ヘンな日本美術史

著者 :
  • 祥伝社
3.89
  • (81)
  • (127)
  • (88)
  • (14)
  • (0)
本棚登録 : 1256
レビュー : 140
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396614379

作品紹介・あらすじ

自分が描いたということにこだわらなかった「鳥獣戯画」の作者たち。人も文字もデザイン化された白描画の快楽。「伝源頼朝像」を見た時のがっかり感の理由。終生「こけつまろびつ」の破綻ぶりで疾走した雪舟のすごさ。グーグルマップに負けない「洛中洛外図」の空間性。「彦根屏風」など、デッサンなんかクソくらえと云わんばかりのヘンな絵の数々。そして月岡芳年や川村清雄ら、西洋的写実を知ってしまった時代の日本人絵師たちの苦悩と試行錯誤…。絵描きの視点だからこそ見えてきた、まったく新しい日本美術史。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • <画家の視点から日本美術史をナナメに見る>

    伝統的手法を取り入れつつ、過去と現代の風俗が混じり合う細密な絵で知られる画家、山口晃。
    緻密でありながら、遊び心もある絵である。

    そんな山口晃による、日本美術史。網羅的・体系的な解説ではない。カルチャースクールでの講義にプラスαしたものだそうだ。
    白描図や雪舟や明治の絵などについて、描き手がどのような時代背景の中で何を考えて描いていたのかを、著者の想像を含めて再構成していくような感じである。
    「山口晃眼鏡」を掛けて見た、日本美術の数シーンといってよいだろう。

    雪舟論と洛中洛外図論がめちゃくちゃおもしろかった。
    三次元のものを二次元にする際に、西洋絵画と日本絵画ではそもそも発想が違っていたというのが興味深い。*もしかしたら吉田初三郎の鳥瞰図みたいなところにもつながっていく話なのだろうか・・・?

    これを読んだからといって日本美術史に大変詳しくなるわけでも、もちろん絵が上手になるわけでもない。が、現役の画家さんというのは、例えばこのように絵を見ているのか、というのが何だか新鮮である。
    自分で絵が描けなくても「いや、わし、絵、ヘタですけん・・・」といじいじすることもない。何だか脳味噌の普段使っていない部分が伸びたり縮んだり、よいストレッチになったなぁと思うことであった。

    著者前書きに「やあ、色んな絵が在って面白いぞ、先達は凄いなぁ、ようし自分も頑張ろう」とある。それに倣って言えば「ほう、色んな知らない絵もたくさんあって何だか面白い、よしよし、自分も今後、あれこれ見てみよう~」というところだ。

    • ぽんきちさん
      Intermezzoさん
      コメントありがとうございます。

      私自身はまったくの素人なのですが、優しい語り口でありつつ、新鮮な視点の解説でとて...
      Intermezzoさん
      コメントありがとうございます。

      私自身はまったくの素人なのですが、優しい語り口でありつつ、新鮮な視点の解説でとても刺激的に感じました。
      絵が見たくなる本ですね(^^)。
      2013/03/25
    • Intermezzoさん
      日本絵画も奥深いです~。
      また、自分が読んだ本について、他の読者の方と共有できるのがまた刺激になります。
      ぽんきちさん、お返事ありがとうござ...
      日本絵画も奥深いです~。
      また、自分が読んだ本について、他の読者の方と共有できるのがまた刺激になります。
      ぽんきちさん、お返事ありがとうございました♪
      2013/03/25
    • ぽんきちさん
      Intermezzoさん
      ほんと、他の方の感想は「あ、自分もそう思った」とか「うーむ、これは気付かなかったがなるほどそうだ」と思ったりして楽...
      Intermezzoさん
      ほんと、他の方の感想は「あ、自分もそう思った」とか「うーむ、これは気付かなかったがなるほどそうだ」と思ったりして楽しいですね。

