潮鳴り

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 278
レビュー : 40
  • Amazon.co.jp ・本 (323ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634223

感想・レビュー・書評

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  • 『蜩の記』ですっかり有名になった葉室さんです。
    歴史が好きで時代物を広く読んでいる青年や、コンピュータに詳しい同僚から「『蜩の記』、まだ読んでいないんですよ~。そろそろ読もうとは思っているんですけどね・・・。」と話題に上ること度々。「それを読んだら、『柚子の花咲く』も是非!」とおすすめしているけれど、今一つ話題に上って来ないのが、少々不満の私。
    自分を律し、質素で清冽であるをよしとする厳しい武士の生き様もよいけれど、市井の人との関わりの中で自分の弱さを認め、人の情けにそっと頭を垂れる、その上で立ち向かわねばならないものに背を向けない姿を描く葉室さんの小説の後味は、すがすがしさでいっぱいになる。

    かつては藩校で俊英と謳われ、周りからも一目置かれる存在であった伊吹櫂蔵は、融通の利かなさから商人との酒の席でしくじり、今はお役御免の身となった。朝から酒に溺れ、誰からも顧みられず、襤褸蔵とまで言われる始末。
    ところが、家督を譲った弟が切腹し、残された遺書から藩の不正を知って、再び弟と同じ役に就き、仕事に励む一方、隠された事実を探っていく。

    同期の中で先頭を走り、自負もあった櫂蔵が一つの失敗から、あっという間に転落し、底辺を這いずるように生きている。また、大店で大番頭を務めた男や、身を売り周りから蔑まれながらも生きる女。
    みな、信じるものや大切なものを失い、暮らしも荒んだ中から、新たに信じ守るものを見つけて再生への一歩を踏み出そうとする。
    落ちた花は二度と咲かぬ、という苦い思いを抱きながら、それでも、咲かせる道を探してもがき続ける。

    「落ちた花」になるほど、大きく重要な仕事を与えられてしくじるような経験は今後も私には起こりそうにないけど、小さな失敗をあれこれ重ね、時にはふっと、この先何年仕事やらなきゃならないんだろと溜息混じりに吐き出したり、逃げ出したくなったり、それなりにツライことはある。
    時代小説のような過酷な状況と比較するのも申し訳ないが、苦しい日々を送るときは、精一杯目の前のことをするしかないと、お屋敷で女中として働きながら武家のあれこれを身につける努力をするお芳さんを見ていて思う。

    派手に大輪の華を咲かせることに目は奪われがちだけれど、誠実な働きぶりや思いやりがどこかの誰かに少々役立つような、見過ごしてしまいそうな小さな花をそっと咲かせる。そういうのに、最近とみに弱いなあ。
    絵本の『花咲き山』に抱いた思いが子どもの頃とはずいぶん違ったものになっているように、小さく儚いものに対する思いが、以前よりも増しているように思う。
    まあ、年を取ったということなんでしょうね・・・。

  • 沁みたぁ。
    久しぶりに、サクっと読み進められて。
    号泣して。スカっといたしましてぇ、大満足‼︎

    生き抜くことへの覚悟。
    〜死んだらそんな許せない自分を一番簡単に許すことになってしまいます。そう、思うと生きるしかない。〜
    心を互いに通わせる。
    〜女子は昔など脱ぎ捨てて生きるのです。それは武門の覚悟も同じなのですよ。〜

    〜落ちた花がもう一度咲くところ〜

    〜昔のことを忘れられずに、ずっと引きずって生きていくことだと思います。〜

    お芳…咲庵…梟…新五郎…さと…襤褸、櫂蔵!

    潮鳴りを聞き続ける…

  • 「落ちた花は二度と咲かぬ」と言われる中で、落ちた花を咲かせる。想いを寄せる人の中、同じ苦悶を持つ人の中など、色々なところで花を咲かせる。伊吹櫂蔵とお芳とが最後に添い遂げることができなかったことが残念。

  • 落ちた花はもう一度咲くのか?落ちた花だからこそ、次に咲く時には精一杯咲くのであろう。心の花瓶に花一輪。

  • 落ちた花は朽ちるのを待つだけか、再び咲くことは叶わないのか。

    接待をしくじりお役御免とされ、無頼に落ちた男が、藩の為犠牲となった弟の無念を晴らす為、汚辱を背負いながら生き抜く決意を胸に、藩の陰謀に立ち向かっていく!

    落ちた花は、花を愛しく想うものの胸の中にこそ咲くのだ。というくだりに胸が熱くなりました。
    ブラックフィクサー播磨屋がまたもや悪巧み。
    蜩の記ではギャフンと言わせられなかったけど潮鳴りではギャフンギャフン言わせてます!爽快!

    蔑まれようと疎まれようと恥辱にまみれても生きる。生き抜く。蜩とアプローチが真逆ですが、信念を通した人間の生き様が胸熱。

  • 羽根藩。明礬。借金。生きてこそ。
    相変わらず上層部は悪人。更迭したはずが後釜が腐るのか。
    襤褸蔵とまで言われ、堕ちるところまで堕ちた。悪口雑言など何するものぞ。生きてこそ働ける。汚名を雪ぐことができる。
    苦界に堕ちた少女、自死を選んだ女。悔いることばかり。悔いるならば前を見て成すべきことを成す。
    弟ともっと早くから心を打ち明けていれば良かった。
    酒を断つのは当然。

  • 都合よく、三井の番頭が家士になったりするけれど、総じて良い話
    周りの人に助けられ、真っ当に生きる道を探す櫂蔵
    櫂蔵にまきこまれて、真っ当に生きようとする周りの人たち

  • 2017.12.02
    今更ながらに商人は侮れない。
    嘘をつかない事が信頼に繋がり、人を作っていく。覚悟する事で偉大な力を発揮していく。失敗、悲しみ、苦しみ、絶望の過去よりも今、何を成しているか、それが真価を問われるのだ。重い言葉である。

  • 久々の著者作。うーん、ひたすら猪突猛進!?、熱さのみ一直線!、、の読後感。…こういう作品の面白さなんだろうけど、静粛な奥深さ・重み不足の感はあり、、

  • やっぱり良いよね~~~
    お芳さんが亡くなったのが衝撃だったけど、そこからも皆が這い上がるのがかっこよかった
    お芳さんの一本貫いている感じ好きだ
    最初敵だと見えた周りの4人の経歴にも驚いた人は見かけじゃないね

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プロフィール

葉室 麟(はむろ りん)
1951年1月25日 – 2017年12月23日
福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
上記以外の代表作に、映画化された『散り椿』、第22回山本周五郎賞候補及び第141回直木賞候補だった『秋月記』がある。

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