スーツケースの半分は

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 980
レビュー : 166
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634810

感想・レビュー・書評

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  • 旅に出るときのお供はスーツケース。
    出かけるとき、中に詰めているのは、着替えだったり、洗面道具だったり…、必要最低限のもの。
    できるだけスペースを空けて出かける。
    この本を読んで、ふと思う。
    このスペースって帰りのお土産のためのもの?
    いいえ、そうではないはず。
    形にはできないけれど、そのたびへの期待だったり、その地へのあこがれだったり、夢だったり、はたまた、前回の旅の思い出だったり。
    それが、旅先で、思いがけず形になったり、匂いになったり…
    帰りはいつも、いっぱいの”思い”を詰めて帰ってくる。
    その思いが心地よかったり、明日への力になったり…
    だから旅はやめられない。


    青い革製のスーツケース。
    そのスーツケースを手に旅に出る人々の物語。

    ■ウサギ、旅に出る。
    山口真美はフリマで青いスーツケースを手に入れる。
    そのことが、普段、無意識に押さえつけていた自分との出会いにつながる。
    そう、一歩踏み出せばよいだけ…

    ■三泊四日のシンデレラ
    中野花恵は真美の青いスーツケースを借りて、香港へ旅立つ。
    旅行中の話は誰にもしない花恵。
    彼女にとっての旅とは…

    ■星は笑う
    人それぞれ、旅をする意味や目的が違う。
    旅に求めるものが全く違う二人が一緒に旅に出るとどうなるのか…
    ゆり香も真美の青いスーツケースを借りて旅にでる。
    ゆり香にとっての旅はとてもシンプル。
    でも、それが一番難しい…

    ■背伸びする街で
    澤悠子も真美のスーツケースを借りて旅に出る。
    行先はパリ。
    パリは日本人にとってアジアと比べ、ハードルの高い街。
    悠子はそう思っている。
    そして、自分のことを見栄っ張りだとも。
    そんなパリで裕子がスーツケースの半分に詰め込んだものは…

    ■愛よりも少し寂しい
    中野花恵の従姉妹である栞はパリに留学中。
    夢と現実の狭間でもがいているとき、花恵の友人悠子と出会い…

    ■キッチンの椅子はふたつ
    獣医でシングルマザーの星井優美。
    一人娘の春菜が留学したいと言い出したことで、優美自身、気づいていなかった自分に気づかされることになり…

    ■月とざくろ
    ドイツへ留学した星井春菜。
    留学の意味がわからなくなってきて…

    ■誰かが恋する場所
    大学時代の同級生、真美、英恵、ゆり香、悠子の4人は温泉旅行に出かける。
    そこであのスーツケースに再び出会い…

    ■青いスーツケース
    あの青いスーツケースはここから始まった…


    やっぱり近藤史恵さん、好きだなぁ~
    今持っているスーツケースは使い勝手重視で選んでいるけれど…
    こんな素敵な青いスーツケースが欲しくなりました。
    そして、そのスーツケースをもって旅に出たい!

  • 目の覚めるような鮮やかな青色のスーツケースが、日常生活に悩みを抱える女性達を次々に繋いでいく連作短編。

    「あなたの旅に、幸多かれ」のメッセージの入ったそのスーツケースは、使ったみんなから「幸運を呼ぶスーツケース」と噂される位旅した人達を晴れやかな気持ちにさせてくれる。
    NY、香港、アブダビ、フランス、ドイツ…スーツケースは女性達の手から手へと次々に渡り色々な土地を旅し、持ち手に幸運をもたらしていく。

    「スーツケースの半分は空で行って、お土産を詰めて帰っておいで」とアドバイスをくれた友もいたけれど、そのスーツケースは旅した土地のお土産と共に、旅した時の素敵な思い出をたっぷり詰め、次の旅人の手へ渡り幸運も連鎖していく。
    自分で選んだ土地に一人で行く勇気ある女性達の物語に、読んでいて元気を貰えた。

    「わたしは幸運をちゃんともらったから、次からは自分で選んだスーツケースで行きます」
    幸運を呼ぶ青色のスーツケースに何時までもしがみつかないで、次の旅人に気持ち良く手渡せる彼女達がとても素敵だった。
    私にもそのスーツケースを貸して!

  • 心の隅に人知れず鬱憤や悩みを抱えながら日々を暮らしている女性(ひとつ男性の話もある)たちが、青色の「幸運のスーツケース」を持って旅に出るお話し。
    楽しいだけではなく、つらいことも、悲しいこともあるけれど、登場人物は皆、旅を通して「自分」を見つめなおし、自身を大切にするようになる。どのお話しも、最後は明るい気持ちになって読み終われた。
    スーツケースはそのきっかけというか、象徴やお守りみたいなものかな。

    半分を空けたスーツケースを持って、旅に出て見たくなった。

  • 人生初のドキドキ一人旅から、
    そっと別れを告げる死出の旅まで
    様々な形の旅が登場する連作短編集です。

    何かをつかみたくて旅に出る人
    反対に旅に出たことによって何かを手放した人、
    旅の結果は人それぞれなのだけれど
    出かける前には見えていなかった自分の思いが
    帰りには見えていたとしたら、それだけで
    その旅は大成功なのだろう。
    あ~、どこでもいいから今すぐ出かけたい、
    旅に行きたいぞ~~~!

