IT全史 情報技術の250年を読む

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396616120

感想・レビュー・書評

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  • 情報技術について理解するにあたり、どんな経緯でいまの技術発展があるのかを知りたくて読み始めた。

    情報伝達技術という切り口からコンピュータ誕生の経緯を語っている面白い本だった。ただ、読み切るのには気合が必要。


    情報の伝達技術は、腕木通信に始まり、その後暗号化して文字や文章を伝える有線電信へ、そして音声を伝達する有線電話へと移り変わっていく。ただこれらはいずれも、有線かつ情報を1対1でやり取りするための技術であった。

    一方で、マルコーニにより無線電信も発展していく。無線電信により今まで連絡がとれなかった海上での通信が発展したそう。やがて無線で音声を届けようとする無線電話が出現し、これが無線かつ情報を1対nでやり取りするラジオ放送に発展していく。

    その後は想像の通り、ラジオ放送から白黒テレビ放送へ、白黒テレビ放送からカラーテレビ放送へと続いていく。

    テレビ放送がメディアから大衆へ一方通行で情報を伝達していたのに対し、今度は個人が大衆に向けて1対nで情報を発信することが、コンピュータの情報技術により可能となる。


    ☆ここからがコンピュータの話

    シャノンは、ブール代数を電気の世界と結びつけ、ビットという1か0かという選択肢こそが情報の基本単位だと考えた。
    このビット(2進数)を用いれば、
    ・論理演算のAND、OR、NOT
    ・0と1の組み合わせに割り当てるアルファベットなどの文字
    ・波形の位置を振り幅の高さとして量子化する音声
    ・升目に区切り、色の三原色と明暗を特定する画像や動画
    を表現出来た。当初は2進数を扱うコンピュータも、10進数を扱うコンピュータも存在していたが、あらゆる情報はシャノンの言うとおり2進数で表現できた。スイッチのオンオフで2進数を扱うハードウェアと、あらゆる情報を表現できる2進数が出会い、コンピュータは計算機以上に発展していくことになる。

    この2進数の世界で、コンピュータを特定の目的のために働かせる際、プログラムを書く人間も2進数で操作手順を書かないといけなかった。これを機械語という。人間が2進数でプログラムを書くとミスが多いため、人間の自然言語に近い方式で書くよう開発された。これをプログラミング言語と呼ぶ。だからプログラミング言語は、機械語に翻訳されてコンピュータで実行されるのである。やがてコンピュータは文字だけで操作するCUIから、アイコンをマウスでクリックするなどしてパソコンに命令するGUIに変化していく。

    次にネットワークが発展することになる。
    アメリカの大学や研究所にあるコンピュータを結んで資源を共有する目的でできたのが、やがてインターネットとなるARPAネットだ。これにはパケット交換方式が採用され、核攻撃にも耐えられる通信ネットワークが構築された。ネットワークにIMPが繋がり、そこにさらにコンピュータが繋がる形式だった。

    その後民間にインターネットが広がったのは、WWWの普及が急速に進んだからだった。WWWはハイパーテキスト構造をベースにしており、文書に別の文書のリンク情報を埋め込み、このハイパーリンクをクリックすることで、別の文書への表示を切り替えられた。そしてWWWで表示する文書のことをホームページやウェブページと呼んだ。世界のウェブページを、閲覧用の専用ソフトであるウェブブラウザさえあれば、表示できるようになったのである。

    ウェブページはHTMLで記述し、このウェブページにデータの所在を表すURLをつけてウェブサーバーにのせると、HTTPという通信手順を用いてウェブブラウザをもつ世界中のコンピュータに情報を提供できる。こうして、WWWの誕生により個人1対大衆nの情報伝達が可能となった。

    これら情報技術は、3Wと言われる
    ・ソフトウェア
    ・ハードウェア
    ・ネットワーク
    の3要素からなる。3つのどれかの発展が遅れるとそこがボトルネックになるため、情報技術の発展はボトルネックに依存する。


