「見えない資産」の大国・日本 中国、アメリカにはない強みとは

  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396613549

感想・レビュー・書評

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  • この本は、大塚文雄、R・モース、日下公人の三氏よる対談である。テーマは、長くソニーに勤務し、内外の関連会社で経営に携わってきた大塚文雄氏の「インタンジブルス(無形のもの、見えないもの)」という考え方をめぐって展開する。日本企業内の人や人相互の関係に含まれる見えない長所が、日本企業にとっての大きな資産であり、これからの日本経済に重要な役割を果たすという考え方だ。

    現代は第三次産業革命が進行している時代という。第二次産業革命で、部品や製造工程の標準化が進んだが、そこに情報処理能力が加わって、製造業がさらに高度化するのが第三次産業革命である。この変化の中で、魅力的で高品質な製品を、必要な量だけ即座に生産できることがますます求められるようになる。

    これは、「インタンジブルス」を常識として身につけている日本人、日本社会や企業にとって得意中の得意なことである。エリートが指揮、命令し、働く人が標準化されるアメリカなどにはない、働く人々が持っている目に見えない人間的な資産が「インタンジブルス」である。

    具体的には、社員の一人一人がもっている道徳心、好奇心、改善や創意工夫の意識、仕上げに凝る、仲間を助けるなどの姿勢がいい例である。日本人は、自分を鍛え育ててくれるのがいい企業だと判断し、仕事を通して成長しようと考える傾向がある。隣の人間に無償で教えたり、逆に先輩に習ったりなど、制度化されない人間関係の中で受け継がれていくものも多い。これらは、目には見えないが企業にとっての貴重な資産と考えることができる。これらすべてが、独自の創造性を育み、ハイセンスな情報をともなった魅力的な超高級品を生み出すためのエネルギーとなるだろう。第三次産業革命の時代に、他国が真似のできない長所となるのである。

    要するに日本社会や企業が元来もっていた個々の人間の資質とその関係という長所が、「インタンジブルス」として今後ますます重要な意味をもつようになるということだ。その意味で日本企業は、「インタンジブルス」の宝庫なのだ。しかし日本の「インタンジブルス」は誰もまだ深く分析していないという。

    日本人にとって当たり前すぎることで、しかもあまりに豊富にありすぎるので、分析の対象になるとすら考えられなかったのかも知れない。しかし、これからはそれぞれがどれほど「価値ある資産」としてプラスの意味をもっているのかを、分析し、可視化し、体系化することがきわめて重要となる。分析され、その資産としての意味が自覚化されることで、その長所をさらに活かし、伸展させていく方法も見えていうるからだ。その分析・自覚化・方法かが、第三次産業革命を生き抜くための重要な戦略へとつながっていくだろう。

    この本では、日本経済の発展や企業の経営の観点から、今まで自覚することのなかった日本の企業風土に含まれる見えない資産としての「インタンジブルス」を積極的に体系的に伸展させようという提言が語られている。私自身の関心は、日本という国あるいは日本文化全体について同じような自覚化、体系化を行なうことである。

  • 見えない資産の意味が読んでわかりました。わからなくもない内容ですが、欧米化しているのもたしか。この資産を活かして日本を元気にして欲しいです。

  • 見えない資産。日本人は日本人らしいよさに無自覚なのかもしれない。この本では比較がアメリカだからわかりやすかった。これがドイツとかならどうなんだろうなーとか読んでて思った。でも、ドイツも日本ほどではない。なんでだろうな? とか。改めてこういうの読むと、いいところはやはり進化させつつ残したいなと思う。日本で育まれている感性大事にしたいなと思った。

