君は素知らぬ顔で (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396338152

作品紹介・あらすじ

文具メーカーで働く由紀江は耕次と付き合って半年。気分屋の彼は機嫌が悪くなると手がつけられない。耕次の怒りを理不尽に思いながらも言い返せない由紀江。次第に彼の態度はエスカレートしていき…(「今日の占い」より)。とある女優の成長を軸に、様々な時代を生きる人々の心のささくれを丁寧に描いた六編。最後に新鮮な驚きと爽やかな感動が待っている、連作小説の傑作。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、『天才子役』というと誰を思い浮かべるでしょうか?

    映画やテレビドラマ、そしてCMには子供の存在無くしては成り立たないものが多々あります。そして、そこには『子役』の存在がどうしても必要になります。日々生み出され続ける作品の数を思うと、この世には数多の『子役』が必要になるのは当然です。

    そんな『子役』たちですが、”名子役は大成しない”というジンクスがある通り、多くの『子役』たちは成長するに従い、徐々に表舞台から消え去っていきます。しかし、芦田愛菜さんのように無限の輝きをもって大人への階段を上がっていかれる方も増えてきました。まるで知り合いの子供の成長を見守るように、私たちは『子役』たちの成長を画面の向こうに見続けることになります。子供の頃から良く知っている存在なのに、実際には知り合いでもなんでもないというその関係性。『子役』の成長を見守る感覚というのも考えてみれば不思議なものです。

    さてここに、”とある女優の成長を軸に”描かれた物語があります。私たちが『子役』の成長を画面の向こうに見るのと同じように、『子役』たちの成長を見る主人公たちが描かれるこの作品。そんな主人公たちの”心のささくれ”を描くこの作品。そしてそれは、読者のあなたも主人公と一緒に『子役』の成長が気になりだす物語です。

    『返却お願いします』という『本日最初の「お客様」』を迎えたのは主人公の荒川奈央。『週に一度、放課後の二時間、こうやって図書室の貸し出し当番をやっている』という奈央は、『分厚い世界史の参考書』を受け取ると『1996年7月』の『返却スタンプ』を押します。『あれ、山村君。図書委員だったんだ』と隣に座る先輩に話しかける『お客様』は、『頑張ってね』と『爽やかにそう言って』場を後にしました。そんな『お客様』が出ていった後、『誰だっけ?』という先輩は、『去年同じクラスだったんだろうな、多分』とはっきりしない様子。『結構な美人さん』で『クラスではきっと目立っていた』だろう『お客様』を思い出し『本当にこの人は、どこか鈍いというか、ずれている』と奈央は思います。そして、時間になり『図書室のカギを返しに』先輩と職員室へと向かい、部屋に入った先輩を待つ奈央はふと『誰かに名前を呼ばれ』ます。それは『高校に入学してから仲良くなった』亜紀ちゃんと悦ちゃんでした。二人と会話する中に先輩が戻って来て歩き出した奈央は『ちょうど下駄箱に着いた』時、『お疲れ様でした。さようなら』と言うと、『うん。お疲れ』と先輩は去っていきました。事情がわかっていなかった二人に『なに、あの人?』と訊かれ『一緒に図書当番やってる先輩』と奈央が説明すると、『あの人と二人でやってるの?』、『なんか暗そうな人だったよね。オタク系?こわーい』と言われてしまいます。そんなところに、『おー、帰るの?お疲れ』と声をかけてきたのは『悦ちゃんがカッコいいと騒いでいる』『サッカー部の』亮介です。『サッカー部はまだ練習中?頑張ってね』とはずんだ声で答える悦ちゃん。そんな後、『ファミレス寄らない?』と亜紀ちゃんに訊かれた奈央は『ごめん、私は今日食事当番だから行けない』と返します。それに『戸惑ったような表情を浮かべ』る二人。そして、家に帰った奈央が『テレビを点け』ると、『天才子役と騒がれていた』『ゆうちゃん』が主演するドラマが放送されていました。そんな中に帰ってきた母親と会話する中で『ポケベル』はまだ要らないのかと問われた奈央は、『私はいいや。面倒くさそう』と答えます。
    場面は変わり、『五限目の授業が終わった』後、『今度の日曜日、遊びにいかない?』と男女三人同士のお出かけを提案してきた亜紀ちゃん。しかし、ピアノの練習を理由にそれを断る奈央の口から『知らない男子となんて、遊びにいきたくないし』という言葉が出てしまいます。『二人の顔が、一瞬で強張った』という展開。『感じわるーい。なんか、バカにされてるみたい』と亜紀ちゃんに返されたところでホームルームによって会話は中断されます。そんな後、二人からの『無視が始』まりました。そして、『一週間後の、学級会で』、『最近、田中さんたちが、荒川さんのことを無視してることについて』という議題が出されます。そんな会で『学級委員の女子は語り出します。『荒川さんの家は、去年お父さんとお母さんが離婚して、荒川さんは家でお母さんのお手伝いとか、沢山してるんです。可哀想なんです…』。そんな会の後、あからさまに態度が変化していくクラスメイトたちと奈央のそれからの日々が描かれていきます…という冒頭の短編〈Scene1 斜め四十五度〉。高校時代の友人関係の中に飛鳥井さんらしい細やかな心の機微を見る好編でした。

