いま日本人に読ませたい「戦前の教科書」

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396614584

感想・レビュー・書評

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  • 書店をブラウジングしていて目に入った一冊。
    なにはともあれ、子どもにも読ませてみたい、と感じました。

    戦後の日本で使用されてきた歴史教科書は、、

     “「われわれ日本人のメンタリティを育んだ歴史」という視点が、
      まったく教えられていない。”

    ただただ、この一言に尽きると思います。

     “人間教育は知・情・意のバランス”

    単純に知識を詰め込むだけでも、みんな仲良くと、
    理念だけのお題目を唱えるだけでも、ダメなんです。

    それらを適度に組み合わせて、「自ら」で取捨選択して涵養しないと、、
    与えられた知識は知識のままで終わり、教養として根付いていきません。

     “(柳田國男や新渡戸稲造の目指した日本の統治は)搾取はしない。
      保護もしない。自立せしめる。”

    これは実際に、欧米列強からの搾取にあえいでいた、
    東南アジアの各国で実践されて、大戦後の独立へとつながっていきました。

    このことは、各国の歴史教科書でも教えられている内容です。

     “大東亜戦争に突入したときの日本人は、民度が高く、
      日本人としてのアイデンティティをしっかり持っていた。”

    “教育”とは、教えて育むこと、過保護にただ箱入りで守る事ではなく、
    自分の力で立てるように必要な知識を教えて育んでいくことだと、思います。

    そういった意味では、教師は生徒の伴走者でしかないですかね、、
    で、戦前の日本では、それが真っ当に実現できていたのだなぁ、と。

    自らの価値観を育みながらの自己実現であれば、
    押しつけられたレールではなく、自分で選びとっていくでしょう。

     “戦前は職業観や社会観を育てつつ進路を決めていくことができた。
      昔の学校制度には、やり直しや路線変更を許す寛大さがあった”

    そのことは、こういった風潮からも読み取れます、うーん。。

     “(戦後)エリートと呼ばれる人たちは、持てる能力を
      自分のためだけに使って当然と思っているフシもある。”

    価値観が単一であればそれでもよいのでしょうが、そんな事は無いわけで、
    多様な価値観を受け入れられるかどうかは、“教養”ともリンクするんだな、と。

    これは自らも含めて、反省を促される部分でした。
    “戦前”ってだけで思考停止してしまう時代はもう終わり、としたいですね。

    • だいさん
      最近の教科書は見ていませんが、(日本人としての)道徳がなくなってしまった。と時々思うことがあります。
      自分がしっかりしているか?は、自信た...
      最近の教科書は見ていませんが、(日本人としての)道徳がなくなってしまった。と時々思うことがあります。
      自分がしっかりしているか?は、自信たっぷりではありませんが。
      2013/10/23
    • ohsuiさん
      だいさん
      息子が小学校に通い始めたこともあって、関心が高まっています。昔の人は教養が高かったなぁ、、と感じています。
      だいさん
      息子が小学校に通い始めたこともあって、関心が高まっています。昔の人は教養が高かったなぁ、、と感じています。
      2013/10/24
    • だいさん
      ohsuiさん
      こんにちは。
      ご子息の成長が楽しみですね。
      先端の学問・情報の過多・高速ネット、などで知識は手に入りますが、「幹」とな...
      ohsuiさん
      こんにちは。
      ご子息の成長が楽しみですね。
      先端の学問・情報の過多・高速ネット、などで知識は手に入りますが、「幹」となる部分の教育がまだ足りないんじゃないですかね。
      2013/10/24
  • 戦前の教育内容や教科書に興味があって読みました。当時の小学校の国語の教科書『尋常小学校国語読本』などを抜粋し、実際掲載されていた物語や文章などが紹介されています。
    戦前の教科書の内容を通して、いかに戦前(大正~昭和十五年頃まで) の日本の教育水準が高く情緒に溢れ、素晴らしいものだったかを語っています。
    大正~昭和初期の日本の民度の高さ、風流で自然を愛する心豊かな民の国…日本礼賛です。
    度々、朝日新聞記事への嫌悪、安倍政権への期待などが散りばめられており、そこは本当に本書の趣旨に沿うものなのか、個人的な意見ではないかと多少疑問を感じました。
    しかし、闇雲に過去の日本の所業(主に戦争を通して)を悪しきものとして過去に蓋をするのではなく、本当は豊かな文化があり素晴らしい教育を行ってきたという事実はみんなに知ってもらいたい、日本人としての誇りを持ちたいと感じました。

