- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396341121
感想・レビュー・書評
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タイトルに惹かれて買った短編集。
この作家さんの作品は初めて読んだ。
後半に進むほどに、この作家さんが
本気で小説をものする時の実力が
垣間見えたような、そんな気がする。
はっとさせるもの、確かにある。
「君の幸福は僕の幸福」の読後感は、
まさしくこのタイトルそのままに。
胸に幸せの花が広がった。
この作品に触れただけでも、
読んだ甲斐はあったと思う。
この作家さんの生き方、暮らし方には
共鳴はできないのだけど。
でも、美しいものをとらえる感性を
お持ちの方なのだと、直感で思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
のんきな印税生活を送る中年作家の日常を描く「A DAY」ほか、幸福のありかを探すような作品集。
生きていくことは、それだけで苦行のようなもの。そんな毎日でも、ちょっとした出来事に幸せを感じて、生きることの充実感を得ることもある。♪みろよ青い空 白い雲 そのうちなんとかなーるだろおおお ってやっぱり名曲だわ。 -
何年かぶりかで、辻内智貴の作品を読んだ。5編から成る短編集である。それもそのはず、6年ぶりの作品らしい。辻内智貴らしい柔らかい、詩的で哲学的な表現は相変わらずなのだが、作品全体に喪失感というか、強く死を意識しているかのような空気を感じた。
『無題』。東日本大震災に対する辻内智貴の思いが伝わる掌編。潔さを感じると共に正しい立ち位置だと共感した。
『A DAY』。死と人生をテーマにした連作中篇。ずっと後半で分かるのだが、主人公の俺は52歳の中上竜二という小説家であり、辻内智貴自身がモデルのようだ。小説家でありながら、小説も書かずに無為に過ごす主人公…しかし、死や人生、過去と様々な想いを巡らせる。
『阿佐ヶ谷』。人生の半ばを過ぎて、死を意識しているかのような想いが綴られる掌編。
『記憶』。辻内智貴としては珍しいサスペンスフルな短編。終身刑が確定した殺人犯がロボトミー手術を受け、山荘の管理人になるのだが…
『君の幸福は僕の幸福』。ホッとするような寓話的な短編。本当の幸福はどこにあるのだろう。 -
久々の辻内作品。
辻内さんの文章というか表現というか、思想というかがとっても好きで、その雰囲気はそのままなんだが、期待が大きかったのか以前の作品ほどの印象は残らなかった。「記憶」なんかはちょっと意外な作品だったりもしたし。
それでも1日ですっと読み終わってしまった。 -
タイトルの通り、「人生について考えること、語ること」をテーマにした短編集。
連作となっている『A DAY』は、辻内智貴さん本人の日常を描いているのでは?
という印象を受けるエッセイに近い物語で、ちょっと小説っぽくはない。
一番面白かったのは『記憶』かな。
政府によって以前の記憶を消され、山荘の管理人として働くよう指示された元殺人犯。
彼はそこで「いい人」になり、管理人の職務を全うしていたのだが、ある時若い
男女4人組がその山荘に、とある思惑を持って訪れたことにより、事態は急変して
いって・・・といったお話。
『世にも奇妙な物語』風と言っていいかもな。
うーん、でも、その他は期待外れ。なんだか読み疲れてしまった。
『青空のルーレット』『いつでも夢を』のような良作を期待しちゃいけないのかなぁ。。。 -
大好きな辻内さん、余りに寡作です。
読み始め「おお!」と思います。何やら雰囲気が違います。いや、正確に言うと「違う気がします」。何せ6年ぶりの新作です。前作をしっかり覚えている訳では無く。
最初は『A DAY』という福岡在住のミュージシャン兼めったに描かない小説家が主人公の連作短編。私小説的です。
何やら文体もやや軽めに変わった気がします。やや退廃的で破滅的な色合も少し強まったかも。しかしその中で突然の様に描かれる本質的な優しさは変わっていません。
クサさを感じられる人も多いかもしれません。しかしやはり私は辻内さんの作品が好きです。 -
だらけちゃった中年作家のダラケた日常。
ダラダラさに癒される?