- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396338909
感想・レビュー・書評
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R1.7.14 読了。
『「蜩の記」は、読み始めてしばらくすると分かるように、生命の終わりを告げる物語である。死に近づくにつれて人間は何を思い、どう行動し、どのような姿でこの世を後にするのが人間らしいかを、するどく問いかけることが最大の読みどころといえよう。中略。なので、世を去るべきかどうか、が問題ではない。去ると決まった以上はその日に向けて人としてどう生きるかが肝心で、その1点から真価は定まる。』…解説より。
同名の映画を先に見た後で、小説を読んだ。映画では分かりにくい登場人物達の想いが、小説で描かれていて、ああ、あれはそういう事だったんだと納得しながら、読み進められた。昔の人達の気概など、受け継がれてほしい大切なものを教えられた気がします。
・「ひとは心の目指すところに向かって生きているのだ、と思うようになった。心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、命を絶たれることも恐ろしくはない。」
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山本周五郎の「樅の木はのこった」に続いて読んでみたら、同じ匂いの小説だった。しかし個人的に好みなのは「蜩の記」に軍配があがる。
郡吉の今ある境遇での清々しさに感涙した。
とても素晴らしい小説でした。 -
恥ずかしながら、初めて作者の本を読んだのだが、これが面白かった!日本文学、侮るべからず。
私の中では、時代物にまた新たな傑作が。
百田尚樹「影法師」、冲方丁「光圀伝」、藤沢周平「蝉しぐれ」等に連なる名作でした。
ってことで、作者のことを調べてみたら、本作品を書いた5年後の2017年に亡くなっていた・・
葉室 麟(はむろ りん、1951年1月25日- 2017年12月23日)は、日本の小説家。福岡県北九州市小倉生まれ。本名・本畑雄士。
福岡県立明善高等学校卒業。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て、2005年に江戸時代元禄期の絵師尾形光琳と陶工尾形乾山の兄弟を描いた『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞。
50歳から創作活動に入り、4年後に文壇デビューを果たした。2007年、『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞する。2012年、『蜩ノ記』で第146回直木三十五賞を受賞する。久留米市を拠点に、敗者や弱者の視点を大切にした歴史時代小説を生み出した。
2017年12月23日午前2時、病気により福岡県福岡市の病院で死去。病名は明かされていない。66歳没。
2018年8月17日、都内でお別れの会が開かれ、小郡市の直木賞作家東山彰良は、「葉室さんは作品に自身の美学や哲学を込めていた。それはどんなにぶざまでも、どんなに理解されなくても、正しいことは美しいのだという美学。その美しさがきっと、誰かを救うという信念の下に小説を書いていた」と語り、八女市黒木町出身の直木賞作家安部龍太郎は、「優しく、思いやりが深い。自分よりも人のことを先に考える。人の痛みが分かる苦労人でもあった」と語り、故人を偲んだ。
文学賞受賞・候補歴:
2005年 - 『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞受賞。
2007年 - 『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞。
2009年 - 『いのちなりけり』で第140回直木賞候補。
2009年 - 『秋月記』で第22回山本周五郎賞候補、第141回直木賞候補。
2010年 - 『花や散るらん』で第142回直木賞候補。
2011年 - 『恋しぐれ』で第145回直木賞候補。
2012年 - 『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞。
2016年 - 『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。(Wikipedia)
かなりデビューが遅い作家だったようですが、本作品は映画化されていたということで、もしやと思って確認したら、この映画、見てました。そして、私の評価は「時間があれば」。我がことながら、この評価の落差と記憶力の衰えに愕然とする。 -
徳のある正々堂々とした生き方が近道。
時代物としては久し振りに感銘を受けた。
何より、この文章の美しさにまいった。 -
時は、江戸時代。
前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と10年後の切腹を命じられた秋谷が暮らすのは、九州の山間の村でした。
そこに遣わされた庄三郎の目を通して感じる清逸な世界観と美しい自然描写に心が洗われました。
10年後の切腹の命、すなわち余命は10年。
それも、病で命を落とすのではなく、自らの手で愛する家族のいる世界を後にするのは想像を絶する痛みでしょう。
その葛藤が書かれているのかと思いきや、主人公は清廉な人柄で、心静かに穏やかに、確固たる信念を持って生きていました。
限られた生をどのように生きていくか、人間らしく、親らしく、夫らしく生きるとはどういうことか、常に心に抱きながら生きているからか、主人公の人との関わりのなんと深くやさしいことか。
自分の生き方について改めて考えさせられました。
ひとは心の目指すところに向かって生きている。
心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、命を絶たれることも恐ろしくはない。
私もいつか、そんな風に思えるんだろうか。 -
限りある生命を如何にして締めくくるか、死を迎えるまでの日々の生き方を問う慟哭の時代小説である。徳川の閉ざされた武家社会に蠢く人々の宿命的な生き様が、哀切の情念で切々と綴られていく。人の心の気高さに、万感の想いが募ってやまない。
-
人は誰でも限られた時間の中で生きている
終焉は明日かもしれないし10年後あるいは50年後かもしれない
もし明日命果てようとも恥ずかしくなく志も優しさも偽りなくありたいと思った
丁寧にひたすら言葉をつなぐ葉室麟の世界は居心地が良かった -
限られた命とどう向き合い、いかに生きるか。
秋谷氏の生き様は淡々と、しかしその一本気は心に深く染み入る。
(秋谷氏の安定感に対し、庄三郎は一人前の武士として、少し頼りない印象もあったかな)
この忙しない、物質的な現代社会を過ごす上で、そのような気概保ち続けることは難しいけれど、心の片隅に置き続けたい清廉さ。
著者プロフィール
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