家康、江戸を建てる

著者 :
  • 祥伝社
3.84
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感想 : 203
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634865

感想・レビュー・書評

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  • 江戸は壮大な土木工事の上に誕生した都市であり、決して自然を大切にした都市ではない。人が自然を改造しながらつくっていった都市が江戸。とはいえ現在の都市開発とこの当時の都市開発は何かが違う。その違いはなにか?が今後のテーマ。がちがうのだろうか?そこは今後考えてみたいテーマ。

  • 家康が江戸を建てるための基本となる、川・通貨・飲み水・石垣・天守を作り上げていくかが描かれている。
    連作としては時系列が前後して、少し読みづらい。
    個々の工事においては主となる人物がいるにはいるが、どれも魅力が足りない。
    評判が良かっただけに、少し残念。

  • 東京の成り立ちを、政治と技術の両面からダイジェスト的に書いた作品。江戸初期の土木技術、建築技術、鋳造技術の調査、裏付けを取りながら、ドラマに仕立てているところが秀逸。特に「石垣を積む」のところはこれまで想像していた技術の確認ができ、もっともっと細かく知りたいと思わせた。今の地名で書いてくれてあるので想像しやすく、引き込まれる。天守閣のデザインに関する家康と秀忠のエピソードは、作者の想像の産物なのだろう。軽いけれど清々しく感じる。

  • 江戸を天下の都市とするために必要だったこと、利根川の河口移転、小判鋳造、上水整備、江戸城の整備、それらの下命に力を尽くした人々、その労苦、江戸の隆盛と安泰はそうした努力の賜物だと認識させてくれ、さらにそれらを見通し適材を起用した家康の偉大さに気づく。
    現在も馴染みの地名の謂れが分かるのも楽しい。
    16-213

  • 秀吉と家康は共にただの低湿地だったところに都市を造り、現代でも日本の一、二の都市になっている。特に家康の場合は経済的にも遅れた関東への転封の結果として小田原でなく江戸を選んだところに現代にも通じる慧眼があるのだが、当時は太田道灌の古城がある海縁に過ぎず、それを都市にするために奔走した実務家たちを描くのが本書である。

    武将や政治家などと違い実務家のことは歴史に残りにくいところ、よく調べて書いていると思う。また、当初の利根川東遷工事で河口となった浦安、神田上水の洗堰が置かれた関口(文京区)など、現代に繋がるように書かれているので、東京に住む身には興味がわきやすいのも好印象。惜しむらくは、記録に乏しい彼らのことだけれども、もう少し膨らませて話を展開しても良かったと思う。

    あともう一つあげれば、七井池(井の頭公園)から引いた疎水を大洗堰(関口)で分岐させて江戸川に流すとある一方で、利根川を東遷させて浦安に流した水路を今は江戸川と呼んでいる。おそらく、前者は後に水路が整理されて神田川になり、後者は利根川の銚子東流後に残った水路を江戸川と呼ぶようになったのだと思うが、本書では疑問が解消されなかったのは残念。

  • 何も無かった関東平野に江戸を作りあげていく様は、まるでTOKIO。

    上水を引いたり、石を切り出し石垣を作り、漆喰の材料を集めたり。
    利根川の流れの向きまで変えてしまうが、さすがのTOKIOもそこまでは、、。

    この著者はいつも目の付け所が秀逸。

    もう少し戦や政治、政略色が絡むと奥行きが出て面白かったと思う。

  • 2016.10.7.読了意外に?面白かった。タイトルから江戸城を建てる話かなと思ったらまず、第1話では利根川のために水浸しになっている関東平野の川の道筋を変える話、第ニ話は豊臣の論功行賞に用いられた大判に変わって実際に流通ふる小判を鋳造する話第三話では、江戸の民のための飲料水を確保するために上水を引く話第四話では白の石垣を積むための職人を描いた話最後の第五話では天守を真っ白な漆喰で塗り固める意義を家康が秀忠に考えさせながら完成させた話。物作りという意味で非常に興味深く面白かった。それぞれは一代で終わる話ではなく、作業によっては子や孫に仕事が引き継がれていく。全てが終わった後、感慨無量だろうなあと思った。銀座、水道橋、井の頭、三鷹など東京の地名の由来が織り込まれ、そうなのか〜と発見が多かった。

  • 章立て(目次より)
     第一話 流れを変える
     第二話 金貨(きん)を延べる
     第三話 飲み水を引く
     第四話 石垣を積む
     第五話 天守を起こす
    主な登場人物名
     第一話 伊奈忠次、伊奈忠治、伊奈忠克(半左衛門)
     第二話 橋本庄三郎(のち後藤光次)、後藤長乗
     第三話 大久保藤五郎、内田六次郎、春日与右衛門
     第四話 吾平、 与一、 喜三太
     第五話 徳川秀忠、藤堂高虎、中井正清

    感想
     第一話が一番面白く、だんだんつまらなくなっていった。
     歴史に詳しくない私にはフィクションかノンフィクションかわからないけど、いずれにしても小説ではないと思った。NHKが昔作っていた「プロジェクトX」に似ている。でも1つ1つのプロジェクトの掘り下げ方が足りない気がする。
     ただ、その分読みやすくなっていて、飽きないうちに1つの物語が終わるので、「入門書」としてはいいのではないだろうか。

     文体は回りくどい表現は全く無く、読みやすい。星新一のショートショートを読んでいるような気がしてくることさえあった。しかし、句点の使い方は独特だと思う。わざとなのだろうけど、変なところに句点があって文が切れていることがある。
     
     また、「猫実村は、現在の千葉県浦安市。現代人の感覚でいうと。この構想は、ちょうど利根川の河口を北千住からディズニーランドに移すようなものだろうか。」(36ページより抜粋)のように、ときどき現在の地名が出てきて、わかりやすいのだが、江戸時代に浸りたい読者には興ををそがれる部分だろうなと思う。小説ではなくプロジェクトXに思えるのもそういうところからくるのかもしれない。
     
     地図や挿絵があればいいのにと思う部分も多数あった。ぜひ、小説の体でなく、ムック本みたいにして、地図などの資料やイラストをふんだんに使ってリメイクしてほしい。

  • これは文句なしに面白い!!

    今の東京の成り立ちが面白いほど分かる。
    ここの地名はこう言う由来からなのか!
    とか、今の姿からは想像も出来ない昔の関東だったり・・・徳川幕府って凄かったんだなと今更ながら感動した。

  • 『桐島、部活部やめるってよ』みたいなタイトルだが、内容も家康主人公ではなく、江戸城や治水工事に関わった職人や代官の短編集。近年はやりの『火天の城』みたいな技術小説なので、お好きな方にはうける。文章の表現力がやや稚拙なのが玉に瑕だが。
    最終章の天守閣が白壁であるのは、童門のエッセイを読んでいて知っていたので大した感慨はなかったのだが、参考資料リストが欲しかったところ。

    タイトルが中身を裏切っている感はぬぐえないが、「家」「康」という字は「建てる」によく合っている。

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著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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