さくらの丘で

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 97
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396633448

作品紹介・あらすじ

"さくらの丘"を満ちるたちに遺す-。遺書には、祖母が少女時代を送った土地を譲ると書かれていた。一緒に渡されたのは古びた鍵がひとつ。祖母の二人の幼なじみも、同じメッセージをそれぞれの孫たちに伝えていた。なぜ、彼女たちは孫にその土地を遺したのか。鍵は何を開けるものなのか。秘密をさぐりに三人の孫は、祖母たちの思い出が詰まった地を訪れた-。三人の少女たちの青春が刻まれた西洋館、そこを訪れた私たちが見た光景は-二つの時代が交差する感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 春には、いちめんに花をつけた桜の木がどの部屋からも見える、丘の上の洋館。

    この美しい洋館に眠る秘密を、戦争直後の少女時代から
    おばあちゃんになって亡くなるまで60年以上ずっと
    手を取り合って守り続けたミッちゃん、きりちゃん、はなちゃんが素敵です。

    この3人が、洋館をなぜ孫娘の満ちる、沙代、香織3人に共有財産として遺したのか、
    それぞれの孫娘に1本ずつ託された鍵には何の意味があるのか。。。
    昔なつかしい少女小説を彷彿とさせるような謎が
    おばあちゃんたちが少女であった昭和初期と、孫娘たちが謎を追う現代と
    時を行きつ戻りつしながら解き明かされていきます。

    洋館に纏わる秘密が悲痛なものであるだけに、
    戦争の影がどんなに目をこらしても見えなくなる孫の世代まで
    静かに秘密を胸に抱き続け、孫娘がやさしく健全に育つよう心を砕き
    実は4本あった鍵が、心ある人たちの手でちゃんと4本揃えられた時にだけ
    秘密が明かされるよう準備したおばあちゃんたちの真意が
    孫娘たちにちゃんと伝わったことに救われます。

    村はずれの洋館でけいこさんとロンさんが過ごしたささやかな幸せの日々と
    悲し過ぎるその結末に込められた小路さんの戦争根絶の願いが
    甘すぎる、絵空事だと言われても、まっすぐに胸に届く物語です。

  • 今と戦後をつなぐミステリー。
    3人のおばあちゃんの残した洋館の謎を、
    3人の孫娘が解明する。

    素敵な洋館の隠し部屋、3本の鍵、というだけで、十分な素材。
    哀しいお話でもあったけれど、
    安らかであってほしいと思う。

    戦争は嫌いだ!という赤川警察官の存在がよかった。

  • 3人の女性が孫に託した想い。

    戦争でも被害を受けずにいたさくらの丘の西洋館。
    素敵なお屋敷を舞台に、戦後と現代を綺麗に
    結んでいます。

    章毎に祖母の娘時代と現代の孫たちの行動が
    タイアップされていて、やさしく謎解きされていきます。

    大きな盛り上がりはありませんでしたが、
    心安らかに読める一冊でした。
    死んで尚結ばれる本が続いています。

    表紙も飾りたい位にステキ☆

  • 小路さんの本はフワッと優しいので読みやすい。

    これはお祖母ちゃん達が、それが秘密で無くなっても大丈夫な時代になるまで、大事に慎重に隠し続けた謎を、孫たちが知る物語。

    洋館の中庭の桜、きっときれいなんだろうな。

    戦争の中で、敵味方で殺しあった敵国の人間。でもその人だって戦争に巻き込まれた一個人。

    その人が殺したわけじゃないけれど、自分の肉親を殺した国の軍人だった人。戦争を憎んで、個人を憎まない。それだけでも当時は難しいことだっただろうと思う。

  • 「男たちが戦いに行って、世界中が殺し合うようなことになっても、私たち女性は〈命を産む〉存在として、平和を願い合うのだと。「それが、綺麗になる、〈心の美しい人間〉になるたったひとつの条件だって、話してくれましたよね」」

    戦争は憎む。でも、人は憎まない。
    という小路さんなりの平和論が優しい人たちが織り成す物語の中で展開されている。

    戦争とか平和とかももちろんなのだけど、おばあちゃんたちの持つ西洋館の秘密とはなんだったのか、その部分も気になって一生懸命読んでしまった。
    面白かった。

    私も気付いたら4人目の孫となって一緒に謎を解いているような、気にさせてくれた。
    相変わらずあったかいなぁ…。

    【12/4読了•初読•市立図書館】

  • なくなった祖母からおくられた古びた鍵が、祖母と古い洋館の隠されたお話をつむぎだす…

    ノスタルジックなお話。

  • やばい、そろそろ飽きが…
    他にも似たような話がなかったか?
    と思ってしまったので、今回は辛口。
    全体的にふわふわしていて、結局なんだったの?という話でした。
    でも、応援してます。
    2010.10.13〜10.22読了

  • 小さな町に建てられていた西洋館。それは戦後、三人の祖母たちからその孫に引き継がれた強い想いの込められた西洋館だった。孫たちは何故、引き継がれたのかその紐を解いていく。解けるにつれ切ない想いと、謎が解けた事で心が温かく又、受け継ぐ事を強く思うのだった。一言、いい話でした。

  • 読みやすくて一気読み。なにより切ない話もちりばめられながら、結果は心があったかくなる結末だった。
    時代を超えて再開する意志と想い、ちょっと泣けてくる。

  • “さくらの丘”を満ちるたちに遺す―。遺書には、祖母が少女時代を送った土地を譲ると書かれていた。一緒に渡されたのは古びた鍵がひとつ。祖母の二人の幼なじみも、同じメッセージをそれぞれの孫たちに伝えていた。なぜ、彼女たちは孫にその土地を遺したのか。鍵は何を開けるものなのか。秘密をさぐりに三人の孫は、祖母たちの思い出が詰まった地を訪れた―。三人の少女たちの青春が刻まれた西洋館、そこを訪れた私たちが見た光景は―二つの時代が交差する感動の物語。

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著者プロフィール

1961年、北海道生まれ。広告制作会社勤務などを経て、2002年に『空を見上げる古い歌を口ずさむ pulp-town fiction』で、第29回メフィスト賞を受賞して翌年デビュー。温かい筆致と優しい目線で描かれた作品は、ミステリから青春小説、家族小説など多岐にわたる。2013年、代表作である「東京バンドワゴン」シリーズがテレビドラマ化される。おもな著書に、「マイ・ディア・ポリスマン」「花咲小路」「駐在日記」「御挨拶」「国道食堂」「蘆野原偲郷」「すべての神様の十月」シリーズ、『明日は結婚式』(祥伝社)、『素晴らしき国 Great Place』(角川春樹事務所)、『東京カウガール』『ロング・ロング・ホリディ』(以上、PHP文芸文庫)などがある。

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