吉祥寺の朝日奈くん

著者 :
制作 : 池田 進吾 
  • 祥伝社
3.90
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本棚登録 : 1845
レビュー : 374
  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396633301

感想・レビュー・書評

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  • さすが中田永一さん!(・・・の仮面をかぶった、乙一さん!)

    そして、薦めてくださったブクログ仲間さん、ありがとう♪
    図書館で借りて読んだけれど、この本は迷うことなく買ってきて
    ほくほくしながらお気に入りの本棚に並べます!

    収められた5篇すべて、粒揃いの名作なのですが
    4つめの『うるさいおなか』に、完膚無きまでやられました♪

    深海をゆく潜水艦のような「こぽこぽ、こぽこぽ」から
    天使がステッキをふりまわしているような「ぴぴるぴるぴる」、
    憧れの先輩のトラウマとなるほどの、化け物のうめき声のような重低音まで
    思わずサンプリングしたくなるようなバラエティーに富んだ音色を響かせる、
    自称ハラナリストの女子高生、高山さんのおなか。

    「ぐーぴたっ」を食べても、苦心の防御態勢を取っても、処構わず鳴り始めるおなかに
    もはや恭順の意を示すしかない境地の高山さんが、おなかについて語るときの
    「正しい日本語を普及させる会」(そんなものがあるかどうかは知らないけれど)の
    お歴々が聞いたら目を剥きそうな、珍妙な敬語がすばらしい!

    読んでいる間、膝に乗ったりくっついたりしていた3匹の猫たちが
    あまりに身を震わせて爆笑する私に恐れをなして、1匹、また1匹と離れていき
    珍しく猫にまとわりつかれずに読書の時間が過ごせてしまったほど。

    この抱腹絶倒のハラナリエピソードを、単なる笑いで終わらせず
    家族の物語も絡め、「これは自分の肉体の物語だ」と主人公に自覚させて
    きっちりと結ぶ中田さんの手腕に、ひれ伏したくなります。

    『交換日記はじめました!』での、ふたりだけの秘密であるはずの交換日記が
    見ず知らずの人の手をいくつも経由して新しい恋を呼ぶという切口のみずみずしさ、

    いきなり1章ではなく5章から始まる『ラクガキをめぐる冒険』の構造の斬新さ、

    『三角形はこわさないでおく』の、泣きたくなるほど心根のやさしい廉太郎の描写、

    『吉祥寺の朝日奈くん』での、中田永一さんと乙一さんとの境界線に
    ちょっと足をかけたような、切なくも爽快などんでん返しなど

    上手い!凄い!と唸りながら、きゅん♪としてしまう素敵なお話ばかりの短編集です。

    • takanatsuさん
      「あまりに身を震わせて爆笑する私に恐れをなして」
      そんなに面白いんですか!?
      すごくすごく気になります!
      「あまりに身を震わせて爆笑する私に恐れをなして」
      そんなに面白いんですか!?
      すごくすごく気になります!
      2012/10/25
    • まろんさん
      もう、最初の3ページで、笑いすぎて一息つかなければいけないほどでした!
      だってね、一行目が
      授業をうけていると、私のおなかが、「きゅるるるる...
      もう、最初の3ページで、笑いすぎて一息つかなければいけないほどでした!
      だってね、一行目が
      授業をうけていると、私のおなかが、「きゅるるるる」と、音をたててしまわれた。
      から始まるんですもの。
      わがままなんだけど憎めない殿様に「はいはい。。。」と
      ため息をつきながら従っているような雰囲気と
      がんばって敬意を示しているつもりの敬語が
      「おっしゃられた」とか、日本語としては滅茶苦茶なところが、もう楽しすぎて♪
      tanakatsuさんも、お時間があったら、ぜひぜひ(*'-')フフ♪
      2012/10/25
  • 絵画や彫刻に譬えるならば、小品というか、山椒は小粒でピリリと辛いという表現がぴったり当てはまるような作品ばかり。
    「交換日記はじめました!」「ラクガキをめぐる冒険」「三角形はこわさないでおく」「うるさいおなか」「吉祥寺の朝比奈くん」という、ウイットとユーモアに溢れ、若者の揺れる恋心を様々なシチュエーションで巧みに表現した珠玉の恋愛短編小説五篇を収録。
    青春時代に誰もが経験するような味わい深い内容で、中田永一氏、いや乙一氏の才能をしっかり感じ取れる短編集である。
    彼は、このたび「くちびるに歌を」で小学館児童出版文化賞を受賞したと、河北新報の文芸欄に載っていた。
    初めて彼の顔を見たが、写真が掲載されることで中田永一=乙一であるのが公けになることに彼自身違和感はないのだろうかと思ったが、本人はまったく意に介してないようだ。
    まあ、本人自身がツイッターで公開しているから構わないのかな。

