ひと (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社
4.01
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本棚登録 : 11056
感想 : 996
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  • Amazon.co.jp ・本 (330ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396347185

作品紹介・あらすじ

人生の理不尽にそっと寄り添い、じんわり心にしみ渡る。
今だからこそ読みたいベストセラー、ついに文庫化!

独りだから、そばにひとがいるありがたさを知る。
―― 女優・作家・歌手 中江有里さん

女手ひとつで僕を東京の私大に進ませてくれた母が、急死した。
僕、柏木聖輔は二十歳の秋、たった独りになった。大学は中退を選び、就職先のあてもない。
そんなある日、空腹に負けて吸い寄せられた砂町銀座商店街の惣菜屋で、最後に残った五十円のコロッケを見知らぬお婆さんに譲ったことから、不思議な縁が生まれていく。
本屋大賞から生まれたベストセラー、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 20歳という若さで両親を立て続けに失い、天涯孤独となった青年が、商店街の惣菜店で働き、ひとを通じて、コロッケを通じて、成長していく姿が綴られた物語。

    舞台は東京都江東区にある砂町銀座商店街。

    懐かしかった。
    10年ほど前は月一で彼女(現嫁)とバイクに乗って、商店街近くにあるショッピングセンターSUNAMOに足繁く通ったものだ。
    そして帰りに砂町銀座商店街に寄って惣菜を買う。
    それがお決まりのコースだった。

    本作には大きな盛り上がりはない。
    だがしかし、心地良いホッと感がある。

    本を読んで 心が温かくなる。
    実感と体感するほど感じられたのは、もしかすると本作がはじめてかもしれない。こう、読んでいると体の内側がじわりと温かくなるのが分かるのだ。

    初著者だったが、とても気持ちの良い文章を書かれる方で、作品とともに好印象だった。

    親から受け継がれた主人公の実直さと優しさ。 それが周りの人に伝播しているのが、また心地が良い。
    バイト先の仲間たちとお客さん。学生時代の仲間たち。お金をせびってくる親戚。

    優しいひとも、優しくないひとも登場する本作を通じて、ひととの繋がりは生きていく上で 、最も大切なものだと、改めて感じさせてくれる。

    強いて言えば、最後の終わり方にはガクッと落胆…
    私としては、本作の結末は表題名である『ひと』を総括し締めくくって欲しかった。感じた温かさの余韻に浸りたかったのだ。

    最後に、本作に綴られていた言葉が私のハアトにぶら下がって離れないので、ここに記しておく。

    「一人で頑張ることも大事。でも、頼っていいと言ってる人に頼るのも大事。」

    よし。近々、家族で商店街をブラブラしに行こう。

  • 何か、この表紙、あちこちで見たんで読んでみた。
    私の本棚には、あってはならんような^^;
    …たまには、ええかな?

    こんな年齢で、周りがいなくなって、孤独は辛いな!しかも急に…
    何か、自身を前面に出さず、でも、芯は強いというか…
    その仁徳というか、そういうのが、やはり、ええ人らを惹きつけるのかな?
    多分、自分には出来んのだけは分かる(^◇^;)

    別に、ひっそりとでもええから、自分の納得できる生き方を続けて欲しいな。

    ちょっとしたキッカケで、出会う…
    縁というのは大事だと思う。
    袖振り合うも他生の縁って言葉もあるけど、運命なんて、ホントにそんな感じで生まれるもんかもしれんから…
    これからも大事にしてね!

    多分、自分には出来んのだけは分かる(^◇^;)(二度目… ^^;)

  • ブクログのみなさんの評価が高かったので購入。

    父親を事故で亡くし、母は聖輔が大学生の時に突然死した。
    家族を亡くし、一人きりになった聖輔は大学をやめ、働くことを決意する。
    ギリギリのところまで倹約していたところ、お惣菜やさんのコロッケが目に留まる。

    コロッケが御縁で聖輔はそのお惣菜やさんで働くことに。


    これは日常に近い、現実味溢れた作品ではないかと思った。

    兎に角、聖輔の考え方、生き方は私には大変小気味いい。
    爽やかで真面目で優しく、それでいてどこか強い。

    彼の前向きな生き方が、読んでいてとても心地よかった。

    ほのかに心が温かくなるような素敵な小説だった。

    この頃滅茶苦茶寒いが、心がほかほかしてきた(*^^*)

