スーツケースの半分は

著者 :
  • 祥伝社
3.82
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  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634810

感想・レビュー・書評

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  • 初めての一人旅を決めると、旅慣れた友人からメッセージが届いた。
    「スーツケースの半分は空で行って、向うでお土産を買って詰めて帰っておいでよ」

    数奇な運命をたどることになった、青いスーツケースの物語。
    様々な思いを抱いて旅に出た彼女たちは、空の半分に何を詰めて帰ったのだろうか。
    幸運はスーツケースが運ぶもの?
    それとも自分でつかむもの?

    第一話 『ウサギ、旅に出る』
    結婚3年目の、山口真美(やまぐちまみ)
    「ニューヨークでミュージカルを観たい!」と結婚前から夫に訴え続けているのに、休みが合わないとかこの次になど、言を左右にしてはぐらかされ…
    フリマで偶然出会ったスーツケース、小さな内ポケットにはメモが入っていた。
    「あなたの旅に、幸多かれ」

    第二話 『三泊四日のシンデレラ』
    実家暮らしの、中野花恵(なかのはなえ)
    清掃会社のマネージャー。
    多くのアルバイトのシフト管理や総括を担当する。
    学歴や職業で人を差別する、父親の考えにうんざり。
    年に一度香港の高級ホテルに滞在することが楽しみでもあり、自分を偽っているような小さな引け目もあり…

    第三話 『星は笑う』
    一人暮らし。派遣で働く、舘原ゆり香(たちはらゆりか)はバッグパッカー。
    彼女の旅は、観光地めぐりよりも、異国の空気に触れ、溶け込むことが快い。

    第四話 『背伸びする街で』
    フリーライターの、澤悠子(さわゆうこ)
    美味しいパンの取材でパリを訪れる。
    いつもパリで滞在させてくれた、現地の友達のマリーに、今回は断られる。
    エトランゼに冷たいと言われる、パリの素顔は…

    第五話 『愛よりも少し寂しい』
    パリ在住の、中野栞(なかのしおり)は、留学生(いちおう)
    不実なフランス人の男に、目は醒めたのか。

    第六話 『キッチンの椅子はふたつ』
    獣医の、星井優美(ほしいゆみ)は、夫と別れ、大学生の娘春菜と二人暮らし。
    突然、春菜が交換留学生としてドイツへ行きたいと言い出す。

    第七話 『月とざくろ』
    春菜。
    満たされているからこそ、飛び立ちたくなると気付く。

    第八話 『だれかが恋する場所』
    山口真美、中野花恵、舘原ゆり香、澤悠子の四人は、大学時代の同級生。すでにアラサー。
    久しぶりに四人そろっての温泉旅行を計画するが、真美は欠席、悠子は沈んでいる。
    しかし、土産物屋の二階で、思いがけない出会いが!

    第九話 『青いスーツケース』
    世界をめぐったスーツケースは、偶然に空港で、最初にそれを買った人物とすれ違う。
    似ているとは思うが確信はできず、良い物で満たされていることを、何気なしに思うのであった。

  • 短編連作。
    自分のしたいことは、
    誰に気兼ねすることなく、
    自分の力でやる、そんな気になれる。
    心配してるだけじゃなくて、やってみたらいいことあるかもよ。
    そっと背中を押してくれるかんじがした。

  • それぞれの短編がエピローグへの序章だとすると、本作のエピローグには、『そう来たか』と思わず膝を打ちたくなった。そして少し泣けた。

  • 青いスーツケースと
    それぞれの旅をつなぐ連作短編集。

    どんな旅に出るか、
    何処に行くのかは人それぞれだけど
    どんな旅だって、
    最初の一歩は勢いと少しの勇気が必要。

    青いスーツケースは
    背中を押してくれるのかも。

    どのお話も心がキュッとなって、
    最後に柔らかくなる
    素敵なお話でした。

  • これは白い近藤さん。女同士の確執を描くのも近藤さんは巧いけど、こういういい友達関係も自然で上手。旅のスタイルは違うのに、お互い受け入れられる友人っていいな。

  • 革製の青いスーツケースを巡る連作短編集9編。
    共感する部分がたくさん。苦い思いで胸がギュッとなるところもあったけど、どのお話も読後感良く、清々しい気持ちになる。まとまり良く、自然と前向きになる一冊。
    お気に入りは「三泊四日のシンデレラ」と「月とざくろ」。

  • (2021/5/10再読)
    私は読んだ本の中身を覚えないのか。。。
    読みながら、既視感を感じていたが、
    それでも、最後の章では涙を流し、感動して終わって、ブクログ登録をしようとしたら。。。

    2016/2/7に読み終わっているではないか!!
    どうりで既視感。。。
    そして、読んだ感想も、「あ、自分がいる」というもの(笑)
    本当に、なんと言ったら良いのだろうか。。。この忘れっぽさは。。。

    5年ぶりに読んで、改めて思ったのは。。
    青いスーツケースがほしい。。(笑)
    あ、5年前と同じ(笑)

    ↓ 2016/2/7感想


    青いスーツケースに繋がる短編集。
    すべての物語に「あ、自分がいる」という印象を持つ。

    自分の思ったことを大事にしないで周りに合わせる自分。
    隠さないで良いことを隠そうとして、自己嫌悪に陥る自分。
    違和感を感じながらも、その人間関係を手放せない自分。
    勝手に他人の心を想像して、悲観する自分。
    考えたくないことに目を背ける自分。
    周りから距離を置かれていることに馴染めない自分。
    なんでも抱え込む自分。
    これ以外にもたくさんの自分がいた。

    その感情を十分過ぎるほど理解できるので、それぞれの主人公にかなりの感情移入をしながら読んだので、あっという間に読み終わるとともに、なんだか、同じ体験をしたかのように読了感がすっきりしている。

    急激に旅に出たくなった。
    しかも、一人旅。
    そして、青いスーツケースが欲しくなる。

  • 「たとえぼろぼろになったとしても、スーツケースはパーティバッグよりもいろんな風景を見ることができるだろうと。」

    旅じゃなくてもいい。
    なにか行動することで、出会いがあったり、発見したり。
    そして、それはやり続けなくてもいい。
    休む時があっていい。

    そんな気持ちになった本でした。

  • 小説NON2014年7月号〜2015年2月号に掲載された8編に書下ろし1編を加えた9編の連作短編を2015年10月に刊行。青色のスーツケースをバトンがわりにして、女性の旅を描く、連作。軽めのありふれたお話で、心に残るものはなかったです。

  • 青いスーツケースにまつわる短編集だけど、全てか繋がってて、最後にほんわかする感じが心地よかった。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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