日本人と中国人: なぜ、あの国とまともに付き合えないのか (NON SELECT)
- 祥伝社 (2005年1月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396500849
感想・レビュー・書評
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日本と中国の関係が、太古からぎくしゃくしてきたこと、まともに付き合ってこれなかった理由を、日本の歴史的経緯を検証し、日本側からみた問題点を提起する書です。
難解の書。平安後期から昭和までの時代背景の深い理解が必要ではないかと感じました。
日本人というのは、感情で動く民族であり、国際的な常識に疎い国民である。
日本人の感情と、その時代の状況をわけて、イザヤベンダサンは、解説している。
気になったとのは以下です。
■国際社会から見て不可解な日本人
・日本人と契約を結ぶには、交渉よりも先に、まず相手の感情を操作し、「感情」に批准せればならぬ。蒋介石
・中国が日本を処理する場合は、最後に使う手はアメリカである。これは蒋介石でも、周恩来でも同じことであろう。
・表面的に見れば、明治・大正の日本人の行動はなんとか理解できたが、昭和期い入ると日本人の行動は何が何やらさっぽり理解できない。
・日本は眠れる大国を刺激する名人。米国民間船の無差別攻撃をさして
・中国が満州国を承認すれば全世界の国々の満州国承認のなだれ現象が期待できるである。事実、中国政府が承認したのに、非承認を固持することは意味がない。
・日本人くらいだまされやすい民族も少ない。なぜか。感情がすべてにおいて批准権をもち、黙示文学が歴史とされそのため簡単に宗教的暗示にかかるからである。
・当時の幕府が、西欧と非常に似た「国家」という概念を明確にもっていたことに、西洋は驚くのである。
■中世からの中国観
・日中関係は、常に政教分離の関係
・宗教・文化・思想の交流はいっさいごめんこうむります。商売なら致します。これは、エコノミック・アニマル方式という以外にない。
・新井白石の貿易制限は、当然に国内産業=養蚕・製糸の保護奨励という形にあり、これが明治の近代化の大きな原動力となるわけである。
・儀式的な国交の有無は、実質には関係ない。
・中国文化の圧倒的な影響下にありつづけながら、政治支配は受けないという地位にいた。従って日本が中国に対等とあろうとするとき、そこに出てくるのは常に中国からの文化的孤立という姿勢なのである。
・中国は、隣接の一部の国については、文化的に君臨するとも政治的に統治せずである。
・倭寇は本質には商人でいわば私貿易業者というべきものであったろう。日本側の輸出品は、武器、すなわち刀であった。
■日本人の政治に関する考え方
・権威+民衆VS権力という図式を、日本人はあらゆる対象にあてはまる
・戦前の日本でなにより奇妙なのは、「世界に冠たる歴史」という考えと「摂関政治はあやまり、武家政治はあやまり」という考え方、簡単にいえば、「自国の歴史はすべて誤り」という考えが併存していたことである。
・尊皇思想とか勤皇思想とか言われる思想が山城の小領主である天皇家を、皇帝の帝位に押し上げていくのであって、天皇個人の意志は、これに介入する余地がない
・山鹿素行の中国観が、君臨すれど統治せずという、天皇支配を生み出した
・日本という国は圧倒的な中国の文化的影響を受けたがゆえに、同文同種でなく、別の文化的形態を生じて、文化的権威と、政治的権力が分立している
・なぜ日本から儒者が消滅したか、政府の弾圧によるものではなく儒者を生滅させた何かが中国政策を決定させたとみるべきであろう。
・儒学の権威を無視した最初の権力は田沼隠次である。通貨問題で建議をうけ、儒者の議論は役に立たぬと一顧だにしていない。
・江戸の後期、平田篤胤や、本居宣長らの国学や、蘭学などの興隆で、日本=天皇へと移り、中国は無視されていく。日本人の目が、天皇と西欧に向いていくのは田沼時代からである
・戦前の日本の「右翼」と言われた人々は、調べれば調べるほど奇妙な存在と言わざるを得ない。
・日本にとって絶対の規範は西欧であっても尊皇思考ではなかった。それが先鋭的に現れたのが、「天皇機関説と国体明徴問題」である。結局は、天皇を西欧の法的基準で定義するか、尊皇思想の基準で定期するかという問題であろう。
■アジアからみた日本
・アジアの国々は、日本を「先進国」とみているのではなく、「西欧化の先進国」と規定しているのである。先進国に学ぶなら、直接西欧に学べばよい。だが、「西欧化」は、西欧に学ぶことはできない。
・しかし、日本にはそれを学ぼうとしても、日本自身がその過程を消しているから、何一つ伝えることができないでいる。
・日本の行き方をそのまままねることは不可能でも、日本人の行動の基準である「思想」を思想史として客体化すれば、彼らはそれから学ぶことはできるのである。
目次
1章 感情国家・日本の宿痾
2章 鎖国時代の中国大ブーム
3章 尊皇思想の誕生
4章 明朝派日本人と清朝派日本人
5章 太閤式・中国交渉の失敗
6章 朝鮮の後ろには中国がいた
7章 逆転する中国像
8章 中国を忘れた日本
9章 「外なる中国」と「内なる中国」
ISBN:9784396500849
出版社:祥伝社
判型:B6変
ページ数:272ページ
定価:952円(本体)
発売日:2005年03月1日 第3刷詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
天皇を絶対視するのも拒否するのも中国における理想の皇帝を大前提に捉えているという意味では両者の根っこは同じ。
長年にわたって中国が日本人にとっては規範であった。
それは現在でも実は変わっていない…???
一つの外国ではなく、特別な存在であるからゆえに「日本が」中国への意識に過剰に囚われている…のか? -
歴史理解に役立つ。とても良い。
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イザヤ・ベンダサン (著) , 山本 七平 (翻訳)
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日本辺境論の考え方がこんなところにもあったとはおもわなった。
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日本人は、条約さえも感情が優先するという指摘は、同じく山本七平著「空気の研究」に通じると感じさせられた。
決断した者がどこにもいない、内なる天皇と外なる天皇、決して現実とかみ合うことのない理念にむかって感情を高ぶらせる日本人。
本書は70年代にかかれたものだが、まったく知らなかった角度からの指摘に驚きが多かった。
思想に距離をおくことができて始めて思想史ができるという当たり前のことだが、的確な指摘であった。 -
20080720
山本七平
忘れたw
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漢文など古い文献が続々引用されているので、その辺りに造詣が深くない私のようなものはかなり理解に苦しんだ。もっと田中角栄がでてくると期待していたのに・・・秀吉は器じゃなかったということなのね。