  • 休日で、予定なし。天気はくもりで、結構寒い。
    ブランチを食べながら家で黙々と読んでいて、思った。
    旅はやっぱり、した方がいいなと。
    少し無理をしてでも、不安や面倒臭さと戦ってでも、した方がいい。
    無駄な旅なんて絶対にない。
    気づきや、学びや、成長がある。
    自分も特に旅好きではないし、面倒だなと思ってしまうタイプなのだけれど、久しぶりに海外にでも行こうかな、と思った。
    危険な土地に行くのでも、リッチな定宿に止まるのでもなく、ザ・観光の緩さが丁度いい。
    「生きて帰って来たら成功」の大らかな気持ちで。

  • 人生は一人旅。明日はどこへ行こう?
    相棒は青いスーツケースただ一つ。
    今日も残りの半分に、温かいドラマが詰まってゆくー。


    大学時代からの友人である4人の女性達と、
    青いスーツケースを通して彼女達と関わった
    人達を描いた連作短編集。

    海外旅行に行った事がない29歳の真美。
    夫は定年になってから行けばいいと言う…。
    フリーマーケットで見つけた青いスーツケースに一目惚れ、
    衝動買いをしてしまう。
    その時、彼女の中で何かが変わった。
    心配性な夫の反対を押し切り憧れのNYへ初めての一人旅。
    不安に駆られた時、鞄のポケットから「あなたの旅に、幸多かれ」
    と書かれたメッセージが出て来る…。
    やがて、鞄は大学の友人花恵・ゆり香・悠子へとバトンされ、
    世界中を旅するうちに〝幸運のスーツケース〟と呼ばれるようになってゆくー。

    仲良し四人組といっても、それぞれの思いが交錯してる様子
    うんうん、ある!ある!すっごく良くわかり沢山の共感がありました。
    それぞれに小さな秘密を抱えたり、悩みを抱いたり、葛藤があったり
    漠然と将来に不安を抱いてたりする。
    ジリジリする気持ちが手に取る様に感じられました。
    そんなウジウジした気持ちを青いスーツケースが、
    旅先に捨て去ってくれるかのようでした。
    一歩踏み出したからと言って、その後が全てハッピーと
    好転するばかりでは、ありませんがそれがまた良かったなぁ。
    本人の気持ちが前に進む様子も良かった。
    最期のお話は、涙がこぼれました。

    幸せをつなぐ物語…。
    大丈夫。一歩踏み出せば、どこへだって行ける。

    • katatumuruさん
      しのさんも読まれてたんですね。この本(^^)
      ホント、しのさんとは読む本がかぶる事が多いですね。
      しのさんにイイネ!をいただいた後、「青...
      しのさんも読まれてたんですね。この本(^^)
      ホント、しのさんとは読む本がかぶる事が多いですね。
      しのさんにイイネ!をいただいた後、「青いスーツケース」を「青いスーツ」と書いていたのに気づいて直しました(^^;
      早めに気づいて良かったです・・・(^^ゞ
      2016/11/02
    • しのさん
      うんうん、本当に読む本が被る事が多いですね~嬉しいです♪
      あります!あります!フト後からレビューを読んでいて漢字の変換間違いや言葉の間違い...
      うんうん、本当に読む本が被る事が多いですね~嬉しいです♪
      あります!あります!フト後からレビューを読んでいて漢字の変換間違いや言葉の間違いを発見して慌てて直す事(笑)
      この本のレビューを久し振りに自分で読んで凄く共感してるなぁなんて思いました。
      2016/11/04
  • 旅をテーマにした9話からなる短編集。
    全ての話は仲の良い女友達4人組と彼女たちに関わりのある人たちを主人公にしている。
    そして、全ての話に表紙に描かれ、タイトルにもなっている「青いスーツケース」が登場する。

    最初の話はニューヨークに行きたいと思いながらも一人で外国旅行する事に躊躇する主婦が主人公。
    彼女はフリーマーケットで青いスーツケースを買った事で、ニューヨーク行きを現実的なものとして考え始める。

    2話目は、1話目の主人公の女友達で、親と同居して働く、少し経済的に余裕のある女性が主人公。
    彼女の旅の行先は香港。
    旅に出る際に、彼女はニューヨークの旅から帰ってきた女友達から青いスーツケースを借りる。

