下山事件―最後の証言

著者 : 柴田哲孝
  • 祥伝社 (2005年7月発売)
3.60
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  • レビュー :27
  • Amazon.co.jp ・本 (452ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396632526

作品紹介

「あの事件をやったのはね、もしかしたら、兄さんかもしれない…」祖父の二三回忌の席で、大叔母が呟いた一言がすべての発端だった。昭和二四年(一九四九)七月五日、初代国鉄総裁の下山定則が三越本店で失踪。翌六日未明、足立区五反野の常磐線上で轢死体となって発見された。戦後史最大のミステリー「下山事件」である。陸軍の特務機関員だった祖父は、戦中戦後、「亜細亜産業」に在籍していた。かねてからGHQのキャノン機関との関係が噂されていた謎の組織である。祖父は何者だったのか。そして亜細亜産業とは。親族、さらに組織の総帥へのインタビューを通し、初めて明らかになる事件の真相。

下山事件―最後の証言の感想・レビュー・書評

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  • ついに定番が出た。私の中で下山事件関連の本は矢田喜美雄『謀殺下山事件』で決まりだと思っていた。ジャーナリスト矢田喜美雄はその生涯を下山事件の他殺説に捧げた。彼によって線路上に残る血痕の路は明らかにされたのだ。自殺説では不可能な進行方向とは逆に伸びる血痕の数々を発見する。手に汗握る場面だった。その後に読んだ松本清張『日本の黒い霧』はその延長線上にトレースする読み物と私には思えた。時系列的には逆なのだが、先に読んだのが矢田喜美雄の作品だったというだけの理由では無いだろう。足で稼いだ情報にこそ強い印象が刻印されたということか。

    その後、森達也『下山事件(シモヤマケース)』、諸永裕司『葬られた夏―追跡・下山事件』を読んで、21世紀に入ってからの新たな解明に向けた展開を目の当たりにした。真相究明が真に近づいていることが理解できたが、上記二冊では満足しきれなかった。そこに満を持して出版されたのが、この本である。作家の柴田哲孝が書いていること自体、読み応えを予感させる。しかし、何よりも今回の究明ブームは「彼」柴田哲孝の祖父の存在が出発点だったのである。上記二冊でビックリし手に汗握った場面も所詮、この作品の前には前座に過ぎない。この作品こそ間違いなく真相に最も近づいた本であり、ここに示された下山事件の本質は結果的に国鉄の大量首切りと左派勢力を押さえることに「利用」されはしたが、最も根幹にあるのは「欲の道」としての鉄道問題であったといえよう。事件の背景にある満鉄の存在や張作霖爆殺事件との相似性についての指摘は、目から鱗でもあった。その過程でドン・シャグノンのような良い人物を悪人に仕立て上げられていった歴史の残虐さに、歴史に係わるモノとして常に真摯に真実に目を向けていかねばならないことを痛感させられる作品でもあった。

    先行二冊はいらないと言っても良い程、柴田氏の作品は圧倒的である。

  • ★2018年1月6日読了『下山事件 最後の証言』柴田哲孝著 評価A
    先日読んだ柴田哲孝の『Dの遺言』が戦後の混乱期を上手に描いていたので、他の作品も読んでみることにした。
    昭和24年(1949)7月5日初代国鉄総裁下山定則氏が出勤途中に行方不明となり、翌日朝、汽車に轢かれて轢死した事件。

    私は事件の概略だけは知っていたが、詳細は何の知識もなかった。それにしても、私が生まれる一昔前は、さすが戦後の混乱期、あらゆることがまだまだ暴力的で、何があってもおかしくない時代だったのだと痛感させられる。国鉄3大ミステリー事件として、この下山事件、三鷹事件、松川事件とこの年に連続して発生。
    自殺説、他殺説が入り乱れ、法医学会も二分、警察でも捜査一課は、自殺説で幕引きを図り、捜査二課は他殺説で、対立。結局、何らかの形で圧力がかかり、捜査二課のメンバーが異動させられて真相は究明されないまま謎のまま時効を迎えた。

    筆者の柴田氏の祖父が、戦中から軍の諜報機関と中国で関わっていた関係から、この下山事件で重要な役割を演じたらしい東京日本橋の三越近くの亜細亜産業という商社に関わり、柴田家の多く1hの親類がこの会社に勤めていたこともあり、身内から事件周辺の様々な事象、人物について証言を得た。