  • 2013/12月
    なんでもかんでも謙遜自虐に見るでなく
    何が優れてるか見るのは重要

  • 何回も読んだ
    日下公人さん好き
    読みやすい
    なんか文から人となりがにじみ出てて安心する感触

    こういう本がベストセラーになるべきだよねぇ
    多くの人の目につけばいいのに

    親は私に公務員になれという
    でも私は昔から職人さんって響きに弱いんだなw
    将来は中小企業で一生雇ってもらいたいなぁ

  • 日本人が当たり前の様に持っている美徳・感性・宗教観などの総称を「無形の価値=インタンジブルズ」というのだそうだ。
    アメリカの製造業を見ていると何故こんなバカな事をやってるんだろう?、と思う事があるのだけど、それがアメリカに限らず外国では普通の事で、日本が(というか日本人が)逆に凄かっただけなんだなあと読んでいて思った。
    IT活用の話はまさに自分がやっている仕事がそうだったので、その通りだと共感出来た。アメリカでは管理者が標準化したものを労働者は守っていけば良いだけなのに対し、日本では標準化(マニュアル化)した所からがスタートラインで、そこからより良く改善していく作業が一番大事になる。

  • 徹底した合理主義の大国・アメリカ、何でもかんでも真似る中国。
    いっぽうの日本は、戦後アメリカから懸命に学び、真似して終わるのではなく、独自の工夫を加えて成長を続けてきた。

    本書では、日米の経営方式を比較しながら、両国の文化的・歴史的背景の違いと、世界の中の日本人の強みを紹介している。
    例えば、短期的で目に見えやすい利益を追うのではなく、常に長い目で物事を考えるのが日本人の長所だそうである。社員教育への投資や、飽くなき改善意識がその最たる物。
    アメリカの産業が衰退してしまった経緯の根本にあるのは、数字だけを見る合理主義。端から見れば無駄が多いと思われる日本的経営であるが、まさに今これからの時代、大いに強みを発揮できるはずだ、と著者達は語っている。

    日本企業、日本人にしかない強みを私たちはもっと意識するべきだし、世界に対して大いに誇って良いはずだ。
    日本ってもうだめだ、なんて考えるのはよそう!・・・と感じさせてくれる本。

    • まささん
      最近は、何でも数字で評価したがる、数字が出ないと評価しない、成果主義という考えが日本でも跋扈して困ったものです。数字では評価できない事もたく...
      最近は、何でも数字で評価したがる、数字が出ないと評価しない、成果主義という考えが日本でも跋扈して困ったものです。数字では評価できない事もたくさんあると気づくべき。日本式形成の良い面をもっと見直し、世界と戦うべきだと思う。
      2012/05/03
  • 常々思っていました、「この国はもうダメ」なのかと。
    けれど中国の友人に言われました、「日本はすごい」と。
    また思っています、「アメリカって何やねん」。

    私がこの国に生まれた事について、もういちどdignityを持ちたい。そう思い手にいたしました。

    なるほど。一読してみる価値はあると思います。

  • この本では企業理念、企業文化、ブランド、ノウハウ等の「見えない資産:インタンジブルス」を「見える化」する重要性について説いています。ただし客観的に示す「数値化」する資産評価方法までは踏み込まれていません。

    この数値化については誰もが苦労しているようで、見えない資産を現在の価値で評価することに加えて、それが将来にわたってどのように利益をもたらすかの試算が難しいのでしょう。米国や中国と比較して会計書類には掲載されていない「無形の価値」が日本には埋蔵されていることを認識できた点で、現在の日本を元気付ける本として読んで良かったと思いました。

    今まで日本の物価が高いことを肯定的に捉えられることは少なかったと思いますが、このために日本人が健全な生活水準を維持出来ている(p139)という指摘は嬉しかったです。また、日本の製造業の利益率がアメリカよりも低い一因として製造設備の最新施設の更新にあるという指摘(p148)は印象的でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・お互いが信頼し合って暮らせる共同体を作り上げてきた日本は、江戸時代後期には一人当たりのGDPが世界一であった(p14)

    ・アメリカは経営層が主役(経営統治システム等)の「インタンジブルス」が多く、日本は社員が主役のものが多い(p22)

    ・まず自分たちの持つインタンジブルスに気づくために、日々の仕事を可視化(見える化)することが重要(p24)

