パレートの誤算 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
3.45
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本棚登録 : 214
レビュー : 36
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396343002

感想・レビュー・書評

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  • 生活保護費の不正受給及び貧困ビジネスに絡む社会派ミステリー。
    時には新聞などで目にしたことはあるが、あまり触れられないこれらの問題をテーマに、エンタメに仕立て広く世間に告知した著者の意気込みを評価したい。
    社会福祉の現場を活写し、生保受給者にもそれこそいろいろな人がいることを、読者は知ることができる。
    そして、この問題を取り上げながら、けっして社会的弱者を切り捨ててはいけないというメッセージを、著者は題名『パレートの誤算』に込めている。
    終章で綴られる学生の寄稿文を載せたいがため、この小説を書いたのではないかとさえ思える。

    事件を解明すべく活躍する主人公聡美のキャラクター造形とともに、もう一人注目すべきは刑事の若林。それまで如何にも刑事らしい冷静さといやらしさで彼女の反感を買っていた若林が、彼女の危機に際しては態度を一変。
    警察法第一章第二条を唱え、電光石火で彼女の救出に向かう場面で、カタルシスを感じるのは読み手ばかりではないだろう。

  • 柚月裕子『パレートの誤算』祥伝社文庫。

    文庫化されたので再読。

    やはり、柚月裕子は期待を裏切らない。何よりもストーリー展開のテンポが良く、ミスリードの使い方も非常に上手く、全く飽きることなく、一気読みした。

    生活保護受給者のケースワーカーとして市役所で働く牧野聡美は職場の先輩、山川の変死事件をきっかけに社会の闇に絡め捕られていく。生活保護を巡る事件と社会の闇。闇の底に巣くい、生き血を啜る輩の正体は…

    女性作家としては珍しく、本作では暴力団と警察の迫真の描写が描かれている。非常に思い切った挑戦であり、柚月裕子の意欲を感じる。この暴力団と警察の描写が、傑作『孤狼の血』につながったのかも知れない。

    解説は香山二三郎。

    • ホワイトタイガーよーさん
      柚月裕子さんは好きな作家さんですが これは見かけたことがなく まだ読んだことがないです。
      面白そう。見つけたら読んでみます。
      柚月裕子さんは好きな作家さんですが これは見かけたことがなく まだ読んだことがないです。
      面白そう。見つけたら読んでみます。
      2017/06/11
  • ベテランケースワーカーの山川が殺された。新人職員の牧野聡美は彼のあとを継ぎ、生活保護受給世帯を訪問し支援を行うことに。仕事熱心で人望も厚い山川だったが、訪問先のアパートが燃え、焼け跡から撲殺死体で発見されていた。聡美は、受給者を訪ねるうちに山川がヤクザと不適切な関係を持っていた可能性に気付くが…。生活保護の闇に迫る、渾身の社会派ミステリー!

  • 評価は4.

    内容(BOOKデーターベース)
    ベテランケースワーカーの山川が殺された。新人職員の牧野聡美は彼のあとを継ぎ、生活保護受給世帯を訪問し支援を行うことに。仕事熱心で人望も厚い山川だったが、訪問先のアパートが燃え、焼け跡から撲殺死体で発見されていた。聡美は、受給者を訪ねるうちに山川がヤクザと不適切な関係を持っていた可能性に気付くが…。生活保護の闇に迫る、渾身の社会派ミステリー!

    不正な生活保護受給や知らぬ顔の行政・・・普段でも余り良い気持ちを持っていないのであっという間に入り込めた。生活も出来ないのに子供を連れて離婚とか・・・こういう親って国からただでお金貰えれば良いわ~程度しか考えてないんだろうなぁ~。実生活でも周りに沢山いたわ~皆揃ってブランド尽くめ&内縁の夫有りだった。
    一部は本当に真面目な人もいると思うけど・・・そもそも自立支援なんだからお金を渡す必要は無いと思うけどね。お米券とかにすれば闇ビジネスにもなりにくいのでは?