    戦後占領軍GHQは、対共産主義政策の防衛最前線としての日本の地政学的重要性を鑑み、日本を自由資本主義化しつつ、管理統制下に置こうとした。GHQの部署同士の葛藤、さらには大統領直轄機関として発足当初から諜報戦に関わりはじめたCIAとGHQの相克。日本側も左派の国鉄労働組合や日本共産党の伊藤律から右翼の重鎮、三浦義一、笹川良一、赤尾敏、児玉誉士夫さらには、戦後のGHQ窓口として大きな役割を担った白洲次郎、A級戦犯としての絞首刑を辛くも逃れた岸信介、運輸省のエリートとして、戦中から戦後にかけて日本軍や米軍から日本の鉄道を守り続け、その後は首相にまで上り詰める佐藤栄作。などさまざまな勢力と人物が入り乱れ、カオスな状態の中で、下山事件をはじめ、国鉄3大事件は起きている。
    驚きは、当時の下山総裁が、正義感の強い人物で、それが故に、戦前から続いてきた国鉄利権とも呼べる高値発注の仕組みで潤っていた政財界有力者、運輸省高級官僚を敵に回して、その汚職体質をただそうとしていたらしいという事実。そして、その是正の結果のコストダウンできた資金を元に、原資を確保し、大量の職員首切りを少しでも減らそうとしていたらしいこと。そしてそれが故に彼は排除されたらしいことだ。(何やら米国でその後起きた軍産複合体に盾突いて、暗殺された某K大統領に似たものを感じる。)

    さらには、米国側でも対ソビエト、中共、朝鮮での戦争を意識して最前線の日本を米国の軍事施設として見て、国鉄の管理統制を維持したいらしかったこと、よって、GHQもしくは米国政府が主体的に下山総裁を殺す必要はなかったと言うことになる。さらには、総裁行方不明の時間には、いく人ものにせ総裁の格好で日本橋三越から轢死した足立区綾瀬付近までこれ見よがしに下山総裁風の男が姿を見せて歩いていた。まさに謀略と呼ぶにふさわしい情報攪乱まで行われたことには、驚きを禁じ得ない。筆者のとる、正義漢下山総裁排除説は、なかなか筋が通っており、私としては納得感を持てた。今後もこれらの事件を含め、戦中、戦後の日本史の謎については折を見て読んでいきたいと感じた。

  • 日本推理作家協会賞(2006/59回)

  • 「葬られた夏」に始まる平成の下山事件研究の発端となった当事者によるレポート。ジャーナリストを自称しているが、実際にはライターであろう。そのため、上海日本人居留地(租界でないだけマシ)と児玉機関が本拠としたブロードウェイマンションを混同するなど事実誤認はあるが、素人ゆえ、研究者とは異なった視点(矢部喜美雄の入手情報への疑問、CIA関与説、国鉄権益汚職など)で謎に迫っていく。しかし、下山事件論考の結論は推論であり、数少ない手がかり(独自の論点)から、いかに読者を納得させる推論を導きだせるかが、腕の見せ所といえる。その意味では、手がかりから導き出した「逆コース」という結論は、予定調和じみて見える。

  • 最近発表された話題本です。
    上司のK松部長とも話してますが
    最近は昭和初期から1970年代までの真相本や
    小説が多く出版されています。

    -当時の黒幕やフィクサーが死んで口止めする
    側の影響力がなくなった?
    -秘密を墓場までもっていけなくなった
     (告白したい!)
    -当時の政府の秘密文書が公開されてきた

    など理由は多岐にわたるようですが。。

    作者はこの事件に関わったお孫さんらしく
    なかなか信憑性がありました。是非、松本清張の
    日本の黒い霧を読まれた方とかは読んでください。

  • 柴田 哲孝氏は文章が読みやすい。
    章立て、話の流れが上手で、読者は知らぬ間に引き込まれていく。
    GEQ(フィクション)もそうだった。

    秋庭俊氏の持ちネタを柴田氏が書いた!なんーて本があればいいのにな。

  • 読みやすい。が、多少知識を得てから読んだほうがもっと面白かったと思う。

  • 兎にも角にも魑魅魍魎が跋扈したのだ。戦争のどさくさに紛れて、合法非合法を問わず大儲けした者がいたのだし、その中から戦後の政界の黒幕も現れてきたわけだ。日本と米国の関係においては、我々が知り得ない事柄がまだまだ存在するのだろう。 戦争は、見たこと・知ったことを墓場まで持っていかなければならないような悲劇を生みだしたのだ。 それは、一国の宰相から市井の人々までがそうである。

  • 甲賀などを舞台とした作品です。

  • 1949年の、下山事件について書かれた本。

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