    ☆これからの話

    情報技術の新たな2大トレンドは、
    人間そのものが持つ未使用の情報と、
    人間の周囲にある未使用の情報である。

    IoTを含め多様な手法で未使用情報であるビックデータを使用可能にしたものの、未だ意味のある表現の形にはなっていない。このビックデータと相性が良いのが、大量なデータを対象に相関関係やパターンを認識するAIである。未使用情報を徹底的に使用可能にして、そこから有用な知恵を取ることができる企業が、今後莫大な力を手に入れるだろう。

    また人間とAIの頭脳には得意分野について違いがある。そもそも人には帰納的思考法と演繹的思考法と、仮説設定という思考能力がある。AIは前者2つを得意とするが、仮説設定は人間が得意とする分野である。


    この本を読んでいると、今後テクノロジーの進化による正と負の恩恵を受けどう世の中が変わって行くのか怖くなった。主語が個人になるのか、企業になるのか、国になるのか分からないが、情報の可能性を追求し続けた先に見えるのが、幸せであることを願う。

  • テクノロジー関係の情報をもっと深く知りたくて、
    歴史の面から学ぼうと手に取った本。

    中々こういう本はないので、貴重です。
    スタートが腕木通信から始まるのもユニーク。
    (サブタイトルにあるように、
    「情報伝達」の技術がどのように発展していったのかについて語られているため、
    そうなってるんですな、と後から気がつく。。)

    後半のテクノロジーの歴史が前半部分と比べ少し駆け足感はあるのもの、
    大まかな全体像が見えた点はとてもよかったです。

    こういう本に興味のある人はあまり多くはないと思いますが、
    ビビビとくる人はパラパラめくって楽しんでも良いのではないでしょうか。

  • 知人で文系の大学の講師から、おすすめされて拝読しました。

    個人的には、本書に書かれた事で知らなかった事はほぼなかったのですが、過去に自分でこうした事を一通り調べて整理した際、手こずったので、まさにこういう本が欲しかった、という感じでした。
    (著者の方の文献を整理し、再構成する力の素晴らしさ、尊敬します)

    大変よく整理されているので、保存版として蔵書したいと思いました。

    IT技術者や理系でなくても、小学校高学年以上なら読める文章です。
    本自体の分量やページあたりの情報量は多いものの、文章の構成も分かりやすく読みやすいし、ITだけでない当時の文化的背景なども絡めた話が書かれているので大変良いです。

    内容に関しては、他のレビュアーさんが素晴らしいまとめレビューをして下さっているので、書きませんが、現代において、好む好まないに関わらず、ITは不可避の教養になってしまっているので、どんな方でも読んで損はないと思います。

    余談ですが、腕木通信に関して、手軽に体験してみたい方は、ビデオゲームの、アサシンクリードのユニティ、フランス革命時代をオススメします。

  • テクノロジー、情報史の間の話で、そもそも情報技術にかなり興味がないと読み切れないかもしれない。
    他書とは違う切り口と思うので、読んで見て欲しい。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    プロローグ 生態史観から見る情報技術/第1章 腕木通信が空を駆けるー近代的情報技術の幕開け/第2章 電気を使ったコミュニケーション/第3章 音声がケーブルを伝わる/第4章 電波に声をのせる/第5章 テレビ放送時代の到来/第6章 コンピュータの誕生/第7章 地球を覆う神経網/第8章 IoE、ビッグデータ、そしてAI/エピローグ 「超」相克の時代を迎えて

  • 思ってたのと違うけど、面白かったです!
    情報を伝達することに対して、人々の工夫と貪欲さに刺激を受けます。分野は違うにしても、こうやって切り拓いていく姿勢が自分にはたりてなかったなと反省。

  • いつの時代も先駆者と呼ばれる人たちはユニークな人ですね!

