君の望む死に方 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396337001

感想・レビュー・書評

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  • 超絶優秀 碓氷優佳の鋭い洞察力が、相思相愛の殺人ストーリーをかき回す。名作倒叙ミステリーの第二弾!

    余命宣告を受けた主人公が過去の罪を償うべく、密かに自身の殺され計画を企てる。準備万端だったはずが、碓氷優佳の登場によって少しずつ食い違いが生じてきて…

    今回の物語はかなり切ない… やる側、やられる側、推理する側、各々の心情が慮られます。単なるミステリーでなく物語としてもよくできていて、これまた名作だと思いました。

    少し変わった倒叙モノなのも興味深いです。難しい設定にもかかわらず、しっかりミステリーとしての構成が組み立てられていて、全く変な違和感がありません。プロだから当たり前かもしれませんが、小説として上手だと思いました。

    そして相変わらず天才碓氷優佳の洞察力が鋭すぎで強烈です。そして前作からのその後の物語が判明して、より震えました。こわいよー

    本作もやっぱり最後が気になりますねぇ、気になる気になる。続編買ってこなきゃ。高品質の倒叙ミステリー、おすすめです。

  • 石持浅海氏の傑作倒叙ミステリー。
    『扉は閉ざされたまま』などに登場する碓氷優佳が再び登場。

    ガン告知を受けた大手のソル電機の社長・日向貞則は、過去の経緯もあり、社員の梶間晴征に殺害されるよう、複数人を集めた保養所の中に、様々な仕掛けを用意し、研修を開始する。

    しかし、ゲストに呼ばれた碓氷は、保養所の中にある『悪意』を感じ取り、それらに対抗(無力化)する。

    花瓶、アイスピック、クレセント錠、酒瓶、などなど。果たして、日向の計画通り、殺人は行われるのか?

    至る所に伏線があり、ロジック対決は、まさに石持作品ならでは、ですね。

    最後の最後まで、日向・梶間のどちらが命を落としたのか不明ですが、そこは読者の読み次第でしょうか。
    是非、他の碓氷シリーズも読みたいと思います。

  • 碓氷優佳シリーズの第二弾。
    優佳怖っ!(笑)。エスパーのように演出側の人間の思考が分かる彼女はホントにすごいと思った。日向・梶間の両名から話が進むが、その中でどのように殺す・殺させるべきかという心理戦のようなところが駆け引きのように見えてとても面白かった。
    そして、まさかの”誰”が殺されたか分からないようになっているところにいやらしさを感じたが,前作の設定が今作に続いているというところからも見て、次回作の『彼女が追ってくる』でその真相が明かされるのだろうか。次の作品も読んでいきたい。

    そして、碓氷の彼氏というのは前作の"彼"なのだろうか考察が深まるなぁ。

    追記
    最後にこの作品をアニメ化したときの声優陣を自分なりのキャスティングにしたので読むときの参考にしてください。
    碓氷優佳:沢城みゆき
    梶間晴正:小野大輔
    日向貞則:山路和弘
    園田進也:前野智昭
    堀江比呂美:雨宮天
    野村理紗:石見舞菜香
    小峰哲:杉田智和

  • 余命宣告を受けたソル電機の社長・日向は、社員の梶間に自分を殺させる覚悟を固める。梶間の父であり創業者仲間であった境を殺した過去を清算するために。研修という形で殺人の舞台を整えた日向だったが、ゲストには恐るべき推理力を持つ碓氷優佳の姿があって──。

    日向「チャンス、凶器、逃げ道の確保、仇を討つ舞台は整えたぞ!君の望む死に方をしてやろう」
    梶間「仇を討つチャンスはここしかない!慎重に、かつ大胆に殺す!復讐は絶対の正義だ!」

    碓氷優佳が登場する倒叙ミステリシリーズ第二弾。今回は被害者になろうとする日向と、仇を取ろうとする梶間の殺人心理戦が描かれていく。梶間に自分を殺させたいが捕まってほしくないので逃げ道を用意する日向と、仇を討ちたいがこれ見よがしな舞台と予想外の展開に殺すタイミングを掴めない梶間。すれ違いコントでも見ているような感覚に(笑)

    それにしても、優佳の悪魔的な推理力に舌を巻く。それどころか、彼女の底知れない思考にはゾッとさせられる。殺人には凶器と狂気が必要だ。『君の望む死に方』というタイトルは読み終わってみると何とも言えない余韻を感じさせてくれる。ここまで長く描いておいてあのラストは個人的には食い足りない。ただ、これが一番きれいな終わり方だなとも思うので難しい。僕の望む終わり方ではなかったけど面白かったのは間違いない。

  • 先回りして事件を防いでいくのは『探偵が早すぎる』と同じ匂いを感じました。

    笑うべきタイミングで笑う能力を私は培っていきたいです。

  • 2022年6月読了。

    業界で一目置かれる企業である『ソル電機』
    その会社の創業者であり現社長の『日向貞則』は、癌の告知で余命6ヶ月の宣告を受ける。
    これを機に、ある計画を実行に移す。

    共同創業者であった男をその手で殺めた過去を持つ日向は、罪滅ぼしとしてその男の息子でありソル電機の社員でもある『梶間晴征』に自分を殺させようと、研修の名目で自身の元へと呼び寄せる。
    梶間に容疑がかからず殺人を実行出来るように様々な仕掛けが用意された施設、舞台は整った。


