- Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396614157
作品紹介・あらすじ
「あの日」から一年。福島に住み続ける詩人の魂の記録。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
まるで写真家の写真かのように鮮明な震災後の様子を見ているかのようで動画のように動きも感じられ、周囲を励ます力強いメッセージも織り込まれた詩は動揺の中に冷静さと筆者のあたたかい心に包まれており、真の人間としての強さに今後も学ばせて頂けると、決して震災を忘れないと思わさせられました。貴重な記録に感謝します。
-
たまたま図書館で出会い読みました。
2011年3月11日の震災から継時的に書かれているため、詩を読んでいても著者の心境の変化がよくわかります。
和合さんの詩には「力」を強く感じました。心の声が聞こえる気がしました。
この詩集を読んで、改めて「終わっていない」事を実感しましたし、今なにが出来るのかをもう一度深く考えてみよう、と思いました。 -
福島第一原発からの一年間。政治家の言葉。企業家の言葉。メディアの言葉。原発に関する論争。そこにすくいとられることのないものを言葉に結実させ、焼きつけ続けた詩人。今の福島の、そして日本の事態には、詩によってしか届かない領域がある。
-
(2012.04.06読了)(2012.03.30借入)
【東日本大震災関連・その70】
著者は、福島で高校の国語教師をしている詩人ということです。
昨年の6月には、福島の東日本大震災をテーマに三冊の本を出版しているようです。
「詩の邂逅」和合亮一著、朝日新聞出版、2011.6
「詩の礫」和合亮一著、徳間書店、2011.6
「詩ノ黙礼」和合亮一著、新潮社、2011.6
その辺のことを知らずに、図書館からのメールサービスで題名が気になって借り出しました。中身は、昨年3月から今年の2月までの東日本大震災関連の詩と日記的なものです。
福島の様子が伝わってきます。福島は、どうしても放射能のことがテーマになってしまいます。放射能は、目に見えないし、生物に害があることは分かっていても、どれぐらいまでなら大丈夫かはよく分かっていないし、個体差もあることでしょうし、…。
それにしても、広島、長崎は、どうやって住めるようになったのでしょう。いま、放射能はあまり残っていないのでしょうか。原発の放射能と原子爆弾の成分が違い、原子爆弾の成分は、短期間で無害になってしまうのでしょうか。
(ネットで調べてみると、原爆の放射能は、急激に減少したということです)
【目次】
震災ノート
もう一つの震災ノート
震災ノート 余白に
「震災ノート」には、日付と場所が明記されています。「もう一つの震災ノート」には、日付も場所も記されていません。「震災ノート 余白に」は、エッセイ的な感じですが、月は明記してありますが、日付は、某日となっています。
新聞や雑誌に発表したものを編集したものということです。
●整列(14頁)
並ぶ 水の為に
並ぶ 家族の為に
並ぶ 震災の意味を求めて
並ぶ 命の渇きを知って
並ぶ 給水車の前に
並ぶ 水が今日の分だけでも欲しいから
並ぶ 空の容器を二つまでという決まり
並ぶ なるべき大きなものを持って
(後略)
●立入禁止(30頁)
砂場立入禁止
草ムラ立入禁止
二○圏内立入禁止
私有地ニツキ立入禁止
(後略)
●原子力が(48頁)
夜 眠ろうとすると
海が 体を小さくして 隣で眠っている
寝息をたてているから 安心しているけれど
突然に 押し寄せてくるものが 恐ろしくて眠れない
(後略)
●サボテン(54頁)
浪江町へ 国道 斜めの電信柱
裏返った漁船 長椅子 川で跳ねる 鮭
雑草の生えた 田んぼ 新しい沼
飛行機雲 裏返った車 このことがすべて
●収束(76頁)
福島県民は三万人が避難していると聞いた
ある中学校では県外の高校を受験する生徒が急増した
ある街ではだれ一人として外で 子どもが遊んでいない
どうなるのか ふと あの爆発を思い出すのだ
●方法(84頁)
どんなふうに暮らしていけばいいのか
正しい答えはあるのか
何かを決断しなくてはいけないのか
何かをあきらめなくてはおけないのか
●離郷(137頁)
私たちはこれから 家を
町を 森を 田園を離れていく
別れの前に 唇を噛みしめて
ゆるがないふるさとを想った
●3月11日(142頁)
底から響く、地球からの怒声を想起させる地鳴りは、これまでの経験のどれにもあてはまらないほどの強さであった。
大きな馬の背中に乗っているかのような、立っていられないぐらいの地の揺れ。
●一時帰宅(149頁)
ある人が原子力発電所から、二○キロ圏内の自宅へと二時間だけの一時帰宅を許された。久しぶりの家に戻り、何を持って帰って来たのか。
まったく手をつけずに、自宅を後にしてきた。どうしたのかと尋ねられて、「ただ、茶の間で泣いてきた」と一言。
著者 和合亮一
1968年福島県生まれ
福島大学卒業
福島大学大学院修了
1998年第一詩集「AFTER」で第4回中原中也賞
2006年第四詩集「地球頭脳詩篇」で第47回晩翠賞を受賞
ラジオ福島で「詩人のラヂオ 和合亮一のアクションポエジィ」のパーソナリティを務める
福島市在住。詩人。高校の国語教師
☆関連図書(既読)
「緊急解説!福島第一原発事故と放射線」水野倫之・山崎淑行・藤原淳登著、NHK出版新書、2011.06.10
「津波と原発」佐野眞一著、講談社、2011.06.18
「前へ!-東日本大震災と戦った無名戦士たちの記録-」麻生幾著、新潮社、2011.08.10
「災害論-安全性工学への疑問-」加藤尚武著、世界思想社、2011.11.10
「南相馬10日間の救命医療」太田圭祐著、時事通信出版局、2011.12.01
「市民の力で東北復興」ボランティア山形、ほんの木、2012.01.15
「官邸から見た原発事故の真実」田坂広志著、光文社新書、2012.01.20
「見捨てられた命を救え!」星広志著、社会批評社、2012.02.05
(2012年4月6日・記)