潮鳴り (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 259
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396342098

感想・レビュー・書評

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  • 時代と場所を江戸時代は九州の羽根藩に借りての、失敗人生を再生する物語です。

    ゆえあって(友人が葉室さん好きなので)読みましたけど、そして最後まで読ませられましたが、
    作者や作品が悪いのではなく、同じ作者をもう13冊も読むと飽きて感想はもういいかなと、
    無精を決め込んで、感想と違うことを言おうかな。

    *****

    潮鳴りといえば
    小学一年生の夏休み、海水浴に生まれて初めて連れて行ってもらった時のことを思い出します。
    妹や弟はまだ幼児で、わたしひとり、父が連れっててくれました。

    海岸は当時住んでいた名古屋から近い「富田浜(とみだはま)」というところ。
    (今や、もう浜辺はなく埋め立てられてしまっていると思いますが)

    白い砂、広い海、ざーん、ざーんの波音、人々の喧騒
    海を意識したのが初めてでびっくりして、呆然とした記憶があります。

    よしず張りの小屋も珍しく、そこから見る海のけしきのきれいなこと、
    人々の様子のおもしろいこと、見飽きませんでした。

    ひと泳ぎ、もとい、ひと浸かりして、母が作ってくれたおにぎりを食べてから、
    磯臭い砂のざらざらのござで、昼寝する父のそばで絵を描きました。
    (わたしの祖母がしまっておいたくれた)その時の絵日記が残っています。

    役所勤めの父親、せっかくの日曜日をつぶして長女だけのためにしてくれたこと。
    思い出を作ってくれた、若い父の姿が目に浮かびます。

    そして帰りの混んだ電車のなかで日に焼けた背中を痛く思いながら、
    ぐっすり眠ったしまったことをなつかしみます。

    昭和23年夏、まだまだ戦後の混乱おさまらず、余暇が贅沢だった時代。

  • 「落ちた花を再び咲かせる」、まさに俺の一番好きなテーマ、人生再生の物語である。

    襤褸蔵と漁師にバカにされるまで落ちた武士、櫂蔵
    男に裏切られ、絶望の末娼婦となった、お芳
    三井越後屋の大番頭から放浪の俳人となった咲庵
    借金漬けでどうしようもなく経済破綻している羽根藩

    登場人物も舞台も堕してしまったところからの再生を志し、あがいていくのである。その様をみて「他人ごとではない、俺だってあがいてみせるさ」と読者を勇気づける、そういう小説が楽しくないわけがない。

    実は、この小説で一番魅力的だったのは、家は堕ちても、心根は堕ちず孤高を保った主人公の継母「染子」ではないだろうか。武家の妻としての矜持を抱え込むように持ち、その生きざまを貫き通す。駄目なものは駄目、しかし良いと思ったものや、見直すべき価値感があれば、自分の中で修正し認め受け入れ育んでいく。その凛とした生き様は、一服の清涼剤のごとく読んでいて気持ちよかった。

  • 自らの不始末からお役目を解かれ、家督を弟に譲って自堕落な乞食生活を送り、襤褸蔵と蔑まれる伊吹櫂蔵が、自害した弟の汚名を晴らすため、藩の財政に纏わる事件の真相を暴く。

    本作のテーマは、「落ちた花は二度と咲かぬ」のか? いや、再び咲かせたい。二度目に咲く花は苦しみや悲しみを乗り越えて美しく咲くだろうから、といったところ。

    水戸黄門的な勧善懲悪の時代小説だが、スッキリした読後感。面白かった!

  • 直木賞作家【葉室麟】の前作『蜩ノ記』と同じ豊後羽根藩(ぶんご うねはん)を舞台に、江戸幕府の階級社会に蠢きながら生きる人々の哀切を切々と謳い上げた感動の時代小説。ひとたび地に落ちた花でも、いま一度咲かせることが出来ないか・・・。何もかも失い荒みきった主人公(伊吹櫂蔵)と、どん底の不幸を背負って悔恨のうちに生きる人々が、失われた人生の再起に挑む姿には、慟哭するほか術がない。【藤沢周平】や【山本周五郎】が語り紡いできた、人生の機微と悲哀に満ちた読み応え十分の物語である。

  • 面白かった!
    「蜩ノ記」に続く羽根藩シリーズ第2弾となっていますが、羽根藩が舞台と言う事以外は関係ありません!
    池井戸潤のような企業小説の陰謀系の勧善懲悪ストーリ+時代小説の武士の生き様を加えたような印象(笑)
    とはいえ、本質は主人公の再生の物語です。

    ストーリとしては、
    俊英と謳われた豊後羽根藩の伊吹櫂蔵は、役目をしくじりお役御免。漁師小屋で”襤褸蔵(ぼろぞう)”と呼ばれる無頼暮らしをしている中、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知ることになります。直後、なぜか藩から出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がることに。
    弟の遺志をつごうとしますが、そこには様々な苦難が..
    さらには、藩内にうごめく謀略・陰謀。どう立ち向かっていくか..
    といった展開。
    そして、櫂蔵を支える女お芳。そのお芳に厳しくあたる義母の染子のストーリも素晴らしい!

    「ひとはおのれの思いにのみ生きるのではなく、ひとの思いをも生きるのだと」
    「わが命は、自分をいとおしんでくらたひとのものでもあるのですね」

    ぐっと胸が熱くなる言葉です。

    とってもお勧め!!

  • 落ちた花は二度と咲かない
    落ちたあとに咲く花はより美しい

  • 『蜩の記』に続き、葉室作品二作目。羽根藩シリーズ、第二弾。時代もので初めてのシリーズ読み。去年の読書で一番の収穫は時代小説の面白さを知れたことでした^^ その一端を担ったのが葉室さんだした!前作も面白かったんですが、こちらも負けず劣らず…でした。男性キャラたちも勿論良いのですが、女性キャラ、特にお芳さん。一本筋が通っていて素敵な方でした…。次作『春雷』もストックしておりますw 第四弾『秋霜』もそろそろ文庫化しそうだし、楽しみだなぁ。星四つ。

  • 【作品紹介】
    俊英と謳われた豊後羽根藩の伊吹櫂蔵は、役目をしくじりお役御免、いまや“襤褸蔵”と呼ばれる無頼暮らし。ある日、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知る。弟を救えなかった櫂蔵は、死の際まで己を苛む。直後、なぜか藩から出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がるが…。“再起”を描く、『蜩ノ記』に続く羽根藩シリーズ第二弾!

    【感想】
    葉室作品は鉄板の5つ星★★★★★。
    あくどい奉行、商人を退治する様は、まさに時代小説ならではの展開。
    葉室作品はどんどん読みたい。

  • 2018.?.? 読了

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    俊英と謳われた豊後羽根藩の伊吹櫂蔵は、役目をしくじりお役御免、いまや“襤褸蔵”と呼ばれる無頼暮らし。ある日、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知る。弟を救えなかった櫂蔵は、死の際まで己を苛む。直後、なぜか藩から出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がるが…。“再起”を描く、『蜩ノ記』に続く羽根藩シリーズ第二弾!

    平成29年11月27日~12月1日

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著者プロフィール

葉室 麟(はむろ りん)
1951年1月25日 – 2017年12月23日
福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
上記以外の代表作に、2018年9月に岡田准一主演で映画化される『散り椿』、第22回山本周五郎賞候補及び第141回直木賞候補だった『秋月記』がある。

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