家康、江戸を建てる

著者 :
  • 祥伝社
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  • / ISBN・EAN: 9784396634865

感想・レビュー・書評

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  • 壮大な計画が進みます

    家康、江戸を建てる
    2017.05発行。字の大きさは…大活字。

    流れを変える、金貨を延べる、飲み水を引く、石垣を積む、天守を起こすの5話。

    豊臣秀吉の命により関東へ国替させられた徳川家康が低湿地を拓き徳川260年の礎を築く姿を、治水工事、貨幣鋳造、飲料水の確保、江戸城の石積み、天守の建設の5つの側面から描く物語です。

    【流れを変える】
    天正18年(1590年)夏、豊臣秀吉は小田原攻めの最中に徳川家康に東海三国、信州、甲州から関東へ国替えを命じる。家康は、江戸の高台と泥湿地の境に城を築くことを決めます。
    伊奈忠次は、江戸を水浸しにしている元凶である利根川を、江戸へ流れ込むのでなく栗橋の辺りで大きく曲げて鹿島灘に向ける巨大な土木工事を計画します。

    【金貨を延べる】
    文禄4年(1595年)、江戸へ入国して3年、京より連れてきた後藤庄三郎に命じて江戸で1両小判の製造を始めます。大きな貨幣は、豊臣秀吉が製造している10両大判です。これは使い勝手が悪く、より小さい通貨をと考えてです。

    【飲み水を引く】
    天正18年(1590年)夏、家康は、大久保藤五郎に命じて江戸の飲み水の確保を命じます。江戸の水は、泥湿地だらけで良質な地下水が得難く、海が近いこともあり井戸水は塩辛くて飲めません。家康は、三鷹の七井の池(現在の井の頭公園)から江戸へ水を引きます。

    【石垣を積む】
    江戸城建設のため良質な石を探していた家康は、伊豆国堀河(現在の静岡県賀茂郡東伊豆町北川)の地から石を切り出します。慶長5年(1600年)からは、諸大名に命じ天下普請(金は、工事を受けた大名が全て負担)で江戸城の建設が始められます。

    【天守を起こす】
    江戸城の天下普請は、豊臣家恩顧の外様大名の財力を減らし、2度と戦う体力を無くすことを目的に行っています。徳川が天下を統一し、戦の無くなった今不要な天守閣の建設をあえて作っています。

    【読後】
    東海5ヶ国から関東への国替えに始まり、如何に江戸の地を住みやすいものにするかが伺える物語になっています。ただ、なぜ家康が、江戸の地を選んだかについて、掘り下げた話が無いのが少し物足りません。

    【直木賞、テレビ】
    第155回直木三十五賞候補作。
    2019年1月にNHK「正月時代劇」にてテレビドラマ化。

    【音読】
    4月6日から4月27日まで音読で読みました。底本が、祥伝社のため登録は、祥伝社「家康、江戸を建てる」で行います。
    2021.04.27読了

  • 最初は秀吉に任ぜられた未開の地の江戸が、お城を中心に住みやすく美しい街になってゆく過程が描かれています。水の流れ、貨幣の精度、飲料水の質と使いやすさ、城の石垣の角度や加重、天守閣の色に至るまで、家康の目利きにかなった職人の技が光ります。何世代にも渡って成し遂げる誠実な職人もいれば、時が減て腐敗と堕落の一途を辿るものもあります。1章にひとつは必ず膝を打つ言葉があって心に響きます。ここに登場する藤堂高虎は残念な男です。なるほどそれはダメやと納得。目利きと信頼と誇りの大切さを再確認する作品でした。

  • 歴女には程遠いし、時代小説もほとんど読まない。
    大河ドラマも興味がなく、戦国武将もあやふや・・・。

    そんな私がおもしろい!と思えたこの小説。
    直木賞の審査員からは「これは小説ではない」との厳しい意見も出たようだが、個人的にはこれはこれでいいのではないかとも思う。小説の形態は色々あっていいではないか。

    まあ、しかしこの本の主人公は家康ではない。
    関東のど田舎だった江戸を立派な都に至らしめた陰の主役たちに光を当てている。
    利根川の流れを変え、飲み水を引き、貨幣を流通させる。
    さらにシンボルとしての天守閣の建設などなど。

    どれもこれもへ~っと驚くことばかりで、ちょっとこの知識を自慢したくなった。
    利根川って元々どこに流れてたか知ってる?
    井の頭ってどうして井の頭だと思う?
    金座って聞いたことある?
    とかね(笑)