    短編ながら、それぞれが深く胸に染み入るような丁寧な構成と描写。
    なかでも、男女三人の微妙な関係性がきめ細かく描かれた「三角形はこわさないでおく」が最も心に残った。
    友情と恋愛、どちらを優先するか、悩む年頃は確かにあった、私も。
    あの子を好きだった友だちは今頃どうしているだろう? 私の初恋でもあったあの子はその後どんな女性になったのだろう?
    偶然、その子の実家は今私が住んでいる家のすぐそばにある。
    彼女が里帰りした時にひょっとして会えるのではないかと、年甲斐もなく胸がときめく。
    あれから数十年経ったのにもかかわらずだ。
    甘酸っぱくもあり、ほろ苦くもある思い出。そんな時期を思い起こさせてくれた。

    ただし、タイトルにもなっている最終話「吉祥寺の朝日奈くん」は、個人的にはいまひとつ受け入れ難かった。
    いかにも、という感じで、人工的な小説のつくりになり過ぎているのだ。
    著者の器用さ故か、あまりにも読者を驚かそうという意図が分かりすぎ、逆に鼻についた。
    それまでの四篇は、ほんわかしていて良い感じだったのに、少し残念な気がする。

    • まろんさん
      koshoujiさんが書かれている通り、珠玉、という言葉がぴったりの短編集ですよね。

      そうですね、表題作の「吉祥寺の朝日奈くん」は、「乙一...
      koshoujiさんが書かれている通り、珠玉、という言葉がぴったりの短編集ですよね。

      そうですね、表題作の「吉祥寺の朝日奈くん」は、「乙一テイスト」がかなり強くて
      中田永一さん、というよりは中田乙一さん、みたいな作品になっている気もしますね(笑)
      私は、この中では「うるさいおなか」が大好きで
      読んでかなりの時間が経過した今でも、ふとした時に
      あの珍妙なおなかの音の描写が甦ってきて、くすくす笑ってしまいます♪
      2012/12/19
    • koshoujiさん
      まろん様
      「うるさいおなか」の音の描写は秀逸で、私も大笑いしていました。
      鳩の鳴き声とか、まさにそんな音ですもんね(笑)
      それにしても...
      まろん様
      「うるさいおなか」の音の描写は秀逸で、私も大笑いしていました。
      鳩の鳴き声とか、まさにそんな音ですもんね(笑)
      それにしても、あんな女の子がいたら、容姿がどんなに素敵でも、さすがに男としてはちょっと引いちゃうから、かわいそうだよなあと思いました。
      ま、実際にはあれだけの爆発音を出す人はさすがにいないでしょうが(笑)
      2012/12/20
  • 乙一さんの作品群のなかでも「暗いところで待ち合わせ」が一番好きな私は常々、乙一さんはきゅんとくる恋愛物を書いても絶対うまいはず!と思っていたのです。

    その期待を裏切らず中田永一名義で彼はやってくれました!

    恋人たちの2人だけの聖域であるはずの交換日記に他の人たちが乱入してくるわ、

    夜中に学校に忍び込んだ思い出を胸に影が薄い初恋の人の連絡先入手に骨折るわ、

    恋に堕ちた友人の話を聞くうちに同じ人を意識してしまったのに空とぼけ続けるわ、

    変化に富んだメロディーを奏でるおなかを持て余す思春期の乙女心を逆なでするわ、

    吉祥寺の喫茶店でカップルの痴話喧嘩に巻き込まれたのを利用して細身美人店員と距離を縮めるわ、

    彼らしくも甘酸っぱい恋物語に感服。

    敬愛するブクログ仲間さんもほぼ同じタイミングで読まれているのに気づき、にんまりしてしまいました。

    そう言えば成分献血好きな人いたな…

    • まろんさん
      わ~いわ~い!゚.+:。(ノ^∇^)ノ゚.+:。
      hetarebooksさんもこの10月に読まれていたなんて、
      図書室で同じ本に手を伸ばして...
      わ~いわ~い!゚.+:。(ノ^∇^)ノ゚.+:。
      hetarebooksさんもこの10月に読まれていたなんて、
      図書室で同じ本に手を伸ばして、触れ合う指先♪みたいなシチュエーションが浮かんで
      勝手にうれしくなってしまう私です。

