蜩ノ記

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 2348
感想 : 435
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396633738

作品紹介・あらすじ

豊後・羽根藩の奥祐筆・檀野庄三郎は、城内で刃傷沙汰に及んだ末、からくも切腹を免れ、家老により向山村に幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室と不義密通を犯した廉で、家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。庄三郎には編纂補助と監視、七年前の事件の真相探求の命が課される。だが、向山村に入った庄三郎は秋谷の清廉さに触れ、その無実を信じるようになり…。命を区切られた男の気高く凄絶な覚悟を穏やかな山間の風景の中に謳い上げる、感涙の時代小説。

感想・レビュー・書評

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  • 武士道と云うは死ぬことと見つけたり

    有名な「葉隠」の一節ですね
    いつでも死んだらぁっていう意味に誤解されることが多いんですが、死ぬどころか武士としての正しい「生き方」を説いた言葉なんですね
    詳しくはググって頂くとして(投げた!)やっぱり本作を読んでこの言葉が頭を過ぎりました
    夜霧よ今夜も有難う(どうしても言いたかった)

    主君の側室との不義密通のために十年後の切腹を命じられた戸田秋谷の武士としての生き方と死に方を描いた『蜩ノ記』

    読み終えた感想は「武士〜」です
    いやもうめっちゃ武士やん、めっちゃ武士やん秋谷!
    己が正しいと思うことを為す
    この一念ですよね
    そして曲げずに貫くにはどうしても死に方にもこだわらなければならなかったんでしょうね

    そして冒頭の「武士道と云うは死ぬことと見つけたり」を体現してたように思うんですよね
    楽な道を選んでいては、正しいことを為せないし、正しくない道を行く自分を見せたくなかったんじゃないかなぁって思うのです

    まぁ、自分は多少正しくない道を歩んでも切腹は回避したいですけどね
    武士じゃないし♪~(´ε` )

    • aoi-soraさん
      海坂藩とは何ぞや??
      と調べてみたら、シリーズの作品はおよそ120とありました(⁠@⁠_⁠@⁠)
      無、無理です…
      ひまめろさん、どうか溺れな...
      海坂藩とは何ぞや??
      と調べてみたら、シリーズの作品はおよそ120とありました(⁠@⁠_⁠@⁠)
      無、無理です…
      ひまめろさん、どうか溺れないように…
      みんみんさん指導のもと、安全に突き進んで下さいヾ⁠(⁠*⁠’⁠O⁠’⁠*⁠)⁠/
      2023/04/11
    • aoi-soraさん
      あ、12でした(笑)
      あ、12でした(笑)
      2023/04/11
    • ひまわりめろんさん
      ズコーーー
      ズコーーー
      2023/04/11
  • 些細なきっかけから城内で刃傷沙汰を引き起こしてしまった庄三郎。命を救ってやる代わりに、と命じられたのは三年後に切腹が迫っている戸田秋谷の見張りだった…

    村人から厚い信頼を寄せられる郡奉行であり、また妻子に恵まれながら、女のために事を起こし、限られた命を生きる戸田。彼の人柄に触れるうち庄三郎はかの事件に疑問を抱き…藩主の家譜編纂という戸田の仕事を手伝いながらその真相に近づいていく…

    武士としての戸田の生き方も潔いが、その子の郁太郎、またその友 源吉の人格が素晴らしい。

    源吉のエピソードはきっと「ベロ出しチョンマ」から来てますね。10歳の子供とは思えない立派さ。斎藤隆介さんの絵本でも悲しかったけど…

    マリモさんが書かれていたように、私も「鯛ノ記」と覚えていました…(笑)蜩と付けた意味が分かれば、これほどぴたりと合うタイトルはないです。

    来年公開の映画も楽しみです。

    • マリモさん
      こんにちは♪
      あはは、タイノキ仲間がいてうれしいです(笑)
      意味も読みもわかった現在でも、ぱっと浮かぶ題名はタイノキだったり。
      来年映画公開...
      こんにちは♪
      あはは、タイノキ仲間がいてうれしいです(笑)
      意味も読みもわかった現在でも、ぱっと浮かぶ題名はタイノキだったり。
      来年映画公開なんですね!結末知っていてなお、助かってほしいと願ってしまいそうです。
      2013/07/24
    • hetarebooksさん
      マリモさん

      ありがとうございます♪ひぐらし、ってなかなか漢字で目にする機会ないですもんね(笑)
      そうそう、主演は岡田准一さんらしいですよ。...
      マリモさん

      ありがとうございます♪ひぐらし、ってなかなか漢字で目にする機会ないですもんね(笑)
      そうそう、主演は岡田准一さんらしいですよ。戸田さんはどなたが演じるのかな?
      2013/07/29
  • まさに武士道精神。物語はどちらかというと淡々と進んでいくのに、気づくと世界に入り込んでいました。

