愚者の毒 (祥伝社文庫)

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レビュー : 44
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396342623

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいる途中に重すぎて、何回か読むの辞めようかと思ったし読了後も、ずっしりと重い内容が心に残った。

    大きく分けて3つの構成から成っていて、その章の中でも過去と現在が行き来する。でも、ごちゃつく事なく読める。

    この世の底辺で生きてきた、希美とユウ。本当に救われない事ばかりで読んでいるこちらまで、辛くて絶望的な気持ちになった。やっと救われたと思ったのもつかの間、どうやったって過去の暗い影が2人を追い詰め、苦しめ、それを忘れる為にまた嘘と罪を重ねて、塗り固める。。。

    そんな中で出会った葉子と難波先生の存在。
    2人にとっては、どんより厚い雲間からさす陽光のようだったんだろうな。
    葉子も葉子で暗い過去を引きずりながら生きてきて、そんな時に出会った希美と難波先生は冷えた身体をそっと暖める、柔らかい毛布みたいな存在だった。

    後半のパートに行くに従って真相が明らかになり、伏線の回収もちゃんと書かれているので、ミステリーとしては良い作品。

    ただ、疲れていたり心がちょっと弱っている時に読むのはあまり、おすすめしないかも(笑)

  • 初宇佐美さん。よかった!時代、場所、家庭環境の軸を複層に、飽きさせることなく一気読みさせる描き方に痺れた。どの家庭の底流にもあるそれぞれの圧倒的な哀しさと諦め。「家族」という響きが甘美な匂いを放つものというのが幻想にさえ思える貧困や絶望のなかの子どもたち。必死で逃げて、何か温かくて、確かなものを手にしたかった主人公の希美とユウの哀しみに惹き付けられる。多少多めの登場人物でも最後まで混乱せず、種明かしにも納得。こういう作品をもっと読みたい。

  • ふとしたきっかけから出会った二人の女性。
    外観も内面も全く違う二人だが、いつしか親友同士へと。
    望美から紹介され、ある一家の家政婦として住み込みで働きはじめる葉子。

    『入らずの森』から読み始め、これで3冊目となる宇佐美作品。
    本書が一番好みだな。
    炭鉱町での貧困生活、そこからの犯罪、と重々しい雰囲気なのですが、登場人物たちがどこでどう繋がるのかが気になり一気読み。
    ラストはやはり切なかったけれど、どこか吹っ切れた気持ちにもなり、爽やかな感じも。

  • なかなか読み応え有って一晩で読み切ってしまいました。映像化してほしい。

  • 読むのに体力が要ると聞いていましたが、重量級。

    職安の初歩的ミスで知り合った2人の女性。これまで人づきあいを避けてきた彼女たちが無二の親友に。

    不穏な空気を漂わせながらも第1章はまだ平和。第2章以降はキツイ、本当にキツイ。登場人物の名前のせいなのか、なぜか読んでいるあいだじゅう、山崎ハコの『織江の唄』が頭の中を流れ、読後に同じ筑豊炭鉱が舞台の『青春の門』の主題歌だったと気づく。内容はまるで違うのに、どん底感が一緒。

    たいがいヘヴィー(で好き)だった『雪の鉄樹』を上回るヘヴィーさ。誰が誰なのかは予想がついたからその点に驚きはないけれど、綿々と続く過去の描写がつらすぎて、なのに読まずにいられません。

    生きることは苦しい。それでも生きてゆく。

  • かなり重い話だけど、面白い。
    車に乗ってしまった場面は、うわ~って叫びそうだった。

  • 図書館で借りた本。過去と現在が交互に表現されてる構成なので、途中でネタバレのような核心は分かる。だが、そこに至るまでの過去が壮絶でやりきれない思いが募るばかり。筑豊炭鉱の末期の劣悪な環境で中学生時代を育った男女。当時の計画的な殺人隠匿は2人が生きていく為にどうしようもなかったと思えるが、それは因果応報に繋がる。悲しいミステリー。