    “とある女優の成長を軸に、様々な時代を生きる人々の心のささくれを丁寧に描いた六編”と内容紹介にうたわれるこの作品。六つの短編が連作短編を構成しながら展開していきます。そんな物語は上記でご紹介した作品冒頭の内容にも触れた通り、舞台は現代ではなく過去が描かれています。冒頭の〈Scene1 斜め四十五度〉には、図書委員として『1996年7月』の『返却スタンプ』を押す主人公・奈央の姿が描かれますが、それは今から30年近く前の物語です。物語は、短編を経るごとに時代がどんどん繰り下がっていきます。このように、複数の時代を描いていく構成の物語は決して珍しくはありませんが、そこには決まってお楽しみがあります。それこそが、その時代を感じさせる描写です。この作品では、90年代が舞台となる二つの短編にこんな時代表現が顔を出します。

     『二、三年生の派手なグループの人たちの間で流行り出したら、すぐに真似して二人もルーズソックスを履き出した』。

    これは、〈Scene1 斜め四十五度〉に登場するものですが、高等学校が舞台となる物語において、とてもリアルに時代を象徴します。そして、『ルーズソックス』の時代に流行ったものとして、こんなものも登場します。

     『テーブルの上に置いたお母さんのバッグから、電子音が鳴り出した。ポケベルだ』。

    さて、『ポケベル』とはなんのことでしょうか?このレビューを読んでくださっている方の年齢はマチマチです。『ポケベル』って何?という方もいらっしゃるかもしれません。場面はこんな風に展開します。

     『バッグからポケベルを取り出すと、「ちょっと電話してくるわね」と言って、お母さんは廊下に向かった』。

    そうです。『ポケットベル』、略して『ポケベル』はそれ自体で会話することはてきず、誕生当初は呼び出し音を鳴らすだけ、やがて数字を送ることができるようになったという通信機器です。

     『おやすみが0823とか』、『「愛してる」が、「14106」だ』

    物語では、そんなメッセージ例も会話の中に登場します。こんなに詳しく『ポケベル』が描写される作品も珍しいと思いますが、さらにこんなものもあります。

     『プリクラって言って、撮った写真をこうやってシールにできるんだよ。ゲーセンにあるの』。

    『ポケベル』と違って、今の世にも残り続ける『プリクラ』の黎明期はこんな会話が交わされていたのでしょうか。時代を特定させる表現を入れる作品は数多ありますが、この作品の表現は取ってつけたものではなく、会話の中に極めて自然に入れていく飛鳥井さんの上手さを感じさせるものだと思います。

    上記した通りこの作品は六つの短編が連作短編を構成しています。登場人物がゆるやかな繋がりを見せていくことを楽しめる作りにもなっています。この作品でそれ以上に作品同士を結びつけるのが、内容紹介に”とある女優の成長を軸に”と記されているものです。この作品が1996年7月から始まり、時代を繰り下がっていくのは、そんな各短編に、”とある女優”が成長していく様が背景として描かれているからです。それこそが、『天才子役と騒がれていた』『ゆうちゃん』と呼ばれる女優です。

