愚者の毒 (祥伝社文庫)

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レビュー : 43
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396342623

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいる途中に重すぎて、何回か読むの辞めようかと思ったし読了後も、ずっしりと重い内容が心に残った。

    大きく分けて3つの構成から成っていて、その章の中でも過去と現在が行き来する。でも、ごちゃつく事なく読める。

    この世の底辺で生きてきた、希美とユウ。本当に救われない事ばかりで読んでいるこちらまで、辛くて絶望的な気持ちになった。やっと救われたと思ったのもつかの間、どうやったって過去の暗い影が2人を追い詰め、苦しめ、それを忘れる為にまた嘘と罪を重ねて、塗り固める。。。

    そんな中で出会った葉子と難波先生の存在。
    2人にとっては、どんより厚い雲間からさす陽光のようだったんだろうな。
    葉子も葉子で暗い過去を引きずりながら生きてきて、そんな時に出会った希美と難波先生は冷えた身体をそっと暖める、柔らかい毛布みたいな存在だった。

    後半のパートに行くに従って真相が明らかになり、伏線の回収もちゃんと書かれているので、ミステリーとしては良い作品。

    ただ、疲れていたり心がちょっと弱っている時に読むのはあまり、おすすめしないかも(笑)

  • 初宇佐美さん。よかった!時代、場所、家庭環境の軸を複層に、飽きさせることなく一気読みさせる描き方に痺れた。どの家庭の底流にもあるそれぞれの圧倒的な哀しさと諦め。「家族」という響きが甘美な匂いを放つものというのが幻想にさえ思える貧困や絶望のなかの子どもたち。必死で逃げて、何か温かくて、確かなものを手にしたかった主人公の希美とユウの哀しみに惹き付けられる。多少多めの登場人物でも最後まで混乱せず、種明かしにも納得。こういう作品をもっと読みたい。

  • ふとしたきっかけから出会った二人の女性。
    外観も内面も全く違う二人だが、いつしか親友同士へと。
    望美から紹介され、ある一家の家政婦として住み込みで働きはじめる葉子。

    『入らずの森』から読み始め、これで3冊目となる宇佐美作品。
    本書が一番好みだな。
    炭鉱町での貧困生活、そこからの犯罪、と重々しい雰囲気なのですが、登場人物たちがどこでどう繋がるのかが気になり一気読み。
    ラストはやはり切なかったけれど、どこか吹っ切れた気持ちにもなり、爽やかな感じも。

  • なかなか読み応え有って一晩で読み切ってしまいました。映像化してほしい。

  • 読むのに体力が要ると聞いていましたが、重量級。

    職安の初歩的ミスで知り合った2人の女性。これまで人づきあいを避けてきた彼女たちが無二の親友に。

    不穏な空気を漂わせながらも第1章はまだ平和。第2章以降はキツイ、本当にキツイ。登場人物の名前のせいなのか、なぜか読んでいるあいだじゅう、山崎ハコの『織江の唄』が頭の中を流れ、読後に同じ筑豊炭鉱が舞台の『青春の門』の主題歌だったと気づく。内容はまるで違うのに、どん底感が一緒。

    たいがいヘヴィー(で好き)だった『雪の鉄樹』を上回るヘヴィーさ。誰が誰なのかは予想がついたからその点に驚きはないけれど、綿々と続く過去の描写がつらすぎて、なのに読まずにいられません。

    生きることは苦しい。それでも生きてゆく。

  • かなり重い話だけど、面白い。
    車に乗ってしまった場面は、うわ~って叫びそうだった。

  • 図書館で借りた本。過去と現在が交互に表現されてる構成なので、途中でネタバレのような核心は分かる。だが、そこに至るまでの過去が壮絶でやりきれない思いが募るばかり。筑豊炭鉱の末期の劣悪な環境で中学生時代を育った男女。当時の計画的な殺人隠匿は2人が生きていく為にどうしようもなかったと思えるが、それは因果応報に繋がる。悲しいミステリー。

  • 妹の遺した多額の借金と幼い子供ー甥を抱えて借金取りから逃げる生活をしている女性ー葉子。
    彼女は職安で一人の女性と出会う。
    その女性ー希美から資産家の家での家政婦の仕事を紹介された葉子は屋敷の主である先生とその息子と静かで落ち着いた生活を手に入れる。
    事件以来、ひどい火傷の傷を負い、口もきけなくなった甥も屋敷の主に心を開いていく。
    そんな折、森で死にかけていた甥を見殺しにしようとした事をきっかけに彼女は自分と甥の将来について考える。
    そして、借金取りに居場所をつきとめられて逃げようとした所を希美の勤め先の弁護士に助けられ、甥を養子に出す事を決意する。

    前半はそんな話と、過去を追想する老婦人の様子が描かれている。
    そして、後半は希美と屋敷の跡取り息子の過去について描かれている。
    そして、ラストの結び。
    よくできた話だと思った。
    白ける事を書くと、ラストは想像した通りだったけど・・・。

    私はこの話を読んでいる時、途中から「これって小池真理子の「恋」に似てるな・・・」と思った。
    解説をさらっと読むとそのような事が書いてあった。
    何となく読んでいると、「恋」を思いださせる話ではあるけど、あれよりは泥くさい話で、文章も武骨だと思う。
    すぐに切る文体がちょっと気になった。

    自分が望むように人は生きていくようになるのかもしれない。
    それが不幸であっても・・・。
    自分を罰して、自分は幸せになってはいけないと心の奥底で思っていたらそのような人生になる。
    ここに登場する罪を犯した人はもっと早くに堂々と罰を受けたら良かった。
    それでも過去におかした事は追いかけてきて苛まれるのだと思うけど。
    身の内に毒のある人間は周囲に毒をまき散らし、それが連鎖していく。

    希美が別れた後の妹弟はその後、どうなったんだろう?とふと思った。

  • ミステリーの部分はまあ、割と早めにわかるんだけど、それでも読ませる。ここまでの偶然のめぐりあわせってのは無いとは思うけど。

  • 5歳の言葉を話さなくなってしまった子どもを抱えて
    葉子は職探しをする。ハローワークで知り合ったのは同じ誕生日の希美。
    希実が葉子に仕事を紹介したところから、
    2人の過去と今と未来が動く、と言うお話。

    1章で暗くて辛くて
    なんとか生きてほしいと思いながら読んだが、
    2章ではさらに辛くて
    沼にはまっていくようだった。

    全く別のものに着替えても
    自分は自分でしかない。
    それ以上でも以下でもなく
    自分のしたことが消えることもないのだ。

    終盤は伏線が綺麗に回収されて納まるが、
    難波先生の言葉がこんな形で発揮されるなんて。
    それは残念でならない。
    ノンとユウに終わらせてほしかった。

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著者プロフィール

愛媛県生まれ。2006年『るんびにの子供』で第1回『幽』怪談文学賞〈短編部門〉大賞を受賞。17年、ミステリー小説『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉を受賞する。日常に潜む怪異を描き、恨みや妬み、欲や貧困など、人の心の闇や怖さを浮き彫りにしたミステリーが高く評価されている。

「2017年 『角の生えた帽子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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