕(おおくら たかひろ)
1968年京都府生まれ。学習院大学法学部卒業。97年、「三人目の幽霊」で第四回創元推理短編賞佳作を受賞。98年、「ツール&ストール」で第二十回小説推理新人賞を受賞。2001年、『三人目の幽霊』でデビュー。代表作である白戸修シリーズ、福家警部補シリーズ、警視庁いきもの係シリーズは、いずれのシリーズもTVドラマ化されている。

「2022年 『殲滅特区の静寂 警察庁怪獣捜査官』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大倉崇裕の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×