団塊の秋

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 103
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396614737

感想・レビュー・書評

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  • しばらくの積本だったが、一気に読んだ。
    奥付を見ると初版第1刷の発刊は2019年4月20日となっていた。堺屋太一さんが逝去されたのも2019年と書かれていたので調べてみると2019年2月8日に83歳で亡くなれていた。

    「団塊の世代」という言葉の生みの親。
    冒頭に次のような文がある。
    「人生は、玄い冬にはじまり、青い冬と朱い夏を経て、白い秋に至る。暗い冬で終わるのではない。」
    本書は、人生の「白い秋」というものを暗示した作品であろうか。

    主な登場人物は7人。1971年に、大学の卒業旅行で偶然出会った7人が、その旅行での出会いを縁として、定期的に集いあい、お互いの人生を確かめ合いながら、よき仲間として交流を深めながら、自らの人生を歩んでいく様子を描いている。

    小説は旅行直後の集いから、2028年までを描いた予測小説となっている。本書はもともと2013年に発刊されたものだそうなので、2013年(平成25年)までは、著者の振り返り、そして2013年~2028年については著者の予測ということになる。

    登場人物の7人とは。。。
    福島正男(大手銀行)
    加藤清一(厚生官僚)
    古田重明(新聞記者)
    上杉憲三(商社マン)
    大久保春江(高校教師)
    石田光治(弁護士)
    山中幸助(大手メーカー)

    それぞれが違った分野へ進み、それぞれに家庭を持ち、昭和から平成の時代をどのように過ごしてきたのかが描かれている(いわばエリート層に焦点を当てているが)。

    時の時代背景を的確にとら得ている著者だからこそ、経済状況、世界情勢、政治の動静などから、どのような影響を受け、どのように人生が展開していくのかをリアリティをもって表現している。そしてさらには、この団塊の世代が後期高齢者に突入する2028年ころには、どのような人生へと変化していくのかもまた、リアリティをもって予測している。

    章立ては、2015年当時(さまよえる活力)、2017年当時(年金プラス十万円)、2020年当時(孫に会いたい)、2022年当時(孫の進路)、2025年当時(養護センターまで二千三百十六歩)、そして2028年当時(電気守)を描いたものとなっており、例えば2028年の「電気守」の章では、上杉憲三が老後に、太陽光発電事業を家族経営で営んでいる様子が描かれている。

    オイルショック、阪神淡路大震災、東日本大震災、バブル崩壊、リーマンショック、自民党政権、民主党政権、少子高齢化、年金制度改革などなど、近年の歴史を振り返ることのできる小説でもある。「あぁ、そうだったな、そんなことがあった」と思い出すことができる。

    また、エリートであってもそうでなくても一人の人間に待ち受けている人生は様々であり、7人が歩む人生が幸福なのか、不幸なのか、人生というものを客観的に見つめることもできる小説である。

    社会人として家族のために戦う時期、老後について考える時期、孫ができた時期、孫が成長してその進路を考える時期、老後の具体的な生活考える時期、・・・一人の人生が年を取るとともに、そのように変遷していく様子についても自分にあてはめて、あるいは比較して考えてみることができるかもしれない。

    「白い秋」とは、どういう意味なのだろう。
    色がついていない。また白紙に戻るということなのか。
    色が抜けて、素にもどる時期を表しているのだろうか。

  • #3079ー136ー373

  • 小説を通じて、ちょっと先にある未来を自分の老後の参考に
    してみたかったのですが、あの人たち恵まれてるから・・・。
    登場人物たちは有名大学に進学してるし、アメリカ旅行できる
    くらいの余裕はあるし。その後もそれぞれ立派な職業に就いていて、
    それなりの浮き沈みを味わった人もいるけれど、最後はそこそこの
    生活してたり、比較的裕福だったので・・・。
    あぁ、退職金がそれだけあれば、とか、
    いいよねぇ年金がそんなにあったら老後の生活、困らないよねー
    と少しひがみがちに・・・。

    何十年も定期的に会うほどの気の合う仲間で、異業種交流と言えば
    聞こえは良いけど、みんな近況報告にさりげなく自慢話を
    ねじ込んできて、何だかちょっとカンジ悪〜い。
    (やっぱりひがんでるからそう思うのかな?)