    3話目は、彼女たちの女友達で、イスラム圏の国に恋人と旅立った派遣社員の女性。
    彼女も青いスーツケースを借りて旅立つが、旅先で恋人に嫌がらせされて、置き去りにされてしまう。

    4話目も、彼女たちの女友達でライターの女性が主人公。
    彼女は仕事でパリに向かう。
    行く前に、パリ在住でいつも宿泊させてもらう友達に連絡するも、彼女はその時は都合が悪いと言われる。
    所が、パリでいないはずの彼女の姿を見かけて「もしかして自分は嫌われてたのか?」と思い悩む。

    5話目は、4話の主人公の女性がパリで知り合った女性が主人公。
    彼女はパリに語学留学をしている。

    こんな風に主人公をつなぎながら話が進んでいく。
    最終話だけが男性が主人公だった。
    彼らに共通しているのは、登場人物の誰かと何らかの形でつながっているという事と青いスーツケースを手にするという事。

    旅をテーマにして、繊細で、微妙な人間心理を描いていて、特にショッキングな事や事件がある訳でないのにちゃんと読ませてくれる。
    読んでいて、主人公たちの気持ちが理解できるし、共感できた。
    どの年代の人が読んでも読めると思うけど、特に主人公たちと同世代の30代の女性が読んだら共感できる話じゃないかなと思う。

    青いスーツケースがアイテムとしてきいていて、この話ではそのスーツケースを手にした人は幸福になっていく。
    起きた出来事はあまりうれしくない出来事ー例えば恋人に置き去りにされるとか、恋人に浮気されるとか、そんな事からも結果的に幸せになる。
    それを見ると、現実の不幸だと思う出来事もそれをとらえる人次第なんだな・・・と思う。
    そして、そういうのが読後感の良さになっている。

    最初の話でスーツケースに入れる荷物は半分にして・・・という話が出てくるけど、旅を終えた主人公たちの半分あいたスーツケースのスペースには何が入ったのか。
    目に見える旅土産だけでなく、自信だとか、人間関係だとか、安堵だとか、自分を見直す機会だとか、様々なものがそのスペースには入ってる。
    目に見えるものよりもそちらの方が重くて大きいんだろうと思う。

    こういう旅をテーマにしたリレー形式の短編集を読んだのは初めてで、ありそうでなかった試みで面白いと思ったし、全体的に、とても素敵な雰囲気の本だと思った。
    何となくどこか旅に行きたいな・・・と読み終えて思った。

  • 革製の青いスーツケースが中心となった連作短編集。

    最終話以外は、主人公が全て女性。
    何かしらに悩み足踏みしている感じの人たちですが、旅を期に、前向きに進んでいくようになります。
    メッセージ性の多いストーリーが多かったように思いました。

    決まりきったツアーには興味の無いゆり香のアブダビ旅行の話と、ドイツに留学した春菜の話が好きでした。

  • 真っ青な空の様な青いスーツケースを巡る、心がホッと温かくなる連作短編集。
    旅に行く喜びと、半分はお土産を詰めて帰る幸せ。
    スーツケースはそれぞれの人生のお供だね、なんて思う(^^)

  • 以前の私は、長い休みが取れたら、目的地も特に決めずにHISに行って、航空券を手に入れて、ふらっと海外に行っていた。若い頃に比べて、明らかにフットワークが重い。8年もの間、国外に出ていないことに気づいた。バックパッカー時代には見向きもしなかった、国内旅行にはよく出ている。しかし、この物語を読んだら、すぐにリュックを肩にかけて、国外に出かけたくなってしまった!後先考えずに初めて訪れたアメリカでの一人旅のことを思い出した。

    近藤史恵は私の大のお気に入りの作家だ。
    こんなにも優しい視線で人を見ることのできる作家は少なくなりつつある。人の心の嫌な部分を描いても、決して嫌みがあるようには書かないし、だからこそ読者も素直に受け止めることができる。

    本作は、フリーマーケットで手に入れた青いスーツケースを手にした人々に訪れる素晴らしい旅の体験を描いた連作短編集だ。読めば誰もが旅をしたくなるだろう。

    ラストに兆す光の印に誰もが胸を暖かくするだろう。
    幸福な読書体験だった。

    ああ、冒険したい!

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著者プロフィール

近藤 史恵(こんどう ふみえ)
1969年大阪生まれの推理作家、小説家。
大阪芸術大学文芸学科卒業後、1993年『凍える島』で第4回鮎川哲也賞を受賞し、デビュー。
2008年、『サクリファイス』で第10回大藪春彦賞受賞、2008年度本屋大賞部門惜しくも2位、第61回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門候補作になる。これがシリーズ化もされた代表作となった。ほかの代表作に、ドラマ化された『天使はモップを持って』シリーズ。
2006年から、母校の大阪芸術大学文芸学科客員准教授に就任している。

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