    ・ホンダが人型ロボット「アシモ」を開発するときに許されるかどうかバチカンに質問したところ「開発の結果が神の意志である」という回答を得ていた(p33)

    ・日本企業が求めるのは、アビリティ(能力)よりもケイパビリティ(適応性、将来性)である(p40)

    ・GM、フォードは「かんばん方式」や「多能工の育成」がなぜ機能しているか理解できなかった、隣の人間にタダで教えたり、先輩に習いにいったり、制度化されていないことが多く、それが重要であることに気づいたから(p47)

    ・日本は戦争には負けたが、その目的を「人類差別の解消」「植民地支配の打破」にしておけば、大成功であった(p53)

    ・アメリカで1990年代に流行した「シックスシグマ」という経営、品質管理手法は、日本が1960、70年代にやっていたボトムアップ品質改善を、トップダウン手法にしたもの(p68)

    ・工場の海外進出の取り組み方で、アメリカはOEMにして購買担当者がでていくのに対して、日本は技術移転をして製造・開発技術者やマーケティング班が乗り込んでいく(p73)

    ・日本人が日本語を話している限り、文化や道徳などの暗黙の了解がある、方言で話す人同士は、もっと微細な部分で深く理解し合えるが、米語を話しても米国人同士は文化的な背景まで理解できない(p90)

    ・アメリカでは六人に一人が自動車産業に関わっていると言われている、そのためデトロイトでは失業率20%という数字となる(p102)

    ・日本ではマニュアルを当事者たちが参加して作るので、作った時が「よりよくなるためのスタート」になるが、アメリカ型は、作った瞬間に劣化が始まる(p129)

    ・日本社会の特徴として理解すべきは、長期雇用・排他性(外国人受け入れを制限して日本人優先採用)・人口密度、にある(p138)

    ・日本の物価がアメリカよりも平均30%高いのは、より健全な生活水準を維持するために使われている、清潔な街並み、犯罪率の低さ、グリーンテクノロジーの開発が進み、心理的に幸福度の高い国民が存在している(p139)

    ・アメリカ製造業の利益率の高いのは、工場の機械設備等の投資したものを使い切っているから、日本は簿価に残っている古い機械を捨てて新しい機械を導入するので利益率が落ちる(p148)

    ・海外にあって日本にないものとして、1)自分の精神の存在の絶対性、2)輪廻の思想がないこと、3)最後の審判、日本にしかないものとして、1)許し(禊:みそぎ)、2)世間様(自分の主張は相手と自分の中間に置く)、3)お上(絶対的な君主とは異なり、従うが隷属しない)、がある(p153)

    ・たとえば100個の部品で出来上がっている製品があるとして、それぞれの部品の不良率が100分の1であるとすると、製造終了時点で最悪では、全部不良となる(p215)

    ・日本で生産しているエアコンは100%インバータ方式(コンプレッサーの回転数を制御して室温に併せて運転可能)であるが、アメリカではゼロ(p220)・日本企業が成功したのは、改善の意識が強いから、その根本にあるのは好奇心の強さである(p222)

  • 道徳心、好奇心、お互いを思いやる心、育て上げる事を良しとし、長期的な繁栄を求める。これらをインタンジブルズとして日本人の強みと説いている。これらを美徳として良しとされる社会は自分に取っても心地よいもなのだが、世界の中での競争でどれだけ活かせるのかの確信がこの本の中では持てなかったのが残念。

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著者プロフィール

1930年、兵庫県生まれ。三谷産業株式会社監査役。日本ラッド株式会社監査役。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、(社)ソフト化経済センター理事長を経て東京財団会長を務める。ソフト化・サービス化の時代をいち早く予見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍。未来予測の正確なことには定評がある。『いよいよ、日本の時代がやってきた!』 『日本人への遺言』(渡部昇一氏共著)『日本人への遺言partⅡ 「和の国のかたち」』(渡部昇一氏共著)『反核愚問』他多数有り。

「2018年 『「発想」の極意 人生80年の総括』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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