    • 虎徹さん
      本当にその辺での話という感じがして、それが良いなと思います(^^) 心ほかほか
      本当にその辺での話という感じがして、それが良いなと思います(^^) 心ほかほか
      2023/03/14
    • bmakiさん
      虎徹さん

      コメントありがとうございます(^^)
      物語が身近な感じなんですよね。
      自分の身に起こってもおかしくないような、ありふれた...
      虎徹さん

      コメントありがとうございます(^^)
      物語が身近な感じなんですよね。
      自分の身に起こってもおかしくないような、ありふれたお話なのかもしれません。

      でも何だろう?この主人公の人柄なのかな?
      凄く温かい気持ちにさせられますよね(*^_^*)
      心がほかほかしてきます(*^^*)
      2023/03/14
  • この作品がキッカケで小野寺さんの大ファンになり、そこから著書を10冊以上読むことになりました(^^)
    好きすぎてYouTubeで「小説おすすめチャンネル」というチャンネルを立ち上げ、第1弾のオススメにしちゃいました。
    https://youtu.be/TkgBn2mZNyo

    小野寺さん作品が好きな方とサークルでも作り、感想を語り合ったり人物相関図を作りたいほどです(^^)

    コロッケ食べたくなります(笑)
    この作品が好きな方が、僕は好きです♫

    • 虎徹さん
      とりおさん、わざわざコメントありがとうございます(^^)
      個人的にオススメしたいのは、「ひと」のシリーズで「まち」と「いえ」、舞台が同じ江戸...
      とりおさん、わざわざコメントありがとうございます(^^)
      個人的にオススメしたいのは、「ひと」のシリーズで「まち」と「いえ」、舞台が同じ江戸川区平井の「ライフ」、後は「食っちゃ寝て書いて」と「本日も教官なり」あたりです(^-^)
      2023/03/17
    • とりおの飼い主さん
      ありがとうございます!まちといえから少しずつ読んでいきたいと思います(^^)
      ありがとうございます!まちといえから少しずつ読んでいきたいと思います(^^)
      2023/03/17
    • ksk84さん
      小野寺さん、興味はずっと持ってるですが恥ずかしながらまだ読んだことがありませんでした…m(_ _)m

      まずは本作から読んでみたいと思います...
      小野寺さん、興味はずっと持ってるですが恥ずかしながらまだ読んだことがありませんでした…m(_ _)m

      まずは本作から読んでみたいと思います(^^)
      2023/09/20
  • 先日に続き小野寺さんは2冊目。
    本屋さん行くたびに必ず目に入ってたが、購入して正解!!めちゃくちゃ面白かったし、泣けた。。

    主人公の周りにいる人の暖かさ、この主人公がまずめちゃくちゃ実直!だから周りから好かれるし信頼されるんだろうなあー。

    今与えれてる環境の中で生きる。
    他と比べずに自分と向き合って生きていく。
    姿がかっこよすぎて惚れてしまいます。。

    いやあ、、コロッケ食べたくなります!笑
    焼き鳥も!笑

    久しぶりに、めちゃくちゃ素敵な気持ちの読後感、いつも本読みながら、違う事頭で考えたりしちゃうけど、この本は集中100って感じで、もう自分も本の中にいましたー!素敵な一冊♡

  • ライトノベルのような文体でとても読みやすかった。
    タイトルのとおり、"ひと"との出会いと別れを通して主人公が成長していくストーリー。
    商店街の"コロッケ"から始まるストーリーは魅力的で、読後は久々にコロッケを食べました。
    おいしかった!

