九紋龍 羽州ぼろ鳶組

  • 祥伝社
4.23
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感想 : 90
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 9784396343750

感想・レビュー・書評

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  •  「羽州ぼろ鳶組」シリーズ第3弾です。今回もワクワクが止まらず、充実した読書でした。文句なしの安定した面白さです。火喰鳥・松永源吾の侠気と熱い想い、火消集団の信頼関係と躍動、火事場の臨場感、絡む事件、そして源吾の妻・深雪の存在の大きさ‥‥。言うことありません。

     今回の新庄藩火消に降りかかる苦難は、まさに内憂外患の様相を呈していました。大きなキーポイントが次の3つでしょう。
 火付をした隙に、家の者を皆殺しにして盗みを働く手口の凶悪な盗賊団・千羽一家が江戸に現れる。
     ところが、最強の町火消・九紋龍の辰一が率いる「に組」が火事場に乱入、野次馬を皆捕らえる暴挙に出て、ぼろ鳶組も散々な目に遭わされる。
 また、財政難の新庄から江戸に来た藩主の従兄・戸沢正親が、火消の俸給と道具の削減を宣言する。
     
     これら、九紋龍・辰一の行動の謎、新庄藩・正親の姿勢の奇妙さが、本作の核心に迫る源流となっています。しかし、ここ一番で、源吾の人を想う心が辰一・正親に通じ、共闘していく描写がとりわけ巧く、熱くも爽快です。

     そして、最後はやっぱり深雪さまですね。源吾も絶対に敵わぬ最強?最恐?の勘定小町です。妻として健気に内助の功を示すだけでなく、男勝りの肝っ玉と覚悟をもつ、陰のヒロインです。困難な状況下での潤滑油としても、重要で不可欠な存在であることに違いありません。毎回惚れますね‥。

     「羽州ぼろ鳶組」シリーズを、月1くらいのペースで読んできてますが、「山形県新庄市開府400周年(2025)記念事業」の一環で、今村翔吾さんが『ダンスプロジェクト羽州ぼろ鳶組』を立ち上げたので、このタイミングで来夏のコンプ目指して、ゆっくり読み進めるのもありかなと勝手に思ってます。

  • いやー面白い
    今回もすんばらしいキャラクターが登場しつつ
    長期シリーズに向けたいつでも回収できそうな伏線はりまくりの第三巻でした

    それにしても今村翔吾さんはよく分かってる
    そうなんですよ主人公の源吾の活躍以上に妻である深雪さんの活躍を求めているんですよ!読者は!少なくとも自分は!!
    そんな希望にしっかりと答えてのエンディング
    素晴らしい!

    そして相変わらずのキャラ立ちの凄い面々
    これはもうこのキャラ設定をもとに脚本家さんたちが集まってTBSの月曜夜8時から43部に渡って放送するしかないでしょうよ!
    衆議院予算委員会とかで話し合ってもらえないだろうか?
    あーでもあれか民間企業だもんな〜TBS、国会が番組編成に口出せないよな〜残念(クリアすべきはそこじゃない)

    あ!43シリーズもやったら江戸の町が燃え尽きるなこりゃ(心配すべきもそこじゃない)

  • 「灰汁の強い連中ばかり。考えもてんでばらばら、ほんの些細なことで喧嘩ばかりさ。でもよ、炎との喧嘩だけはしれっと力を合わせちまう」

    人気シリーズ第3弾。
    特に指示を出さずとも火事場に駆けつければ、自然と役割が分担されるチームワークの良さ。
    各々の個性もいい具合に際立ってきて、読んでいて惚れ惚れする。

    今回は残虐な火付け盗賊団・千羽一家を相手に一丸となって立ち向かう物語。
    最強の町火消・九紋龍との絡みにハラハラしたりほろりとなったり。
    互いの実力を認め合った、男同士の真剣なまでの激しい衝突にアツくなった。
    我らが勘定小町・深雪も相変わらずのキレ具合で、ますます面白い。
    愚直な男達の中で、一人冷静かつ現実的な深雪が出てくるとほっとする。
    今回はラストの「待つ人がいるからこそ、決して諦めずに炎に立ち向かえる。そして誰かの待つ人を守れるのだ」にキュンとなった。
    常に死を覚悟しなければならない火消という職業も、家で変わらずに自分を待ち、信じてくれる人がいるからこそ頑張れる。
    優しい気持ちで本を閉じることができた。
    第4弾もとても楽しみだ。

  • 〈羽州ぼろ鳶組〉シリーズ第三作。

    今回、松永源吾率いる〈ぼろ鳶組〉が闘うのは、火事を起こし、町中が逃げ惑うその隙に富商を襲い一家皆殺しにして大金を奪う盗賊『千羽一家』。
    それだけでも大変なのに、病に倒れた新庄藩家老・六右衛門の代わりにやって来た、藩主の親戚・戸沢正親は火消の削減を迫られ、さらに町火消〈に組〉頭『九紋龍』こと辰一が火事現場に乱入し混乱させる。

    新しく登場した戸沢正親と辰一、どちらも初対面の印象は最悪。だけど実は…というキャラ。個人的にはこういうキャラクターにはグッと来る。
    二人とも抱えているものが重くて…でもだからこそ支える人がいてくれることのありがたさは感じられるはず。

    それにしても新庄藩は本当に貧乏なんだと実感。
    それを何とかしようと六右衛門が画策していたところの病。
    六右衛門は復活出来るのか、そして<ぼろ鳶組>は存続出来るのか。