      こちらこそありがとうございます(^^)。
      2013/03/26
  • 私の中では漫画家に近い印象の山口氏。
    有名どころの日本画をちょっと変な画にして見せてくれるものと思っていたら、かなり真面目に日本美術を語っていた。
    でも視点はやはり山口氏で、紹介される日本画も興味深いものが多く、見慣れた画もそう解説されると見方が変わる。
    そういう目で本物を見に行きたくなった。
     鳥瞰図なんて学校や近所をこんな風に描いたら面白いだろうな。夏休みの宿題にでもちびちゃんにやらせてみようかな。
    なんて自分でも作ってみたくなる。

    「屏風と云うものが置かれた環境を考えたとき、上から照明が当たる事は本来考えられません。昔は天井に照明はありませんから、基本的には昼は窓から、夜は燭台からの横に入ってくる光の下でみたはずです。(略)
    これを美術館で体験するには、しゃがんで見るのが一番です。」

    「文化と云うのは、それを発生させた事よりも、育てていった事の方が大事と申しますか、その育む行為自体が文化と云うものの実体であるような気がします。」

    最後の章では河鍋暁斎、月岡芳年、川村清雄を熱く語る。
    じっくり観たくなった。
    どこかでやらないかなあ。

  • アートコレクションを始めたところなので、作品の見方など、非常に興味深かった。

  • 山口さんの絵も好きだけど、文章も面白いかつ分かりやすくて好きになりました。ちょっぴり毒舌なのもなおよし!

  • 画家の山口晃さんによる美術史講義です。
    鳥獣戯画にはじまり、雪舟に洛中洛外図、浮世絵や六道絵…。
    日本美術の知識は教科書に載っている情報もあやしいくらいの私にとっては、新鮮な目で作品を眺める機会となりました。

    著者がバッサリ「下手」と言い切った絵にやられてしまいました。
    遠近感や軸があやふやで画面から崩れ落ちてしまいそうな洛中洛外図の醸し出す異次元感がたまりません。
    松島物語絵巻に対する「このレベルで描く方も描く方なら、頼む方も頼む方です」という著者コメントに、思わず笑ってしまいました。
    予想以上の毒舌コメントが散見されるのも、本書のお楽しみ。

    残念だったのは、描画技法や用語についていけなかったこと…うーん、もう少し絵画の知識があればもっと楽しめたかもしれません。

  • 描き手だからこその語りがとても楽しい。特に、洛中洛外図3点と岩佐又兵衛の作品が見たくなった。

  • 日本の美術史について、あまりに何も知らなくて、何か一冊読みたいなとずっと思っていた。
    本屋で見つけ、文章にひかれて、入門編にするつもりで手に取った。
    だが、これは私見の入った偏りまくりの美術史だからまじめにとらないようにとの注意書きが最初になされている。
    教科書のような、中立な表現が並んだ書き方でなおかつ面白いというのは至難の業だと思う。書いた人の感情や、思い入れが見えるから興味をそそられるのだ。ただでさえ知らない知識ばかりが並んだものを読もうというのだから。

    その意味で、一番最初の状態で読むものとして私には大正解の一冊だった。
    著者が実際に絵を描く人ということも、大きな長所。描きながらでしかわからない、その人の体感で得た基準による「絵の良し悪し」は、説得力がある。なるほど、これはおもしろい絵だ、とこちらもなんとなく実感できたような気になる。その分野の人にしかわからない世界を素人読者にも感覚として見せてくれる、これは著者の文章力のおかげも多分にある。

    私が大好きなのは、「一人オールジャパンの巨人」河鍋暁斎について書いたところ。

    「私の趣味で言えば、書画会図のちょっとトボけた線や絵日記の気取らぬ線に『好いなぁ、好いなぁ』となりますし、暁斎得意の蛙たちを描いたものには、形象と線の妙味に『美味しい!可愛い!格好いい!』と何に対しての感想だか解らないような感懐を抱きます。」

    ああもう、この人は本当に心底絵が好きなんだ、と思えるのだ。蛙たちは見えないのだが、こっちまで楽しくなってくる。
    「美味しい」という感想、私は「この人の書く文章がたまらなく好き」という作家を読む時によく思う。まさに文章を味わって、楽しんで、ああ美味しい、と満足する。そういう感懐を絵に対しても感じられるようになったら、本当に絵を楽しめているということだろうし、「これが自分の好きな絵」というのもわかるようになるのだろう。
    いろんな絵を見て、「この人の絵はなんでか好き」というものを見つけるところからやってみたい。

