下山事件 暗殺者たちの夏 (祥伝社文庫)

  • 祥伝社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (664ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396343170

感想・レビュー・書評

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  • 少年のころ『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』というモノクロ映画を観た。下山国鉄総裁の血痕がルミノール反応で点々と夜光塗料のように浮かび上がった怖いシーンを思いだした。

    戦後間もないGHQの支配下にある日本の社会がリアルに感じられ、人と組織は利権や政治的的思想が絡むとこうなるのだと思った。GHQはCTSとG2で争い、日本は右翼系元軍属や左翼があり、警視庁も捜査1課と慶應大学は自殺説、捜査2課と東大は他殺説で分かれる。(東大教授は他殺とは言及してない)
    状況証拠では他殺と推測するのが自然だが、政治的圧力で迷宮入りとなった事件。

    この本の冒頭「この物語はフィクションである」で始まるけど、実名も多く内容も辻褄が合うので本当にそうなんだと思ってしまった。ページ数も多かったけど、夢中で読めてしまう力作だった。

    松本清張の「日本の黒い霧」も興味あり。

  • 柴田哲孝『下山事件 暗殺者たちの夏』祥伝社文庫。

    柴田哲孝のノンフィクション作品『下山事件 最後の証言』の小説版。

    『下山事件 最後の証言』に描かれた事実と事実の間を創作でつなぎ、事件そのものにフォーカスしたことでストーリーがスッキリし、登場する人物像もより明確になり、長編にも関わらず非常に面白く、読み易くなっている。

    ノンフィクション作品の『下山事件 最後の証言』を振り返ると、下山事件に著者の祖父が関与したのではないかという親族の証言を発端に謀略の真実に迫るといった内容だった。つまり、本作を描く上で、既に材料と答えは出揃っており、全くストーリーにブレは無く、結末も明確になっていることが面白さと読み易さにつながっているようだ。

    敗戦後、GHQ占領下の昭和24年7月5日、初代国鉄総裁の下山定則が失踪し、翌日、線路上で礫死体となって発見される。 事件の背後にあった謀略の真実は…

    本編の最後には登場人物たちのその後が紹介されている。解説は池上冬樹。

    • wakeさん
      いつもレビュー楽しみにしています。
      下山事件 最後の証言が面白かったので、小説版も読んでみようと思います。
      いつもレビュー楽しみにしています。
      下山事件 最後の証言が面白かったので、小説版も読んでみようと思います。
      2017/06/20
  • ISBN:9784396343170
    。出版社:祥伝社
    。判型:文庫
    。ページ数:664ページ
    。定価:920円(本体)
    。発行年月日:2017年06月
    内容紹介
    HQ占領下の昭和二四年、後に〝昭和史最大の謎〟といわれる事件が起きた。七月五日早朝、下山定則初代国鉄総裁が失踪。 翌日未明、線路上で礫死体が発見された「下山事件」である。あの時、何が起きたのか……。政財界の大物、日米の諜報員と特務 機関員、警察と検察。当時の関係者の動きを小説という形で追跡し、ノンフィクションでは描ききれない真相に迫った衝撃作!。発売日:2017年06月14日
    著者紹介
    一九五七年東京都生まれ。日本大学芸術学部中退。二〇〇六年『下山事件 最後の証言』で日本推理作家協会賞と日本冒険小説協会賞をダブル受賞。〇七年に『TENGU』で大藪春彦賞を受賞するなど今、最注目の作家。本作では小説でしか描けない「下山事件」に迫る。著書に、『Mの暗号』(祥伝社四六判)、『デッドエンド』『WOLF』『砂丘の蛙』など。
    以上アマゾンジャパン等より

