謹訳 源氏物語 九

著者 : 林望
  • 祥伝社 (2013年2月2日発売)
4.11
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  • 本棚登録 :49
  • レビュー :5
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396614423

作品紹介

父も姉も亡くした宇治の中君が匂宮の元へ移ることになり、薫は後悔の念に駆られる。恋の苦しさを描き出す傑作「宇治十帖」、クライマックスへ-。

謹訳 源氏物語 九の感想・レビュー・書評

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  • 早蕨、宿木、東屋。
    薫はいつまでもうじうじしているし、匂宮は何だか軽率だし、薫や匂宮と光源氏とをついつい比較してしまう。似たような事をしていても、源氏の方がスマートにうまく事を運んでいたと思う。
    しかし、この宇治十帖があるからこそ、光源氏がさらに引き立っているのだろう。
    源氏の生前の話もきらびやかで面白いが、こちらはこちらで味があって面白い。
    源氏物語もついに終わりに近づいてきて、次で最後だと思うと嬉しいような、寂しいような。

  • 心理戦。

    男性に経済的な保護もしてほしいし、他の高貴な正室に較べられるのも辛いから自分だけを見てほしいと願う女性陣。

    目の前の女性が好きなのは本意だが、立場上、正室の相手もしないといけない男性陣。

    それぞれ心の奥に葛藤を抱えながらの駆け引きは面白いといえば面白く、じれったいといえばじれったい。

    一夫一婦制であろうと一夫多妻制であろうと「お互いにただ一人の理想の相手」などという幻想を追いかける以上、そうそううまくいくわけはなく、それでこそ小説が発展してきたのではないかと思う。

    美人姉妹の亡き姉に生き写しの異母妹登場。不幸の予感。

  • 光源氏亡き「宇治十帖」では登場人物は小粒になって見えます。でも、この世界を書くのは、「源氏物語」を完成させる紫式部の揺るがない構成の美意識でしょう。様々な要素が、これまでと対比的に配置されます。雅だった世界に突如現れる東国の受領や下級貴族たちの暮らしぶりや欲望を見るのは新鮮ですが世俗的です。「宇治十帖」が書かれる必然性は分かりますが、三島由紀夫の描く「豊饒の海」の「天人五衰」のように筆の枯れも感じました。

  • ついに九巻!宇治十帖の中の「早蕨」「宿木」「東屋」が収録されていました。

    宇治十帖については読み込みが足りないせいか、新しい発見がたくさんあってとても興味深かった!
    今まで、優柔不断な皆様にイライラしてしまい宇治十帖はあまり興味がなかったのだけれど、今回はよかったなあ。これはリンボウ先生のおかげかしら。。

    薫はねえ、とにかく上から目線で高飛車、そのくせ優柔不断でウジウジ&ネチネチしててちっともステキではないんだけど、実際の物語の中でも主役級なのに結構嫌われ者です。
    「なんと小癪なことよ」「なぜあのように、時の帝が、大騒ぎをして婿として特別扱いまでする必要があろう。」「たかが臣下の分際でのうのうとして・・・」などとボロクソ(笑)

    紫式部は宇治十帖にはいって辛辣じゃないですかね?源氏のこともからかう程度のことは言ってたけど(おじさん扱いしたり)こんな扱いをしたことはなかったと思います。
    なんとなく紫式部の鬱憤を感じてしまいました。
    それで言うと他にも、東屋の巻では浮舟の母君に「たしかに結構な宮仕えではありますけれど、かりそめの夜伽程度のあしらいでは、こちらはもうもう、ひどく胸の痛むことですよ。」「二股をかけるような心なく、妻一人をしっかりと守って暮らす男こそが、結局妹背の中も見苦しからず、行く末頼もしいことに決まっています。」などと言わせています。
    すごく現代的な考え方でびっくりしました。
    が、こういう考え方を持っているとしたら、当時の世界は生きづらいでしょうねえ。
    それを薫にぶつけてるのかな。

    本編ではあまり感じられなかった著者の存在を、なぜかこちらでは強く感じてしまいました。不思議。

  • 世界と欲望の対象を前にした無能と行動不全

     前巻から「宇治十帖」に入ったが、ここでは薫二十五から二十六歳までの「早蕨」「宿木」「東屋」の三つの章を収めている。
     何度読んでも歯がゆいのはその薫の優柔不断さだ。さきに美女に惚れるのはいつも薫なのに、中君も浮舟もライバルの匂兵部卿がさっさと手を出してものにしてしまう。

    薫は中君よりも姉の大君に惚れていたが、その大君が死んでしまうとその面影を忘れられずに妹に惹かれ、その中君をあろうことか匂兵部卿に教えてさっさと奪われてしまうのだから自業自得もいいところだ。

    しかも匂兵部卿の妻となった中君にまだ未練たらたらで、こんなことなら自分が先にものにしておけばよかったと悔やむのだからあほらしくて読んでいられない。

    かててくわえて薫は、せっかく自分よりも姉の大君が好きだったと知っている中君から大君そっくりの美女、浮舟の存在を教えてもらったというのに、これまたあっというまに匂兵部卿に初物を頂戴されてしまうという体たらく。

    次回はその浮舟が気の毒な目に遭うのだが、その原因はひとえにこの男の無能と行動不全にあるというても過言ではないだろう。そして「宇治十帖」があからさまにするこの「世界と欲望の対象を前にした無能と行動不全」こそが、ひときわ現代的なテーマなのである。

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