    一方、梶間は日向のそんな想いなど露知らず、父の仇である『社長・日向貞則』の殺害を目論んでいた。
    この研修は、普段なかなかお目にかかる事すら難しい社長に近づける千載一遇のチャンスと殺害の実行を決意する。

    両者とも果たすべき目的は同じ。
    何の問題も無く、互いの目的は遂行されるはずだった。
    しかし、ゲストとして参加していた『碓氷優佳』の人並外れた洞察力によって計画は破綻していく…。


    『扉は閉ざされたまま』に続く碓氷優佳シリーズ2作目。
    今作は、『自身を殺させようとする者』『殺そうとする者』の2人の視点から語られる倒叙ミステリ。
    犯人目線からの語りだけでなく、もう1人特殊な想いを抱いた人物の語りがある所も単なる『犯人vs探偵』の倒叙ミステリとは違い面白かった。
    幕の閉じ方も前作同様、どうなったのかはっきりとは明言せず、次作でゆるりと回収するあたり賛否両論ありそうだが自分は意外と好き。

    碓氷優佳シリーズは何冊かあるが、この作品の装丁が一番好み。

    作品とは関係ないが目に留まったフレーズ
    『笑わなければならないところできちんと笑えるのも、ビジネスのうえでは重要なことだ。』

  •  大企業の創業者社長・日向は、社員の梶間に自分を殺させることにし、お膳立てを整える。保養所での「お見合い研修」に招き、そこで実行させることにしたのだが、招いたゲストの一人・碓氷優佳によって、仕掛けがことごとく無効化されていく。
     日向が梶間に自分を殺させる動機が怖い。一見まともな経営者に見える分、狂気を感じる。優佳の価値観や倫理観はフラットで興味深い。

  • 前回は犯人視点からの叙述ミステリ。
    今回は『被害者』予定側の叙述ミステリ。
    共通点は、それぞれの計画を碓氷優佳が邪魔をするということ。
    かつての盟友の死に負い目をもっていた主人公は、その息子に殺されるため、経営する会社恒例の本人には内緒の集団見合いに彼を招く。
    集団見合いを円滑に進めるための煽り役として、甥の安東(前作『扉は閉ざされたまま』に登場したお坊ちゃま)とその婚約者、および甥の後輩である碓氷優佳を招く。
    主人公は殺されるためにいろいろ仕掛けを施していたのだが、何者かによってそれが次々に破壊されていく。
    もちろん、優佳だということは読者は知っているわけだが、主人公もそのことに気づき恐れを抱く。
    そして、前回と同じ「名探偵vs犯罪者」の対決が始まる。
    この作品のトリックやロジックはそれほど目新しいものではないし、少々無理もあるが、この名探偵のキャラがかなり個性的だ。
    謎を愛するわけでもないのに謎を追求し、モラルを重視してるわけでもないくせに犯行の邪魔をする。
    今回はなぜ止めたのか、という理由は少し人間ぽいが彼女が最後にしたことは加害者の思いをどこまでも正しく理解し、そのうえをいく提案までしてみせるところが、やはり普通ではない。

    劇中劇的なもので会社の中でよくあるハラスメントが出てきたが、似たような事例を個人的に聞いたり見たりしたのでよくわかる。
    やるんだよな~。ほんとーにあんなしょうもないこと。

  • 間違いなく2021年度ベストシリーズ。
    1作目も好みだけど、2作目もますます好きになってしまいました。
    碓井優佳のサイコっぷりが待ち遠しくて仕方なくなる。
    殺されようとする男と、殺そうとする男。
    攻防戦も面白いけど、なんといってもラストシーン!
    ネタばれの内容を含むってしてなかったレビューを読んでしまったせいで、ん?と思ったラストシーン。
    あああそういうことかと納得。
    やっぱりこのシリーズの終わり方はとにかく大好き。
    碓井優佳は身近にいたら絶対嫌いだしむかつくけど、キャラとしては好きなんだよなあ。むかつくけど。絶対好きにならないけど。

  • 2018年14冊目。
    碓氷優佳シリーズ2冊目。
    倒叙、面白いなー。ハラハラ感がハンパない。
    前作の「扉は閉ざされたまま」から少し開いてしまったけど読み進めていくうちに、そうそう碓氷優佳はこういう子だったわ!とw
    ただの謎解きが好きな名探偵っていうわけでもないという・・。
    今回も日向が殺されないようにしているように見えて、実は完全犯罪が成立するためのアシストをしていたり。
    うーん、怖いw
    ラストは思わずおいっ!!ってなった(;^_^Aでもよく考えてみたらふさわしい終わらせ方かも。

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著者プロフィール

1966年、愛媛県生まれ。九州大学理学部卒。2002年『アイルランドの薔薇』で長編デビュー。03年『月の扉』が話題となり、〝碓氷優佳シリーズ〟第1弾となった05年『扉は閉ざされたまま』(祥伝社文庫)が 「このミステリーがすごい!」第2位。同シリーズの最新作に『君が護りたい人は』(祥伝社刊ノン・ノベル)。本作は『Rのつく月には気をつけよう』(祥伝社文庫)の続編。

「2022年 『Rのつく月には気をつけよう 賢者のグラス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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