    久しぶりに寝る間も惜しんで夢中になって読める小説を読んだ。
    下山事件については戦後の混乱期に起きた教科書にも載る事件であらましは知っていたものの、今までさほど興味はなかった。
    が、3年ほど前NHKスぺシャル未解決事件で帝銀事件を扱ったことにより、松本清張の「日本の黒い霧」を読むこととなり、そこから一気に興味関心が手元に引き寄せられていった。
    評論家の池上冬樹氏のすすめにより同著者の「下山事件最後の証言完全版」を読む前に読んだほうがよいということなので先にこちらを読んでみた。
    最初は著者の祖父柴田豊が引き揚げてきて亜細亜産業の元同僚と再会するところから始まり、視点は柴田豊になったり、その娘の菱子になったり、下山が誘拐殺害されるまでは下山になったり、殺害後は亜細亜産業会長矢板になったり、捜査検事になったりと目まぐるしく変わるところがすこし気になったが、事件を良く調べ上げた上に良質な小説に仕上がっていると思う。
    やや、状況証拠を裏付けるための筋書きになってしまっている感はあるが、下山総裁の事件当日の三越に到着する前の不審な行動も尾行車をまくためだったとすればたしかに納得がいく。
    布施検事が末広旅館の女将に昨日来ていた自分の服装の質問にちゃんと答えられない長島フクもやはり怪しい。
    事件後亜細亜産業は1年足らずで解散する。であれば、下山総裁を誅殺したメリットはほとんどなかったといってよいのではないだろうか。そこから考えると亜細亜産業の単独行動とは思えないのだが。
    下山総裁がいなくなって一番得をしたのはだれかと言えば、共産勢力を抑え込めたGHQということになるのではないだろうか。
    50年以上前の様々な説が飛び交いもう新説などでないだろうと思われた時期に世に出た作品として出色だし、構成力、取材力、筆力ともに読み応えがある。
    満足度★★★★.0.7

  • すごかった。
    知識は全然なかったけど、あくまでも本作はフィクションなのだけど、これが「下山事件」の真相なのでは思ってしまう。
    星が3つなのは、戦後の不安定で不透明な時代に自分たちの利権の為に、暗殺を企てる、簡単に消してしまえばいいと思う人達に吐き気を覚えたせい。
    犯人がわからないこその事件なのだけど
    つい、裁きを受けてほしいと思ってしまう

  • 読み応えあり。600ページ超の作品だか、内容に引き込まれて読み続けてしまう。あくまでフィクションという形で書かれているが、国鉄三大ミステリーの下山事件の実録なのではと思ってしまう。

  • 作者は実行犯と思われる男の孫。
    小説になっているからこそ、迫力あり。一般人が知りようのない『闇』は深く、今も日本社会を裏で支配しているのかもしれない。。。

  • 完成度が高くおかしなところを感じない。
    フィクションということで細かいところまでしっかりと書けたのだと思う。

  • 読み終わってから同じ著者の『下山事件 最後の証言』を読み直してみたくなる。面白かったけど、下山さん、特別悪い人でもないのに可哀そうで… そんなすごい前のことでもないのに、えらい特権社会でものすごい後進国っぽい。。日本はまたこんなふうに逆戻りしてしまうのだろうか…

  • 著者の「真実はこうであったろう」という私見に基づくフィクション。松本清張の黒い霧のような仕掛けで、あくまでフィクションという体で出版したもの

  • 分厚いけど一気読み。刺激的。この時代はいろいろありすぎ。おもわず翌日に事件現場見に行く。

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著者プロフィール

1957年、東京都出身。日本大学芸術学部写真学科中退。フリーのカメラマンから作家に転身し、現在はフィクションとノンフィクションの両分野で広く活躍する。パリ〜ダカールラリーにプライベートで2回出場し、1990年にはドライバーとして完走。1991年『KAPPA』で小説家デビュー。2006年、『下山事件 最後の証言』で第59回「日本推理作家協会賞・評論その他の部門」と第24回日本冒険小説協会大賞(実録賞)をダブル受賞。2007年、『TENGU』で第9回大藪春彦賞を受賞し、ベストセラー作家となった。他の著書に『DANCER』『GEQ』『デッドエンド』『WOLF』『下山事件 暗殺者たちの夏』『クズリ』『野守虫』『五十六 ISOROKU異聞・真珠湾攻撃』『ミッドナイト』『幕末紀』など、多数ある。

「2021年 『ジミー・ハワードのジッポー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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