    この本を読んでから全く興味のなかった皇居東御苑も行ってみたいなと思うようになった。
    知ってると知らないじゃ大違い。
    面白く小説として読ませてくれた本書、とっても良かったです。

  • 関東には手つかずの未来がある!
    秀吉からの突然の国替えの申し出に対し、反対する家臣達に向かい言い放つ徳川家康。
    ここから家康の一大プロジェクトが始まった!
    問題多発の荒れ放題の土地の地ならしは、利根川東遷に始まり、日本史上初めての貨幣統一、上水道設置工事、強固な江戸城の築城……先人達の知恵と技術の賜物。

    感心するのは家康の人を見る目。
    無名の技術者を指名し務めを果たさせる。
    そして決して好機を逃さない時流を見る目……これぞ天下一のリーダー!
    お陰で今の東京、いや日本がある。
    江戸は一日にしてならず!
    そして今に続いている。

  • 徳川家康が江戸幕府を建国するまでの過程を小説仕立てにしており、歴史好きにはたまらない一冊。運河の工事、金貨の鋳造、天守閣の建設、飲料水の確保など、江戸幕府の開国に至った経緯を詳細な取材に基づいて描いており、筆者の歴史への造詣の深さに圧巻される。

    本書は歴史書に分類されるが、マネジメントやコミュニケーションといった、要素を含んだ一種のビジネス書のような一面も持ち合わせている。例えば、利根川の流れを変えるように家康の家臣が領主に依頼するシーンがある。なぜ川の流れを変える必要があるのかと訝しる領主に対して、家臣は利根川の流れを変えることで、年貢が増え、ひいては領主様にとって利益をもたらすことを主張しいる。これは、相手にとってのメリットを伝えて説得するという、現代のビジネスシーンでも用いられている交渉術である。
    家康が江戸幕府を開びゃくし、その後250年もの治世を維持することができた背景にあるのは、家臣の能力を見抜き先進的な取り組みを続けていた、家康のマネジメント力かもれない。

    以下に面白かった点を述べておく。
    ①小判の流通
    豊臣時代に流通していた小判は金の含有率が低く、市場の信用性が乏しいため、ほどんど流通していなかった。家康はこの点に目をつけて、金の含有率が高い小判を家臣に作るように命じた。より質の高い小判を江戸で流通させることで、悪貨を駆逐することができ、「徳川」の権威を高めるためである。

    ②天守閣の建築
    防衛の観点から見ても城に天守閣を建築する必要性はない。それでも、家康が天守閣の建築にこだわったのは、大名に金を使わせるためである。天守閣建築に関わる材料費や工事費を全国の大名に負担させ、彼らの経済力を弱めることに加えて、徳川家こそが天下の支配者であることを誇示することができる。

  • 秀吉の命により、家康が転封した江戸。
    関東の一寒村だったこの地が、今や世界に冠たる大都市となった所以は、やはり家康の先見の目と、職人たちの情熱と奮闘にあったことを改めて教えてくれる。
    街づくりのため、水害をもたらす元凶たる利根川を曲げてしまう伊東忠次。
    家康の意を受け、貨幣鋳造に生涯をかける橋本庄三郎。
    井戸水は、江戸の地の地質ゆえ塩辛くて飲めたものではないため、家康から水利措置を講じられた大久保藤五郎と春日与右衛門。
    江戸城の石垣に自ら見出した最上の最上の石を積もうとする、みえすき五平、喜三太。
    己の意を込めて天守閣を建てる家康とその真意を推し量ろうとする秀忠。
    著者の臨場感あふれる描写と緻密な実証により、直木賞候補になり、また今だにロングセラーを続けていることも、納得できる傑作。

  • とても面白かった。
    治水工事、上水道工事、通貨づくりに、城づくり。
    インフラは、一朝一夕に完成するものではなく、幕府を開けば即、江戸が栄えるわけでもない。
    それでも、その大工事に取り組んだ人々がいたからこそ、大都市・江戸が完成する。
    役人や職人の力で、大きな事業が完成していく過程に、わくわく。
    知っているエピソードもあるが、それでもストーリーが面白い。
    江戸を"建てる"というタイトルがぴったり。
    現在の地名も紹介しているので、実際の場所をイメージしやすい。
    適宜現代風の用語で説明しているのも、わかりやすい。

