分水嶺

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 101
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634513

感想・レビュー・書評

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  • 著者得意の山岳ミステリー小説。主人公は亡くなった父の跡を継いで山岳写真家を目指す30代独身男性、風間。風間は冬山登山中、絶滅したはずのエゾオオカミを単独で探す世捨て人、田沢と出会う。

    その田沢は過去、風間の父親と交流があり、その後、殺人を犯して服役、出所したばかりだった。さらに、その殺人を冤罪と信じる訳ありな老刑事も登場。

    過去の殺人事件が冤罪であったのか。そんな謎解きを軸に、人間の身勝手な行いによって絶滅したエゾオオカミの歴史を辿り、人間と自然との調和を作者は訴える。

    正直言って、作者の社会性メッセージが強すぎて、ミステリーとしての面白さは薄い。主人公が登山ばかりに夢中なのはいいけど、その行動が事件解決に直接結びつかない。主人公が長電話をするたびに事件の真相が明らかになるという他力本願捜査。最後の締めは予期せぬ感動動物ドラマ。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    風間健介は急逝した父の遺志を継ぎ、広告カメラマンから山岳写真家へと転身した。父の愛した厳冬の大雪山で撮影中、風間は絶滅したはずのオオカミを探す田沢保と出会う。十数年前、遭難の危機をオオカミに救われたという。さらに、彼が亡き父を尊敬していたこと、そして、大規模リゾート開発に絡んだ殺人犯だということを知る。風間は田沢と行動をともにするうちに彼の冤罪を信じた…。

    名作の予感しかしなかったのです。笹本氏で雪山で冤罪でオオカミですから。盛り沢山の為楽しみでした。舞台装置は最高。登場人物のなかなか味のある人々で魅力的。なんでこんなレビューの書き始めかというと、可愛らしく笹本氏が空回りしているので、楽しんで読みながらも苦言を呈さざるを得なかったのであります。
    恐らく渾身のシチュエーションで、笹本氏の自然と登山に対する愛情と、これからの自然と人間の在り方をこの本に込めたかったのだろうと推察するに難くありません。志の高い人々、自然の代弁者として度々登場して場の緊張感を高めるオオカミ。全てを揃え、全てを語らせたが為に何とも説教臭い話になってしまったのが何とも残念。自然の大切さと人間の愚かしさを、滔々と登場人物同士に繰り返し語らせたのは、そういう気持ちの強い現われと思います。

    あと、敵が居ながらもずっと影のような存在で、えげつない警察への癒着で冤罪や、証拠のねつ造等物凄い大技繰り出しながらもあまり存在感が無く、物語を進めるための推進力不足のままずっと進んでしまいました。親子2世代のカメラマンの葛藤も、冤罪に苦しめられた事への鬱屈も何もなく、崇高なままでは話の奥行きに乏しくなるのは明らか。暗躍する悪役をもっと表に出して、それに対しても崇高なままでいるという対比が必要だったように思います。

    でも、もし僕がこの作品に担当として携わったとして、突っ込めなかった気持ちもよく分かります。これでもかと気持ちを詰め込んだ作品であるのが分かるし、必ずしも小説としての完成度を落しているとも断言できないからです。
    及第点以上は取れている作品です。でもオオカミ捜索という舞台装置はもう使う事ができないでしょう。なので未練がましくもとても惜しかった。

  • 普通にオオカミが出てきたのが良かった。大きなサスペンスがないのに読ませるのは文章がうまいということなのかな。

  • 人間が一番偉いわけじゃなく、自然の大きな中の一つに過ぎないんだな。とても考えさせられる作品でよかった。

  • 舞台は厳冬の大雪山。亡き父の遺志を継ぎ広告から山岳カメラマンに転身した風間は,絶滅したとされる狼探しをライフワークとする田沢に出会う。何の打算もなく豊穣な大自然への魂の分水嶺を踏み越える彼らの姿は感動的だ。著者お得意の本格山岳小説は読み応え十分!

  • 2017.2 説教くさい小説。でも自分には考えさせられる言葉もいっぱい。笹本さんの山の小説は大好きだな。

  • 「還るべき場所」が良かったので、この作品も読んでみました。山という自然への畏敬の念が、太いテーマとしてある中で、いわば擬人化された存在が狼なのでしょうね。
    サスペンス風の味付けや、捜査情報をペラペラ伝える刑事やら、余計な付け足しが気になりましたが、全体的には山岳小説として面白かった。

  • 山をベースにした小説は、読んでいるボク自身もまるで山を登っているかのように感じられるかが、面白いかどうか判断できる基準ですが、その点では少し入り辛い感じがありました。
    ストーリー重視という感がありました。

  • 複数のテーマを上手くまとめているけど、どれか一つにフォーカスすれば面白くなったのにと思いましたね。

  • 物語的にはたいしたことはなかったが、山の雰囲気はそれなりに感じられた。人間って本当に情けなくてろくでもない生き物。警察の人は読まない方がいいかも。読んだらきっと頭にくる。写真家っていいなぁ。

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著者プロフィール

1951年、千葉県生まれ。立教大学社会学部社会学科卒業。出版社勤務を経て、海運分野を中心にフリーライターとして活躍。2001年、『時の渚』(文藝春秋)で第18回サントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。2004年には『太平洋の薔薇』で第6回大藪春彦賞を受賞。壮大なスケールで冒険・謀略小説を、重厚で緻密な警察小説を構築し、多くのファンを抱える実力作家。おもな著書に『グリズリー』『マングースの尻尾』『サハラ』のほか、『還るべき場所』『春を背負って』『その峰の彼方』『未踏峰』『南極風』『分水嶺』『大岩壁』といった山岳小説や、海洋を舞台にした『遺産』、『素行調査官』『駐在刑事』『越境捜査』『所轄魂』といった警察小説のシリーズなどがある。

「2018年 『強襲 所轄魂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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