  • 妹の遺した多額の借金と幼い子供ー甥を抱えて借金取りから逃げる生活をしている女性ー葉子。
    彼女は職安で一人の女性と出会う。
    その女性ー希美から資産家の家での家政婦の仕事を紹介された葉子は屋敷の主である先生とその息子と静かで落ち着いた生活を手に入れる。
    事件以来、ひどい火傷の傷を負い、口もきけなくなった甥も屋敷の主に心を開いていく。
    そんな折、森で死にかけていた甥を見殺しにしようとした事をきっかけに彼女は自分と甥の将来について考える。
    そして、借金取りに居場所をつきとめられて逃げようとした所を希美の勤め先の弁護士に助けられ、甥を養子に出す事を決意する。

    前半はそんな話と、過去を追想する老婦人の様子が描かれている。
    そして、後半は希美と屋敷の跡取り息子の過去について描かれている。
    そして、ラストの結び。
    よくできた話だと思った。
    白ける事を書くと、ラストは想像した通りだったけど・・・。

    私はこの話を読んでいる時、途中から「これって小池真理子の「恋」に似てるな・・・」と思った。
    解説をさらっと読むとそのような事が書いてあった。
    何となく読んでいると、「恋」を思いださせる話ではあるけど、あれよりは泥くさい話で、文章も武骨だと思う。
    すぐに切る文体がちょっと気になった。

    自分が望むように人は生きていくようになるのかもしれない。
    それが不幸であっても・・・。
    自分を罰して、自分は幸せになってはいけないと心の奥底で思っていたらそのような人生になる。
    ここに登場する罪を犯した人はもっと早くに堂々と罰を受けたら良かった。
    それでも過去におかした事は追いかけてきて苛まれるのだと思うけど。
    身の内に毒のある人間は周囲に毒をまき散らし、それが連鎖していく。

    希美が別れた後の妹弟はその後、どうなったんだろう?とふと思った。

  • ミステリーの部分はまあ、割と早めにわかるんだけど、それでも読ませる。ここまでの偶然のめぐりあわせってのは無いとは思うけど。

  • 5歳の言葉を話さなくなってしまった子どもを抱えて
    葉子は職探しをする。ハローワークで知り合ったのは同じ誕生日の希美。
    希実が葉子に仕事を紹介したところから、
    2人の過去と今と未来が動く、と言うお話。

    1章で暗くて辛くて
    なんとか生きてほしいと思いながら読んだが、
    2章ではさらに辛くて
    沼にはまっていくようだった。

    全く別のものに着替えても
    自分は自分でしかない。
    それ以上でも以下でもなく
    自分のしたことが消えることもないのだ。

    終盤は伏線が綺麗に回収されて納まるが、
    難波先生の言葉がこんな形で発揮されるなんて。
    それは残念でならない。
    ノンとユウに終わらせてほしかった。

  • 暗い話で読んでて辛かった。設定はありがちかなー。
    ミステリー的には面白かったけど、だれにも共感できず、、、。って感じです。

  • ちょっしたことで知り合い、友情を深めていく二人の女性。
    早い段階でネタバレと思われる描写があるが、なぜそうならなければならないのか、どう繋がっていくの気になって一気読み必至。
    後半は、貧困、劣悪、過酷な環境の少年少女時代の話に戻る。
    これが大変つらい。読んでいて胸が締め付けられる。
    少年少女はただ一生懸命生きてきた。暗い過去に追いかけられながら、それでも一生懸命生きてきただけだ。
    最後、穏やかだったのだろうか・・・もっと幸せを感じてほしい一生だったと願わずにはいられない。

    宇佐美さんの本は初めてだったが、また次の作品も読みたい

  • どれだけ語り合っただろう。肝心な事は伏せても心は通っていた。唯一無二の友達だった…。
    宇佐美さんの著作を読むのはこれが三作目。作風内容ともに好みで、いずれも面白かった。
    悲劇を予感させる不穏な空気が漂い、何が起こるんだろう?と、とても惹き付けられます。
    お名前から40代位の男性を想像していたのですが、全く違いまして。
    女性的なタッチだと思って調べてみたところ、女性でした。どうりで。
    もっとたくさん書いてほしい作家の一人です。

