匿名者のためのスピカ

著者 :
  • 祥伝社
3.02
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本棚登録 : 423
レビュー : 76
  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634728

感想・レビュー・書評

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  • 私が今まで読んだ島本作品は多分エンタメ寄りの作品が多かったのだと思う。どうしてこの人は何度も芥川賞候補になるのか不思議でならなかった。
    そうか、発表媒体が全然違うしあえて書き分けていたのね。ほほー。
    で、本作は完全にエンタメ寄りだそうで、本人も今後は純文学を書かないと宣言されているそうで。

    うん、その方が良いと思う。
    私が読んだ本が全てエンタメ寄りだったかどうかは定かでないけれど、この人の書く本のベースは完全に少女漫画の世界だと思っている。あくまでも私の感想だけど。
    どう設定を変えても、DVが出てきても出て来なくても傷つきやすい自己肯定感の薄い少女ばかりのような・・・。
    これが良いとか悪いとかの問題ではなく、あくまでも作家のカラーと言うか。
    すいません、まとまりがなくて。

    この作品は一人の女性が過去に付き合っていて監禁までされたDV男と逃走する話です。
    で、それを助けようとする正反対のピュアな男性が登場する。
    ありがちじゃないですか?そんなことない?
    最近の少女漫画読んでないから良く分からないけれど。
    アンソニーとテリーのはざまで揺れ動くキャンディみたいな(笑)

    いや、決して悪くはないですよ。
    でも面白くもないし新鮮味もない。
    「ナラタージュ」の衝撃から一歩も進めてないようなもどかしさが辛いんです。

  • うーん…。感想を書くのが難しい。私にとっては地雷だったし、てんこ盛り過ぎてもやもやする。頭の中かきむしりたーい!と思った。高橋と景織子の最後のやりとりは茶番劇かと…思った。中途半端というか…少しBL方面に走ったのかなー…とか思ってしまった。


    癖のある人を周囲に集めてしまう笠井は特異点。な割に目立たない。七澤がいい味出し過ぎていて、そっちにばかり目がいってしまった。そういう七澤も笠井にひかれている。


    景織子も七澤も幼年期に母から拒絶されて大事な何かが欠如して育ってしまった。(皮肉なことに高橋も同じような境遇)。で、みんな男だろうが女だろうが、同性異性に母性を求めてしまう…。景織子は父親について思うシーンは泣きそうになった。


    イタイ話だ。そういう私も旦那と付き合っている時、彼に母親の愛を求めた。求めたって出てくるわけないけど…本当にあの時はつらかった。今はもう過去だから言えるけど、精神的に一番しんどい時期だった。


    なのでこのあやうさ理解できる自分に少し嫌悪感が出た。景織子と景織子の母親の気持ちも、七澤も高橋の気持ちもよ~くわかる。私も含めて、みんなでひびの入った脆いガラスの橋を渡っているみたいだった。…疲れた。しんどい。


    呪縛というか連鎖というか…断ち切りにくいもの。女メンヘラよりもメンヘラ男の方が、危う過ぎてとてもつらい。何の疑いもなく無条件に全肯定で与えられる時期にその愛情をもらえないと、その後、生きていく上で問題が出てくる事が多い。そして成長しても今度はその与え方がわからない。


    タイトルの回収とかはとてもきれいだけど疲労感120%でした。「景色を織る子」=景織子。最後まで離人症っぽい景織子の無色透明感がこわ過ぎるのでした。

    たぶん。なにか試している、挑戦の作品なんだと思う。

  • 他人に流される(振り回される)、他人を自分の都合のいいように利用するというタイプの人はニガテだなぁ。
    他人の影響も受けたくないし、他人に影響も与えたくないしと考え出したら人付き合いができなくなってしまうんだけれども……。

  • 島本さんの作品らしくややこしい女の子が出てきますが、ほぼ彼女のボーイフレンド視点になっているせいか、いつものヒリヒリするような感じがなかった。サスペンスもほんの風味づけ程度で、平凡な作品といった印象です。こういう犯罪が絡んだサスペンス風の作品を書いてみたいっていう実験的な作品だったのかな?文章はいつも通り整っているので、読みやすく、するすると読了しました。

  • うーん、太一さんと七澤以外みんなにイライラしてしまう。笠井が空気が読めなさすぎてやばい。話自体は面白かった。

  • *法科大学院生の笠井修吾は同級生の館林景織子に、「過去に監禁された」衝撃の過去を告白される。いまでもその元彼の陰に怯える景織子と交際を始めた修吾だが、元彼の高橋が景織子の弟に暴行を働き、彼女を連れ去る事態に。だが実は、景織子は自ら高橋の車に乗り込んでいた。なぜ彼女はストーカーまがいの男と行動をともにするのか?彼女の真意とは?極限の恋愛サスペンス! *
    内容がヘヴィで、詰め込み過ぎなほどてんこ盛りな割には、さらっとあっさり読めます。可もなく、不可もなく。ただ、どうして正しいものと欲しいものが違うんだろう・・・という一文にはなんとなく共感。

  • 図書館で借りた本。ライトノベルの恋愛物かと思いきや、行方が分からなくなった恋人を探す青年がたどり着いた先に見た真実は…みたいな展開で終わる。結局メンヘラ女に振り回された青年のひと時の話でミステリ感もあまり出せず、読了後も余韻残らず。