    • 虎徹さん
      コロッケ買っちゃいますよね(笑)
      最初にお惣菜屋さんで買ったコロッケがちょっとべちょっとしてて、コンビニで買い直しました!笑
      コロッケ買っちゃいますよね(笑)
      最初にお惣菜屋さんで買ったコロッケがちょっとべちょっとしてて、コンビニで買い直しました!笑
      2023/03/14
  • 「ひと」との出会い、「縁」をテーマにした物語。
    良い人だけでなく悪人も出てきて、日常の世界を切り取った主人公の成長の物語。

    女手ひとつで育てられた聖輔は、二十歳の秋、母親が急死してしまい、大学を中退。
    コロッケの縁で近所の総菜屋で働くことに。
    この総菜屋で働く人たちが温かい。

    悪人は、母親の葬式を仕切った親戚。聖輔に金を無心にくるくずっぷり。

    しかし、そんな人たちの中で、聖輔は総菜屋の人たちにも支えられていきます。
    そして、高校時代の友人の青葉との関係。いいねぇ。
    青春って感じ(笑)

    総じて心温まります。

    ひとは決して一人ではないと思わせる物語でした。

    揚げたてのコロッケ食べたくなった(笑)

  • なんだろう。
    正に「ひと」という物語だったなと
    読み終えて思いました。

    すごく良かったです。

    ひとがひととして生きることの
    大切な物を見た気がします。

    • 虎徹さん
      ひとがひととしてって、何だか良いですね(^^)
      ひとがひととしてって、何だか良いですね(^^)
      2023/03/15
  • まっすぐに生きる聖輔とそのまわりの人々との温かな関わりがほっとする作品でした。おかずの田野倉のコロッケ、いつか食べてみたいです。
    オーディオブックで聴いたのですが、とても聴き心地が良く、安心して聴けました。『まち』も読んでみたいです。

  • 小野寺史宣 著

    本書の主人公の柏木聖輔の人物像が実直で
    謙虚な好青年であるが故に、
    派手さはないものの、嫌な気分になることもなく、スラスラ読み進めることが出来た。

    若くして自分を育ててくれた両親を亡くして、天涯孤独の身になった?居たのは、全く知らない遠い嫌な親戚だけだった、、正直言って人が困窮している時にお金を無心するような親戚などいない方がいいのだと思う。
    自分の経験からも、大人になって全く会わない、自分の都合だけで、近づいてくるような親戚など、
    かかわりも持ちたくない。
    近くの他人の方が余程、親切であたたかい。

    本書の聖輔も、他人のあたたかさに触れて泣いた、悲しくなくても、涙は出る。
    聖輔の人間性がいいから、いい人たちが気にかけてくれる感じがホッコリ沁みる。

    人の境遇は様々で短絡的に親も親戚もいないから
    不幸な青年ということには当てはまらないない気もする。

    だが、自分を育ててくれた親が亡くなることは、若さと関係なく悲しい。 しかしやはり、若い時に親を亡くす方が堪えるだろうなぁ。
    若い時は自分の親が亡くなるなんて想像出来ず、考えられもしないことだと思うから…。
    生まれた時から親に会えない人もあるなら、
    大切に育ててくれた親が居ただけで感謝しなければいけない。 本作を読んでて、改めて思った。
    小さな子どもの頃はあんなに親を頼って生きていたのに、大人になって、すっかり会う機会すら減って、自分一人で生きてきた顔して、親のことなど深く考えないで過ごしてきたのに、これまでの人生の中で一番悲しかったのは、やはり母親が亡くなった時だなぁと思う。
    父親に関してもそうだが、亡くなってはじめて、自分が親についてあまりよく知らなかったなぁって思うことが沢山あった。
    自分のことばかり考え、自分の生活に精一杯で関心もなかったように思う。
    聖輔が巡礼みたいに、父親の軌跡を辿るところは感慨深い思いで読んだ。

    聖輔の心情を思うと、
    高校時代から仲良しの友達が、19歳になる前に、母を突然亡くした時のことを思い出す。若くして、元気そのものだった母を亡くした彼女の気持ちを考えたら、そのショックの方が大きくて、何とか彼女を慰めて、少しでも力になれたらと意を決して電話したのだが…電話口の彼女の”モシ、モシ…”という声を聴いただけで涙が止まらなくなって、嗚咽を漏らすだけしか出来なかった「あ、あの…タイヘンだった、ね、ガ、ガンバッ…、、」
    「ダイジョウ…ブ、」泣き声で彼女の声も震えていた…あの頃、若さゆえにあまりに悲しく、若さあって、乗り越えて今は逞しく図太く(笑)生きている、彼女も私も…そして、
    主人公の彼が成人してて良かったと思った。
    妙な言い方に聞こえるかもしれないが、如何にせん、健康で働ける、小さな子どもではないので、ある程度の生活能力はあるのだから、勿論、生活環境は両親を亡くしたことでガラリと変わるだろうが、慎ましい生活をすることが、苦あれど不幸にはならないと感じた。しかもまだ二十一歳という若さ、若さの特権だ! 聖輔は思う
    “僕はまだ二十一歳。急がなくていい。一つ一つだ。急がないが、とどまらない。そんなふうにやっていけたらいい。先は大事。でも今も大事。先は見なければいけない。でも今も疎かにしたくない。だって僕は生きている。”