     ・『セーラー服の女の子三人組が、話をしながら廊下を歩いている。「ゆうちゃん」と呼ばれた真ん中の女の子に見覚えがあった』。

     ・『「あ、ゆうちゃんだ」…「え、ゆうちゃんって、あの?」アップで画面に映っているOL役の女優を見ながら、僕は聞いた』。

     ・『「え?熱愛って、ゆうちゃんが?本当?誰と?」…この間までドラマでゆうちゃんの兄の役を演じていた、三十歳の俳優がお相手らしい』。

    『天才子役と騒がれていた』方が、成長しても人気を落とすことなく活躍されていくことがあります。人は誰だって歳をとっていくわけですが、『天才子役』として名前を馳せたような方は子どもの頃の印象が視聴者に強く刻まれる分、その”成長”は、視聴者自身の年齢との対比で強いインパクトとなって伝わってくるようなところがあると思います。この作品では、時代を繰り下がっていく連作短編という形式で見事にそんな感覚を楽しませてくれます。これから読まれる方には、『ゆうちゃん』の成長に是非注目してお読みいただければと思います。幸せな読後があなたを待っていると思います(意味深)(笑)。

    では、そんな六つの短編についてご紹介しておきましょう。

     ・〈Scene1 斜め四十五度〉: 高校で図書委員を務める奈央が主人公。『ちょっとずれた人』という印象の先輩とカウンターに座る奈央は、一方で亜紀ちゃんと悦ちゃんという二人の友人と仲良くしています。しかし、あることをきっかけに関係にヒビが入ってしまいます。そんな中、『学級委員』に家庭の事情を明かされた奈央は…。

     ・〈Scene2 雨にも風にも〉: 『昼夜逆転生活になってしまったのは、大学に行かなくなって一週間もしないうちだった』という今を生きるのは主人公の洋介。『東京の私大に入学』して一人暮らしを始めた洋介は、あることがきっかけで家に閉じこもる日々を送っています。『バイトやサークルが忙しくてさ』と母親に嘘をつく洋介…。

     ・〈Scene3 桜前線〉: 『目を覚ましたら、ラブホテルにいた』と、隣に眠る『昨夜知り合ったばかりの女の子』を見るのは主人公の平井。『結婚して四年…浮気なんてしたことのなかったこの僕が』と思う平井が家に帰るとパートに出かけて妻・明子がいない中、眠りにつきます。そして、帰って来た明子と何気ない会話をする平井は…。

     ・〈Scene4 水色の空〉: 『ところで、どうだった?翔子ちゃんは』と『声を潜めて』健一に訊かれ、『大丈夫よ。もう健一には、二度と連絡しないって約束してくれたわ』と返すのは主人公の純子。『不特定多数の女の子と広く浅く付き合う』健一は、『ややこしいことになる前に縁を切る』ために純子に『説得』役を依頼しています…。

     ・〈Scene5 今日の占い〉: 『ごめん。今日生理なんだ』と言うと、『舌打ちをして、大げさに寝返りを打って背中を向けた』耕次を見るのは主人公の由紀江。『気分屋で、感情をそのまま態度に出す』耕次と付き合い始めて半年という由紀江は、『次に会うときは、機嫌がいい耕次でありますように』と願う日々を送っています…。