  • p297
    3W=ソフトウェア・ハードウェア・ネットワーク
    hardWare softWare netWork

    情報技術の発展は3Wの発展に依存する
    情報技術の水準は3Wのボトルネックに準拠する
    情報技術の水準向上はボトルネックの発展に依存する

  • AI関連本の平行読書中に読了。
    年表の精度がまだ近年は甘いけれど、
    とりあえずクロニクル編集。

    通信システムの基本モデルは
    1 情報源
    2 送信機(符号化)
    3 通信路
    4 雑音源
    5 受信機(解読)
    6 受信者
    の要素からなる

    大きな流れは情報技術の大衆化、活用可能化
    1 腕木通信 デジタル
    2 電信 デジタル
    3 電話 アナログ→デジタル
    4 ラジオ アナログ→デジタル
    5 テレビ アナログ→デジタル
    6 インターネット デジタル
    7 ビッグデータ未使用情報 デジタル→AI?

    大衆化のまとめ
    電信までは国家中心
    アマ無線 双方向の情報技術活用
    電話 おしゃべりの道具
    ラジオテレビ 音楽映画エンタメ
    インターネット SNS

    立法、司法、行政、報道の次に来る
    つながる力と発信する力による第五の権力
    意識的につながり発信する誰もが得る権力


    以降情報技術クロニクル 適宜加筆

    紀元前 のろし通信
    1305 ヴェネチア使者協会
    タクシス郵便 飛脚
    1637 デカルト 方法序説 情報のデジタル化
    1789 フランス革命始まる

