落陽

著者 : 朝井まかて
  • 祥伝社 (2016年7月12日発売)
3.65
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  • レビュー :48
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635022

落陽の感想・レビュー・書評

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  • 明治天皇崩御から明治神宮創建のおはなし。
    江戸の終わりから東京となった都でとても気高く力強くあったのだろうなと感じられる時代の象徴を祀る神社だけれども、そうか未だに未完成なんだな。
    完成は150年後、まだまだ50年以上の先になってのこと。
    明治神宮の森が植樹なのは知っていたけど(確かブラタモリとかでもやってた?)、ほんとうっそうと生い茂って木漏れ陽までも神々しくて、地からも天からも静謐なエネルギーを感じられるまさにパワースポットって感じがほんとうにする。
    崇高な理想のもとに全国から集められた樹々がこうして造られたのかと思うと、時代の大きな思いを感じるような気がします。
    明治神宮、あの森を歩くのが好きなのでなんか勝手に誇らしく思いました。

  • 浅井作品にしては、ユーモア封印してるね。非常に興味をそそられたテーマだった、そうか、明治神宮って、明治天皇崩御のあとで人工的に作られた森なんだね。ながいながいあいだ、京の都で系譜を紡いでいた天皇が、はじめて東に移ってきたのも明治天皇なんだよなあ、歴史を学んでいればわかっていたようで、あらためて思い知らされることも多く、考えさせられた。予備知識がないからいろいろ調べながら読んだら、明治天皇までは側室がいたんだねえ。大正天皇は皇后の実子じゃなかったんだね。そんな近い歴史も知らず。
    天皇という日本独自の存在、じぶんのなかにある敬意、これもいったいどうして持っているんだろう?私はなにを以ってこの敬う気持ちを培ったんだろう?究極の滅私の存在だからだろうか?それをいつ想像理解できるようになったろうか?
    けして大手ではない俗新聞の新聞記者、という主の目線から語られる物語なので、皇家側だったり、造園事業側だったり、偏らずに距離感を持って読めるのは狙いでもあるんだろうけどでも、ちょっと“ドラマ”が終わらないまま頁が尽きたかなという消化不良感が残った。上原くん目線の外伝書いてほしいなあ。
    でも、激動の明治という時代を、神宮造営というこの視点から描くのは斬新だとおもう。役者揃えば映画になりそう。

    「ただ、かくなる上は、己がすべきことを全うするだけです。明治を生きた人間として」

    この台詞は痺れた。ちょっと時代背景とか歴史を不勉強なまま読んでしまったので、予習してから読むともっと深く味わえたんだろうな。いつかもいちどリトライしたい作品。

  • 何とも味わいのある作品。

    明治という時代に対する作者の追悼か。
    そして、いつの世においても国見をする天皇という存在。

  • たしか書評に載っていて気になった本。
    明治天皇の死去と神宮造営から明治天皇自身へ考えを巡らせていく記者・瀬尾亮一。
    ミステリーではないし、神宮がどの形で作られることになったか現在の私たちは完成形を知っているし…となるものの、新聞社の面々の個性や亮一の興味の終着点が気になって一気に読んだ。

  • 国のためたふれし人を惜むにも思ふはおやのこころなりけり
     明治天皇

     「国のため」に、たとえば戦争で犠牲になった人々を惜しむにつけ、その親の心が思われてならない、という歌意。

    「明治」という近代国民国家日本の陽光が昇り出したころ、天皇はまだ10代後半の〈青年〉だった。直木賞作家朝井まかてによる書き下ろし小説「落陽」は、その青年が、京都の御所から東京に下【くだ】った折の感想から始まる。

     1912年(明治45年)、官報や新聞が天皇「崩御」を伝え、その後、京都の伏見桃山陵に埋葬された。他方、東京では、天皇と皇太后を祭神とする「明治神宮」造営という一大プロジェクトが動き出した。

     その背景は、以前このコラムでも紹介した、今泉宜子「明治神宮―『伝統』を創った大プロジェクト」に詳しいが、東京で荘厳な神社林を造り上げるには、150年もの長大な時間が必要でもあった。

     その難題に立ち向かったのが、ドイツで林学を学んだ若い大学講師たち。小説では、かれらの姿が、新聞記者の視線から語られている。その記者自身も取材に難航し、格闘しながら、「東京」とは何か、「帝」とは何か、そして「明治」とは何だったのか、と考えを深めていく。