     ・〈Last Scene どこかで誰かに〉: 『この作品の山場。ネタバレを避けるために伏せます(笑)。

    六つの短編には、『1996年7月』からこの作品の単行本が刊行された2010年までの約13年の時代が描かれていきます。上記した通り、そこには、『ルーズソックス』や『ポケベル』が日常にある時代からどんどん現代に近づいていく時間の流れが描かれていきます。その一方で、それぞれの短編に登場する主人公たちの物語は、決して古ぼけてはいません。〈Scene1 斜め四十五度〉の主人公・奈央はみんなに『可哀想』という視線を向けられることに『辛くないし、可哀想でもないから、私』という日々を過ごしています。〈Scene2 雨にも風にも〉の主人公・洋介は、『東京の私大に入学』して始まった一人暮らしの中で『世の中に溢れる「理不尽なこと」や「嫌なこと」にぶち当たって、外に出られなくなっ』た今を過ごしています。そして、〈Scene5 今日の占い〉の主人公・由紀江は、付き合い始めて半年という耕次の『気分屋で、感情をそのまま態度に出す』態度に思い悩んでいます。主人公たちの苦しみは決して特定の時代にあるものではなく、いつの時代にもあるあるとして語られるものです。物語は、そんな彼らがどんな風にその苦しみを乗り越えていくかを描いていきます。しかし、そこには必ずしも清々しい結末が用意されているわけではありません。えっ!という結末含め、世の中容易くは渡っていけないということを感じさせる物語がそこにあります。その一方で、全編に渡って物語の背景に、『天才子役と騒がれていた』『ゆうちゃん』の今がそれぞれ描かれていきます。そして、そんな物語の結末を飾る〈Last Scene どこかで誰かに〉には、読者をあっ!と驚かせる物語が描かれています。読み終えて、この作品がこの最後の短編のために存在したことを実感する瞬間の到来、これから読まれる方には是非ともその結末を飾る物語を楽しみにしていただければと思います。

     『「新CMキャラクターは、あの、ゆうちゃんに決定!」というコピーが、トップ画面に躍っている』。

    『1996年7月』から約13年の六つの時代を描いていくこの作品。そこには、思い通りにはいかない現実に向き合いながら日々を生きる六人の主人公たちの姿が描かれていました。時代表現が90年代の空気感を上手く伝えるこの作品。『天才子役と騒がれていた』『ゆうちゃん』の成長を物語の背景に見るこの作品。

    さまざまに描かれていく登場人物たちそれぞれの思いの中に、人が戸惑う瞬間の心の機微を見た、そんな作品でした。

  • 久しぶりに好きな時間軸が当たりました涙
    中々こういう風に、最初関係なさそうな人物が度々出てきて、最後に繋がる。っていう本と出会うのはないので、嬉しかったです。
    こういう本は、読み返すと更に面白さが増すので本当に大好きです。

    scene3とscene5はすごく身にしみました。
    なんとなく学校行きたくなくて、学校休んでずっと本を読んで過ごしていました。
    去年は人間関係から逃げて皆勤取れたんだ。とか、皆勤なんて寂しい人間が取るものだ。とか、自分で自分を傷つけてました。
    休んだところで、結局逃げてるには変わりないのに、踏ん切りがつかなくて…。ていう感じですが、scene3のラストで、ちょっと元気がでました。
    ”きっと今は簡単に負けてしまう”
    また明日から頑張ればいいや。って思えました。

    scene5は、一度そういう男性に引っかかってるので、没頭しました。
    今現在も、”俺は仕事が忙しくて疲れてるんだよ。由紀江ぐらい俺のこと癒してくれよ”とかいう人はいますが、心配はしてくれません(笑)
    ある程度の心配はしてほしいなと、ちょっと要求してしまいます。
    彼から、サボりだろ。さっさと学校来い。って言われたら、すぐ用意して行くのに(笑)

  • 飛鳥井さんの恋愛小説が一番好きかも。
    どの作品も心情の描写が丁寧で、思わず自分に重ね合わせて、実際にその人物の悲しみ、喜びを味わっている気持ちになってしまう。
    あとがき通り、観察眼がとても優れている方だと実感。

  • 「ゆうちゃん」がキーワードな全六話。
    どの話も好きだけれど、印象に残った、これからも使いたいと思うような言葉がふたつ。
    ひとつめは、一話の、ゆうちゃんがストーカーに襲われかけたときに言う「怖かったけど、負けたくなかった」。生きているといろいろ理不尽なことも辛いことも、たくさんあるけど、頑張ろうって思えるひとこと。
    ふたつめは、六話のゆうちゃんの旦那、祐一のひとこと。「他にいいなって思う人ができたとしても、それって彼女を想ってるのとは別の心の中の場所でいいなと思うだけで。彼女のことを好きじゃなくなるなんてことは一生ないんじゃないかと思ったんです」
    今、わたしもそう想うし、そう想っててほしいなって思うので、この本が好きになったひとこと。