  • 【第一話 流れを変える】
    伊奈忠次 から4代。利根川の東遷事業。

    【第二話 金貨(きん)を延べる】
    後藤庄三郎光次。
    貨幣戦争については偶然最近「ホンモノのおカネの作り方」を読んでいたので興味深かった。もっと勉強したい。
    貨幣制度の日本統一は徳川家康、と漠然と理解していたつもりだったが、フィクションとはいえとても現実味があって、関ヶ原の戦いの臨場感というか、こう繋がってくるのかぁと感無量でした。
    後藤家が関ヶ原の戦いの際に真田家みたいに兄弟で東西分かれていたのは史実かな?気になる。

    【第三話 飲み水を引く】
    井の頭公園から玉川上水の川を作って都心まで引っ張る事業。大久保藤五郎と内田六次郎という人物。
    井の頭公園の近くに“牟礼”という地名に聞き覚えがあったので胸熱でした。
    『枕草子』の「井は、ほりかねの井」などを挙げて"ほりかねの井”なる枕詞がでてきます。
    玉川上水が身近であることや目白山、椿山荘、水道橋などの地名の由来や現在の様子を比べて面白いです。

    【第四話 石垣を積む】
    大久保長安がとっても嫌なやつで驚いた!!
    東京国立近代美術館の「眺めの良い部屋」でみたあの石垣を思い浮かべながら読みました。

    【第五話 天守を起こす】
    凡庸と言われる秀忠の描きようと、天守から常に普請中という江戸の街を眺める家康の目線が良かった
    天守建築の事業でありながら、江戸の街全体の漆喰の壁にまつわる話。これぞまちづくり。


    家康の元でそれぞれ奮闘した人物たちと事業についての独立した話かと思いきや、前話までの内容や人物像を読者に浸透していることを前提とした話運びで、みな江戸を建てるために必要なことだけれでもそれぞれ別事業でありそうなのに、やはり家康を中心に背景が繋がっていることが伝わってくる。

  • 文字通りに単なる広野に等しかった土地に江戸を作り込む話だけど、利根川を曲げ金貨を作り飲料水を引き江戸城の石垣を重ね天守閣を築き上げた5話の作品。それぞれの話に主人公が登場する。個人的には石工が登場する第4話が印象的だったかな。少し食い足りない感は残ったけど、東京の古の知識として興味深く読めた♪

  • 江戸の街づくりプロジェクトの一冊。
    面白かった。最初から最後まで興味深く読めた。
    今当たり前のようにある街にここまでの歴史があったとは考えたこともなかった。

    先見の明があったとはいえ、この時代の家康の巨大な大ばくち。
    ゼロからのスタート、それぞれの分野でのスペシャリストの命がけのプロジェクトと言っても過言ではない街づくりに感嘆のため息しか出ない。

    職人目線で描かれる過程が、そして心情描写が素晴らしい。
    迎えた終盤、白一色の天守に込められた想い、フィクションとはいえ、見事に描き出された家康の心にグッときた。

    日本人の心の中にそびえ立つ…物語の締めくくり方も秀逸。

    • あいさん
      こんばんは(^-^)/

      私江戸時代が好きなんだ。
      戦国時代から好きだけど、物語として読むなら江戸時代がいいな。
      そんな江戸をの街...
      こんばんは(^-^)/

      私江戸時代が好きなんだ。
      戦国時代から好きだけど、物語として読むなら江戸時代がいいな。
      そんな江戸をの街づくりなんて興味津々(⁎˃ᴗ˂⁎)
      この作者さんはどんな感じ。
      私も江戸の物語を読み終わって先週から何度も投稿しようと思ってはなかなか今夜できるかな。
      またその時は読んでみてくだされm(*_ _)m
      2019/04/20
    • くるたんさん
      けいたん♪こんばんは(●'∇')

      そうだったのね♪私は最近、なんとなく歴史モノに興味が出てきたよ♪

      これは読みやすい♪ドラマ化もされてた...
      けいたん♪こんばんは(●'∇')

      そうだったのね♪私は最近、なんとなく歴史モノに興味が出てきたよ♪

      これは読みやすい♪ドラマ化もされてたのね。

      銀河鉄道の父でも思ったけど、この作家さん、読みやすいし、心情描写もひきこまれる〜(* ॑꒳ ॑*)
      職人さんのお仕事がメインで読み応えあったよ。

      けいたん♪のまかてさんのレビューも気になってたの♡
      ゆっくり書いてね〜♪
      2019/04/20
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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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