赤へ

著者 : 井上荒野
  • 祥伝社 (2016年6月14日発売)
3.51
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  • 本棚登録 :138
  • レビュー :27
  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396634988

赤への感想・レビュー・書評

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  • 井上荒野の凄みを今更ながらも感じた圧巻の本だった。
    文句なしの☆5つ評価。
    死にまつわる短編集。この中にはなんと10もの短編が収められているのだが、全く短編とは思えないほど中身が濃い。
    一編一編の完成度が非常に高く、それぞれについてじっくりとレビューしたいほど甲乙がつけがたい。

    お盆にちょうど読んでいたこともあり、新盆を迎える私の心情とシンクロしてしまったのか思った以上に感傷的になったかもしれない。
    でもそれを抜きにしても、この作家の全てを書かずに心の動きをこれほどまでに鮮やかに描き出す手腕はさすがとしか言いようがない。
    ちょっと前に読んだ他の作家の理屈っぽい長編小説よりもよほど心打たれるものがある。

    印象に残ったのはバーの常連客にまつわる話「ドア」、見ず知らずの人のブログに共感していく主人公の話「どこかの庭で」、そして作者には珍しく社会性のあるメッセージの込められた「雨」。
    どの物語も心にと言うか、胃に訴えてくる感じ(笑)
    ぎゅーんと掴まれるように切ない、やるせない、遣り切れない。

    そしてなんといっても「母のこと」。
    これはもう井上さんの完全なる私小説でしょうね。
    こんなに身近にまっすぐと感じた事はないくらいひねりもなんにもない。ストレートで端正な文章。
    いつもとは違った作家の横顔を見たようでうれしいような悲しいような・・・。
    書く事で母の死を乗り越えることができたんでしょうね。
    とても良かった。心に響いた。

    井上さんの短編の巧さはピカイチだなと改めて感じた作品。
    次作も期待しています。

  • 短編

  • 死に対する考え方や受け止めかたって、人によって…又状況によって全くかわるものだけれど、良くも悪しくもしみじみと考えさせられた。声をあげ涙を流すのとは別の、深い哀しみやその受け止めかたを、多かれ少なかれ誰しも経験しているんだと思う。

  • 帯に、「死」を巡って炙りだされる人間の"ほんとう″
    と書かれてあった。

    初めて読む作者、ホラー的なのかと、少し構えたが、10話からなる短編集であるが、いつか人が通る人生のような話が、書かれている。
    「虫の息」の話は、良さが感じられないで、「時計」を読み進んで行った。
    過去の事故の話が成長してから聞かされる最後の振り子時計の音に時計の針が、十数分遅れていること気付くと、、、話の展開が、題名にピタリと当てはまり、、次々と読み進んだ。
    最後までアッという間に読んでしまったが、頭に残るものが少なかった。
    短編であったせいだろうか?
     

  • さすがにこの歳にもなると、知人、友人、親類が少なからず逝った。ときどきに喪失感は異なるが、ヒトの死に直面するたびに何だか心が乾いている自分に戸惑う。本当のところは薄々分かっていて、明らかに感情の起伏が大きいタチだから、人一倍に防衛本能みたいなのが作用しているんだろう。ここに描かれるとりどりの死を俯瞰すると、生者の受け入れ方は万別なのに、いずれも絶妙だ。適度な葛藤と悲哀の末に、きちんと見切る。きっぱりとではなく、きちんとで、そんな距離感がいい。生き様はどうあれ、人間の致死率100%か。

  • 不穏な物語の短編集。テーマが著者らしい。

  • いずれも胸に残る、さすがの作品ばかり。人の心の襞を、こんなにも汲み取ってしまう作者にとって、生きるとは、どんな風なのだろうと思う。気持ちは、いつも波立ったり、震えたりしているのだろうか。孤独に、居ても立っても居られない時間があるのではないか。作品「母」は、大好きな母を亡くしてからの日々を、回想とともに綴る、自伝的な内容。表題作「赤へ」は、娘を亡くした老女が、婿に付き添われて介護ホームへ引っ越す日の話。登場人物たちが、交代で視点が変わる作品が多かった。

  • 〜ふいに思い知る、すぐそこにあることに。 時に静かに、時に声高に――「死」を巡って炙り出される人間の“ほんとう"。 直木賞作家が描く傑作小説集〜
    (Amazon 内容紹介より引用)

    10の短編集。
    柴田錬三郎賞受賞。

    どの作品も「ちょっと突発的」っていうのが感想。

    だけど、「母のこと」は別格。

    なんて言うの?
    「瑞々しい」とか「輪郭が濃い」とか「流れ込む筆致」とかをひっくるめた大人の何かすてきな言い方はないのかな?

    荒野さまのお母さまのことなのかもしれないな・・・と思いながらの読書。

    あたしの目指す人生の仕舞い方だった。
    親のことも自分の近い未来のことももう想像ではなく覚悟なんだな。

    そしてそして、
    食べ物に関わる描写がやっぱり好き。

  • +++
    ふいに思い知る、すぐそこにあることに。 時に静かに、時に声高に――「死」を巡って炙り出される人間の“ほんとう"。 直木賞作家が描く傑作小説集
    +++
    表題作のほか、「虫の息」 「時計」 「逃げる」 「ドア」 「ボトルシップ」 「どこかの庭で」 「十三人目の行方不明者」 「母のこと」 「雨」
    +++

    「死」が常に底流にあるのだが、そこは著者らしく、不穏で退廃的な雰囲気はいささかも枯れてはいない。そして、死を意識するからこそ生まれる真実が、ある時は切なく、またある時は物狂おしく、そしてまたある時には潔ささえ感じさせられる。死を迎えようとしているそれぞれのこれまで生きてきた道のりが捜査せるのだろうか。残される人たちとの関わりをも含めて、じわじわと胸に沁みる一冊である。

  • 2016 9/29

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