  • さすが柚月さんだ。こんな、一見地味な題材で、サスペンスを書けるなんて。
    生活保護費の問題について考えさせられた。年々受給者が増えて立ち行かなくなっている現状。不正受給に貧困ビジネス…。
    ヒロインも頑張ったが、個人的に若林の有能ぶりにワクワクした。こんなに自由に動ける刑事は、他の警察小説読んでもいないだろう。

  • 誰からも慕われている、市役所の社会福祉課で働く職員が焼死体で見つかったことから、生活保護制度を悪用した犯罪が明らかになっていく。生活保護制度にスポットをあてた社会派の小説だが、殺人事件の推理小説でもあり、最後まで犯人が分からず面白かった。

  • 生活保護費の不正受給や貧困ビジネスがテーマ。
    幸いなことに私の身近にはない話で、いろんな意味で興味深い。
    でも、普通の女性が死にそうな目にあっても、同じ仕事を続けられるものなのか。
    まぁ、物語ですからね。

  • 生活保護係のケースワーカーを主人公にした、本格的な生活保護ミステリーである。映画「虎狼の血」が面白かったので読んだのであるが、舞台津川市は、明らかに広島県呉市をモデルにした映画(呉原市)と同じ場所と思われる。山陽方言圏の私としては、親しみのある内容(作者の出身は岩手県らしい)。

    生活保護受給者の何人かを知っている私としては、興味あるテーマであり、どのように料理したのかを見守ったという感じ。結果は、大枠では正しいが、部分的には「この作者もそうか」とがっかりした、という感じ。

    ミステリー部分は、大枠では予想通りに進んだので、ここでは述べない。テーマ部分について書く。書いても別に面白さは減少しないと思う。

    最後にある登場人物が言う。
    「たしかに生保のあり方には、問題が多い。不正受給やら貧困ビジネスが、あとを絶たない。でも、生保という行政の制度があったから、育つことができた子供がいたことは確かだ。さまさまな理由で、自分の力で生きていけない人は、いつの時代にも必ずいる。そういう人を救うために生保は、必要な制度だ。言うなれば、生保は自分の力で生きていけない人のー社会的弱者と呼ばれている人たちの最後の命綱だ。その命綱を、悪用する奴らを俺は許せない」(420p)

    そのことに異論は一切ない。しかし、作者はかなり生保について調べているはずなのに、私でさえ知っていることに言及しない。ここに出てくるケースワーカー(専門家)の言葉を借りて反論しないばかりか、彼ら自身がそのように認識しているかの如く、ミスリードするように物語を構成している。

    曰く。(1)生保の金を受け取ったその足で、パチンコに並んだりする者がいる。と書いているが、パチンコ依存症だった場合は、アルコール依存症と同じ「病気」であることの認識がない。(2)テーマ的に「不正受給」について延々と書いているが、あることを書いていないから普通に読んだら不正受給は全体の1割から2割はいる印象を受ける。実際は、1%にも満たないし、そのほとんどは家族の子供のバイトの申告漏れ等の制度無理解によるものが多いのである。(3)生保受給者に同情してお金を立て替える場面を美談的に描いているが、規則的にもやってはいけないことであるが、受給者の自立を促すということでも「絶対やってはいけない」悪影響しか及ばさないことである。

    建前は正しいけど、本音の所で、この作者生保制度のことをホントにわかっているのか?わかってないだろうなあ。

  • ケースワーカーの山川が殺され、そのあとを引き継いだ新人職員の牧野聡美は、山川のあとを継ぎます。
    仕事熱心な山川でしたが、牧野が受給者を訪問するうちに、山川がヤクザと関係を持ったいたのではないかと疑惑を持ち始めます。
    生活保護とヤクザとの関係。
    闇に潜む罠とは。
    パレートの誤算というタイトルが、深い意味を持っていることが最後に分かります。

  • 柚月裕子さん二冊目、生活保護を題材とした社会派ミステリー。焼死体で発見された先輩ケースワーカーの業務を引き継いだ新米主人公は事件にヤクザが絡む不正受給の陰を見出すが―。生活保護の実態や貧困ビジネスについて綿密な取材を重ねた印象を受け好印象。著者の人に対する暖かさが伝わるような文章運びは心地が良かった。反面、整理整頓されすぎて二時間ドラマのお手本の様な登場人物、ストーリー展開なのが勿体ない。ただ、取り調べシーンは「孤狼の血」の片鱗が見えるくらいに警察小説している。

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プロフィール

柚月 裕子(ゆづき ゆうこ)
1968年生まれ。岩手県出身、山形県在住の小説家。2008年『臨床真理』で第7回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しデビュー。2013年同作で第15回大藪春彦賞、2016年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)、同年『慈雨』で「本の雑誌が選ぶ2016年度ベスト10」第1位をそれぞれ受賞。2017年、『盤上の向日葵』で第7回山田風太郎賞候補、2018年本屋大賞ノミネート。
代表作として、テレビドラマ化された『最後の証人』『検事の本懐』を含む「佐方貞人シリーズ」。また、2018年に映画化される『孤狼の血』。

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