    シリアスに傾き過ぎそうなところを、新之助や彦弥が上手く和ませてくれる。
    そして源吾の妻・深雪のSっぷりも相変わらず。でも引くべきときは引くし、支えるべきときは後ろで支えてくれ、最後に意外な活躍を見せてくれる。

    鬼平に代わって火付盗賊改方に就任した島田は小者感たっぷりのキャラだが、その分笑いも誘う。新之助に上手いこと弄られているのが楽しい。

    肝心の『千羽一家』との直接対決は先送り。辰一との絡みはまだあるのか。

  • 【羽州ぼろ鳶組シリーズ 3】
    江戸の町の一人に成れるこのシリーズ♡

    火付けをし、そこに大勢が気を取られている隙に、大店の一家を皆殺しにする盗賊一団『千羽一家』が今巻の敵である。
    上方で大暴れをした後、江戸に舞い戻って来たらしい一団に立ち向かう火消し達。

    新庄藩火消しぼろ鳶組と、に組の頭:九紋龍の辰一、藩主の代役:戸沢正親も大いに関わってくる。
    敵か?味方か? 
    辰一VS寅次郎は、プロレスラーVS力士の様(笑) 勘定小町の深雪の算勘の力もピッカピカ!

  • 『羽州ぼろ鳶組』シリーズその3。

    新たな仲間も加わり、ようやく体制が整ってきた羽州ぼろ鳶組。
    しかし、新たに赴任してきた藩主代理の戸沢正親から、俸給の削減、さらには方角火消しを辞退すると言い渡されてしまう。
    一方、ある日の火事場で、江戸最強の火消と言われながら訳あって江戸を離れていた“に組”の頭・九龍紋と衝突する。彼らは火事場に居合わせた野次馬を片端から乱暴に捕縛し、止めに入ったぼろ鳶組の面々も一方的に叩きのめされる。

    そんな折、火付けで人目を逸らした上で商人宅に押し入り、家人を皆殺しにするという残虐非道な強盗・千羽一家が江戸へ戻ってきた。
    九紋龍の行動は、千羽一家を捕らえるためと察した源吾たちは…


    いやはや、またまた熱い!熱すぎる!!
    源吾たちと対立するかに見えた男たちも皆、実は心に熱い思いを抱く男たち。
    今作は千羽一家との対決がメインだが、終章の“勘定小町、参る”がまた痛快。

  • 羽州ぼろ鳶組シリーズ第3弾。
    火消同士の気組みが最終的には合致する気持ち良い読後感。
    読み始めはどのように話が展開するのかハラハラした。
    新庄藩の中も、気持ちがまとまっていく様子にホッとした。

  • シリーズ第三弾。ほんとに安定して面白い。
    今作も強烈な個性を持つ新キャラクターが登場する。
    最強の町火消し九紋龍、大文字屋の下村彦右衛門、御連枝様の戸沢正親。今後も盛り上げてくれそうな魅力溢れるキャラクターである。
    そして、サイドストーリー的にラストで書かれている勘定小町こと深雪さんの才女ぶりがなんとも素敵な話で物語を締めくくってくれます。

  • 新庄藩の国家老北条六右衛門が流行病に倒れ、その代わりとして送り込まれてきた御連枝戸沢正親は、何者なのか?
    そもそも親族は政に関与してはならないはず

    拝謁の場で、いきなり財政立て直しのため、方角火消しのお役目の返上を幕府に申し出ると言う

    これも田沼意次の失脚を狙う一橋家の策略かと読者をヤキモキさせておきながら・・・
    最後には、大どんでん返しの感動が!

    大富商を狙ったつけ火の上、一家皆殺しの強盗千羽一家が江戸を恐怖に陥れる

    さらに、町火消に組の頭、九紋龍こと辰一の不可思議な行動と悲しい生い立ち

    松永源吾の元、一段と結束力を強めたぼろ鳶組がそれらにどう立ち向かっていくのか

    千羽一家の動きを封じ込めるために、知恵と力を結集し、日頃は喧嘩ばかりの各火消が「一人の犠牲者も出さない」を合言葉に素晴らしい活躍を見せる

    そして、大仕事を為し終えた火消が、町人の喝采を浴びながら半纏を裏返し意気揚々と引き上げる姿は、惚れ惚れする

    半纏を裏返して引き上げるということは、一人の死人も出さなかったという彼らのアピールなのだ

    そして、厳しく激しく恐ろしい火消の場面の後は、お約束の勘定小町深雪の登場でほっこり笑わせてくれる

    今回は、松永家の家計のやりくりどころか、商人を呼びつけての新庄藩の特産品の公開買い付けの名代に抜擢された

    女人の分際で初めから高を括る商人を前に丁々発止の深雪
    そして、ここに御連枝戸沢正親の登場は、涙、涙の感動を呼ぶ
    戸沢正親の名君ぶりは、見事に読者の予想を裏切ってくれた
    いやはや、完全にやられました

  • いやいや熱かった!
    敵は極悪非道の千羽一家。

    江戸家老・六右衛門が病に倒れ、国元新庄からやって来た御連枝様・正親…これが素晴らしい!
    もう松田翔平で脳内ドラマ再生(°▽°)

    今回は九紋龍・辰一のドラマに泣けます(´Д` )
    男達の熱い闘いに、江戸の町とわたしの胸も燃え盛る!
    そして深雪!毎回最終話は深雪!
    もうこれが最高!深雪のスピンオフ出して頂きたい!
    勘定小町で一冊\(//∇//)\

    熱くなりすぎて息切れしてしまった…

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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