      きゅんきゅん♪が飛び交う、粒ぞろいの短編集ですよね!
      思わぬところで使われるひらがなとか、
      高校生独特のイントネーションや間さえ感じられる絶妙な会話とか
      きゅんきゅんを盛り上げるテクニックまで小粋で
      まったく乙一さんには油断なりませんね(*'-')フフ♪

      ちなみに、私は超弩級の貧血で、献血しようとしても
      いつもあっさり撥ねられてしまうので
      成分献血は、叶うことのない憧れです(笑)
      2012/10/29
    • hetarebooksさん
      まろんさん❤

      うふふふ・・・♪それは恋に落ちるシチュエーションその3、少女漫画編ですよ(笑)

      私もきゃー!まろんさんがレビューを!早く追...
      まろんさん❤

      うふふふ・・・♪それは恋に落ちるシチュエーションその3、少女漫画編ですよ(笑)

      私もきゃー!まろんさんがレビューを!早く追いつかないとー!と思いながらにんまりしていました(#^.^#)

      そうなんですよ!乙一さんたら普段はあんな怖い作品を書いてらっしゃるくせにひょうひょうとこんなキュンキュン物語を発表したりして!

      貧血…!憧れです。うらやましい!朝礼でクラッと倒れる儚い美女は貧血って決まってますからね・・・

      私は血の気多めですが、注射嫌いで大人になっても予防接種のたび下がり眉になっています。。。
      ちなみに成分献血好きは体育会系で、80kgダンベルを持ち上げるような男子でした。。。笑
      2012/10/31
  • 読みながら普通に笑ってしまいました!
    気持ち悪かったかもしれません

    短編集なのですが、今まで読んだものの中で1番面白いと思えました
    面白さの中にいろんな思いが入っていて
    恋愛っぽいところもあり、本当に全部が面白かった
    気付いたら読み干していた
    これはいい!オススメです!

  • どのお話もいい感じにドキドキしたり、きゅんとしたり、ちょっと切なくなったり。
    おもしろかったと思うのだけど。
    「百瀬、こっちを向いて」の直後に読んだのがいけなかったかな。
    どうしても比べてしまってね・・・そうするとやっぱり印象弱いかな。

    固有名詞の出てくるところがなんか好き。
    ぐっと彼らに近づける気がします。
    マッキーで落書きする話と三角形をこわさないお話が好き。

    吉祥寺は近くに少しだけ住んでいたことがあって、
    すっごいリアルに場所を想像できて楽しかった。
    今でもときどき行くけど好きな街です。
    この表題作自体はちょっとあざとい感じで微妙でしたけどね。

  • ・交換日記はじめました!
    圭太と和泉遥の交換日記。
    二人だけの秘密だったはずなのだがいろんな人の手に渡って・・・
    語り手がどんどん変わっていく。
    まるで知らない人の手に渡ったかと思うと
    また戻ってきたり、結局話はどこへ向かうんだ?と思っていたら
    なるほどね、
    って感じで面白く読めました。
    構成がうまいわ。

    ・ラクガキをめぐる冒険
    実家で見つけた油性マーカー「マッキー」
    千春は五年前の高校二年生の時の同級生、遠山慎之介に連絡を
    取ろうとするが同級生たちは彼の居所を知らない。
    ようやく見つけた
    彼に会いにいく千春。
    あの日、学校で起きたラクガキ事件。
    なぜ、千春は5年もたってから彼に会いに行こうとしたのか?
    ちょっと学園ミステリーな感じなのも面白かったです。


    ・三角系はこわさないでおく
    ツトムと廉太郎、そして小山内さん。
    何でも出来て女子にモテモテのツトム
    しかしそんなツトムが好きになったのは小山内さん。
    そして廉太郎も・・・
    高校生たちの微妙な三角関係のバランスがもどかしいやら
    なんやらかんやら( ´▽`) 心がちょっと疼きます