    ここから250年が本書の対象期間

    1794 腕木通信誕生
    1799 ナポレオンが政権に着く
    フランス革命集結 腕木通信1426km
    1800 ヴォルタ電池発明
    1820 電流の磁気作用を発見
    1825 電磁石発明
    1835 フランス アヴァス世界初の通信社
    1837 電信機特許 イギリス
    1837 モールス 電信実験成功
    1841 イギリス 電信の一般商用開始
    1844 ワシントン、ボルチモア間電信線でつながる
    1845 アメリカ 電信の一般商用開始
    1846 腕木通信4081km フランス
    電信ネットワークに置き換え決定
    1848 アヴァス通信社にロイターヴォルフ
    1849 電信 ベルリンからベルギーアーヘン
    1849 ヴォルフ電信事務所開業 ベルリン
    1850 電信 パリからアーヘン
    1851 電信 カレーからドーバー 初の海底線
    1851 ロイター通信社開業 ロンドン
    1852 電信 ウェールズ アイルランド スコットランド 北海横断ケーブル
    1854 電信線総距離 66227km アメリカ
    1854 日米和親条約 献上品に電信機
    1854 クリミア戦争 天気予報需要高まる
    1855 腕木通信全廃
    1858 電信 アイルランド アメリカ 大西洋
    1865 電信 イギリスからインド
    1865 FAXパンテレグラフの初送信
    1866 電信 アメリカとイギリスが本格的に
    1871 電信 上海から長崎
    1876 電話 ベルとグレイが特許申請
    1878 電話 電話交換機開発
    1884 地球を1時間ごとに区切ると決定
    1890 電話 東京横浜でサービス開始
    1891 エジソン キネトスコープ作成
    1890 電話 フランス劇場公演を生放送
    1893 電話 ブダペスト 番組配信サービス
    1894 電話 ロンドン演劇音楽ミサを放送
    1895 無線 イタリアマルコーニ無線伝送成功
    1895 リュミエール兄弟 シネマトグラフ発明
    1899 無線 イギリスフランス間成功
    1900 無線 マルコーニ無線電信会社設立
    1901 無線 大西洋横断成功
    1902 電信 イギリスが世界一周の線構築
    情報掌握でゆるぎない国際金融市場
    1906 無線電話 米英間で実験成功 初ラジオ
    1911 電話 アメリカ ヘラルドが1年だけ放送
    1912 シュンペーター 経済発展の原理
    1912 タイタニック号沈没
    1912 電話 イギリス事業を国有化
    1912 無線 アメリカ無線通信取締法
    1913 無線 世界標準時間の初発信 フランス
    1913 電話 サービスのユニバーサル化
    1914 第一次世界大戦勃発
    1919 アメリカRCA成立
    1921 サーノフRCA総支配人
    ラジオミュージックボックス計画開始
    1922 AT&Tラジオ市場参入 収入源は広告
    1925 電話 ロンドン ブダペストで放送終了
    1925 ラジオ 日本で初の放送
    1930 ラジオ 自動車に搭載
    1936 テレビ ベルリンオリンピック中継
    1939 テレビ放送が事業として成立 アメリカ
    1945 第二次世界大戦終戦
    1946 コンピュータ エアニック完成
    1948 コンピュータ シャノンの情報理論
    1950 日本 電波三法
    1953 NHK 日本初のテレビ放送
    1953 日本テレビ 放送開始 街頭テレビ55台
    1957 ソ連 スプートニクの打ち上げ成功
    1959 集積回路IC開発
    1960 日本 カラーテレビの本放送
    1961 アメリカ 通信ネットワーク研究に着手
    1962 脱工業社会 情報産業 提唱
    1963 コンピュータグラフィックス分野
    1964 マクルーハン メディア論
    メディアはメッセージである
    1964 東京オリンピック カラーテレビ
    1965 ムーアの法則
    1969 梅棹忠夫 知的生産の技術
    1969 アメリカ 研究所コンピュータ相互通信
    1972 ダイナブック構想の定義
    1973 コンピュータ アランケイ アルト
    1979 携帯電話 自動車用として開始
    1980 トフラー 第三の波
    情報社会の到来を主張
    1982 Adobe創業
    1984 コンピュータ マッキントッシュ
    1985 電気通信事業法 NTT誕生
    1985 VPLリサーチ社発足
    バーチャルリアリティが広まる
    1988 NTT ネットサービス提供
    1989 HTMLが誕生
    1990 拡張現実ARが定義される
    1993 水越伸 メディアの生成
    1994 モザイクコミュニケーション創業
    1995 吉見俊哉 声の資本主義
    1995 コンピュータ ウインドウズ95
    1995 アマゾンドットコム開設
    1998 森谷正規 文明の技術史観
    1999 iモードサービス開始
    1999 2ちゃんねる開設
    2000 総務省情報通信白書 IT特集
    2000 ドットコムバブル崩壊
    2000 Google 世界最大の検索サイトに
    2001 携帯電話契約数固定電話を超える
    2001 光回線サービス開始
    2001 wikipedia開設
    2002 ブログの普及
    2004 Facebook誕生
    2004 mixiサービス開始
    2005 YouTube誕生
    2005 Google Gmail MAPをリリース
    2006 Twitter誕生
    2007 テレビ アナログ放送終了
    2007 iPhone登場 音楽ダウンロード
    2007 アマゾン キンドル発売
    2009 ブライアンアーサー
    テクノロジーとイノベーション
    2010 ケヴィンケリー テクニウム
    テクノロジーはどこに向かうのか
    2010 iPad発売
    2011 ジェイムズグリック
    インフォメーション情報技術の人類史
    2011 LINE開始
    2016 ケヴィンケリー
    インターネットの次に来るもの
    2016 レイ カーツワイル
    シンギュラリティは近い
    2016 ソフトバンク 英アームを買収
    2025 世界80億人がほぼオンラインに
    2045 シンギュラリティ

  • 未使用情報は21世紀のデジタル情報時代におけるフロンティア。未使用の情報からメッセージを作りだす過程は、デカルトが示した明晰な思考態度をそっくりそのままなぞっている。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家。1962年、滋賀県生まれ。立命館大学文学部哲学科卒。同志社大学嘱託講師。心理学や哲学、美術、歴史、情報技術など幅広い分野で執筆する。
心理学系の著作に『図解 影響力の心理学』『図解 アドラー心理学の「幸せ」が1時間でわかる本』(Gakken)、『マズロー心理学入門』『人間性心理学入門』(アルテ)ほか多数。

「2023年 『図解決定版 勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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