侵略の世界史: この500年、白人は世界で何をしてきたか

著者 :
  • 祥伝社
3.47
  • (4)
  • (2)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 42
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396610739

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この本は発行された当初(1998頃)に読んだもので、最近久しぶりに読み直してみました。読んだ当時、白人が植民地支配や奴隷貿易を行った事実を知って衝撃を受けたのを覚えています。

    日本が明治維新から太平洋戦争にかけて多くの国に迷惑をかけてきたを私達は学んできましたが、同時期ではありませんが、現在の先進国を言われている欧米諸国もそれ以上のことをやってきていることを理解しました。

    日本も正しかったという認識ではなく、幸せに暮らしていた、アメリカ・アフリカ大陸に住んでいた人達にどのような影響を与えたかを認識すべきだと思いました。特に、第一次世界大戦直前に完全に欧州諸国(英仏米独露伊蘭ベルギー、ポルトガル、スペイン)に分割されていた世界地図(p177)は衝撃的でした。

    この本は、私が近代史に興味を持つことになる記念すべき本で、この本に出逢ったお蔭で今の私があるとまで思っています。未来を正しく過ごすためにも、過去にどのようなことをしてきたのかを自分なりに学んでおきたいと思います。

    以下は気になったポイントです。

    ・虚偽の歴史観から脱出するためには、歴史のスパンを500年に、空間的視野を地球的規模で大観することで、世界史を読み直して真実に迫る必要がある(p4)

    ・白人たちは、文明とキリスト教の宣教の名を掲げながら、異民族に一片の憐憫の情を示すことなく、早い者勝ちに奪い、殺し尽くした、この時代は白人以外は「ヒトにあらず」であった(p19)

    ・世界の多様な、人種・言語・宗教・社会・文化・歴史の違いを決定するものは、その地理的位置と、気候風土であると考えて間違いない(p36)

    ・ストックホルムは岩また岩で、土はどこにも見られなかった。ノーベルがダイナマイトを発明しなければならなかった理由はこれである(p40)

    ・略奪が一番簡単で、一番豊かな生活を約束するのはヨーロッパ、日本では泥棒、強盗はバカがやるもの、欧州では優秀な人間がするもの(p42)

    ・ローマ帝国の領土が、当時の技術や軍事力で維持・支配できる限界に達して、これ以上征服できる土地がなくなったときに帝国の没落が始まった、ローマの繁栄は、自らの生産ではなく、略奪と奴隷によるもの(p48)

    ・人間は神に代わって動物を家畜とし、これを殺して活用しても構わない、他民族を侵略してその民族を殺したり奴隷にした場合、奴隷は人間ではなく家畜と同列の扱い(p52)

    ・ナチスによるユダヤが虐殺はだれでも知っているが、この犯罪はナチス固有のものではなく、キリスト教徒欧州人によるユダヤ人の迫害、虐殺の歴史は、十字軍によるユダヤ人殺しに始まっている(p56)

    ・異端審問の特徴として、1)密告の奨励、2)拷問の承認、3)刑罰の厳しさ(p58)

    ・東方から、モンゴル・イスラムに追い詰められたので、西の海洋に新天地を求めざるを得なかった、なのでポルトガルとスペインが最初に海に目指した動き出したのが偶然ではない(p63)

    ・ペストの世界的蔓延は、モンゴルが雲南地方に侵入した際に、そこの風土病に感染したのがきっかけ、1393-94年の2年間で人口の3分の2が死んだという報告がある(p63)

    ・コロンブスが到着した1492年から、インカ帝国が完全に滅亡した1570年までに、最大推計から考えると、1.1億人から1億人も犠牲になったことになる。直接の殺戮以外に、欧州人がもたらした伝染病(天然痘、チフス)がある(p89)

    ・一小国のポルトガルが強国になれたのは、西洋人の夢であった東洋貿易を独占できたから、西航したスペイン勢は、アメリカ大陸に阻まれた、一方で新大陸という偶然の宝を得た(p100)

    ・ポルトガル(バスコ・ダ・ガマ)が喜望峰回りの航路を発見して、リスボンでの胡椒の値段は、10分の1以下になった、これによりアフリカの胡椒は姿を消した(p102)

    ・ネーデルランドはスペインから独立すべく立ち上がった、南部10州(ベルギー)は屈服したが、北部7州は独立を果たして、オランダとなった(p110)

    ・イギリスの植民地支配が長持ちした理由、1)島国という地理的優位性、2)キリスト教の信仰よりも、教会などの組織のみに関心を示し異教弾圧をしなかった、3)収奪した富を消費するだけでなく、内部蓄積、貿易を盛んにした(p116)

    ・スペイン人は現地人を殺しすぎたので、アフリカから労働力として黒人奴隷を連れてきた(p126)

    ・奴隷貿易に参加したのは、ポルトガル・スペイン・オランダ・イギリス・フランス(p127)

    ・黒人奴隷を一番多く移入したのは、カリブ諸島(40%)、次が砂糖プランテーションのためのブラジルへ38%、残りがアメリカ南部(p128)

    ・アメリカ独立宣言は、人間の自由と平等であるが、すべて白人自身のためで、先住民のインディアンや輸入した黒人奴隷は無関係(p150)

    ・中南米の独立は、あくまで先住民の独立ではなく、欧州からきた植民地開拓者および先住民との混血児の、本国に対する独立(p152)

    ・秀吉が朝鮮出兵をしていたころ、スペインはマニラ、ポルトガルはマカオ、オランダはジャワに着々と東洋侵略の拠点を築いていた(p185)

    ・連合国の日本占領計画は、北海道と東北をソ連、関東・中部・近畿を米国、中国と九州を英国、四国を中国へ4分割する予定であった(p237)

    ・GHQが最も活用したのは、NHK・朝日新聞・岩波書店であった(p240)

    ・南京虐殺の虚構は蒋介石の戦後処理でも明白、彼は終戦直後に軍属・民間人の合計210万人を、無傷で送り返してくれたので(p241)

    ・東京裁判の11人の判事の中には、パール判事以外にも、オランダのレーリック、フランスのベルナールも裁判自体の違法性を強く訴えていた(p243)

    ・アメリカは朝鮮戦争の反省から、サンフランシスコ対日講和会議にソ連の参加を拒否、日本への賠償要求を放棄した(p246)

    ・西欧列強の繁栄は、植民地収奪、奴隷酷使、死の商人の3つで支えられていた(p252)

    2014年1月26日作成

  • この本は、日本人の日本史観を根底から変える。全く知らない身には、いろいろな点で納得がいく。日本を知るには500年間の世界史から見ていかなければならない、それが本当によくわかった。恐ろしいほどの歴史が封印されていて、改ざんされている。コロンブスは英雄ではなく悪魔の使者である、なぜ南北アメリカ大陸、オーストラリア大陸には先住民がほとんどいなくなったのか、アフリカ大陸はなぜ人口が少なくいまだ貧困にあえいでいるか。謎がとける。そしてその歴史に戦慄する。「その民族を滅ぼすには、その歴史を抹殺せよ」日本人のほとんどがその策にはまっている。もう一度、自分の歴史観を見直さなければならない、それを提起してくれる本。

全2件中 1 - 2件を表示

清水馨八郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×