    ・うるさいおなか
    私はハラナリスト
    異常なほどお腹がよく鳴る主人公、高山さん
    いつもぐーピタ!を常備してお腹が鳴らないように
    気をつけている消極的な私の前に現れたのは茶色い髪の春日井くん
    春日井くんは恐ろしい程耳がよくて・・・
    おとなしく目立たぬように生きてる高山さんだけど
    結構、春日井くんには言いたいこと言ってたりして(笑)
    ハラナリストってネーミングに笑えた。


    ・吉祥寺の朝比奈くん
    上から読んでも下から読んでもヤマダマヤ。
    喫茶店で働く彼女と親しくなった朝比奈くんだけれど
    彼女は子持ちの主婦。

    役者になる夢を諦めた朝比奈くんと人妻の山田真野が
    メールをしたり吉祥寺の街で出会ったり。

    少しづつ距離が近づいていく恋愛小説なのかと思いきや・・・
    そこはえっ?と驚く仕掛けがあったりで。
    でもね、なんとなく読んでいてなんなんだろ?
    この引っかかる感じ?
    とはちらっと頭の端の方で感じたんだけどね、すぐに
    さらーーーっと
    忘れてしまって読みすすめていた次第。
    だもんで少々びっくりしたりの展開でありました。
    面白かったです。

    5篇とも恋愛小説なんだけれど捻りが効いてる。
    甘甘すぎないけど青春らしさやドキドキ感があって
    ドロドロしてないけどちょっと切ない、そんな感じの恋愛小説。
    かなりのお気に入りです。

  • どれも心がほっこりする物語。
    登場人物は、なかなか一歩を踏み出せない人ばかり。
    もどかしく思いつつも、健気な彼らが微笑ましく、あたたかく見守ってしまう。
    変わった設定も、なんだか自然に思えてくる。
    ユーモアのあるフレーズに、ふっと笑ってしまう。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-1763.html

  • ハラナリストの立派な一員である私はこの小説に5つ星を贈りたい。高校時代、定期テストが一番苦痛だった・・・。ぐーぴたなど効果無し!お腹様のおかげで、全然テストに集中できなかった。鼻をすすってみたり、テストを終わらせ机につっぷしごまかし、背筋をぴんとのばしたり(一時効果あります)してた私。ハラナリストの苦悩を上手く表現してくれて、ありがとう!

  • 恋愛ものが実はあまり読めないのですが、なんとなくふんわりとした感じで入り込めました。

    瀬尾まいこさんと似た味わいかな?と思いましたがなんだかやはり違う。

    うまく言えないのですが、瀬尾さんが塩のちょっと入ったスイーツとしたら、
    こちらは…
    と考えていたら、あれです、グリム童話にあった、えんどう豆の上にひいた羽根ふとんみたいな感じ。

    ふんわりした感じだけど、それだけじゃなくて、なんだかこう、うん?と気になる感じで、ほっこり系とはまた少し違う感じで面白いと思いました。

    最初の二つが特に好きになりました。

  • ただの恋愛ストーリーと思いきや、少々のミステリ?(とまでは言わないが・・・)が、加味されていて、おもしろかったです。

    それぞれの恋愛話の主人公ががつがつせず、人との距離感が
    心地よかった。

    • まろんさん
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      乙一さんとは知らないで読み始めた中田永一さん、
      街角で耳を澄まし...
      はじめまして。フォローしていただいて、ありがとうございます!まろんです。

      乙一さんとは知らないで読み始めた中田永一さん、
      街角で耳を澄ましていたら今にも聞こえてきそうな会話のセンスといい、
      落し物になった交換日記やらおなかの音まで題材にしてしまう発想力といい、
      追いかけずにいられない作家さんです。

      瀬尾まいこさん、有川浩さん、中田永一さんなどなど、
      好きな作家さんがたくさん共通しているbunkaさんの本棚とレビュー、
      これからも楽しみにしています!
      どうぞよろしくお願いします(*^_^*)
      2012/11/09
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著者プロフィール

1978年福岡県生まれ、2008年『百瀬、こっちを向いて。』でデビュー。他の著書に『吉祥寺の朝日奈くん』『くちびるに歌を』『私は存在が空気』。別名義での作品も多数。

「2017年 『僕は小説が書けない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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