  • すごい読み応え!
    ストーリーも重厚なうえ
    ミステリーとしても完璧。
    まさかの展開に何度も驚かされた。

    なんにも悪くない
    むしろ誠実に生きている主人公達が
    犯罪を犯しつつ生き延びていく様は
    もどかしくも切なかった。

  • 過去と現在を行き来しながら物語は進む。序盤は思わせぶりでまどろっこしい語り口に辟易していたが、第一章の終幕から雲行きが一変。三池炭鉱事故の史実に基づく第二章は非常に気が重くなった。最終章では全ての謎が綺麗に解けるが、この真相がまた重苦しく、折角見つけた光を己の手で葬ってしまった二人の罪悪感は筆舌に尽くしがたい。途中で筋書きは読めてしまうものの、最後の一行が終わると同時に流れるエンドロールが見える映画的な作品でもあった。哀しい物語ながら、葉子と達也の紡がれなかった絆は美しかった。やはり「白夜行」は連想した。

  • 壮絶な過去を持った葉子と希美が職安でひょんな事から知り合う。同じ匂いがする二人はお互いの存在で荒んだ心に必要な存在となって行く。希美の紹介で難波家の家政婦として葉子は亡くなった妹の子達也と住み込みで働くようになる。1965年の過去から1985年の葉子と希美の出会い…そして、現在…物語が明らかになるにつれて、それが繋がってくるとどんどん話に引き込まれた。

  • 4月-10。3.5点。
    暗い過去を持つ女性。しゃべれない甥っ子と金持ちの住み込み家政婦に。
    場面変わり、悲惨な炭鉱労働者一家。逃亡する男女。

    面白い。ラストもおー、そー来たかっと言う感じ。
    炭鉱労働者一家の悲惨さが、際立っていた。

  • たぶん、電車内の広告で見かけて。

    振り返ってみれば、
    ヘンデルが落とした白い石が夜の森に光っているように
    手がかりは点々と残されていたが、
    話の面白さにやみくもに突き進んでいって、
    作者の思い通りに道に迷ってしまっていた。
    もちろん、甘いお菓子の家ではないゴールにはたどりついたが。

    行ったことのある場所が出てきたという個人的な理由もあるとは思うが、
    人物描写といい、筑豊の時代描写といい、
    とにかく面白かった。

    ラストを救いとみるか、報いとみるかは人それぞれだろうが、
    果たして人生の帳尻は合ったのだろうか。

    自分は、達也が成長した姿がみれて、良かった。

  • 戦後日本の貧困を背景としたクライムミステリー。

    ミステリーとしては真相が読めてしまったので、社会問題小説として感動しました。
    タイトルの意味は作品中で説明があるのですが、「ある人には毒となる行動や存在がある人には薬(救い)となる」と解釈しました。
    作品構成としては、2015年現代と1985年が交互に語られる第一章、2016年と1965年の話が交互にかたられる第二章、そして全ての謎が明らかになる第三章で、現代パートで先に何が起こるかを匂わせているので、どのようにしてそこに至るのかがミステリー的であり興味をそそり一気に読まされました。
    ラストはそれまでの伏線から読めなくもないですが、それなりに衝撃でしたし、救いがあったのかどうかも解釈次第だと思います。
    自分は、生き残った二人は救われていないのではないかと思いました。

  • 2017.12.07読了。

    一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!

    色々と御都合主義だろうという点はあるが、読ませる力のある小説。

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著者プロフィール

愛媛県生まれ。2006年『るんびにの子供』で第1回『幽』怪談文学賞〈短編部門〉大賞を受賞。17年、ミステリー小説『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編および連作短編集部門〉を受賞する。日常に潜む怪異を描き、恨みや妬み、欲や貧困など、人の心の闇や怖さを浮き彫りにしたミステリーが高く評価されている。

「2017年 『角の生えた帽子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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