  • かつて自分を「監禁」した罪で逮捕された元カレと監禁されてる方がまだマシと思うくらいの荒れた家庭という、とても今日的な重い設定にせっかくして、殺人事件まで起こるのに、なんとなく消化不良に終わってしまった残念な感じだけが残りました。
    ただ、後半の笠井くんの生保マン時代のエピソードだけがリアルで引き込まれました。
    島本理生さんの小説を読むと、毎回イライラしたりがっかりしたりするのですが、ページをめくるのをやめられず、懲りずにまた次の作品を手に取ってしまいます。

  • 島本さんの描くヒロインは、なぜいつも健やかではないのか…というのはさておき。社会人経験を経て法科大学院に通う笠井が、同級生の景織子から過去の恋人に監禁されていたことを告白されるところから話が展開していきます。登場人物が皆少し歪んでいたり、欠落していたりしてましたが、そこを深掘りしきれていなかったのが残念でした。恋愛サスペンス?ミステリー?という謳い文句には違和感がありますが、小説としては面白いと思います。馬鹿正直で正義感強すぎる笠井にはイライラしたけど、それをフォローする七澤が良い味出してる…!

  • ちょうどこの単行本が刊行された頃に、ご本人の「純文学卒業宣言」ツイートが話題になった。

    正確には芥川賞候補作となった「夏の裁断」の同賞落選を受けてのツイートだったと記憶しているが、タイミング的に本作の宣伝も多少意識しているだろうことも想像に難くなく、そういった意味では非常に興味深く読んだ作品だ。


    結論から言うと、良くも悪くも島本理生がエンタテイメント作品として恋愛サスペンスを書くと、こんな小説になるんだろうなぁ......というイメージどおりの作品だった。

    実際、エンタテイメント小説としてよく考えられ、練られたストーリーだったと思うが、その反面、島本理生らしさをサスペンスの世界で表現するには、やや仕掛けが目論見どおり機能しなかったような気がしてならない。

    本作については彼女はインタビューで以下の通り述べている。
    (以下引用)
    島本 ミステリーにはすごく関心があったんですけれど、自分にできるだろうかと思っていたんです。でも、実際の事件をベースにした、男女の恋愛とか感情のもつれの話だったらできるかもと思い挑戦しました。ただ、連れ去られた女性を主人公にすると、加害者の男性と二人だけの、シリアスで閉じられた話になってしまう。それよりも俯瞰する視点が欲しかったので、その女の子とつきあっている男の人の視点にしました。それで、探偵役を書いてみたいと思って、それならやはり助手役も要るだろうと(笑)。
    (引用終わり http://hon.bunshun.jp/articles/-/4194?page より)

    この探偵役、笠井修吾があまりにも善人過ぎるのだ。

    物語の大半が、ある意味愚直である修吾からの「俯瞰する視点」で語られるために、その結果サスペンスものとして求められる「緊張感」とか「不穏さ」が上手く醸し出せていない。

    そして結局は、本編ラスト数ページと景織子視点で語られるエピローグで、景織子の心の闇が一気に種明かしのように明かされるのは、やや興ざめ感がなくもない。

    読み返せば、それぞれに伏線はそれなりにあるのだが、この手の小説はもっと明示的に伏線を配し、それが緊張感や不穏さを高める役割を果たした方が面白い。

    そういった意味では、修吾、景織子、高橋、七澤(引用したインタビューにある助手役)の4人の視点を交互に配しながら緊張感を高めていく構成にした方が、エンタテイメント小説としての面白さの面でも、また島本理生の小説らしさという面でも良かったのではないだろうか?

    勿論、彼女がエンタテイメント小説一本に絞って活動するという決意の中で、「シリアスで閉じられた話」を敢えて避けた気持ちは理解できるのだが、今回に関してはその目論見はあまり成功していないと私は感じたのである。


    特に彼女のファンというわけではなく、読んだのもこれでまだ8冊目に過ぎないが、若くしてデビューした割には、その後も怯むことなく試行錯誤しながらコンスタントに書き続けるその姿勢はとても好感をもって見てきた。

    今後エンタテイメントに絞って活動されるというその決意の潔さに敬意を表して、次作以降しばらくは重点的にフォローさせて頂きたいと思う。

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著者プロフィール

島本 理生(しまもと りお)
1983年東京都板橋区生まれ。都立新宿山吹高等学校に在学中の2001年に「シルエット」で、第44回群像新人文学賞の優秀作を受賞し、デビュー。06年立教大学文学部日本文学科中退。小学生のころから小説を書き始め、1998年15歳で「ヨル」が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVPを受賞。2003年『リトル・バイ・リトル』で第128回芥川賞候補、第25回野間文芸新人賞受賞(同賞史上最年少受賞)。2004年『生まれる森』が第130回芥川賞候補。2005年『ナラタージュ』が第18回山本周五郎賞候補。同作品は2005年『この恋愛小説がすごい! 2006年版』第1位、「本の雑誌が選ぶ上半期ベスト10」第1位、本屋大賞第6位。2006年『大きな熊が来る前に、おやすみ。』が第135回芥川賞候補。2007年『Birthday』第33回川端康成文学賞候補。2011年『アンダスタンド・メイビー』第145回直木賞候補。2015年『Red』で第21回島清恋愛文学賞受賞、『夏の裁断』で第153回芥川賞候補。『ファーストラヴ』で2回目の直木賞ノミネート、受賞に至る。

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