まち(祥伝社文庫お25-4) (祥伝社文庫 お 25-4)

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  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396348533

作品紹介・あらすじ

累計36万部『ひと』からつながる物語、待望の文庫化!
「東京に出ろ。人を守れる人間になれ――」
じいちゃんの言葉に背中を押され、単身上京した僕、江藤瞬一。
誰ひとり知り合いのいない街は、僕を受け入れてくれるのか?

両親を亡くし、尾瀬の荷運び・歩荷を営む祖父に育てられた江藤瞬一は、後を継ぎたいと相談した高三の春、意外にも「東京に出ろ」と諭された。よその世界を知れ。知って、人と交われ――。それから四年、瞬一は荒川沿いのアパートに暮らし、隣人と助け合い、バイト仲間と苦楽を共にしていた。そんなある日、祖父が突然東京にやってきて……。孤独な青年が強く優しく成長していく物語。

感想・レビュー・書評

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  • 江藤瞬一は、9歳の時に火事で両親を亡くし、じいちゃんに引き取られ育てられた。
    地元でじいちゃんの歩荷の仕事をやりたいと思う瞬一だったけれど、じいちゃんに「東京に出ろ」と背中を押され、高校を出て群馬から東京に行き、今は引越しのバイトをしている。
    アパートの隣人にも恵まれ、バイト仲間とも打ち解けるようになり、しだいに東京に馴染んでいく瞬一。
    言葉少なだけれど、瞬一を一人前にしようと温かい言葉をかけてくれるじいちゃんのありがたさに泣けてきます。
    真っ直ぐに育ってきた瞬一の今後の成長を見守りたくて、夢中になって読んでしまいました。

    瞬一の住んでいる筧ハイツは、小野寺さんの他の作品「ライフ」にも「縁」にも登場するのです。
    コンビニで働く井川幹太も、少年サッカークラブの室屋さんも、同じ時期に筧ハイツに住んでいるなんて、彼らが一度に登場するなんて、驚きと嬉しさで舞い上がりそうでしたよ。
    さらには砂町銀座商店街おかずの田野倉でコロッケを買う場面も、荒川の河川敷から見るあの景色も、たくさんの人やものが織り交ぜてあって、私が今までに読んだ小野寺さんの作品が全部繋がっていたなんて、ほんとうに驚かされました。

  • 『ひと』に引けを取らずこちらも良作でした。
    いい人過ぎるかなって言うか純粋過ぎると言うか、寡黙な感じは育った環境や境遇がそうさせるのでしょう。
    ふとした息抜きにと読んだ作品でしたが、心温まりました。でも、色んな意味で『ひと』が良過ぎたかなと…。

  • 前作「ひと」が良すぎて、この本をブックオフで買えた時点でルンルンでした笑
    読むのが楽しみで、結局一日で読み終えてしまいました。
    この作者さんの本、というかやはり主人公のキャラクターなのかもしれませんが、読みやすくて、気取ってなくて、大好きです。

    「よその世界を知って、人と交われ」と瞬一のじいちゃんが言ってたように、瞬一と周りのひととのつながりを感じる、読んでいて心地良い話でした。
    (ひととのつながりは、言葉が大衆化してて、辟易してるとか「ひと」の感想でいいましたが、ひととのつながり大事です笑)

    作者さんの他作品を調べたら、「ひと」→「まち」に続いて、「いえ」が出てるとか…
    ブックオフに行くのが楽しみです!

  • 両親を早くに亡くし祖父に育てられた瞬一が、祖父に東京に出ろと諭され、様々な人と交わり、助け合い成長していく物語。

    すごい良かった!!!
    『読後感』という言葉はあるけど『読中感』って言葉はあるのかな。もしあれば、これが最高!!!
    ず〜〜〜っと読んでいられそうな優しい文章。

    じいちゃんとの会話、万勇との会話、敦美さんとの会話、どの登場人物との会話も全部いいの一言。

    〜とても印象に残ったフレーズ〜
    『川、どうだった?』と敦美さんが尋ね、
    『流れてた』と彩美ちゃんが答える。

    何て言ったらいいのだろう…皆んな出てくる人が良い人ばかり。とてもお薦めしたい一冊です!!!

  • 30年前に江戸川区平井に住んでいたので凄く懐かしくて、荒川の河川敷や商店街の雰囲気とか学生時代を思い出した。

    優しい気持ちにさせてくれる作品
    人と人とのつながりって大切

  • 図書館で借りた関係で、「ひと→いえ→まち」の順番で読んでしまったけど、いえにも登場した江藤くんが本当にそのままの人柄(^^)

    先日実際に江戸川区平井にも行ってみましたが、小野寺さんの作品に登場する人物は人物像がクッキリしてるので本当にそのへんに存在を感じるようでした!