  • 直木賞受賞作。
    十年後に切腹という沙汰を受けた武士のもとへ送られた青年は…

    豊後・羽根藩。
    奥祐筆を勤める青年・壇野庄三郎は、思わぬ事で同僚と諍いになり、相手に怪我をさせてしまう。
    城中での刃傷では切腹になりかねないところ、家老の計らいで向山村に遣わされる。
    幽閉中の元・郡奉行、戸田秋谷の仕事の手伝いをし、実は見張る役目だった。
    秋谷は七年前、前藩主の側室と不義密通を犯し、小姓を切り捨てたという。
    家譜編纂が途中だったのを惜しまれ、それが終わるまでと十年後の切腹を命じられていた。

    秋谷はそんなことをするように見えず、どんな事情があったのか、庄三郎は調べ始める。
    十年後の切腹という不可解な裁断の意味も…
    あるいは、前藩主が生きていれば許す予定であったのか?

    友を傷つけたことを悔いている庄三郎。
    淡々と暮らしている秋谷、覚悟を決めているらしい妻、悲しみをこらえている娘、事情を知り始めた幼い息子。
    こういう事情では家族は別に暮らす方が普通だが、妻は一緒に暮らすことを選んでいた。

    年貢に喘ぐ農民たちの間には一揆の動きもあり、殺人まで起こります。
    かって郡奉行だった秋谷は、村人に信頼されていました。
    今は立場上、表だっては動けないが、一揆を起こせば農民は必ず罪に問われて命がないのを案じて、止めに入るのです。

    秋谷の言動に感銘を受ける庄三郎。
    家譜編纂を手伝ううちに、何かが隠されていることを突き止められるのでは思い始めます。
    そこには、お家相続に絡む秘密が…?

    落ちついた筆致で、登場人物も、出来事も、バランスよく描かれています。
    色々な事情を腹に飲み込んで死に赴く秋谷。
    本当にどうしても避けられないことだったのかと現代の感覚では思いますが。
    家老とも一度は対決し、後のことも道筋を付けて、それなりに納得していたのだろうとは思えます。
    静謐な印象が残り、救いもある後味で、お見事でした。

  • 「遠望すれば春霞の山々に桜の花びらが舞い、近くは谷川のせせらぎ、カワセミの飛翔、清浄な山間の風景に礫をもつ少年が姿を現す」美しい冒頭の描写から引き込まれる。藩内の権力争い、7年前の事件解明という推理仕立ての展開で進んでいく。本筋から少し離れたところで起こる、まさか、という事件。哀しさと切なさで胸を打たれる。漢詩が縦横に用いられ、情緒的で美しく作品に独特の香りを与えている。「カナカナカナ」と減衰していく蜩の鳴声が、人の命や世のはかなさというのか、寂寥が心に染み、源吉の笑った顔がいつまでも残る。

  • 泣いた泣いた・・・「志」とか「心根の美しさ」とか、「人の正しい振る舞い」とか、そういう清浄なものの大切さがストレートに伝わってきて心が洗われたような読後感を持ちました。

  • きのう直木賞が発表されましたが(朝井リョウくんすごいなー)、ちょうど1年前の受賞作です。

    家譜編纂をして切腹までの余命を過ごす秋谷と、彼を見張り死を見届けるよう命じられた庄三郎の交流を軸に、村の人たち、藩のお役人たちをめぐるミステリー要素もあって、淡々と赴きある文章ながら飽きずにおもしろく読めました。
    そういう時代だったといえばそれまでなのかもしれないけど、家族それぞれの生き方が潔くかっこいい。

    松吟尼や織江のラストのとこ切ない。
    武士の生き様やら男意気を描いていても、も少し女性の思いも書いて欲しかったな。

  • 諄く感想を述べる必要がない本。

    気丈に生き、人のために生きる姿。武士としてだけではなく人間として素晴らしい生き方だと思う。

    とある禅師が修行はどこででも出来ると説いたという。なにも厳しい修行をつまなくても人は悟りを開くことができると…

    悟りをひらくことで見えてくることが沢山ある。それは人のために命を惜しむことなく差し出せるくらいのところまで達することが出来るのかも知れない。

    背景描写、心情がとにかく綺麗に描かれている。読み終わり本を閉じたときに妙に清々しい気持ちになるのはなぜだろう。

  • 自分の立場を恨んだり甘んじることなく、世のため人のために懸命に生きていた人々の生き様が心に染みた。志とは生き方そのものなのだと思う。

  • 上質な時代小説。少し説明が入り組んでいるような気もした。

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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