  • 「生きていれば、誰かに影響を与える」が解説通り縦に貫かれたテーマ。
    6編の連作。

    連作で、他の物語に関連がある物って、大好きです。ああ、この子はここでつながっていたんだってハッとする瞬間が好き。

    それにしても、明子に物凄くイライラしたなぁ。
    嫌いなタイプなのだろうなσ(^_^;)

  • 色々と形を変えながらも縁というものは続いていくものだから、それぞれに影響を受け、影響を与えながら寄り添えるというのはとてもステキなことに思える。


  • 1人の女優の成長と、様々な人々の悩みや葛藤を描いた作品。

    同じ人間でも、見る角度や置かれた立場によって他者のイメージは変わる。

  • *とある女優の成長を軸に、様々な時代を生きる人々の心のささくれを丁寧に描いた六編。最後に新鮮な驚きと爽やかな感動が待っている、連作小説の傑作*
    テーマは「自分の存在が誰かに影響を与えるということ」ですが、どこにでもいるような男女の、どこにでもありそうな出来事なだけに、無理なく入り込めるし、逆に反発したり。物語が本当にリアルなので、登場人物の追体験をしている気分になります。そこが一番の魅力。「ゆうちゃん」の成長を絡めた構成も新鮮だし、見る人や角度にによって感じ方が違う面白さも十二分に味わえる。その上、連作なので、所々で前作の登場人物のその後が垣間見えて二倍楽しめる。「どこかで誰かに」でパズルのピースが合わさったら、もう一度最初から読み返したくなります。二度読みの楽しさも満載です。

    • しのさん
      こんばんは(#^^#)
      コメントはじめましてです( *´艸`)
      この作品大・大・大好きです。
      飛鳥井さんを大好きになったきっかけの作品...
      こんばんは(#^^#)
      コメントはじめましてです( *´艸`)
      この作品大・大・大好きです。
      飛鳥井さんを大好きになったきっかけの作品でした。
      本当に素晴らしい連作短編集でしたよね。
      読まれてるのが、とっても嬉しくって突然のコメントごめんなさいね(;'∀')
      2017/03/16
  • 最近ミステリー系の小説を読むことが多かったので、久しぶりにほんわかする話を読んだ気がします。
    まぁこの短編のなかにはほんわか系じゃない話もあったんですが、全体的には読んだら幸せになれる話でした(全体的にというより、全体を通してと言ったほうが良いかも)。

    連作短編集ということでタイハピ的な感じでした。
    ひとつひとつ別の人の物語だけど、いろんなところで人物間のリンクがあって、全編を通して「ゆうちゃん」が描かれています。
    「ゆうちゃん」の成長とともに時間軸が進んでいくという感じですね。
    私はやっぱり最初と最後の話が好きですね。
    「斜め四十五度」に出てくる先輩は私的に1番好きなキャラクターだったので(勝手に『潔く柔く』の梶間くんをイメージしました)、その後も何回か出てきて嬉しかったです。

    私もどこかで誰かに影響を与えてるんでしょうかね。
    私は周りのいろんな人から影響を受けてると自分でも思います。
    「ゆうちゃん」みたいに不特定多数の人に影響を与えるようにはならなくていいから、周りの人たちに良い影響を与えられてたらなと思います。

  • 飛鳥井さんのこういう話、結構好き!
    最後のゆうちゃんに気付いた時は小さなぞわぞわを感じられて満足でした!

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著者プロフィール

1979年生まれ、愛知県出身。2005年 『はるがいったら』 で第18回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。11年に上梓した 『タイニー・タイニー・ハッピー』 がベストセラーとなり注目を集めた。他の著書に 『君は素知らぬ顔で』(祥伝社文庫) 『女の子は、明日も。』 『砂に泳ぐ彼女』 など多数。

「2021年 『そのバケツでは水がくめない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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