  • 大正期から昭和15年まで尋常小学校で使われた国語の教科書の素晴らしさを紹介する本。具体的には、大正7年(1918年)から使われたハナハト読本と、昭和8年(1933年)から太平洋戦争の開戦まで使われたサクラ読本についてだ。どちらも全12冊で、当時の小学生は1年間に2冊ずつ勉強していた。小学校における国語の授業の比率が全体の半分近くを占めたという現代との違いにも驚くが、なにより衝撃だったのは、この当時の教科書が単純に「おもしろい」こと。今、大人の私が読んでも普通に読み物としておもしろい。扱われている題材は非常に幅広く、日本の偉人は当然のこととしてダーウィンやナイチンゲール、第一次世界大戦でのロシアの将校、古代ローマの王など広く世界に目を向けていた。豊かな情操教育とともに、科学や歴史の勉強にもなっていたのだと思う。曽我兄弟や鉢の木の話は知らなかった自分を恥じた。もっと勉強したいと思った。昔の小学校6年の義務教育過程の勉強を・・・。

  • 国語と、“知情意”を重視した戦前教育。 知識だけでなく、情感とそれに基づく意思の醸成。 うーん。。 現在の偏差値重視教育など、批判に対してのアグリーな面はあるものの、主張がやや一方的な感もある。 朝日新聞・民主党元政権への批判と、安部政権教育改革への強い支持。 作者の思いは伝わるのだがしかし。

  • 戦前は、想像以上に明るくまともな教育が行われていた。

  • 小学校時代の国語の教科書の内容を思い出せと言われても、残念ながら、何も覚えていません。40年以上も前のことなのですが、痕跡も思い出せないのは我ながら悲しいです。

    最近10年の本であれば殆ど読んでいると思っている日下氏が、戦前の教科書を引用しつつ、戦前の日本はどんな様子であったかを解説しています。

    今まで、戦争で焼け野原になって、奇跡とか驚異の急成長を日本は遂げてきたと言われますが、戦前の日本がかなりのレベルに達していたのであれば、元に戻っただけという考え方もありますね。

    最近の日本というか、私が社会人になってからの25年間の日本は元気がないような気がしますが、日本を支えている日本人が元気を取り戻すためにも、教育の重要性を認識させられた一冊でした。

    私がこの本で印象に残っているのは、戦後、軍国主義から民主主義へ一変したと言われるが、実際には、戦争突入5年前の急変が印象的だった、戦後にはもとに戻ったに過ぎない、これは誰も言わない(p102)でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・豊かな水があって四季のある美しい国土は、しばしば自然災害に見舞われる。台風や大地震に見舞われながら、その都度復興してきた、日本は「トップクラス」と「どん底」を経験している(p17)

    ・歴史で大事なのは、何年に何が起きたかよりも、偉人が何を考え、どう行動したか、であり、これが子供の人格形成に大切(p19)

    ・1918年に欧州で戦争が終わった時、総力戦であり、死者は全世界で 2500万人、半数が一般市民、戦場となった欧州は疲弊しきって、もう戦争はこりごりと思った、好戦的な人はみな死んだかもしれない、それが国際連盟結成につながった(p36)

    ・どうして自分はそう考えたか、を表明する方法、記述する体系を学ぶのが国語、頭脳の働きは言葉になって表されるので、その言葉を覚え使うことで人間は賢くなっていく(p53)

    ・南洋諸島が委任統治領になると、日本政府は南洋庁を設置して、開発や産業振興とともに公衆衛生や教育政策を推進した、それまでのドイツはサイパン島を流刑地にしていたほどで、教育は皆無(p59)

    ・人間の意識を3つの領域に分けて、最も浅いところにある「前六識」には、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・意識の6つ、一番深いところに「末那識」があり、それらを統括、最深部の「阿頼耶識:あらやしき」が全ての根源にある(p65)

    ・江戸時代は徹底した地方自治で、独立国が300あったようなもの、言葉や習慣も少しずつ異なる、徳川幕府に反しない範囲で法律も運用も異なった、通貨発行権(紙幣、藩札)は各藩が持っていた(p74)

    ・義務教育の教科書が無償になったのは1963年から、それまではお金を出して買っていた(p81)

    ・所得税が課せられるのは、1887年からで、当時は所得金額300円以上で、税率は1-3%、一種の富裕税のようなもの(p83)

    ・ラジオが発明されても、欧州では全国民に共通する関心事がないので、何を放送していいのかわからない、なので放送会社が誕生しなかった、ところがアメリカと日本だけは普及した、大衆に共通の関心事があったので、さらにラジオを作れる技術があった(p97)

    2013年8月17日作成

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著者プロフィール

1930年、兵庫県生まれ。三谷産業株式会社監査役。日本ラッド株式会社監査役。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、(社)ソフト化経済センター理事長を経て東京財団会長を務める。ソフト化・サービス化の時代をいち早く予見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍。未来予測の正確なことには定評がある。『いよいよ、日本の時代がやってきた!』 『日本人への遺言』(渡部昇一氏共著)『日本人への遺言partⅡ 「和の国のかたち」』(渡部昇一氏共著)『反核愚問』他多数有り。

「2018年 『「発想」の極意 人生80年の総括』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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