    じいちゃんカッコ良すぎた。「瞬一は頼る側じゃなく、頼られる側でいろ」というセリフが響いた。 筧ハイツに住みたいし、横尾成吾読みたいし、田野倉の映樹さんお久しぶりですという気持ちに(笑)

    小野寺史宜さん作品が大好きなので、「小野寺史宜サークル」を作りました(^^)
    ※まだメンバーは2人です(笑)

    オプチャで小野寺さん作品の好きなところを語り合ったり、人物相関図の作成に取り組めたらと思っています!
    ご興味ある方はご連絡ください(^-^)

  • 主人公が故郷を離れ都会で育っていく日常を描いた作品。
    さくさく読めるのは何でかなと考えると、一つ一つの出来事がイメージできるからかも知れないし、不思議と主人公の優しさと朴訥さに共感できる部分が多かったりするのかも知れない。

  • 子供の頃に両親を亡くし、じいちゃんに育てられた江藤瞬一は、高校を卒業して上京。
    進学はせず、引越しのバイトをして暮らしている。
    じいちゃんが、山小屋に、荷物を背負って運び上げる「歩荷」(ぼっか)という仕事をしていたのを間近で見ていたことが影響していたのかもしれない。
    そして、身長187センチの大きな身体はそのバイトには打ってつけだった。

    バイト先やアパートでさまざまな騒動が起こる中、瞬一は悩み、迷いながらも、そのひとつひとつに対応し、成長していく…

    幼くして両親を失い、寂しさも苦労もあっただろうが、実直なじいちゃんのもとで真っ直ぐ、誠実に育った瞬一。
    暮らすまちが田舎から東京に変わっても、その根本が変わることはない。

    シリーズ前作に引き続き、本作も辛い過去を抱える若者の成長物語だ。
    題名通り「まち」がテーマとなっているが、どこか安心感を覚える誠実な青年が主人公で、前作の「ひと」の舞台であった、おかずの田野倉もチラッと登場し、世界観を共有している。

    最近ハードボイルドばかり読んでいたので、こういう作品が無性に読みたくなった。
    あ〜ほっこりした♪

  • 特にすごい山場がある感じでもなく、とても日常的なところがいい。
    「ひと」に次ぐ「まち」 どちらの主人公も両親がいない。私にとって両親といえばいい事でも悪い事でも「何か」あったら報告したり、顔を見て元気を出したり、けど言われすぎると「ウーン」みたいな。核みたいな所があるのか、この存在がなくなったら…正直そんな環境が想像がつかない。
    自分を持って地に足をつけて生きる2人がすごいなぁと思う。
    どこまでも私は幼稚なんだろうな。
    次の「いえ」も楽しみだ。

  • 『ライフ』(https://booklog.jp/users/lemontea393/archives/1/4591162907)の主人公・井川幹太は27歳だったが、今回の主人公・瞬一は22歳。幹太より5歳上で、住む場所も同じ筧ハイツだ。定職につかないアルバイト暮らしも似ている。
    早くに両親を亡くし育ててくれた祖父から「村を出て、東京に行け」と背中をおされ、東京で一人暮らしを始めた瞬一。進学や就職で上京するのが順当なのに、瞬一はこともあろうか、先ず東京で暮らすことを選んでいる。
    冒頭に描かれた尾瀬ヶ原で歩荷の仕事をしている祖父と瞬一との会話。あっ!と思う。登山が趣味で歩荷に初めて会ったのが尾瀬ヶ原で片品村の地名も記憶にあった。瞬一の育った環境を見て実感しているだけに、さぞ慣れるのに大変だったろうと思ったが、瞬一は適応力が高く難なく東京に入り込んでいけてるようで羨ましい。
    年齢を超えた筧ハイツに住む人たちや、アルバイトの引っ越し業で出会う同僚たちとの出会いの何気ない日常が紡がれている。彼が緩やかに確実に成長していく姿が好ましい。
    瞬一は用心棒のような体躯を持ち体を動かすことが好き、果たしてどんな仕事を目指すのだろうか。瞬一が選んだのは消防士だった。頼りがいがあり思いやりのある彼にぴったりの仕事だ!
    最後の章は冒頭と同じシーンで締めくくられる。湿原の木道を歩きながら歩荷の荷物をそれぞれ背負った祖父と瞬一の会話だ。
    「それにしても重いよ」「重いのに慣れないか?」「慣れないよ、重いものは重い」「それでいいんだ」「いいかなぁ」「慣れるっていうのは、感覚が麻痺することだからなぁ」「麻痺しないのもつらいね」「でも生きることに慣れない人間になれる」(冒頭では「物に重みがあることを常に感じてられる。それを知る人間になれる」と祖父は応えている)
    生きることに慣れない人間になれるー、正直言ってそれが辛い。いい加減、辛い感覚に慣れたい。瞬一の祖父に近い年齢なのに楽な生き方を望む私は、未熟者なの?

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著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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