    若いっていいなぁ(^^)心からそう思う。

    私も若い頃、貧乏アパートで一人暮らししてたことがあったが、聖輔のように…こんな殊勝な心構えではなかった気がする、毎月の家賃がキツイので、友達と遊ぶお金を残したくて、お昼を抜いたり、珈琲を飲むだけで済ましていた頃もあった、、お昼休みお腹も空くので事務机に突っ伏して寝ていたら同期の男子から「昼食も食べずに寝るか〜?」
    「だって、お金持ってきてないもん」
    「いつもみたいに珈琲くらいは飲めるだろ」
    (クッ、見られてたか…(-。-;)
    「まさか珈琲代もないってことはないよな」 
    一応、財布を覗いてみる
    「まさかの5円しか入ってなかったわ」笑
    「って言うか、よく5円だけ持って会社来るよな…」と呆れられたʅ(◞‿◟)ʃ

    そうなのだ!若さってそういう事なのよ!
    “そういうことではないのか…⁉︎”

    要は今になって思えば、一人貧乏して…あくせくしても、それは懐かしく、まさに、若さが自分を補って、貧乏生活も楽しめた貴重な時間だったと思う。
    聖輔が電車賃を節約して歩く、若いんだし、そして健康で歩ける時は歩けばいいのだ、妙にそこだけは共感した。

    しかし、本書のラストの聖輔の言葉には、かなり、こちらの方がテレて恥ずかしくなった(≧∀≦)
    若いから言えることだよね〜
    それに意外と…?男の子の方が純心なのかも…、
    それでも、自分なら二十一歳の頃でも、まず絶対言えない言葉ではあったなぁとは思うけれど…。
    「ひと」というタイトル
    聖輔の成長物語から、優しく心地よく感じられた。

    そして、本書を読んだ後に、中江友理さんの解説の言葉が、私の心を大きく揺さぶった。
    (長くなったけど、是非記しておきたい)

    “持っているだけが幸せでないとわかってい
     ても、欲しいものは手に入れたくなるし、
     所有した瞬間の満足度はたまらなく魅力的
     だ。いずれ飽きることはわかっているのに。
    でもできるなら、孤独でありたい。
    それは自ら選んだ孤独でありたい。
    孤独は人生において本当に大切なものを浮かび上がらせる。 孤独は自分との対話を促し、孤独は自分に問いかける。
    その時間が孤独を深め、さらに孤独な時間を研ぎ澄ましていく。

    独りだから、
     そばにひとがいるありがたさを知る

    • shukawabestさん
      shukawabestです。
      この小説、僕も図書館で予約していて数ヶ月先に読めると思います。そのときに改めてhiromida2さんにコメント...
      shukawabestです。
      この小説、僕も図書館で予約していて数ヶ月先に読めると思います。そのときに改めてhiromida2さんにコメントしたいなと思い、感想読んでました。また、お付き合いください。
      2022/02/20
    • hiromida2さん
      shukawabestさん、こんにちは!

      ありがとうございます♪
      shukawabest さんが読まれてからのレビュー
       とても、楽しみに...
      shukawabestさん、こんにちは!

      ありがとうございます♪
      shukawabest さんが読まれてからのレビュー
       とても、楽しみにしています。
      コメントも楽しみです!(。•̀◡-).
      2022/02/20
    • shukawabestさん
      shukawabestです。
      今読み終えました。聖輔、純粋な人柄で、自分の若い頃や今と比べてみると、恥ずかしいなという気持ちでした。
      若いと...
      shukawabestです。
      今読み終えました。聖輔、純粋な人柄で、自分の若い頃や今と比べてみると、恥ずかしいなという気持ちでした。
      若いというのはほんとにいいなと思いました。同感です。
      2022/04/02
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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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