    視点が偏っていたっていいと思う。
    これから他の本も読んで平らかにしていければいい。
    少なくとも、「もっと他の本も読んでみたい」という最初の取っ掛かりを確実に作ってもらったと思う。

  • うーん、これは面白い! 山口氏は謙遜して「ヘンな」とつけているけれど、私はまじめな日本美術史として読んだ。こういう「絵の見方」を今まで誰も教えてくれなかったと思う。

    「わざとふにゃっと描くと云うか、ちょろまかすと云うか、仕上げすぎないのは日本の絵の特徴です」「別に技能を軽んじているわけではないのですけれども、むしろそれに宿るものみたいなほうに重きを置いていると言えましょうか」

    こんな感じで、鳥獣戯画に始まり、白描画、源頼朝像、洛中洛外図屏風などなどについて、新鮮な視点から語ってくれる。絵の具の質感や重なり具合についてしばしば言及されていて、画家ならではだなあと思う。西洋の絵と日本画の違いがちょっとわかったような気がした。

    美術史にとどまらず、日本文化についての鋭い考察も随所にある。むしろ、それこそが読みどころかもしれない。日本文化は模倣の文化だと言うけれど、源流を探ることにそれほど意味はなく(そもそもすべての文化は模倣の産物なわけで)「育てていったことの方が大事と申しますか、その育む行為自体が文化と云うものの実体であるような気がします」というくだりには納得。

    「最初は他所から持ってきた物であっても、こねくり回している内に何か違う物を生み出す力であり、その『こねくりポイント』を見つけ出す力こそが評価されるべき点だと思うのです」

    全体に柔らかい語り口で、こけおどし感が全くないところが好感度大。いいなあ、山口晃。

  • 絵描きの視点で読む・見る・感じるが出来そうですね。

    祥伝社のPR
    「山口晃、初の書き下ろし「画論」!
    自分が描いたということにこだわらなかった「鳥獣戯画」の作者たち。絹本に白色を差すまでの絵師の心細さ。「伝源頼朝像」を見たときのがっかり感の理由。終生「こけつまろびつ」の破綻ぶりで疾走した雪舟のすごさ。グーグルマップに負けない「洛中洛外図」の空間性。「彦根屏風」など、デッサンなんかクソくらえと云わんばかりのヘンな絵の数々。そして月岡芳年や川村清雄ら、西洋的写実を知ってしまった
    時代の日本人絵師たちの苦悩と試行錯誤……。
    絵描きの視点だからこそ見えてきた、まったく新しい日本美術史!
    カラー図版多数掲載 」

    • kuroayameさん
      鳥獣戯画ファンとして、レビューを拝見させていただきわくわくしましたd(^_^o)。
      鳥獣戯画ファンとして、レビューを拝見させていただきわくわくしましたd(^_^o)。
      2012/11/02
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      美術館「えき」KYOTOで、「平等院養林庵書院 襖絵奉納記念 山口 晃展~山口晃と申します 老若男女ご覧あれ~」開催中なので、覗きに行きたい...
      美術館「えき」KYOTOで、「平等院養林庵書院 襖絵奉納記念 山口 晃展~山口晃と申します 老若男女ご覧あれ~」開催中なので、覗きに行きたいと思っています。
      「鳥獣戯画」は私も好き、マンガの元祖としての貫禄大ですよね!
      2012/11/06
全140件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

やまぐち あきら
1945年生まれ。駒澤大学講師。
ヘンリー・ソローの著作を精力的に訳している。
そのソローの訳書に
『歩く』(ポプラ社)、
『ソロー日記 春』『ソロー日記 夏』
『ソロー日記 秋』『ソロー日記 冬』
『ソロー博物誌』(彩流社)、
『コンコード川とメリマック川の一週間』
(而立書房)などがある。



「2018年 『ソロー コレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山口晃の作品

ヘンな日本美術史を本棚に登録しているひと

ツイートする