なぜ若者はトイレで「ひとりランチ」をするのか

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 187
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396613679

作品紹介・あらすじ

ネット、マスコミで騒然!「便所飯」の心理と病理を解読する。

感想・レビュー・書評

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  • ワイドショー本。

  • ありそうで、実際にはなさそうな「トイレでランチ」
    あったも全くおかしくない学校事情や家庭での育ちについては納得できるところがあるものの、最後の結論は、個々の思いや違いを認めていないもので残念だった。

    でも、事例や、そこからの考察でなるほどと思うものもあり、読んでよかった。

  •  タイトルがネット上で度々見かける「便所飯」を指しているという事もあって、興味本意に手に取った本。この「便所飯」はウィキペディアで熾烈な論争が行われたほど、実態が無い、しかし現実味のある事として受け止められている事態にあるらしい。
     「便所飯」が生じた背景には、学校教育の場で「新学力観」と呼ばれる「人からどうみられるか」を重視した指導が導入されたことが関係しているという説を展開している。
     子供同士の競争を否定したがために、自分よりも下位の人間をつくり満足する。下位の人間とされてしまった子は人間性を否定されてしまい、大人になってもそのレッテルに苦しめれてしまうと説明している。 一方、周囲の目を過度に気にする側の人も、周りの意見に合わせることばかりをしているのでまともな信頼関係を築くのが難しい。ランチメイトとのつきあいが辛くなるのは「本音を言えない、ひとりにさせてもらえないから」と推測している。
     「競争を奨励する価値観へと転換すべき」という文意が何度となく出てくる。是非が分かれそうなところだが、これは筆者の経歴を見ればその理由も分かる。

     残念な点は、他の方のレビューにもあったが、何らかの考えを提示するに当たって具体的な情報源を記載していない箇所があることだろう。きちんと出典を明らかにすれば批判されることも無かったのではないかと思う。

     あと、本の後半において筆者が何かと「今の若者は〜だ。私達が若かった頃は違っていた」などと書いているのも目に付く(車を買わない、服に金をかけない、飲み会で酒を飲みたがらないなど)。
     この本の趣旨に沿っていえば、今の若者たちは筆者が若かった頃と違い、誤った価値観に基づく教育のために社交性が低下しており、将来にも希望が持てない。結果的に「若者が金を使わなければ、社会の経済はますます縮小する」「さらに若者が倹約に走る」ということにつながるのだろうが、そんな単純な問題として片付くものなのだろうかと疑問が生じた。
     その一方で、「教育や政策のベクトルが本来あるべき方向とは逆になってしまうのは、マスコミなどのリードする立場にいる人間が勝手な価値観で物事を判断するせいだ。彼ら自身に関しては「人間性」や「精神的な豊かさ」を強調する教育も必要。勉強するだけじゃダメ人間になる」とバッサリと切っている文もある。こちらは「よく言ってくれた」という気持ちを抱いた。
     秋葉原連続殺人事件、英国人女性殺人事件の犯人にも着目している。

    自分用キーワード
    手をつないでゴール バイブルベルト 鳥取県の学級委員長不在 ウィルフレッド・ビオン(基底想定グループ) 土居健郎『「甘え」の構造』 ドナルド・ウィニコット「偽りの自己」 小此木啓吾「同調型ひきこもり」 ダニエル・ゴールマン『EQ こころの知能指数』(及びサロヴェイ, メイヤー)  

  • 物理的な豊かさよりも精神的豊かさを重視し、人間性を評価する社会になったが、基準が曖昧で育てたり伸ばしたりするのが難しいという点に共感した。子どもに対する教育は、大人の押し付けであってはならないと感じた。
    若者の夢が見れない生きづらさは、ここ20年以上続いているということだろうか?
    10年以上前の本で状況が今と違う部分も多少あるが、高度経済成長期から現在に欠けてどのような社会に変化していったかを考える上で面白い。

  • トイレでひとりランチするのは、自分には一緒にランチする友達がいないと思われるのが嫌だから。学歴社会が否定され、IQよりEQ、何かに優れていても人間性が良くなければいけないという世の中が生み出した。その人の人間性が良いか悪いかというのは、とても難しいが、学校教育では、人間性が良い → 皆と仲良く出来る → 友達が多い という図式になり、成績がよかろうと、走るのが早かろうと、褒められず、友達が多くないと褒められない。なので、表面的であろうとも多くの友達を作ろうとする。関係が深い親友を数人いれば良いと思う人は少ないらしい。そのために、人と深く交わる経験なしで大人になる若者が出てきている。人目を気にし過ぎて、自己を確立できない若者は、不景気と社会情勢と相まつて、将来に不安を覚え、夢を持てなくなっている。それが、さらに日本を停滞している状況なっている。
    人と仲良くすることよりも、他人と比べて秀でているものを積極的に褒めて、自信をもたせる教育が、結果的には社会に活力を与える人間を育てることになるのである。

  • 日本人は、生まれつき「和」を好む民族ではない。むしろ、「もうちょっと仲良くしなさい」と押さえつけておかないと、集団がバラバラになってしまうくらい、競争的な性質を持つ。これが日本人の真の姿だった。

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  • 自分の周りにある状況はこの本の中身と重なっている部分が多くある。例えば、食堂で一人食事をしている同学年の生徒に対し、自分と一緒していた友人は「よく(一人で)ここで喰えるよな。俺は恥ずかしくて無理だわ」と言った。一人飯=友達がいない人のすること、と周りは解釈するため、連鎖してそれは"悪い事"という風潮まで創りあげてしまった。事実その友達は「アイツは友達いないんだな」と哀れに思われたくないがため、一人で食堂に行くことはないと答えた。そういった体験を近くから見てきた者としては納得する点も非常に多く、頷きながら読んだ。だが、ランチメイトとかそういう存在は実在するのか? など所々で本当なのかどうなのか疑問に思うところもあった。

  • タイトルと内容の乖離が激しい。便所飯を皮切りに、いじめやスクールカーストに言及していて、最後に結びとしてまた便所飯にもっていくのかなあっと思ったけど、そうでもなかった。

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著者プロフィール

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わっている。
主な著書に、『80代から認知症はフツー』(興陽館)、『病気の壁』(興陽館)、『70代で死ぬ人、80代でも元気な人』(マガジンハウス)、『80歳の壁』(幻冬舎)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『老いの品格』(PHP)などがある。

「2024年 『死ぬまでひとり暮らし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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