- Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396633523
作品紹介・あらすじ
ある国民的画家の数奇な生涯を描いたエンターテインメント。期待した展開が何度も何度も裏切られ、物語のラストはとんでもないところに着地する。昭和史の裏面に挑む怒涛の長編書下ろし。
感想・レビュー・書評
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こういうお話だ、とヒトコトで説明するのが不可能。民宿雪国の経営者で、国民的画家でもある丹生雄武郎の昭和から現在までの物語、なのだけどそのあまりにも濃い物語に圧倒されまくり。あえてヒトコトでいうなら「人間の尊厳とは」なのか。
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樋口作品らしからぬテンポの悪さだなぁというのが印象。
偶像化された老人は暗い過去に包まれた異なる人格を持っていた、という設定は面白いのだけど、視点や時代がコロコロ変わりすぎのだけど、関連があまりなくってそれがてんぽのわるさにつながったのかなぁ、なんて。 -
タイトルから雪国のほのぼのした小説かと思いきやそんな事はなく、
97歳で亡くなった丹生雄武郎という新潟で民宿を営む車椅子の老人を描いた作品。
その数奇な運命に翻弄され、たった一人の息子を震災で失った事をきっかけに自殺未遂。
精神病院の入退院を繰り返し、そのリハビリで絵筆をとり、次第に画業に傾倒していきます。
ある時、たまたま宿泊した画商の目に止まり、世に出るや評判に評判を呼び社会現象に。
その老成の天才画家の波瀾万丈の一生。
とそんな話を期待していると裏切られるどころか後ろから刺されます。 -
★どこか似ている?★「さらば雑司ヶ谷」を読んでこちらに。実在しない人物の伝記調で、ところどころにオウム真理教などの実際の歴史を交えた書き方は面白い。ただ、男色やバイオレンスの雰囲気がやや被るし、最後がいまひとつ盛り上がらなかった。これだけ面白いものを書く人でも似てしまうのかなあ。
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丹生雄武郎の生涯の話。民宿雪国の主であり、有名な洋画家なんだけど、実はただのキチガイじじい。その真実と詐称が語られていく構成で面白かった。でも「さらば雑司が谷」の衝撃に比べたら大したことなく、もっとがっつりしたのを期待してたから、意外とあっけなかったかな。
ただ、いろんなオマージュが相変わらずおもしろくニヤリとした。 -
こんな小説読んだ事無いですね〜どうやったらこんな人物を生み出し、こんな筋書きを構築出来るんでしょうかね…作者の才能に敬服します。
出だしはサスペンス…の印象ですが、暴力、嘘、家族、戦争、女、殺人、闇…と何でもあり何だけど読み進めるうちに通奏低音として流れていたモノが一つに収束して行くような気持ち良さがあってグイグイと引き込まれてしまいました。梁氏と町山氏との対談も非常に面白くて最後の一ページまで読ませる本です。 -
よくよく考えてみると、明らかに異質な書き方なんだけど、そこがまた良い。ステレオタイプはクソ食らえな感じ。
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発刊直後作家の乙一氏が、ツイッターにて日本版レクター博士だと呟いていたことから興味を持ち、ずっと読みたかった本。樋口さんは初読みだが期待に沿う面白さだった。
新潟県のとある町で民宿雪国を営む丹生雄武郎(にうゆうぶろう)にまつわる話。
第一章のインパクトは最高で、悪の教典にも似た悪辣な導入ではあるのだが、こういう仕掛けそのものが楽しくて、物語の導入にワクワクしてしまった。
しかし続く第二章はすこし色が変わり、また彼が分からなくなる。
第三章は、少し推理すれば思いつくような実在の人物らしき登場人物が出てくるのが面白い。丹生氏の名前の遊びにニヤリとしてしまう。
最後まで読むと物語の様相はまた変わってくる。そう長い話ではないのに、なかなか余韻を残す物語だった。