  • 2013年の発行なので予想とはかなりずれている。
    そのずれを楽しんでみるのも一興だとも思ったが、団塊連中の話なんかどうでもよくなって放り出した。

  • 特定の主人公はなく、団塊の世代のそれぞれの人たちの人生を、その時起こるであろう堺屋氏による社会情勢の変化の予想など踏まえながら、それぞれの視点でとらえていく。
    あえて主人公といえば「加米の会」そのものであり、この会を中心に時系列によるそれぞれの人生模様が展開されていく。
    なかなか面白い試みではあるが、2030年まで小説では描かれており、しかもSFではなく現実感を伴った話なので、後世で一つ間違えば笑い話になりかねない小説。
    ただし、身近な話が多い分、それなりに現実感は伴っていて、違和感なく読めた。
    ただ、最後は家族関係などに行きつくところがあり、誰が一番幸せだったのか、どういう人生が一番幸せなのか、など考えさせられるところの多い話でもあった。

  • やはりエリート層に絞った現在・過去・未来小説なので、共感を憶えるといっても、やや団塊の世代の人にとっては、斜めに見てしまうようなないようになってしまっているかも知れません。団塊の世代の人たちにとっては、自分たちの生きてきた時代とこれから生きるであろう時代を反芻するのに便利な本ではないかと思います。

  • 団塊の世代の今後の過ごし方についての物語。
    ありそうな人生の過ごし方が載っている。登場人物はみんな大学の時にアメリカに旅行に行けるエリート層。
    そのため、それ以外の人たちの過ごし方もあると思う。
    その世代が感じることを知ることができて良かった。
    子どもや孫に会える環境にあるかというのは幸せ度を計る一つの大きな指標となっている。

  • 相続税というのは世界二百余ケ国で19ケ国でしかない
    食べるのに困らないが、子供達を引きつけるほどの資産やノウハウがない
    21世紀に入ってあらゆる業界は再編成された 銀行商社鉄鋼電機 そして今2020年台に再編の嵐にあるのが医療と介護

    電気守 太陽光発電のかんり

  • 小説としては面白くは無いが、堺屋太一の、時代への切れ味はまだ健在だ。団塊世代の一人として時代の秋に共感した。

  • 【Entertainment】団塊の秋/堺屋 太一/20140418(34/208)
    ◆きっかけ
    ・日経書評

    ◆感想
    ・これが堺屋 太一による未来小説というものか。未来と言っても、かなり足元から外挿したBAUシナリオの世界でしかないので、つまらなさもあるが、これが角度の高いリアルな未来なのかもしれない。その中でその頃の自分のこと、その後の老後のこと、等考えさせられた。いずれも明るくはなさそうな。
    ・同窓会に行けるというのは、健康、経済、肩書き、等々がオールグリーンであることが必要なのかもしれない。
    ・登場人物がいずれもある水準以上に、金、仕事、家族等々的に成功した人たちばかりなので、ちょっと違和感が。当該世代でももっと地べたを這っていた人もいるわけで。せっかく旅先で出会った人が節目節目で再会していくのだから、もっと多様な人がいてもいいかなとも思う。
    ・格段面白いわけでもなかたが、最後は読み切らないと、という思いで読み切ったような。

    ◆引用
    ・環境が変化した時、動物が生き残る方法は牙を研ぐことでも体を大きくすることでもない。雑食になることだ
    ・時は流れない、積み重なっていくのだ

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著者プロフィール

堺屋太一

一九三五年、大阪府生まれ。東京大学経済学部卒業。通商産業省(現経済産業省)に入省し、日本万国博覧会を企画、開催したほか、沖縄海洋博覧会や「サンシャイン計画」を推進した。在職中の七五年、『油断!』で作家デビュー。七八年に退官し、執筆、講演、イベントプロデュースを行う。予測小説の分野を拓き、経済、文明評論、歴史小説など多くの作品を発表。「団塊の世代」という言葉を生んだ同名作をはじめ、『峠の群像』『知価革命』など多くの作品がベストセラーとなった。一九九八年から二〇〇〇年まで小渕恵三、森喜朗内閣で経済企画庁長官、二〇一三年から安倍晋三内閣の内閣官房参与を務めた。一九年、没。

「2022年 『組織の盛衰 決定版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

堺屋太一の作品

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