     明治神宮の内苑は国費だが、外苑は民間の献金でまかなわれ、全国から大量の献木も集まった。「明治という時代は大正になって、ようやく完成したのかもしれないね」―記者の同僚がつぶやいたこの素朴な感想は、的を射ているだろう。

     では現在は、昭和の完成期なのだろうか。そんなことも考えさせられる話題作。
    (2016年12月4日掲載)

  • まかてさん、天狗党の乱を扱った直木賞作品が面白かったので新作と聞いて図書館で予約してました。。
    今回は明治神宮造営を巡る明治を生きた人々と、明治天皇のお話です。

    以前、社会人大学の日本史講座に通っていたことがあり、
    「天皇は京都から東京に移るとき、単純な行幸という触れ込みで出発したので、今でも京都のお年寄りは天皇さんはこちらに帰ってくる、と言ってるのですよ」
    と習いました。国策は国策として奠都は行われたけれど、反対派や京都市民への配慮からこのような形をあえてとったそうです。
    天皇の大きく重い存在であったことを窺い知るエピソードとして印象に残りました。

    今回この本を読んでその話を思い出しました。
    明治天皇は、国民の気持ちにこたえるべく新しい時代の日本人の精神的支柱として全身全霊でそれを全うした存在だったのですね。
    そしてそれは、今上天皇にも継承されているなあと感じました。
    今上天皇の長い在位中、報道等で知る献身的な姿に胸を打たれる場面に何度も出くわして、そういう人のそういう行動が、日本人の心の中で今でもある種特別な存在で居続けてくれている気がしました。

    また、明治神宮の森が、完成を150年後という未来を見据えた計画の元つくられた人口の森だということ!この本を読んで初めて知りました。
    ということは、現在の森も完成形ではないということなんですよね?壮大過ぎ!

    あらためて明治神宮を歩いてみようと思います。。

  • ちょっと難しかった気がします。
    私が近代日本史を知らないのが悪いのですが…。

    三流新聞の記者が追う、明治神宮創建のお話。

    そう言われてみればそうなんですよね。
    明治天皇。京都から離れて東に下ってこられたこと。
    新しく歩み出す日本で、古いしきたりと
    新しく改革したこととの折り合いの連続。

    前例のない天皇としてのあり方の模索。

    雲の上の人なのに、そんな明治天皇への万謝の念を
    心に持ち続けて慕う人々。

    明治神宮は初詣に行くところと思ってました。
    新年だけしか行かないなんて勿体ないことを…。
    神社と杜。木の1本1本に、明治天皇を慕う
    人々の心が宿っているんですもの。
    この神社のなんたるかを全くわかってませんでした。

    150年後にはまだありますけど、
    今の杜は想像通りになっているんでしょうか。
    民を守り抜き、後世に続かせてくれたパワーを
    感じるために訪れようと思う一冊です。

  • 明治神宮の造営を通して明治という時代と明治天皇の視線を想像する。新聞記者の主人公は途中から性格が大きく変わってしまうように感じた。でもこれを読んで明治神宮にもう一度行ってどんな木が植わっているのかみてみたくなる。

  • 明治神宮の森が出来るまでの奮闘と、明治天皇の人となり。あまり思ったこともなかったけど、明治神宮の森は人工の森であり、森を創るに際し覚悟のもとに取り組んだ人々がいた。
    そこに祀られている明治天皇に対する人々の東京に祀りたいとの思いがあった。
    そして新しい時代に自分を殺して生きていかねばならなかった明治天皇自身の思い。
    京都を出てから殆ど戻られることのなかった京都だが、死後は京都に眠りたいという思いもあった。
    深く感銘させられた。
    今度明治の森に踏み込み、参拝するときは思いが違ってくるだろう。

  • 朝井まかてさん、前読んだのもたしか植物が関係していたけど、お好きなのかな。
    淡々と読んでいって、明治天皇について語られた思い出に、ぐわっと泣いた。だってあまりに「人間」らしいから。
    150年先のために森をつくる、その途方もないドラマの入り口部分を切り取った作品。どんな状態からどんな木を植えていくのか、疎い私は植物の種類を聞いてもうまく想像できないので、こういうのは映像でみてみたい。

    江戸時代の「お殿様」とか、維新後は皇室の方々、私たちは何かおおきな存在がいつもそこにあって見ていてくれると信じている、そうじゃないと不安になる。個人的に宗教は好きじゃないけど、名前が違うだけで始まりは似たようなものなのかも。

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