六花落々

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 179
レビュー : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634537

感想・レビュー・書評

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  • 六花落々・・なんという趣、響きそして余韻を持った題名なのだろう!雪の結晶が見事な華を披露し、その姿に魅せられた人々を軸に描かれた幕末の歴史小説。著者初読みにも拘らず、平易な文章に乗せた言葉の美しさ優しさ鋭さが心の襞に自然と染込む。さらに比喩の斬新さ(自分では絶対浮かばない表現好き嫌いは別として)にも感動。主人公尚七、用心忠常、古河藩主利位の三者の設定も抜群、織り成される会話にも箴言、格言、教訓の宝庫。まるで開国の門戸を叩く悪魔の声に抗するかの如く。間宮林蔵、シーボルト、大塩平八朗と西條さんの新解釈も痛快。

  • 西條さん時代ファンタジーから時代小説にシフトしていくのかな。江戸時代後期に雪の結晶を研究した古河藩主・土井利位と家臣、幕末の動乱を予感させる世相が描かれている。幕府の要職まで務めた土井利位、その家老であり切れ者の鷹見泉石、下士ながら藩主の御学問相手を務めた小松尚七、いずれも実在の人物です。このような地位にありながら当時禁止されていた蘭学に傾倒し、雪の結晶を観察し図録を作るということ、三人三様の学問的な欲求と政治的な背景のバランスが良いです。学問をどう活かすのかが重要なのです。

  • 実在の人物を題材にした作品とは知らずの作者読み(笑)

    最初に登場の下級武士の尚七。
    「なぜ何尚七」って(笑)
    時を忘れて雪の形を探す姿がほほえましい。
    そんな彼が出会ったのは藩主の覚えめでたい鷹見忠常。
    この人、年齢は尚七とあまり変わらないのだけど、
    有能なだけでなく、大人物の風格。
    かっこいいぞ。

    そんな忠常の取立てで、藩主の学問のお相手となった尚七。
    家格がどうので、養子になってからの出仕とか、
    武士って面倒くさい感じだけど。
    でも、養家がいい家でよかった。
    学問好きのお殿様も魅力的。
    藩政よりも学問が好きでも、立場上それを貫くわけにはいかず、
    そういう意味では自由な立場の尚七をうらやんだりするのも
    人間くさくていい。

    途中で、大黒屋幸太夫が出てきて、「あっ!」と思った。
    この人、「おろしや国酔夢譚」の?
    名前には自信がなかったので検索、検索。
    やっぱり、そうだ。
    もう20年も前の映画なのに、よく覚えてたな、私。
    もっとも、私の中では、なぜか、西田敏行さんの映画、
    という刷り込みになってたけど(笑)
    (思い出したら、また観たくなって、ツタヤディスカスに
    登録しちゃった。)

    尚七のロマンスが素敵。
    どっちも不器用なんだもんなぁ。
    なんだか、可愛い。

    その後も、実在の人物が出てくる、出てくる。
    中でも、驚いたのが大塩平八郎の人物像。
    歴史の授業でさらっと習った時には、武士でありながら
    庶民のために乱を起こした正義感の強い人のイメージ
    だったのだけど、すごくあくの強い人だし、
    乱を制圧する側だからかもだけど、忠常の規って捨てる
    ような人物評もなんだか納得できたりして。
    これは小説なのだし、実際の大塩がどういう人で、
    どういう意図を持って乱を起こしたのかは分からない。
    でも、こういう小説を読む面白さの一つに、
    作者ごとの人物造詣があること。
    どれが正しいのかは分からない。
    どれも正しく、そして正しくないのかもしれない。
    だから、面白い。
    読者がそれぞれの想像を膨らませる余地もあるということだから。

    鷹見忠常と藩主の繋がりを描いた他の作品も
    発見したので手を出してみるつもり。

  • ノンフィクション『幕末の女医楠本イネ、シーボルトの娘と家族の肖像』を、読んだ直後のこの本だったので、より強烈な印象を持った。江戸幕府がその寿命を終えようと加速する時期。外国との交易と情報入手は、知ること以上に国力に寄与することだった。国際という視点で地球上にある色々な情勢を知ることは、国の行く末も知ることに相違ない。

    場所は渡良瀬川周辺古河藩。
    小松尚七という、貧乏な下士であり、世の中の理をなんでも知りたい『何故なに尚七』という別名も知られていた。
    何にでも興味を持ち、雪の結晶を見ようと2時間も四苦八苦していると、この本の主題でもある、鷹見忠常と出会う。

    その出会いが、尚七の運命を変える。
    江戸に上京し養子となった新しい若君の御学問相手として、召し抱えたいと言われる。

    ここから、世にいう「シーボルト事件」や「大塩平八郎の乱」や天候不順な時代での大きな飢饉がおこる。
    天才でありたゆまぬ研究も続け、野心もあり政にも、長ける鷲見との2、30年の月日を描く。

    江戸文化、歴史的事件も臨場感あふれる一冊になっていて、読みごたえは十分です。

  • なぜ?
    疑問を持つ必要のないものに対して疑問を持ち、なぜ?と人に問い、調べる。
    周りからは、意味のないことに対して疑問を持つ尚七は疎ましく思われる。

    尚七の純粋な知識欲が眩しく感じた。
    女性が知識を持つことが疎まれる時代に、自分を持ち続けようとして壁に当たる多加音の姿が悔しく、切なかった。

  • 六花とは雪のこと。その雪の結晶を見たいと考えている若い武士が主人公の話。剣術はだめだが、学問は好きで、知識を得ることを望んでいる。やがて、その才を見込まれ藩主の跡取りの学問相手として用いられるようになり、雪の研究も出来るように。
    雪の結晶の研究を進め、本まで著すようになる武士の人生を描いているが、硬くなくて面白かった。

  •  大塩平八郎への、こういう見方もあるのかと。
     その乱が結びの章にあることで、やや苦味が。

  • 雪のお殿様こと土井利位にまつわる小説ですが、焦点が当たっているのは、お殿様でも、家老の鷹見泉石でもなく、その家臣の尚七ということになります。

    ただ、「雪の研究」の話だけではなく、大坂城代となった間の大塩平八郎の乱など出てくるのも興味深い。
     #大坂城代側視点なので大塩平八郎が必ずしも美化されていない!

    時間経過が長期に渡っているので、ちょっと早足感は否めない。

  • 「何故なに尚七さん」のお話。
     厳しい人なのかもしれませんが、鷹見さまはすごい人なのだと思う。
     図書館に行き、渡辺崋山が描いた肖像画を探して、見ました。
     土井の殿様も素敵な方だと思う。

  • 冬の日、雪の結晶の形を調べていた下総古河藩の下士・小松尚七は藩の重臣・鷹見忠常(のちの泉石)に出会う。その探究心のせいで「何故なに尚七」と揶揄され、屈託を抱える尚七だったが、蘭学に造詣の深い忠常はこれを是とし、藩の世継ぎ・土井利位の御学問相手に抜擢した。やがて江戸に出た主従は、蘭医・大槻玄沢や大黒屋光太夫、オランダ人医師・シーボルトらと交流するうちに、大きな時代の流れに呑み込まれていく…。

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著者プロフィール

1964年、北海道中川郡池田町に生まれる。北海道帯広三条高等学校を経て、東京英語専門学校を卒業。 2005年、『金春屋ゴメス』が第17回日本ファンタジーノベル大賞 大賞を受賞しデビュー。2012年、『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞を受賞。2015年、『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞。

「2018年 『秋葉原先留交番ゆうれい付き』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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